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第6章 逃亡

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「神子様」

 松沖まつおきという出仕が障子を開けると、雪千代の部屋には誰もいなかった。

「神子様、神子様!」

 大きな声で呼びながら、松沖は部屋から部屋へと見まわって歩く。

 そうするうちに、出仕の仲間がいる部屋に行き着いた。

「神子様を見なかったか?」と、松沖。

「ここにはいない」

「立浪が知ってるんじゃないか?」

「そういえば、立浪は?」

「さあ……」 

「朝餉を食べてから姿を見てないな」

 そう聞いて、松沖はハッとした。

「まさか……」

「まさか?」

 出仕らは顔を見合わせた。




「鶴神子様がいない!」

 数名の神職と出仕が、薪小屋の入口に立って、空になった褥を見ていた。

「朝餉を運んだときはおられました。たしかにここで横になっておられ、私は神子様の体を拭いて、寝衣と下着を着替えさせました」

 高浜は、悲壮な声をあげた。

「体調はどうだったのじゃ?」

 浅葱色に白紋の袴を着けた禰宜が尋ねた。

 鶴千代をさんざんもてあそんでおきながら、病が重くなって小屋に移されて以降、一度も顔を見に来なかった神職の一人である。

「ここ最近、めっきり衰弱して、褥の上に座るのにも介添が必要な状態でした。お一人で歩いて外に行けるとは思えませぬ」

「やはり、立浪が……?」

「探せ!」禰宜は命じた。「島からは出られない。どこかに隠れているはずじゃ!」

「はっ!」

 出仕らは外に駆け出した。

「逃げたぞ!」
「神子様が逃げた!」
「探せ、探せ!」

 静かな社に、男たちの怒声が響いた。
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