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015.お二人様
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何が原因だったのだろうか。
最初におかしいなと思ったのは、高校二年生のときだった。
私は高校まで三十分ほど自転車をこいで登下校していた。
その日もいつも通り部活動を終え、一人で自転車をこいでいた。
「そこの君! 止まりなさい!」
後ろからおじさんの声がした。
誰に向かって言っているのか、もしかして私だろうか。そう思ったが次の言葉で私のことではないなと判断した。
「そこの二人乗りをしている自転車! 止まりなさい!」
きっと私の後ろに二人乗りをしている人がいるんだな。その時はそう思った。
しかし、少し先の信号で止まったとき、先ほど声を荒げていたおじさんが私の肩をつかんできた。
彼は警察官だった。
「君、二人乗りはだめだよ。さっきまで一緒だった女の子はどこ?」
警官の言っていることを理解するのに少し時間がかかった。
どうやら先程止まれと言われていたのは私だったらしい。
「私は二人乗りなんてしていません。見間違いじゃないですか?」
私がそう言っても、警官はそんなことはないと、あくまでも私が二人乗りをしていたという。
今となっては恥ずかしいことだが、当時はお年頃だったこともあり、その警官の態度にイラっとしてしまい、こちらもまくしたてるように応戦してしまった。
二人乗りなんてしていない、女なんて知らない、俺は童貞だ、そんなに疑っているなら証拠を出せ、と。
途中にいらん事まで口走ってしまったが、私の強硬な態度のせいか、警官は「気を付けるように」と言ってその場から去っていった。
そんなことがあってから月に数回程度の頻度で、私が女と一緒にいたという話が上がるようになった。
自転車に二人乗りをしていただとか、商店街を二人で歩いていただとか、そういった話をされるようになった。
極めつけは、某牛丼チェーン店に一人で行ったときに起こった。
両親共働きのため、そこそこの頻度で利用していたのだが、自転車事件から三か月ほど経った日に、いつもと違う対応をされた。
なぜかいつものカウンターではなく、テーブル席に通され、水が二つ用意されたのだ。
一人で来ていると店員に伝えると、「あれ、さっき女の人と二人で入ってきたと思ったんだけどなあ」などと言われた。
それからもこの「女」は俺の周りをうろちょろしているらしい。
俺からは見えていないのだが、知人からの話曰く、時が経つにつれて出現頻度が高くなっているようだった。
高校生のときには月に数回だったのが、大学生のときには週に数回、社会人になってからは二、三日に一回という頻度だ。
憑いているのが女ということもあってか、恋人とも長く続くことがない。
別れる理由のほとんどが、俺が他の女と歩いているところを見た、俺が浮気している、というような内容だった。
いまだにこの女は俺の周りによく現れている。
俺は長いこと付き合ってきたので慣れてきてしまった。
仲のいい友人や職場の人に何も言われないことが増えたので、ひょっとしたらいなくなったか、出現頻度が減ったのかと思っていたが、彼らも慣れてしまっただけで、わざわざ女と一緒にいたな、というように話を振ってくることがなくなっただけだった。
女性とのお付き合いが長く続かないこと以外の実害は特にないが、少々不気味ではある。
それと、結構きれいな感じのお姉さんらしいので、ぜひ一度でいいから私も観てみたいと思う。
もう生きた女じゃなく、高校時代から共に過ごしているであろうこの女でもいい気がしてきた。
最初におかしいなと思ったのは、高校二年生のときだった。
私は高校まで三十分ほど自転車をこいで登下校していた。
その日もいつも通り部活動を終え、一人で自転車をこいでいた。
「そこの君! 止まりなさい!」
後ろからおじさんの声がした。
誰に向かって言っているのか、もしかして私だろうか。そう思ったが次の言葉で私のことではないなと判断した。
「そこの二人乗りをしている自転車! 止まりなさい!」
きっと私の後ろに二人乗りをしている人がいるんだな。その時はそう思った。
しかし、少し先の信号で止まったとき、先ほど声を荒げていたおじさんが私の肩をつかんできた。
彼は警察官だった。
「君、二人乗りはだめだよ。さっきまで一緒だった女の子はどこ?」
警官の言っていることを理解するのに少し時間がかかった。
どうやら先程止まれと言われていたのは私だったらしい。
「私は二人乗りなんてしていません。見間違いじゃないですか?」
私がそう言っても、警官はそんなことはないと、あくまでも私が二人乗りをしていたという。
今となっては恥ずかしいことだが、当時はお年頃だったこともあり、その警官の態度にイラっとしてしまい、こちらもまくしたてるように応戦してしまった。
二人乗りなんてしていない、女なんて知らない、俺は童貞だ、そんなに疑っているなら証拠を出せ、と。
途中にいらん事まで口走ってしまったが、私の強硬な態度のせいか、警官は「気を付けるように」と言ってその場から去っていった。
そんなことがあってから月に数回程度の頻度で、私が女と一緒にいたという話が上がるようになった。
自転車に二人乗りをしていただとか、商店街を二人で歩いていただとか、そういった話をされるようになった。
極めつけは、某牛丼チェーン店に一人で行ったときに起こった。
両親共働きのため、そこそこの頻度で利用していたのだが、自転車事件から三か月ほど経った日に、いつもと違う対応をされた。
なぜかいつものカウンターではなく、テーブル席に通され、水が二つ用意されたのだ。
一人で来ていると店員に伝えると、「あれ、さっき女の人と二人で入ってきたと思ったんだけどなあ」などと言われた。
それからもこの「女」は俺の周りをうろちょろしているらしい。
俺からは見えていないのだが、知人からの話曰く、時が経つにつれて出現頻度が高くなっているようだった。
高校生のときには月に数回だったのが、大学生のときには週に数回、社会人になってからは二、三日に一回という頻度だ。
憑いているのが女ということもあってか、恋人とも長く続くことがない。
別れる理由のほとんどが、俺が他の女と歩いているところを見た、俺が浮気している、というような内容だった。
いまだにこの女は俺の周りによく現れている。
俺は長いこと付き合ってきたので慣れてきてしまった。
仲のいい友人や職場の人に何も言われないことが増えたので、ひょっとしたらいなくなったか、出現頻度が減ったのかと思っていたが、彼らも慣れてしまっただけで、わざわざ女と一緒にいたな、というように話を振ってくることがなくなっただけだった。
女性とのお付き合いが長く続かないこと以外の実害は特にないが、少々不気味ではある。
それと、結構きれいな感じのお姉さんらしいので、ぜひ一度でいいから私も観てみたいと思う。
もう生きた女じゃなく、高校時代から共に過ごしているであろうこの女でもいい気がしてきた。
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