17 / 29
俺の彼氏には特別に大切なヒトがいる〜A面〜
A面4
しおりを挟む
「タスク。ちょっと」
土曜日の部活の基礎練中に、コータ先輩が現れた。
いつもケラケラ笑ってふざけてるコータ先輩が、珍しく表情を出さずに、少し低い声で俺を呼んだから、同期の連中はみんな小さく固まった。
「おい、タスク。何してコータ先輩怒らせたんだよ」
すぐ隣にいた奴が声を潜めて俺に尋ねた。
「さぁ?」
身に覚えはありすぎたけれど、俺は肩を竦めて同期にそう答えてから、コータ先輩のもとに行った。
コータ先輩の後に付いて歩くと、人目に付かないグラウンドの隅にある、体育倉庫の横に辿り着いた。
誰も周囲に居ないことを確認してからコータ先輩は俺を振り返る。
「タスク、どういうつもりだよ? まこちゃん、めっちゃフラフラじゃねぇか。俺以外見てねぇと思うけど、エゲツない痕いっぱいつけやがって」
ふーん。やっぱ、見たんだ。
制服はもちろん、テニスウェアの上からは見えないように付けたんだけどな。
ドコのナニを見たわけ?
「着替えのときに見えただけだよ。やべぇと思ったから他には誰にも絶対見せないように着替えさせた」
俺の疑心暗鬼に苛まれた思考なんてお見通しというように、コータ先輩は言う。
キラキラ眩しいハチミツレモンみたいな髪が眩しくて、普段はおちゃらけてばっかりのくせに、射抜くようなキツイ瞳を向けてくる。
「真琴さん、コータ先輩のこと好きだって言ってましたよ」
はちみつ紅茶みたいに綺麗なコータ先輩の瞳から目を逸らさずに俺が言うと、コータ先輩の瞳は大きく見開かれた。
それから、あー、そういうこと。と呟いた。
「嘘吐け」
そして、理解したあとは間髪入れずに返してきた。
真琴さんのことなら何もかも、分かってるみたいな態度、めちゃくちゃ気に入らない。
不服そうな態度を全面に出す俺に、コータ先輩は逆に強い視線を少し緩めて、仕方ないな、というように苦く笑った。
「……まこちゃん、どっからどう見てもお前のことが好きだろーが。俺のことも好きは好きだろうけど、何て言うの? 友情……? 家族……? 恋愛感情何てもんはなくて、そういった類のもんだよ。お前が誰よりわかってんだろうが」
「そうですよ。コータ先輩に言われなくてもそんなことわかってる」
俺が言い返すと、コータ先輩は再びじっと俺の目を見た。
真琴さんは俺のことが好きだよ。
そんなんとっくに分かってんだよ。
とろんと、俺を見つめる溶けた瞳を見て、俺の電話に寝起きでも嬉しそうなあの声を聞けば、俺に恋していることは疑いようもない。
だけど、じゃあコータ先輩と真琴さんの間にあるのは、なに?
何しても、何やっても嫌われないってお互いわかりきってて空気みたいにそこに在るのが当たり前で、でも無いと生きていけないんでしょ?
「二人の間にあるのは、友情? 家族愛? どうせひと言なんかじゃ説明できないものなんですよね。俺が到底勝てない長い時間が積み重なって出来た、名前も付けることの出来ないその愛情がたまらなく気に入らないです」
ひと思いにぶちまけると、コータ先輩は静かに言った。
「お前が俺のこと気に入らなくても俺とまこちゃんの関係はどうやったって変えることはできねぇよ。俺もまこちゃんもお前に気を使って友達やめる、なんてこともしねぇし。でもお前はまこちゃんの唯一の気持ちを手してるんじゃねぇの? 俺なんかに妬いてないで折角手に入れられたそれ、もっと大事にしろよ」
コータ先輩は髪も目もキラキラしていて眩しいくらいだった。
きっとコータ先輩のそんなところも真琴さんは愛しているんだろう。
土曜日の部活の基礎練中に、コータ先輩が現れた。
いつもケラケラ笑ってふざけてるコータ先輩が、珍しく表情を出さずに、少し低い声で俺を呼んだから、同期の連中はみんな小さく固まった。
「おい、タスク。何してコータ先輩怒らせたんだよ」
すぐ隣にいた奴が声を潜めて俺に尋ねた。
「さぁ?」
身に覚えはありすぎたけれど、俺は肩を竦めて同期にそう答えてから、コータ先輩のもとに行った。
コータ先輩の後に付いて歩くと、人目に付かないグラウンドの隅にある、体育倉庫の横に辿り着いた。
誰も周囲に居ないことを確認してからコータ先輩は俺を振り返る。
「タスク、どういうつもりだよ? まこちゃん、めっちゃフラフラじゃねぇか。俺以外見てねぇと思うけど、エゲツない痕いっぱいつけやがって」
ふーん。やっぱ、見たんだ。
制服はもちろん、テニスウェアの上からは見えないように付けたんだけどな。
ドコのナニを見たわけ?
「着替えのときに見えただけだよ。やべぇと思ったから他には誰にも絶対見せないように着替えさせた」
俺の疑心暗鬼に苛まれた思考なんてお見通しというように、コータ先輩は言う。
キラキラ眩しいハチミツレモンみたいな髪が眩しくて、普段はおちゃらけてばっかりのくせに、射抜くようなキツイ瞳を向けてくる。
「真琴さん、コータ先輩のこと好きだって言ってましたよ」
はちみつ紅茶みたいに綺麗なコータ先輩の瞳から目を逸らさずに俺が言うと、コータ先輩の瞳は大きく見開かれた。
それから、あー、そういうこと。と呟いた。
「嘘吐け」
そして、理解したあとは間髪入れずに返してきた。
真琴さんのことなら何もかも、分かってるみたいな態度、めちゃくちゃ気に入らない。
不服そうな態度を全面に出す俺に、コータ先輩は逆に強い視線を少し緩めて、仕方ないな、というように苦く笑った。
「……まこちゃん、どっからどう見てもお前のことが好きだろーが。俺のことも好きは好きだろうけど、何て言うの? 友情……? 家族……? 恋愛感情何てもんはなくて、そういった類のもんだよ。お前が誰よりわかってんだろうが」
「そうですよ。コータ先輩に言われなくてもそんなことわかってる」
俺が言い返すと、コータ先輩は再びじっと俺の目を見た。
真琴さんは俺のことが好きだよ。
そんなんとっくに分かってんだよ。
とろんと、俺を見つめる溶けた瞳を見て、俺の電話に寝起きでも嬉しそうなあの声を聞けば、俺に恋していることは疑いようもない。
だけど、じゃあコータ先輩と真琴さんの間にあるのは、なに?
何しても、何やっても嫌われないってお互いわかりきってて空気みたいにそこに在るのが当たり前で、でも無いと生きていけないんでしょ?
「二人の間にあるのは、友情? 家族愛? どうせひと言なんかじゃ説明できないものなんですよね。俺が到底勝てない長い時間が積み重なって出来た、名前も付けることの出来ないその愛情がたまらなく気に入らないです」
ひと思いにぶちまけると、コータ先輩は静かに言った。
「お前が俺のこと気に入らなくても俺とまこちゃんの関係はどうやったって変えることはできねぇよ。俺もまこちゃんもお前に気を使って友達やめる、なんてこともしねぇし。でもお前はまこちゃんの唯一の気持ちを手してるんじゃねぇの? 俺なんかに妬いてないで折角手に入れられたそれ、もっと大事にしろよ」
コータ先輩は髪も目もキラキラしていて眩しいくらいだった。
きっとコータ先輩のそんなところも真琴さんは愛しているんだろう。
70
お気に入りに追加
2,254
あなたにおすすめの小説
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
好きだから手放したら捕まった
鳴海
BL
隣に住む幼馴染である子爵子息とは6才の頃から婚約関係にあった伯爵子息エミリオン。お互いがお互いを大好きで、心から思い合っている二人だったが、ある日、エミリオンは自分たちの婚約が正式に成されておらず、口約束にすぎないものでしかないことを父親に知らされる。そして、身分差を理由に、見せかけだけでしかなかった婚約を完全に解消するよう命じられてしまう。
※異性、同性関わらず婚姻も出産もできる世界観です。
※毎週日曜日の21:00に投稿予約済
本編5話+おまけ1話 全6話
本編最終話とおまけは同時投稿します。
攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました
白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。
攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。
なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!?
ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる