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6話

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 こんな風に全てが露になる体勢を取らされたのは、初めてで、顔から火が出そうで
「ち……千聖さんっ……これ、やだ……」
 苦しい躯のかたちで、快感で震えて上擦る声でそう言うと、千聖の喉の奥から絞り出すような獣の唸り声のようなおとが聞こえた。
「んっ……」
 同時に足首を掴まれて、せまいところで、膝が顔の横に付くほど脚を折り畳まれる。
 いくら暗いところとはいえ、こんな風に全てが露になる体勢を取らされたのは、初めてで、顔から火が出そうだった。
「やだ……ってばぁ」
 苦しい躯のかたちで重ねて抗議すると 
「りお、嘘やんなぁ? ここ欲しそうにひくひくしてる……」
露になった孔の縁を、千聖の綺麗な指先がくすぐるように辿った。
「ひ……っああ……んっ」
 千聖の指先がもたらすその甘い快感に自分でも驚いてしまうくらい大きな声を出してしまって、理央は驚いて自分の口を掌で塞いだ。
「……っそんなやらしい声、でるんやね……りお……」
 切羽詰まったような千聖の声がした。それから、がさり、とコンビニのビニール袋の中から何か取り出す音がした。
「んああっ……あ、あ……っちさとさ……っ」
 何かとろりとしたもので濡れて、すこしつめたい指先が、ちゅぷり、と中に潜ってくる。
「りおのなか、めっちゃあつい……」
 熱に魘されたような声。ぐにぐに、と千聖の指が動く。
 こんなところで。
 こんなところなのに。 
 へん。すごく、へん。躯が熱くて、溶けそう。
「ひ……っああっ……っ」
 射し込まれた指が、たまらなくきもちいい。
 いつもはゆっくりゆっくり溶かすように拡げてくれる千聖が、理央の声に我慢できないというように性急に中を掻き回し、 二本目の指を捩じ込んできた。
「理央っ……りお……っ」
 狂おしいこえ、ひとみ。
 理央の内腿がぶるり、と震える。
 拡げられてきもちいい、なんて絶対言えない。
「ちさとさ……んっ……ああんっ……我慢できな……」
そして、 達する直前の熟れた粘膜を千聖が乱暴にかき混ぜたとき。
「ああぁっ……っ」
 今まで出したことのないような大きくて淫らな声を出しながら、理央は達してしまった。
 声を我慢するなんてそんな生易しいこと出来ようがないと思い知らされるような快感。
 はぁはぁ、と吐息を乱していると
「こんなに乱暴にされてんのに、すごい気持ちよさそうにイくんやね、りお……」

ぬるん…… 

 達したらいつも休ませてくれる優しい千聖の目は興奮のあまり血走っていた。興奮しきった指先は止まることなく激しく中をかき混ぜる。
 聞いたことがないくらい、いやらしく下品な濡れた音が車内に響く。
「あっ……千聖さんっ……」
 落ち着くまで待って欲しくて彼のTシャツに指を掛けたけれど。
「俺がもう、限界……っ」
 投げ出されていたコンビニの袋からコンドームの箱を取り出して、一つ取り出すと、千聖は端を口に咥えて、ぴり……と下卑た仕種で袋を破いた。
 優しい顔でコンビニまでドライブに誘ってくれた千聖がどういうつもりでコンビニに行ったのか、そのあまりに色気がありすぎる仕種でようやく正しく理解した理央は全身がぶわりと熱くなるような思いだった。
 品のいい美しい顔が獣のように歪み、慣れた仕種でコンドームをくるくるとペニスの根元まで下ろす。
 ひたり、とペニスがじゅくじゅくと熟れた孔に当てられて、膨らんだ先をぬるぬると滑るように愛撫する。
「ま……待って……」
 このまま熱く熟れた粘膜に挿れられたらどうなってしまうか分からなくて必死に彼を押し止めると。
「うそ。りお、すごいいやらしい顔……ほんとは」
俺のでぐちゅぐちゅって突かれたいんやろ?
 千聖のいやらしい声を耳に直接流されて、全身が沸騰してしまいそうだった。
「あっ、あっ ……っ」
 膝の裏をぐっと、痕が付いてしまいそうなくらい強く掴まれて、狭い車の中で、すごく、すごく苦しい体勢。
「あぁ、誘ってるみたいや……ほら、先っぽ入れたら、絡み付いてきた……きもちいい…………」
 いつの間にか千聖の眼鏡はダッシュボードの上に置かれて、ひどく近い距離で恍惚として、潤んだ千聖の瞳を見た瞬間、躯の奥が彼を受け入れたくて、柔らかく綻んだ。
「ひ……んんっ、あっ、」
 その瞬間、ぎらり、と千聖の目が獰猛に光ったみたいだった。こんな、欲情しきった彼を見るのは初めてだったが、同時にぐちゅん、という聞くに耐えないほど淫らな音が鳴って一気に奥まで貫かれた。
 首筋の柔らかいところに歯を立てられて、躯は狭いところできつく曲げられていて、苦しいのに、ぴしゃり、と理央はペニスから精液を吹き出した。
「奥、挿れられて、イったん? りお……」
 可愛い、こんなん、たまらんよ……我慢できひん……と狂おしい声で千聖はこぼすと、奥のぐちゃぐちゃになってしまった粘膜にさらにひどく腰を打ち付ける。 
 パン、パン、と二人の肌がぶつかるおと、掻き回されるぬれたおと、裏返ったみたいなこえ、きもちいいと、震える下腹。そのどれもがひどく品がなくて恥ずかしいのに、止められないし、きもちいい。
 へんになってしまったのだ。
 千聖に餓えて、くっつきたくて、仕方なかったのに、千聖が急にこんなにたっぷりと与えるからきっと急性中毒を引き起こしているにちがいない。
 そうとしか思えない。
 ぴゅく、とまた精液が垂れた。
「はは、りお、またイった……」
 今日はめっちゃえっちやなぁ? そんなにしたかったん?   
 くちゅん、と耳のなかを舐められながら言われて
「し……したかった……千聖さ……すき…………っすごい、すき、だいすき……っ」
 もう、熱くて、どろどろで、何も考えられない。
 おかしくなって、壊れて、へんになってしまった。
「もっと……して……めちゃくちゃに、して……あっ……」
 なにを、いってるんだろう、わかんない。
 こころの言葉が勝手におとになって出ていくみたいな。
「うぁっ……ああっ……」
「そんな、こと言って……もう、知らん……優しくなんて、できへんよ……っ」
 ぐちゃぐちゃと淫らなおと。乱れたいやらしいふたりの吐息。
 全身を溶かすほど汗が流れて、どろどろに煮詰めたシロップの鍋みたいなくるまのなか。二人の熱がたっぷりと立ち込めているせいか、外の気温が夜も更けてうんと下がったせいか、その両方のせいか。車の窓は結露して、くもっている。二人だけの世界。
「あ、あっ……あっ……きもちい……ひっ……ん……だめ、また、イく……」
 ぐずぐずと子供が泣くみたいに、涙が止められないまま絶頂に達したのに、涙をぺろりと舐めながら、千聖の長いストロークは止まらない。
 いろんなところを痛いくらいに吸われて、きつく噛まれて、頭がおかしくなりそう。獣に食べられる獲物になったみたいなのに、気持ちよくて、ぜんぶたべてほしい。
 きっと車の外にも止められない声が漏れてしまっている。それなのに、止められない。ほんとうに、おかしい。いつものふたりじゃないみたいなのに、狂おしいほどの強引さで、苦しいほどに快楽を与えてくる獣みたいなこの男は間違いなく、いつもは穏やかで優しい千聖で。
「りお、きもちいい……止まんな……っく……ぅ」
 理央の一番奥に、膨れ上がったペニスの先を思いっきり獣のように擦り付けて、千聖が精液を吐き出すと、理央のペニスからも殆んど透明な液体がぴしゃりと飛んだ。
 はぁ、はぁ、と淫らに息を漏らして、その合間にも、千聖が狂おしいくらい唇を理央の顔中に降らせるおとが車内に響く。
「りお、大好きや……可愛い……」
 大きな掌が名残惜しいというように、乳首や内腿のやわらかいところを撫でていく。
 気持ちよくて、閉じられない唇から、また小さな喘ぎ声を漏らしてしまう。
「ひゃ……っ」
 千聖のペニスがちゅぷ、っと音を立てて抜ける。
 ぞくぞくして、もう何の液体がよくわからない体液の残りが理央のペニスから零れた。
「……あー、いっぱい溢れてんなぁ……」
 そう言って車内に置いてあるボックスティッシュから何枚か抜き取って理央の体液を優しく拭ってくれるのはいつもの千聖で。
 理央は潤んだ瞳でぼんやりと千聖のことを見ながら
「……っもう、そろそろ戻らないと……いけないですよね……」
と言った。ダッシュボードの時計はもうすぐ日付が変わる頃。
 離れたくない、なんてわがままもいいところだ。これ以上戻らなかったら居ないことがバレて騒ぎになってしまうかもしれない。
 震える手で捲り上げられていたTシャツは下ろした。でも運転席に躯を戻したものの何度も理央の唇や頬にキスを降らせている千聖のせいで、ハーフパンツと下着は上げることができなくて、Tシャツの裾を引っ張って恥ずかしいところを隠していると。
 シートの背を少しだけ戻されて、しゅるり、と音が鳴って、かちり、とシートベルトが留められた。
「千聖さん?」
 どうして? なんで? どこかにいくの?
 理央は目をまるくして千聖を見ると。
「一回だけ抱いたら、戻ろうと思ってたんやけどなぁ……」
 千聖のうんと優しいその瞳の、奥。
「こんな可愛いりお、誰にも見せたくないから、やっぱ戻るのやめた」
 いたずらっぽく笑って見せたけど、まだ獰猛な色は濃く残したまま。
 千聖はアクセルを踏んで、駐車場を出てしまった。
「え……でも、そんなことしたら……」
 皆が心配するのではないか、と狼狽える理央のまだ濡れた唇に、千聖はふにり、と指先を充てた。
「理央は心配しなくていいから。まだ『そこ』にいて? 僕もすぐに『そこに』戻るから」

 そう言ってハンドルを握った千聖は理央を拐ってしまうべく海の街に滑り出した。

 end 
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