56 / 123
4章
誰と踊るの2※キリヤ視点
しおりを挟む
「今夜のパートナーに僕を選んでくれて嬉しいよ」
大広間前のロビーでキリヤを見つけると、シュリが真っ白な頬を赤く上気させて駆け寄ってきた。
「この前はごめんね。アンリ学園長は平民との共生を合言葉に掲げているから、その目標の達成のためには平民も一人くらいは生徒会に入れて我慢しなきゃいけないんだよね。僕は君のパートナーなのに理解が足りなかった。だからキリヤは怒っちゃったんだよね。ちゃんと反省したよ」
大きなエメラルドグリーンの瞳をうるうると潤ませてシュリは話した。
多くの人がこの瞳を見ると虜になるらしいが、キリヤはこれまで心を動かされたことはなかった。
そのとき、普段は静かで思慮深い黒い瞳が脳裏に過った。
静かな時もどうしようもなく好ましいが、一生懸命学んでいるときや懸命に自分の考えを述べているときに生き生きと輝きだすとき、キリヤの心臓はドキドキとうるさいほどに高まるのだ。
そんなことを思いながら、キリヤは口を開いた。
「そもそも生徒会役員としても僕のパートナーとしても他者を傷つけることは容認できない」
「はぁい。ね。そんな堅苦しいことより、早く行かないと向こうの学校の方々を待たせることになっちゃうよ」
キリヤは重苦しい溜息を吐いた。
シュリの家は『占術』に長けている『術師』の家柄の中でも、特に重宝されている。
その『占術』で戦時敵国がどういう動きをするのか水晶に映し出してもらい、戦術を立てている。
戦争だけでなく、国の大切なことを決めるのにもその占術は大いに役立っている。
優秀な『術師』がいることで国の明暗を分けるといっても過言ではない。
フィザード家以外にも『術師』はいるが、能力の高いフィザード家は国にとっても貴重な存在だった。
シュリの占術の能力は、ユノの箒の場所を見つけるくらいが精々と言ったところであるが、シュリの父親や祖父が出てきたら厄介だ。
占術の力を悪用してユノを陥れることなど訳ないだろう。
キリヤの傍にいるということは、フィザード家だけではなくこういう多くの老獪とも関わりを持ってしまうということ。
家の後ろ盾があるハイクラスの者ならともかく、平民、しかも孤児であるユノには危険すぎる相手だ。
だから、平民は自分の傍に置かないほうがいい。
そう思っていたのに、キリヤはどうしてもユノと一緒にいたいと思ってしまった。
そんなユノを傍に置きたいと思うのなら、キリヤはこれまで以上に周囲に気を付けて行動しなければならなかった。
そんなことを考えながら、キリヤはシュリをパートナーとして伴い、会場である大広間に入った。
真っ白なテーブルクロスが掛けられた長方形のテーブルがいくつも並んでいた。
中央には真っ赤な薔薇のアレンジメントが豪華に飾られていた。
両校の校長や理事長が座るテーブルに案内される。
「リリィ、ようこそ。わが学園へ。昼のプログラムはお楽しみいただけましたか?」
キリヤの隣に席が要されている魔女学校の生徒会長のリリィ・カナリアに声を掛けた。
リリィは薄い青のドレスを身に纏い、気品あふれる雰囲気だった。
「えぇ。とっても興味深かったわ。今年から生徒会役員になったとかいう平民の方? あの方平民なのに説明がとっても上手ね」
「お気に召していただけて、よかったです」
隣で聞いていたシュリは鼻白んだ様子であったが、キリヤはユノが褒められて内心誇らしい気持ちになった。
しかしそれが表には出さないように極力気を付けてキリヤは返答した。
「あら? 今入って来た方、昼間の交流会でお会いした平民の方かしら?」
リリィが視線を向けた方を見ると、ユノが会場に今宵のパートナーであるイヴァンとそしてアンドレアと三人で入って来るのが見えた。
仮面舞踏会の時とは違い、今日は燕尾服を身に着けていた。
寮の同室のサランから今日の服は借りる予定だと言っていたので、キリヤは燕尾服を贈った。
自分が贈った服を身に纏っているのを見てキリヤは目を細めた。
彼の深い黒の瞳と合うように、深みのある黒で作らせたそれは彼の体にぴったりだった。
黒の髪や瞳は平民にはよくある色だが、彼の黒は艶やかに濡れているような漆黒だ。
綺麗だ……
心の声があふれ出そうになるのをキリヤは慌てて飲み込んだ。
彼をエスコートするイヴァンの紫ととても似合っているし、隣の燃える様に赤い瞳と髪のアンドレアにも引けを取らない。
華やかなわけではないのに、イヴァンとアンドレアを伴っていても見劣りするどころかむしろユノが人目を引いているようにも見えた。
いつも目の上まで覆っている彼の長い前髪を、今日は後ろに流すようにしてセットしていた。
黒曜石のような瞳と、秀でた額が露になっていた。
そして動きの一つ一つに大変品があり優雅であった。
「平民の方でも、とても目を引く方ね」
リリィも興味深そうにユノを見ていた。
美しく正装をしたユノを見て、シュリも驚愕の表情を浮かべていた。
それ以外の周りの反応もシュリと同様だった。
その周りの様子に、溜飲が下がるような気持ちになると同時に、キリヤ自身も自覚ができるくらいはっきりとした嫉妬が沸き上がってきた。
彼を、自分以外の誰にも見せたくないーーー
大広間前のロビーでキリヤを見つけると、シュリが真っ白な頬を赤く上気させて駆け寄ってきた。
「この前はごめんね。アンリ学園長は平民との共生を合言葉に掲げているから、その目標の達成のためには平民も一人くらいは生徒会に入れて我慢しなきゃいけないんだよね。僕は君のパートナーなのに理解が足りなかった。だからキリヤは怒っちゃったんだよね。ちゃんと反省したよ」
大きなエメラルドグリーンの瞳をうるうると潤ませてシュリは話した。
多くの人がこの瞳を見ると虜になるらしいが、キリヤはこれまで心を動かされたことはなかった。
そのとき、普段は静かで思慮深い黒い瞳が脳裏に過った。
静かな時もどうしようもなく好ましいが、一生懸命学んでいるときや懸命に自分の考えを述べているときに生き生きと輝きだすとき、キリヤの心臓はドキドキとうるさいほどに高まるのだ。
そんなことを思いながら、キリヤは口を開いた。
「そもそも生徒会役員としても僕のパートナーとしても他者を傷つけることは容認できない」
「はぁい。ね。そんな堅苦しいことより、早く行かないと向こうの学校の方々を待たせることになっちゃうよ」
キリヤは重苦しい溜息を吐いた。
シュリの家は『占術』に長けている『術師』の家柄の中でも、特に重宝されている。
その『占術』で戦時敵国がどういう動きをするのか水晶に映し出してもらい、戦術を立てている。
戦争だけでなく、国の大切なことを決めるのにもその占術は大いに役立っている。
優秀な『術師』がいることで国の明暗を分けるといっても過言ではない。
フィザード家以外にも『術師』はいるが、能力の高いフィザード家は国にとっても貴重な存在だった。
シュリの占術の能力は、ユノの箒の場所を見つけるくらいが精々と言ったところであるが、シュリの父親や祖父が出てきたら厄介だ。
占術の力を悪用してユノを陥れることなど訳ないだろう。
キリヤの傍にいるということは、フィザード家だけではなくこういう多くの老獪とも関わりを持ってしまうということ。
家の後ろ盾があるハイクラスの者ならともかく、平民、しかも孤児であるユノには危険すぎる相手だ。
だから、平民は自分の傍に置かないほうがいい。
そう思っていたのに、キリヤはどうしてもユノと一緒にいたいと思ってしまった。
そんなユノを傍に置きたいと思うのなら、キリヤはこれまで以上に周囲に気を付けて行動しなければならなかった。
そんなことを考えながら、キリヤはシュリをパートナーとして伴い、会場である大広間に入った。
真っ白なテーブルクロスが掛けられた長方形のテーブルがいくつも並んでいた。
中央には真っ赤な薔薇のアレンジメントが豪華に飾られていた。
両校の校長や理事長が座るテーブルに案内される。
「リリィ、ようこそ。わが学園へ。昼のプログラムはお楽しみいただけましたか?」
キリヤの隣に席が要されている魔女学校の生徒会長のリリィ・カナリアに声を掛けた。
リリィは薄い青のドレスを身に纏い、気品あふれる雰囲気だった。
「えぇ。とっても興味深かったわ。今年から生徒会役員になったとかいう平民の方? あの方平民なのに説明がとっても上手ね」
「お気に召していただけて、よかったです」
隣で聞いていたシュリは鼻白んだ様子であったが、キリヤはユノが褒められて内心誇らしい気持ちになった。
しかしそれが表には出さないように極力気を付けてキリヤは返答した。
「あら? 今入って来た方、昼間の交流会でお会いした平民の方かしら?」
リリィが視線を向けた方を見ると、ユノが会場に今宵のパートナーであるイヴァンとそしてアンドレアと三人で入って来るのが見えた。
仮面舞踏会の時とは違い、今日は燕尾服を身に着けていた。
寮の同室のサランから今日の服は借りる予定だと言っていたので、キリヤは燕尾服を贈った。
自分が贈った服を身に纏っているのを見てキリヤは目を細めた。
彼の深い黒の瞳と合うように、深みのある黒で作らせたそれは彼の体にぴったりだった。
黒の髪や瞳は平民にはよくある色だが、彼の黒は艶やかに濡れているような漆黒だ。
綺麗だ……
心の声があふれ出そうになるのをキリヤは慌てて飲み込んだ。
彼をエスコートするイヴァンの紫ととても似合っているし、隣の燃える様に赤い瞳と髪のアンドレアにも引けを取らない。
華やかなわけではないのに、イヴァンとアンドレアを伴っていても見劣りするどころかむしろユノが人目を引いているようにも見えた。
いつも目の上まで覆っている彼の長い前髪を、今日は後ろに流すようにしてセットしていた。
黒曜石のような瞳と、秀でた額が露になっていた。
そして動きの一つ一つに大変品があり優雅であった。
「平民の方でも、とても目を引く方ね」
リリィも興味深そうにユノを見ていた。
美しく正装をしたユノを見て、シュリも驚愕の表情を浮かべていた。
それ以外の周りの反応もシュリと同様だった。
その周りの様子に、溜飲が下がるような気持ちになると同時に、キリヤ自身も自覚ができるくらいはっきりとした嫉妬が沸き上がってきた。
彼を、自分以外の誰にも見せたくないーーー
243
お気に入りに追加
4,289
あなたにおすすめの小説
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる