2 / 57
百万回目の転生
百万回目の勇者生活は最悪の始まり方をしました。
しおりを挟む
いつものように俺は草原で大の字での転がっていた。
体を起こすと遠くには森が見え、反対方向には外壁がそびえている。
意識を集中して自分のステータスを確認する。
レベル:1
HP:472189087/472189087
MP:442901839/442901839
腕力:286197004
防御:290041288
魔力:294021313
魔防:300013765
速さ:280023149
使用可能スキルも百万個あるのは確認したので問題なし。
魔法も面倒だしいいとしてこれでひとまず活動に問題はないよな。
最初の時はステータスの確認に真面目だったな。
スキルも効果をしっかり読んだし、魔法を使えるようになってからは魔法も属性ごとに考えてたっけ。
今回が最後だと思うとどうも感慨深くなる。
進学とか就職で悩んでいた時代が馬鹿らしくなる。
これが終わればこの世界に移住することになるんだし、第一印象を大事にしたい。
俺くらいの年齢の平均レベルは確か13だったはずだし、近くで何匹か狩ってから町に向かうか。
この世界にはモンスターが平然と闊歩している。
モンスターも元はただの野生動物で、周囲の魔力を吸収して狂暴化し体が変異したものがモンスターと呼ばれている。
この世界の大半の世界線ではレベルと名前の両方が確認ができる。たまに片方だけが確認できる場合、極稀に両方確認できない場合がある。
理想は名前は確認できてレベルは確認できないことだ。
名前を覚える必要はないし、自分のレベルがどれだけ上がっても気にする必要もない。
なぜレベルを確認されて困るのかというと、俺の年齢でレベル1だと戦ったことのない箱入り息子、さらにはどこかの貴族の息子だと騒がれ情報収集どころではなくなってしまう。
最初にそうなったときはその世界を楽しむことなく魔王を討伐した。
それ以来面倒くさくても最初にモンスターを何匹か倒しレベル10~15の間にしてから向かうようにしている。
ここに来るとまた魔王討伐が始まると鬱になるんだよな。
主に人間関係の形成が問題だ。事前に練習を繰り返し、できるだけ見知った顔の人間に話しかける。
それだけやってもたどたどしいのだから嫌になる。
森の中に入ると早速一匹のモンスターが飛び出して来た。
一角ウサギ。見た目はウサギだが、額の中央に大きな硬い鉱物のような角を生やしている。
その角は異様に硬く、腕力が21以上でないと素手での破壊は不可能だ。
俺はその角を素手で折り一角ウサギを地面にたたきつける。
風船のように破裂したウサギの血は、絶命の証明として黒い霧に変わり小さな魔石に変わる。
一体の一角ウサギを倒すとレベルが上がりレベル3に上がった。
本来レベルが1上昇すると全てのパラメータが1~5まで上昇するが、最初に神から貰ったチートの一つ【加一倍法】のおかげで経験値二倍、ステータス上昇二倍、攻撃回数二倍になっているため、成長が早い。
これはもう十体でいいだろう。
適当に近くにいた一角ウサギを狩りレベルが13になった所で町に向かう。
「申し訳ありませんがここはどこでしょうか。俺の名前はタクト・キサラギです。名前しか記憶がありません」
まず町の中に入って知り合いを見つけてこういう。何があってもこの三つだけは伝える。あの町の人はみんないい人必ず助けてくれる。大丈夫大丈夫。
何度も何度も自分に言い聞かせ、心臓が落ち着くのを十分に待ってから町の入り口に向かう。
全身がカチカチの石になったかのようなぎこちない動きで歩いていると、当然警備隊に見つかり職務質問をされる。
どうか顔を知っているの警備隊の人でありますように。
祈っても無駄だと知りながらも神に祈り、俺は詰め所に案内された。
「君明らかに怪しいよね。荷物全部出してくれる? 盗賊とかそういうのじゃないの? 最近多いらしいんだよね。それで名前は何ていうの? どこの町の人かな、この辺じゃ見かけない顔だよね」
「えっと、その、タクト、です。タクト・キサラギでしゅ、いや、です。荷物は持ってません。き、記憶が、その忘れて……」
百万回目の勇者生活は最悪の始まり方をしました。
結局俺が上手に説明できなかったせいで盗賊扱いを受け、ようやく俺が普通の一般人で記憶喪失だと説明できたのがついさっきの事だ。
もう一度最初からやり直させてくれないだろうか……。というか、そろそろコミュ力を上げるスキルを貰えないだろうか……。
外は夜を迎え、金なし家無しのニートな勇者が誕生した。
詰め所でご飯出してくれないかな……。
今までの経験上夜に金がない場合、運が良くないと野宿で朝まで食料はない。
変に町の外で食料を取ると、記憶がないことを疑われるのも知っている。
「あの……、これどうぞ……」
そう言って俺にパンを差し出してくれたのは、一人の白い肌の少女だった。
長い金髪の少女、顔にかかる髪の奥からは髪と同じ色の金色の瞳が覗く。
「天使だ……、ありがとう……」
金色の天使はそのまま名前も言わずに立ち去って行った。
これで後は噴水の水でも飲みながら食べれば、明日の朝までなら持つ。
でもあんな子に助けて貰ったのは初めてのはずだ。あんな奇跡のような出会いは百万回転生して初めてだ。そしてその出会いも一瞬だった……。コミュ力があれば名前くらいは聞けたのに。
俺は金色の天使を思いながら噴水の近くで眠りにつくことにした。
体を起こすと遠くには森が見え、反対方向には外壁がそびえている。
意識を集中して自分のステータスを確認する。
レベル:1
HP:472189087/472189087
MP:442901839/442901839
腕力:286197004
防御:290041288
魔力:294021313
魔防:300013765
速さ:280023149
使用可能スキルも百万個あるのは確認したので問題なし。
魔法も面倒だしいいとしてこれでひとまず活動に問題はないよな。
最初の時はステータスの確認に真面目だったな。
スキルも効果をしっかり読んだし、魔法を使えるようになってからは魔法も属性ごとに考えてたっけ。
今回が最後だと思うとどうも感慨深くなる。
進学とか就職で悩んでいた時代が馬鹿らしくなる。
これが終わればこの世界に移住することになるんだし、第一印象を大事にしたい。
俺くらいの年齢の平均レベルは確か13だったはずだし、近くで何匹か狩ってから町に向かうか。
この世界にはモンスターが平然と闊歩している。
モンスターも元はただの野生動物で、周囲の魔力を吸収して狂暴化し体が変異したものがモンスターと呼ばれている。
この世界の大半の世界線ではレベルと名前の両方が確認ができる。たまに片方だけが確認できる場合、極稀に両方確認できない場合がある。
理想は名前は確認できてレベルは確認できないことだ。
名前を覚える必要はないし、自分のレベルがどれだけ上がっても気にする必要もない。
なぜレベルを確認されて困るのかというと、俺の年齢でレベル1だと戦ったことのない箱入り息子、さらにはどこかの貴族の息子だと騒がれ情報収集どころではなくなってしまう。
最初にそうなったときはその世界を楽しむことなく魔王を討伐した。
それ以来面倒くさくても最初にモンスターを何匹か倒しレベル10~15の間にしてから向かうようにしている。
ここに来るとまた魔王討伐が始まると鬱になるんだよな。
主に人間関係の形成が問題だ。事前に練習を繰り返し、できるだけ見知った顔の人間に話しかける。
それだけやってもたどたどしいのだから嫌になる。
森の中に入ると早速一匹のモンスターが飛び出して来た。
一角ウサギ。見た目はウサギだが、額の中央に大きな硬い鉱物のような角を生やしている。
その角は異様に硬く、腕力が21以上でないと素手での破壊は不可能だ。
俺はその角を素手で折り一角ウサギを地面にたたきつける。
風船のように破裂したウサギの血は、絶命の証明として黒い霧に変わり小さな魔石に変わる。
一体の一角ウサギを倒すとレベルが上がりレベル3に上がった。
本来レベルが1上昇すると全てのパラメータが1~5まで上昇するが、最初に神から貰ったチートの一つ【加一倍法】のおかげで経験値二倍、ステータス上昇二倍、攻撃回数二倍になっているため、成長が早い。
これはもう十体でいいだろう。
適当に近くにいた一角ウサギを狩りレベルが13になった所で町に向かう。
「申し訳ありませんがここはどこでしょうか。俺の名前はタクト・キサラギです。名前しか記憶がありません」
まず町の中に入って知り合いを見つけてこういう。何があってもこの三つだけは伝える。あの町の人はみんないい人必ず助けてくれる。大丈夫大丈夫。
何度も何度も自分に言い聞かせ、心臓が落ち着くのを十分に待ってから町の入り口に向かう。
全身がカチカチの石になったかのようなぎこちない動きで歩いていると、当然警備隊に見つかり職務質問をされる。
どうか顔を知っているの警備隊の人でありますように。
祈っても無駄だと知りながらも神に祈り、俺は詰め所に案内された。
「君明らかに怪しいよね。荷物全部出してくれる? 盗賊とかそういうのじゃないの? 最近多いらしいんだよね。それで名前は何ていうの? どこの町の人かな、この辺じゃ見かけない顔だよね」
「えっと、その、タクト、です。タクト・キサラギでしゅ、いや、です。荷物は持ってません。き、記憶が、その忘れて……」
百万回目の勇者生活は最悪の始まり方をしました。
結局俺が上手に説明できなかったせいで盗賊扱いを受け、ようやく俺が普通の一般人で記憶喪失だと説明できたのがついさっきの事だ。
もう一度最初からやり直させてくれないだろうか……。というか、そろそろコミュ力を上げるスキルを貰えないだろうか……。
外は夜を迎え、金なし家無しのニートな勇者が誕生した。
詰め所でご飯出してくれないかな……。
今までの経験上夜に金がない場合、運が良くないと野宿で朝まで食料はない。
変に町の外で食料を取ると、記憶がないことを疑われるのも知っている。
「あの……、これどうぞ……」
そう言って俺にパンを差し出してくれたのは、一人の白い肌の少女だった。
長い金髪の少女、顔にかかる髪の奥からは髪と同じ色の金色の瞳が覗く。
「天使だ……、ありがとう……」
金色の天使はそのまま名前も言わずに立ち去って行った。
これで後は噴水の水でも飲みながら食べれば、明日の朝までなら持つ。
でもあんな子に助けて貰ったのは初めてのはずだ。あんな奇跡のような出会いは百万回転生して初めてだ。そしてその出会いも一瞬だった……。コミュ力があれば名前くらいは聞けたのに。
俺は金色の天使を思いながら噴水の近くで眠りにつくことにした。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜
マグローK
ファンタジー
「リストーマ。オマエは追放だ!」
天職がジョブという形で天から才能が授けられる世界。
主人公であるリストーマは、ジョブが剣聖でないとわかった瞬間、父親から追放を言い渡されてしまう。
さらには、実の子じゃなかった、万に一つのギャンブルだった、剣聖として人並みの剣の才すらないゴミなどという言葉をぶつけられた挙句、人がほとんど足を踏み入れることのできていないダンジョンに捨てられてしまう。
誰からも求められず、誰にも認められず、才能すらないと言われながらも、必死で生き残ろうとする中で、リストーマはジョブ【配信者】としての力に覚醒する。
そして、全世界の視界を上書きし、ダンジョンの魔獣を撃退した。
その結果、リストーマは、真っ先にヴァレンティ王国のセスティーナ姫に探知され、拾われ、神や悪魔、魔王の娘たちも、リストーマの存在を探るため、直々にやってくる
「僕は、姫のための配信者になります」
しかし、リストーマは、セスティーナ姫に拾われた恩から、姫のため、未知なるダンジョンの様子を配信することを決意する。
これは、家族と信じた者たちに捨てられ自信をなくした少年が、周囲の温かさを頼りに少しずつ自信を得ていく物語。
この小説は他サイトでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる