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7章
サランとの別れ
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ユノがイヴァンとサランに頼み事をしたのち、イヴァンは王都を経った。
それから三日後。
「ユノ、僕の外泊届は無事に受理されたよ。実家に一週間。出来るだけ長く外泊許可を取得したかったけれど、これが限界だった」
サランはそう言って自身の外泊許可証をユノに渡した。
「俺のふりをして寮に残ってくれだなんて、とんでもないお願いを聞いてくれてありがとう」
ユノはサランに深々と頭を下げた。
もしこのことが明るみに出たら、サランは退学処分になってしまう。
「大丈夫だよ。もし退学になったとしても、僕はもう『治癒師』になるための十分な知識は得ているから、個人で『職業試験』を受ければいいだけだもん」
サランはユノを心配させないように明るく笑う。
親友の優しさが身に染みる。
そう、サランにはユノのふりをして寮の部屋に残ってもらい、ユノのふりをしてもらう。
その間外泊許可を取って実家に帰省していることになっているサランは学園に居なくてもなんら問題はない。
ユノは魔法を使い、サランの姿をユノに近づけた。
ユノによく似せたサランはユノを安心させるようににっこり微笑んだ。
近くでよく見るとバレてしまうかもしれないが、初めて会う兵士なら恐らく大丈夫だ。
この部屋に友人や寮母のマルコが訪れるのは禁止されており、食事や必要なものを届けるのも見張りの兵士がすることとなっているのも、サランには寂しい思いをさせてしまうかもしれないが幸運だった。
「イヴァンの方もきっともう国境のクルリ村にはとっくに到着しているはずだから『移動盤』の準備は大丈夫だよね」
サランが言うとユノは頷いて冬期休暇の時に作成した『トラベルゲーム』を改造した移動のできるゲーム盤を取り出した。
ユノが独自に生み出したものなので、正式な名前はないがサランが『移動盤』と呼び定着した。
シュトレインの各地への旅行気分を味わえるという双六ゲームの移動機能に手を加えて作成した『移動盤』
二枚一組になっていて、一枚の『移動盤』から対になっている『移動盤』への移動を可能にする。
ユノは四枚の『トラベルゲーム』に手を加え、二組の『移動盤』を作成した。
ユノの取り出した『移動盤』はイヴァンに持って行ってもらった『移動盤』と対になっている。
イヴァンには国境となっているユノの故郷に着いたら『移動盤』を安全な場所に設置してもらうよう頼んであるのだ。
ユノの話を聞いて、苦笑いしながら『移動盤』を受け取ったイヴァン。
そのとき彼はしばしの間じっくりと『移動盤』を眺めた。
そしてイヴァンの表情が少しずつ真顔に変わっていった。
『これはまた……すごいものを作ったね。キリヤには君を危険な目に遭わせたくないから絶対に連れて来るなと念を押されていたんだけれども……しかし最前線は君の故郷だ。僕らは君を頼ってもいいかい?』
そう言った彼にユノが頷くと、イヴァンは『移動盤』を持って一足先に出立して行ったのだ。
「サラン、本当に色々とありがとう。後のことは頼んだよ」
ユノはサランの目を見て言った。
ユノに良く似ていたが、瞳はサランのままだった。
本当にサランと出会えて、同室になれてよかった。
彼のお陰で楽しく学園生活を送ることができたし、ずっと心配事が少なかったから勉強に集中することもできた。
優しく明るい彼の手を感謝を込めてギュッと握った。
そして、そっと手を離して言った。
「俺の姿になる魔法は一週間経てば解けるから。そうしたら俺がここに戻らなくてもサランはサランに戻って、俺は消えたと兵士には話してね。本当に今までありがとう」
「ユノ? ここに戻らないってどういう……まさかユノっ」
サランがユノの真意に気付く前にユノは移動の合図になる賽を振り、そして小さく呪文を唱えた。
すると、ユノの姿は少しずつ薄くなり、ユノの真意に気が付いたサランが手を伸ばしたが、もうその手は掴めなかった。
それから三日後。
「ユノ、僕の外泊届は無事に受理されたよ。実家に一週間。出来るだけ長く外泊許可を取得したかったけれど、これが限界だった」
サランはそう言って自身の外泊許可証をユノに渡した。
「俺のふりをして寮に残ってくれだなんて、とんでもないお願いを聞いてくれてありがとう」
ユノはサランに深々と頭を下げた。
もしこのことが明るみに出たら、サランは退学処分になってしまう。
「大丈夫だよ。もし退学になったとしても、僕はもう『治癒師』になるための十分な知識は得ているから、個人で『職業試験』を受ければいいだけだもん」
サランはユノを心配させないように明るく笑う。
親友の優しさが身に染みる。
そう、サランにはユノのふりをして寮の部屋に残ってもらい、ユノのふりをしてもらう。
その間外泊許可を取って実家に帰省していることになっているサランは学園に居なくてもなんら問題はない。
ユノは魔法を使い、サランの姿をユノに近づけた。
ユノによく似せたサランはユノを安心させるようににっこり微笑んだ。
近くでよく見るとバレてしまうかもしれないが、初めて会う兵士なら恐らく大丈夫だ。
この部屋に友人や寮母のマルコが訪れるのは禁止されており、食事や必要なものを届けるのも見張りの兵士がすることとなっているのも、サランには寂しい思いをさせてしまうかもしれないが幸運だった。
「イヴァンの方もきっともう国境のクルリ村にはとっくに到着しているはずだから『移動盤』の準備は大丈夫だよね」
サランが言うとユノは頷いて冬期休暇の時に作成した『トラベルゲーム』を改造した移動のできるゲーム盤を取り出した。
ユノが独自に生み出したものなので、正式な名前はないがサランが『移動盤』と呼び定着した。
シュトレインの各地への旅行気分を味わえるという双六ゲームの移動機能に手を加えて作成した『移動盤』
二枚一組になっていて、一枚の『移動盤』から対になっている『移動盤』への移動を可能にする。
ユノは四枚の『トラベルゲーム』に手を加え、二組の『移動盤』を作成した。
ユノの取り出した『移動盤』はイヴァンに持って行ってもらった『移動盤』と対になっている。
イヴァンには国境となっているユノの故郷に着いたら『移動盤』を安全な場所に設置してもらうよう頼んであるのだ。
ユノの話を聞いて、苦笑いしながら『移動盤』を受け取ったイヴァン。
そのとき彼はしばしの間じっくりと『移動盤』を眺めた。
そしてイヴァンの表情が少しずつ真顔に変わっていった。
『これはまた……すごいものを作ったね。キリヤには君を危険な目に遭わせたくないから絶対に連れて来るなと念を押されていたんだけれども……しかし最前線は君の故郷だ。僕らは君を頼ってもいいかい?』
そう言った彼にユノが頷くと、イヴァンは『移動盤』を持って一足先に出立して行ったのだ。
「サラン、本当に色々とありがとう。後のことは頼んだよ」
ユノはサランの目を見て言った。
ユノに良く似ていたが、瞳はサランのままだった。
本当にサランと出会えて、同室になれてよかった。
彼のお陰で楽しく学園生活を送ることができたし、ずっと心配事が少なかったから勉強に集中することもできた。
優しく明るい彼の手を感謝を込めてギュッと握った。
そして、そっと手を離して言った。
「俺の姿になる魔法は一週間経てば解けるから。そうしたら俺がここに戻らなくてもサランはサランに戻って、俺は消えたと兵士には話してね。本当に今までありがとう」
「ユノ? ここに戻らないってどういう……まさかユノっ」
サランがユノの真意に気付く前にユノは移動の合図になる賽を振り、そして小さく呪文を唱えた。
すると、ユノの姿は少しずつ薄くなり、ユノの真意に気が付いたサランが手を伸ばしたが、もうその手は掴めなかった。
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