11 / 12
優しくて、 頭が良くて、料理上手で、美人でスタイルも良くて、運動神経抜群で……とにかく!素敵な人じゃないと兄ちゃんは認めないからな!⑤
しおりを挟む
兄に友人の家に泊まるから心配しないようにと返信を返したところで、スマホの電源は落ちてしまった。
コンビニで泊まるのに必要なものを買ってからタクシーに乗ると千聖が言っていたとおり、あっという間に千聖のマンションに到着した。
あまり大きなマンションではなく7階建てのマンション。シンプルだがダークブラウンでシックに纏められたスタイリッシュなエントランスには学生の独り暮らしにはあまり見られないオートロックが付いているものだった。
「アイス溶けてないといいね」
と、エレベーターを待ちながら千聖が笑って理央を見た。
タクシーに乗る前に寄ったコンビニで二人はアイスクリームも買った。理央はチョコレートを選んだが、ストロベリーを選んだ千聖が可愛らしく思えて、胸の奥がぎゅっとなったことを思い出した。
エレベーターに乗って到着した千聖の部屋は単身者用の部屋ではあったが、リビングダイニングと寝室がきちんと分かれている1LDK。
部屋に入ると千聖は
「理央、先にお風呂入っておいで。僕少し仕事があるんだ」
と言って手早く理央が風呂に入れるよう準備をしてくれた。
「仕事? アルバイトですか?」
理央が尋ねると
「塾講のバイトもしてるけど、これは起業した同級生の仕事の手伝いかな」
と言ってテーブルに置いてあったノートパソコンを立ち上げた。
「えー、 すごい。もう起業した人いるんですね」
「うん。そんなにはいないけど、大学で起業する人はいるにはいるよね。ほら、もう遅いからお風呂行っておいで」
と千聖に優しく背中を押された。
それから順に二人は風呂に入った。先に風呂から上がってリビングのソファに座ってテレビを見ていた理央を見て千聖はちいさく笑った。
「ふふ。僕のじゃちょっと理央には大きかったね」
そう言って千聖から借りたスウェットを手首や足首でだぼつかせていると、小さな子供にするように、優しく折ってくれた。
理央はというと、お風呂上がりの千聖の凄まじい色気に圧倒されてぽやんと見つめるので精一杯だった。
滑らかな肌が上気していて、軽く乾かしているもののやや湿った髪はさっきまで軽く纏めていたのがほどかれて、それが耳や首筋にかかる様子が風呂上がりの爽やかだけれど甘い香りと相まって凶悪なほどに色っぽかった。
「アイス食べよっか」
ソファに座る理央のスウェットを足首の辺りで折ってくれるために理央の前に跪いていた彼が見上げて理央を誘う。
「……はい……」
答えた理央の声はみっともなく掠れて、多分とんでもなく腑抜けた顔で彼を見てしまったのだが、どうしても冷静な表情を装うことができなかった。多分さっき入ったお風呂のせいなんかじゃなく顔が赤くなっているのもわかる。
早くアイスクリームを食べて冷やしたい。そう思ってキッチンにアイスクリームを取りに向かった千聖の後ろをペタペタと歩いて追った。
「ソファで座って待っててよかったのに。ひな鳥みたいで可愛い……」
そう言って千聖はクスクス笑いながら後ろを付いてきた理央にスプーンとチョコレート味のアイスクリームを渡した。
そうして二人して子供みたいにアイスクリームを手にしてもう一度ソファに戻って二人並んで座った。
スプーンでチョコレートアイスをひと口掬って食べる
うん。これで火照った頬が少しマシになるかも。
「理央はアイスはチョコレート派?」
「はい。千聖さんはストロベリー派なんですか?」
アイスクリームのお陰で少しクールダウンされて、ドキドキと脈打つ鼓動も治まったかもしれないとホッとしながら答える。
「うん。でもストロベリーも好きだけどほんとは僕もチョコレートも同じくらいだいすき」
「え?じゃあなんで……」
コンビニのフリーザーの中には理央の買ったチョコレートアイスはまだ沢山あったと思う。
「理央とはんぶんこして食べればどっちの味も楽しめるかなって。だから……」
はい、あーん。
千聖はそう言うとピンクのアイスクリームをスプーンに掬って理央の唇の前に差し出した。
「え……?」
驚いてちいさく固まった理央に
「あれ? 理央、ストロベリーはきらい?」
と首を傾げて千聖が尋ねた。綺麗な彼から差し出されたピンク色にアイスクリームで冷やしたはずの頬が再び熱を持つのが感じられた。
「あ……、え……、その……すき、です」
恐らく真っ赤になった顔で告げると、千聖は「ああ……もう、理央は、ほんとに……」と呟いてから
「ほら、あーん、して」
ともう一度言われた。その声に導かれるままに理央がちいさく口を開けると、甘くてつめたいイチゴの香りが滑り込んできた。
「おいし?」
千聖に尋ねられて理央は頷いた。つめたいのに、あつい。なんだ、これ?
頷いた理央に千聖は深い笑みを浮かべると
「じゃあ、理央のチョコレート、ちょうだい」
と言って千聖はあーん、と理央の前で口を開けた。
否が応にも完璧なラインを描く唇と、そこから覗く赤い舌に目が奪われた。 理央の躯は信じられないくらい熱くなって手に持っているアイスクリームが溶けてしまうんじゃないかと思ってはっとした理央は急いでスプーンでチョコレート味のアイスクリームを掬って千聖の唇まで運んだ。
ただアイスクリームを食べさせ合ってるだけで、こんなの夏の夜には兄と毎晩のようにしてることのはずなのに、胸が破れそうなほど鼓動がうるさい。
「うん。やっぱこっちもおいしいね」
そうやってなんども互いの口の中にアイスクリームを運び合ってただでさえ甘いアイスクリームを甘ったるく食べさせあった。
コンビニで泊まるのに必要なものを買ってからタクシーに乗ると千聖が言っていたとおり、あっという間に千聖のマンションに到着した。
あまり大きなマンションではなく7階建てのマンション。シンプルだがダークブラウンでシックに纏められたスタイリッシュなエントランスには学生の独り暮らしにはあまり見られないオートロックが付いているものだった。
「アイス溶けてないといいね」
と、エレベーターを待ちながら千聖が笑って理央を見た。
タクシーに乗る前に寄ったコンビニで二人はアイスクリームも買った。理央はチョコレートを選んだが、ストロベリーを選んだ千聖が可愛らしく思えて、胸の奥がぎゅっとなったことを思い出した。
エレベーターに乗って到着した千聖の部屋は単身者用の部屋ではあったが、リビングダイニングと寝室がきちんと分かれている1LDK。
部屋に入ると千聖は
「理央、先にお風呂入っておいで。僕少し仕事があるんだ」
と言って手早く理央が風呂に入れるよう準備をしてくれた。
「仕事? アルバイトですか?」
理央が尋ねると
「塾講のバイトもしてるけど、これは起業した同級生の仕事の手伝いかな」
と言ってテーブルに置いてあったノートパソコンを立ち上げた。
「えー、 すごい。もう起業した人いるんですね」
「うん。そんなにはいないけど、大学で起業する人はいるにはいるよね。ほら、もう遅いからお風呂行っておいで」
と千聖に優しく背中を押された。
それから順に二人は風呂に入った。先に風呂から上がってリビングのソファに座ってテレビを見ていた理央を見て千聖はちいさく笑った。
「ふふ。僕のじゃちょっと理央には大きかったね」
そう言って千聖から借りたスウェットを手首や足首でだぼつかせていると、小さな子供にするように、優しく折ってくれた。
理央はというと、お風呂上がりの千聖の凄まじい色気に圧倒されてぽやんと見つめるので精一杯だった。
滑らかな肌が上気していて、軽く乾かしているもののやや湿った髪はさっきまで軽く纏めていたのがほどかれて、それが耳や首筋にかかる様子が風呂上がりの爽やかだけれど甘い香りと相まって凶悪なほどに色っぽかった。
「アイス食べよっか」
ソファに座る理央のスウェットを足首の辺りで折ってくれるために理央の前に跪いていた彼が見上げて理央を誘う。
「……はい……」
答えた理央の声はみっともなく掠れて、多分とんでもなく腑抜けた顔で彼を見てしまったのだが、どうしても冷静な表情を装うことができなかった。多分さっき入ったお風呂のせいなんかじゃなく顔が赤くなっているのもわかる。
早くアイスクリームを食べて冷やしたい。そう思ってキッチンにアイスクリームを取りに向かった千聖の後ろをペタペタと歩いて追った。
「ソファで座って待っててよかったのに。ひな鳥みたいで可愛い……」
そう言って千聖はクスクス笑いながら後ろを付いてきた理央にスプーンとチョコレート味のアイスクリームを渡した。
そうして二人して子供みたいにアイスクリームを手にしてもう一度ソファに戻って二人並んで座った。
スプーンでチョコレートアイスをひと口掬って食べる
うん。これで火照った頬が少しマシになるかも。
「理央はアイスはチョコレート派?」
「はい。千聖さんはストロベリー派なんですか?」
アイスクリームのお陰で少しクールダウンされて、ドキドキと脈打つ鼓動も治まったかもしれないとホッとしながら答える。
「うん。でもストロベリーも好きだけどほんとは僕もチョコレートも同じくらいだいすき」
「え?じゃあなんで……」
コンビニのフリーザーの中には理央の買ったチョコレートアイスはまだ沢山あったと思う。
「理央とはんぶんこして食べればどっちの味も楽しめるかなって。だから……」
はい、あーん。
千聖はそう言うとピンクのアイスクリームをスプーンに掬って理央の唇の前に差し出した。
「え……?」
驚いてちいさく固まった理央に
「あれ? 理央、ストロベリーはきらい?」
と首を傾げて千聖が尋ねた。綺麗な彼から差し出されたピンク色にアイスクリームで冷やしたはずの頬が再び熱を持つのが感じられた。
「あ……、え……、その……すき、です」
恐らく真っ赤になった顔で告げると、千聖は「ああ……もう、理央は、ほんとに……」と呟いてから
「ほら、あーん、して」
ともう一度言われた。その声に導かれるままに理央がちいさく口を開けると、甘くてつめたいイチゴの香りが滑り込んできた。
「おいし?」
千聖に尋ねられて理央は頷いた。つめたいのに、あつい。なんだ、これ?
頷いた理央に千聖は深い笑みを浮かべると
「じゃあ、理央のチョコレート、ちょうだい」
と言って千聖はあーん、と理央の前で口を開けた。
否が応にも完璧なラインを描く唇と、そこから覗く赤い舌に目が奪われた。 理央の躯は信じられないくらい熱くなって手に持っているアイスクリームが溶けてしまうんじゃないかと思ってはっとした理央は急いでスプーンでチョコレート味のアイスクリームを掬って千聖の唇まで運んだ。
ただアイスクリームを食べさせ合ってるだけで、こんなの夏の夜には兄と毎晩のようにしてることのはずなのに、胸が破れそうなほど鼓動がうるさい。
「うん。やっぱこっちもおいしいね」
そうやってなんども互いの口の中にアイスクリームを運び合ってただでさえ甘いアイスクリームを甘ったるく食べさせあった。
48
お気に入りに追加
977
あなたにおすすめの小説
【完結】浮気者と婚約破棄をして幼馴染と白い結婚をしたはずなのに溺愛してくる
ユユ
恋愛
私の婚約者と幼馴染の婚約者が浮気をしていた。
私も幼馴染も婚約破棄をして、醜聞付きの売れ残り状態に。
浮気された者同士の婚姻が決まり直ぐに夫婦に。
白い結婚という条件だったのに幼馴染が変わっていく。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
転移先は薬師が少ない世界でした
饕餮
ファンタジー
★この作品は書籍化及びコミカライズしています。
神様のせいでこの世界に落ちてきてしまった私は、いろいろと話し合ったりしてこの世界に馴染むような格好と知識を授かり、危ないからと神様が目的地の手前まで送ってくれた。
職業は【薬師】。私がハーブなどの知識が多少あったことと、その世界と地球の名前が一緒だったこと、もともと数が少ないことから、職業は【薬師】にしてくれたらしい。
神様にもらったものを握り締め、ドキドキしながらも国境を無事に越え、街でひと悶着あったから買い物だけしてその街を出た。
街道を歩いている途中で、魔神族が治める国の王都に帰るという魔神族の騎士と出会い、それが縁で、王都に住むようになる。
薬を作ったり、ダンジョンに潜ったり、トラブルに巻き込まれたり、冒険者と仲良くなったりしながら、秘密があってそれを話せないヒロインと、ヒロインに一目惚れした騎士の恋愛話がたまーに入る、転移(転生)したヒロインのお話。
趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです
紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。
公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。
そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。
ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。
そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。
自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。
そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー?
口は悪いが、見た目は母親似の美少女!?
ハイスペックな少年が世界を変えていく!
異世界改革ファンタジー!
息抜きに始めた作品です。
みなさんも息抜きにどうぞ◎
肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
私が悪役令嬢? 喜んで!!
星野日菜
恋愛
つり目縦ロールのお嬢様、伊集院彩香に転生させられた私。
神様曰く、『悪女を高校三年間続ければ『私』が死んだことを無かったことにできる』らしい。
だったら悪女を演じてやろうではありませんか!
世界一の悪女はこの私よ! ……私ですわ!
溺れる金魚は空を見る
ちな
恋愛
「ちゃーんと綺麗にしてあげるね」
彼氏にあらぬ疑いを掛けられて、ローションと綿棒でイッてもイッても終わらないクリ掃除拷問♡ビクビク痙攣しながら泣き叫んでるカワイイ彼女ちゃんをご堪能ください♡
短いお話なので、サクッと濡れたい時にどうぞ。
先生×生徒/クリ責め/お仕置き/快楽拷問/ドS/連続絶頂/強制絶頂/拘束/言葉責め
ドルオタ平凡くんが推しアイドルの冠番組を観覧したら公開生ハメ放送になった話
桜羽根ねね
BL
常識改変エロバラエティネタです!
短編集に投稿していたものを移行してちょこっと追記しました。
美形アイドル×平凡ドルオタのらぶざまエロコメです♡
何でも美味しく食べる方向けです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる