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百万回目の転生
プロローグ
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三月八日残念ながら俺、如月拓斗は高校を卒業してしまった。
進学にも失敗し、就職にも失敗した俺は今日から晴れてニートになってしまった。
なんでこの世に面接なんて物があるんだろうか。コミュ障をこじらせた人間にはハードルが高すぎる。
全部で三校十社面接で落とされたわけで、浮かれる同級生をしり目に俺は一人肩を落として帰宅した。
家に帰っても両親は仕事で誰もいない、真直ぐに自分の部屋に入りもう着ることのない制服のままベッドに倒れ込む。
今頃は俺がいないことなど気が付かないまま、二度と会わないであろうクラスメイトが卒業を祝っていることだろう。
「鬱だ……、もう死にたい……」
枕に向かってそう訴えたが当然返事はない。
しかしその代わりにスマホがメッセージを受信した。
世話焼きの元クラスメイトが憐れんで連絡をくれたのかと思いスマホを取り出す。
「なんだイタズラかよ……」
元クラスメイトから連絡用に入れさせられたメッセージアプリに、文字化けしたような名前の人物からURLが送られてきた。
もうウィルスでもいいかな。クレカとかの情報もないし、中を見られても構わないしな。
そう思った時、新しいメッセージが送られてきた。
『別の世界に行きたいなら読め』
偉そうな口調の人物だ。
元クラスメイトだろうか? 表示を弄ってアダルトサイトにでも飛ばすつもりなのかもしれない。
そしてすぐに次のメッセージが届いた。
『私は神様だ』
どうやらこのURLは神の啓示らしい。
そしてそのまま次々とメッセージが書き込まれていく。
『その世界が嫌になったなら読むといい』
『君はそこの世界から逃げ出せる』
『君が読んでくれることを信じている』
もっとマシな嘘はないのだろうか?
でも最近の迷惑メールもぶっ飛んだ内容が多いらしいし、どんなものか見てみるか。
URLから飛んだ先は簡単なホームページだった。
白いバックに黒い文字が書かれているだけで、リンク先も広告も何もない。
PCの授業で作らされたようなホームページで、下までスクロールしても何もない。
「異世界に行く方法」
一番上にそう書かれていた。
やり方は簡単だった。
A4サイズの紙に『あきた』と平仮名で書き自分の血を一滴垂らす。その紙を四つに折り枕の下に置き眠る。
もちろん信じていない。信じてはいなくてもわずかな期待はあるし、些細な非日常を味わいたかっただけだ。
おそらく最後になるであろうコンビニ弁当に、風呂を満喫し動きやすい恰好に着替え目を閉じる。
どこかワクワクして眠れるか気になったが意外とすんなりと眠りに落ちることができた。
気が付くと霧の中俺はちゃぶ台に座っていた。
そして目の前には全身が真っ白な老人がお茶を啜っていた。
「ようこそ。選ばれし勇者よ。ワシが神じゃ」
確かに言われれば神様っぽい。
白く長いひげにつるつるの頭、頭には天使のような輪っか、傍らには樹木のような杖に黒い玉が嵌っている。誰もが想像する神様がそこにはいた。
「反応が鈍いのぉ。敬ったり崇めたりしてもいいと思うんだがのぉ」
そうしようにも状況の整理もできていない。
それに神様がしょぼくれた老人みたいに威厳なく茶を啜り和んでいては反応に困る。
「まあいいわい、用事を伝えねばな。ワシからの頼みごとを聞いてもらいたいんじゃ」
「内容によります」
「魔王を消滅させてもらいたい。まぁ待て、いきなり立ち上がって帰ろうとするでない。安心せい、誰でも魔王を倒せる素敵な能力もプレゼントするから」
一度立ち上がった腰を再び下ろす。
「それならその魔王のいる村人にでも任せたらいいでしょ。わざわざ俺である必要はないだろ?」
「その説明は後でするが、この世界の人達じゃダメな理由があるんじゃよ。だから世のため人のためひいては神のためじゃ。お願い聞いてくれないかのぉ?」
「それで俺が受けるメリットってあるんですか?」
「魔王を倒した勇者として一国の王になれる。その上美女を侍らせてハーレムを作れる」
「わかりましたやりましょう」
そんな豪華特典があるのならやらない理由はない。
それに魔王を倒せる素敵な能力ってことはチートだろ? チートありなんて楽勝だ。
「それじゃあ、ワシからのギフト【加一倍法】じゃ」
†
そうやって甘い言葉に唆され、魔王消滅を目指して早九十九万九千九百九十九回。
俺は未だに魔王を消滅させられずにいた。
理由は簡単で、魔王を倒したからと言って魔王が消滅するわけではない。
無限にある平行世界に魔王は存在し、どこの世界にも魔王が出現しなくなれば消滅となる。
一応無限回も挑戦しなくてもいいらしく、神様の持つ杖に嵌め込まれている玉でそれが確認できるらしい。
そしてこの世界の人に魔王を倒させるわけにはいかない理由は単純で、別の世界に存在している人間を移動させるとその人間が対消滅してしまうらしい。
そのためこの世界には存在しない異世界人の俺に白羽の矢が立ったということだ。
「まだ消えないのか? いい加減疲れたんだが」
九十九万九千九百九十九回目の魔王討伐を終え、見飽きた神と対面した俺は苛立ち紛れにそう言った。
「落ち着けもうすぐ。次で終わるから安心しろ。そうしたら最強の勇者がハーレムで国王じゃ」
魔王の消滅が確認できる水晶を見て神がそう言いやがったので、これが最後だなと念を押し、俺は百万回目の転生を始めた。
進学にも失敗し、就職にも失敗した俺は今日から晴れてニートになってしまった。
なんでこの世に面接なんて物があるんだろうか。コミュ障をこじらせた人間にはハードルが高すぎる。
全部で三校十社面接で落とされたわけで、浮かれる同級生をしり目に俺は一人肩を落として帰宅した。
家に帰っても両親は仕事で誰もいない、真直ぐに自分の部屋に入りもう着ることのない制服のままベッドに倒れ込む。
今頃は俺がいないことなど気が付かないまま、二度と会わないであろうクラスメイトが卒業を祝っていることだろう。
「鬱だ……、もう死にたい……」
枕に向かってそう訴えたが当然返事はない。
しかしその代わりにスマホがメッセージを受信した。
世話焼きの元クラスメイトが憐れんで連絡をくれたのかと思いスマホを取り出す。
「なんだイタズラかよ……」
元クラスメイトから連絡用に入れさせられたメッセージアプリに、文字化けしたような名前の人物からURLが送られてきた。
もうウィルスでもいいかな。クレカとかの情報もないし、中を見られても構わないしな。
そう思った時、新しいメッセージが送られてきた。
『別の世界に行きたいなら読め』
偉そうな口調の人物だ。
元クラスメイトだろうか? 表示を弄ってアダルトサイトにでも飛ばすつもりなのかもしれない。
そしてすぐに次のメッセージが届いた。
『私は神様だ』
どうやらこのURLは神の啓示らしい。
そしてそのまま次々とメッセージが書き込まれていく。
『その世界が嫌になったなら読むといい』
『君はそこの世界から逃げ出せる』
『君が読んでくれることを信じている』
もっとマシな嘘はないのだろうか?
でも最近の迷惑メールもぶっ飛んだ内容が多いらしいし、どんなものか見てみるか。
URLから飛んだ先は簡単なホームページだった。
白いバックに黒い文字が書かれているだけで、リンク先も広告も何もない。
PCの授業で作らされたようなホームページで、下までスクロールしても何もない。
「異世界に行く方法」
一番上にそう書かれていた。
やり方は簡単だった。
A4サイズの紙に『あきた』と平仮名で書き自分の血を一滴垂らす。その紙を四つに折り枕の下に置き眠る。
もちろん信じていない。信じてはいなくてもわずかな期待はあるし、些細な非日常を味わいたかっただけだ。
おそらく最後になるであろうコンビニ弁当に、風呂を満喫し動きやすい恰好に着替え目を閉じる。
どこかワクワクして眠れるか気になったが意外とすんなりと眠りに落ちることができた。
気が付くと霧の中俺はちゃぶ台に座っていた。
そして目の前には全身が真っ白な老人がお茶を啜っていた。
「ようこそ。選ばれし勇者よ。ワシが神じゃ」
確かに言われれば神様っぽい。
白く長いひげにつるつるの頭、頭には天使のような輪っか、傍らには樹木のような杖に黒い玉が嵌っている。誰もが想像する神様がそこにはいた。
「反応が鈍いのぉ。敬ったり崇めたりしてもいいと思うんだがのぉ」
そうしようにも状況の整理もできていない。
それに神様がしょぼくれた老人みたいに威厳なく茶を啜り和んでいては反応に困る。
「まあいいわい、用事を伝えねばな。ワシからの頼みごとを聞いてもらいたいんじゃ」
「内容によります」
「魔王を消滅させてもらいたい。まぁ待て、いきなり立ち上がって帰ろうとするでない。安心せい、誰でも魔王を倒せる素敵な能力もプレゼントするから」
一度立ち上がった腰を再び下ろす。
「それならその魔王のいる村人にでも任せたらいいでしょ。わざわざ俺である必要はないだろ?」
「その説明は後でするが、この世界の人達じゃダメな理由があるんじゃよ。だから世のため人のためひいては神のためじゃ。お願い聞いてくれないかのぉ?」
「それで俺が受けるメリットってあるんですか?」
「魔王を倒した勇者として一国の王になれる。その上美女を侍らせてハーレムを作れる」
「わかりましたやりましょう」
そんな豪華特典があるのならやらない理由はない。
それに魔王を倒せる素敵な能力ってことはチートだろ? チートありなんて楽勝だ。
「それじゃあ、ワシからのギフト【加一倍法】じゃ」
†
そうやって甘い言葉に唆され、魔王消滅を目指して早九十九万九千九百九十九回。
俺は未だに魔王を消滅させられずにいた。
理由は簡単で、魔王を倒したからと言って魔王が消滅するわけではない。
無限にある平行世界に魔王は存在し、どこの世界にも魔王が出現しなくなれば消滅となる。
一応無限回も挑戦しなくてもいいらしく、神様の持つ杖に嵌め込まれている玉でそれが確認できるらしい。
そしてこの世界の人に魔王を倒させるわけにはいかない理由は単純で、別の世界に存在している人間を移動させるとその人間が対消滅してしまうらしい。
そのためこの世界には存在しない異世界人の俺に白羽の矢が立ったということだ。
「まだ消えないのか? いい加減疲れたんだが」
九十九万九千九百九十九回目の魔王討伐を終え、見飽きた神と対面した俺は苛立ち紛れにそう言った。
「落ち着けもうすぐ。次で終わるから安心しろ。そうしたら最強の勇者がハーレムで国王じゃ」
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