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第2章 パナミュウム皇国編
進捗は?
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サンサラーディの港から5km程離れた海底にフィリアと勇者2人を乗せた艦は伏在していた。
「ん~。ダンジョンちゃん、順調に育ってるじゃない! いい子、いい子!」
モニターに映るダンジョン分析用のデータと観察表示を見ながら上機嫌で放たれたフィリアの声に一瞬、コンソールを叩いていたブルーの動きが止まった。
すぐさま何事もなかったかのように作業を継続する背中は「突っ込んだら負けだ」と無言で語っているかのようで、スガルは2人より一段高い位置にある自席からそれを眺めていた。
確かにフィリアの言葉通りダンジョンは順調に育っていた。
いや。
ダンジョンを順調に育てていた、が表現的には正しいだろう。
何故ならば、ダンジョンコアに障力を供給するラインを作ったのはスガルとブルーで、どういうダンジョンに出来上がるかを決定したのはフィリアだからだ。
事の起こりは2日程前に遡る。
聖脈穴の位置を確定し、その侵入経路を探した時に唯一見つかった岸壁の鍾乳洞は、丁度その直線上の中間地点に出来始めたばかりのダンジョンが存在していた。
ならば、アルトゥレ王国の聖脈から押し出されてくる障力をこのダンジョンに吸収させることで消費して聖光力の到達時間を早めれば、フィリアの負担が少しでも減るだろう、と言うのがスガルの提案だった。
その提案に「だったら海側で澱んでる障力も鍾乳洞側から引っ張っちまおうぜ」と追加提案をしたのはブルーだった。
両方やれば漁業の回復も土地の安定も早くなるし、これまでダンジョン産の品物を全輸入に頼っていたこの領も、この国も延いては民達も少しは楽になるよね。
後はギルド側の返事を待って始めれば…と、ここまでは何の問題もなかったのだ。
「じゃ、この国で作ってないものダンジョンで全部出るようにコアを調整しちゃいましょ!」
いつの間にやらコントロールルームにやってきていたフィリアのこの一言で、急に話がおかしな方へと転がり出すまでは。
別に「何もかもドロップ品にしなくても交易で手に入ればいいじゃないか」とか「ダンジョン産の品に競争力のないこの国の産業が打撃を受けるかもしれないから」とか説得方向を色々変えて話をしたのだが、最終的にフィリアが出した結論は変わらなかった。
「間違った土台に間違った建物が建っているとして、建物だけ直し続けていたらいつか土台が直るの? そんな訳あるかって誰もが分かってるのに建物壊して土台を作り直さないのは何故?」
単純に住む所がなくなるからとか、その金はどこから出るんだとか議論のしどころは色々あるだろう。
だが、この比喩で彼女が言いたいことはそういうことではなく、誰もが持つ“何故?”と対になっている“こうすればいい”という正解をそうだと分かっていながら無視するのはどうしてだ? 無視すんなよ、それが正解なんだからさ! という部分なのだ。
「この星の聖光力が無限ではなかったように障力だっていつかは減るわ。ずっとダンジョンに頼りきりっていうのは無理だと言うのは私も分かってる。けど、土台を作り直す間の代替え品にはなるわ。すぐには回復しない漁業。壊滅的な観光業。最初から無理ゲー臭しかしない農業。本気で立て直すことを考えるなら、これはチャンスなのよ⁈」
国の連中がそれに気づくか、その気があるか。
問題はその辺りにもあるとは思うが、少なくとも領単位ぐらいまでならば、まだ動かしようもある。
取り敢えずはギルドに組織的な形で動いて貰って、旨味があるとハッキリ目の前に事実として提示されれば領主や国も動くだろう。
「言いたいことも目指してることも一応は分かった。理もない訳じゃねぇしな。だが、お姫さん。アンタが最優先でやらなきゃいけねぇことはそれじゃねぇ。そこんとこだけは忘れないでくれよ?」
「分かってるわよ。でも他国とはいえ民の生活が少しでもよくなるなら良いことじゃない。確かに窮するのと同じくらい富過ぎるのにも害は存在するけど、多少の余裕は必要だわ」
そんなこんなでダンジョンの成長や構成に必要なコアを探し出し、フィリアが改変を加えた。
まず周辺に居る魔物の誘引不要処置。
これは、ダンジョンを目指して魔物が移動してきてしまうということなので、町の近くに入口が開くだろうこのダンジョンには不要な機能だと判断したからだ。
中の魔物は核と障気オンリー制作で。
2つ目に地上部分から3階層まで、出現する魔物は子供でも倒せるようなレベルの低いスライムとスタンピングラビット、ハービートボア、クラッタリングバードの4種のみ。
但し、攻撃されない限り自分からは攻撃しない個体として設定する。
役割は自然界と同じで掃除屋兼素材確保用だ。
もし、狩られてしまっても1月後にはリポップされる設定になっている。
この階層は耕作エリアとして構築する予定で、リポップ期間を各階3週間とすることで1月5週あるこの世界では、計画的に全部屋回れば問題ない程度の食料が各種手に入る仕組みにした。
そこから下はドロップ品の指定だけして何の魔物を出すかはダンジョンコアにお任せだ。
最後に障力を取り込む為の定期設定と設定の発動開始時期を指定。
ダンジョンマスター不要の設定をして、コアのある部屋を物理的に閉鎖する為、続き部屋からの入口をなくして壁の厚みを10倍にした。
そこから2日程経過した現在、元聖脈穴から障気を取り込む為のラインと海側から障力を取り除く為のラインだけが、その部屋へと繋がっている状態となった。
「完璧ね!」
「……………」
自信満々で腕組みしながら言い切るフィリアにチラリとだけ目を向けて、手がけていた作業を終わらせたブルーはチェックフローを走らせてから自席へ深く背を預け、目を閉じて大きく1つ息をついた。
「こういう作業的なことは、いつも聖銃士様がやっていらっしゃるのね」
「この艦の艦長は俺だ。スガルがこういうことを出来ないってんじゃねぇが、権限持ってるヤツがやる方が認証の手間が減るだろ」
「そもそも作業スピードが全然違うよー。僕が手伝ったところで、却って邪魔になるだけだもん。はい、2人とも。お茶入れてきたから休憩とろ?」
フィリアとブルーのやり取りにそう言って参加してきたスガルが、持っていたトレーの上から白い器をそれぞれに渡していく。
「まぁ。有り難う存じます」
「悪ぃな」
フィリアには赤みの強い紅茶であるプラリエーヌリーフティー、ブルーには珈琲に近い飲み物であるネーグルカグフェに氷を浮かべて。
自分用には微炭酸のリンゴジュースみたいな果実飲料であるパッフシャルネージュ。
「今、どんな感じ?」
「順調ですわ!」
フィリアから報告にも何もなってない主観の主張のみ告げられた処で、チェックフローがエラーなし終了を知らせるアラートを鳴らした。
「丁度終わったみてぇだし、見てみるか」
ブルーが飲み物の入ったタンブラー形状の器を左手に持ったまま、右手でコンソールのキーを叩く。
モニターに表示されたのは、3本の横に伸びた棒グラフじみた代物だった。
「1番上がアルトゥレの王都アルザから、ここ、サンサラーディまでの聖脈を通ってる聖光力の進行度だ。聖光力と障力の割合と言い換えてもいいな。見ての通り、2日で半分ってトコだからここへの到達はプラス2日が見込まれる」
「そうだね。思ったよりは早いみたいだけど、やっぱり発生源が1つしかないんじゃ、こんなもんだろうね」
スガルにとっても予測の範囲内だったらしい分析結果に、そう評価を紡ぐ。
「真ん中のが海に澱んでる障力の濃度と海中から引っ張り込んでる障力の割合だ。こっちは、ほぼ予定通りに進んでる。明日の昼頃にゃ片付くだろうから海のラインは夕方には閉じられる」
「良かった。これで懸念事項が1つ減るね」
「ああ」
スガルもブルーもどこかホッとした様子でグラフの棒内描かれている複雑なグラデーションを眺めて僅かな笑みを浮かべていた。
「聖脈穴を正常化した後には鍾乳洞の奥から伸ばした侵入経路を塞いじまいてぇのが本音のトコだからな。こっちが片付いてくれりゃ、準備もしやすいぜ」
「そうだね。で、最後のは……ああ、そっか。ダンジョンのコアから最上部までとそこから地表までの距離だね?」
「正解」
説明する前にそれが何であるかを理解したスガルにブルーも短い応でそれを肯定した。
「コアから地表までを100%到達とした図、という解釈でよろしいのかしら?」
「ああ」
「上2つのグラフ同様、もやもやっとした色の具合になっているのは、階層がじわじわ増えているからですの?」
「あー…まぁ、そういうこったな。いきなり1階層分丸ごと増えるってもんでもないからな」
「勉強になりますわ。ダンジョンに関してはあまり知識がないもので。この世界では“ある日、突然入口が現れる”という認識が大半のものでしたし、前世でも…“コアにマスターと認められて不思議パワーで作っちゃうぞ”みたいなものしか読んだことがなくて。基本、入口が外にまず出来て、浅い階層に魔物を呼び込んで人間を出入りさせて集めた力で下の階層を作ります! とか、いきなり上から下までズドンと作ってハイ終わり。的なものが多かったもので」
その辺りは星のエネルギー状態やその世界や文明におけるダンジョンの役割にもよるのだろうけれど、聞く限り一所の話ではなさそうで、彼女が前世で暮らしていた世界は、一体幾つの異界から親和性戦略を受けていたのだろう、と2人の勇者は訝しげに顔を見合わせてしまった。
「この分析資料もライツフェルトのギルド長へ送りますの?」
「うん。丁度明日、各国の冒険者ギルドのギルド長が集まる会議があって、そこで協力を呼びかけて全冒険者ギルドの総意として動きたいと思ってるって返事が来てたからね」
「まぁ。中々に話の分かる御仁のようで何よりですわ。少しでもギルド長の皆様方の決断を後押し出来ると良いですわね」
「うん。そうだね」
(そうなってくんねぇと、ある意味シャレんなんねぇからなぁ…)
にこやか和やかに話を進めるスガルとフィリアの側で、内心そう独り言ちたブルーは、とっとと自分の手からもこの案件の判断を手放してしまおう…と再び小ウインドウを起動させ、イグナレッツへ送る書簡の準備をし始めたのだった。
「ん~。ダンジョンちゃん、順調に育ってるじゃない! いい子、いい子!」
モニターに映るダンジョン分析用のデータと観察表示を見ながら上機嫌で放たれたフィリアの声に一瞬、コンソールを叩いていたブルーの動きが止まった。
すぐさま何事もなかったかのように作業を継続する背中は「突っ込んだら負けだ」と無言で語っているかのようで、スガルは2人より一段高い位置にある自席からそれを眺めていた。
確かにフィリアの言葉通りダンジョンは順調に育っていた。
いや。
ダンジョンを順調に育てていた、が表現的には正しいだろう。
何故ならば、ダンジョンコアに障力を供給するラインを作ったのはスガルとブルーで、どういうダンジョンに出来上がるかを決定したのはフィリアだからだ。
事の起こりは2日程前に遡る。
聖脈穴の位置を確定し、その侵入経路を探した時に唯一見つかった岸壁の鍾乳洞は、丁度その直線上の中間地点に出来始めたばかりのダンジョンが存在していた。
ならば、アルトゥレ王国の聖脈から押し出されてくる障力をこのダンジョンに吸収させることで消費して聖光力の到達時間を早めれば、フィリアの負担が少しでも減るだろう、と言うのがスガルの提案だった。
その提案に「だったら海側で澱んでる障力も鍾乳洞側から引っ張っちまおうぜ」と追加提案をしたのはブルーだった。
両方やれば漁業の回復も土地の安定も早くなるし、これまでダンジョン産の品物を全輸入に頼っていたこの領も、この国も延いては民達も少しは楽になるよね。
後はギルド側の返事を待って始めれば…と、ここまでは何の問題もなかったのだ。
「じゃ、この国で作ってないものダンジョンで全部出るようにコアを調整しちゃいましょ!」
いつの間にやらコントロールルームにやってきていたフィリアのこの一言で、急に話がおかしな方へと転がり出すまでは。
別に「何もかもドロップ品にしなくても交易で手に入ればいいじゃないか」とか「ダンジョン産の品に競争力のないこの国の産業が打撃を受けるかもしれないから」とか説得方向を色々変えて話をしたのだが、最終的にフィリアが出した結論は変わらなかった。
「間違った土台に間違った建物が建っているとして、建物だけ直し続けていたらいつか土台が直るの? そんな訳あるかって誰もが分かってるのに建物壊して土台を作り直さないのは何故?」
単純に住む所がなくなるからとか、その金はどこから出るんだとか議論のしどころは色々あるだろう。
だが、この比喩で彼女が言いたいことはそういうことではなく、誰もが持つ“何故?”と対になっている“こうすればいい”という正解をそうだと分かっていながら無視するのはどうしてだ? 無視すんなよ、それが正解なんだからさ! という部分なのだ。
「この星の聖光力が無限ではなかったように障力だっていつかは減るわ。ずっとダンジョンに頼りきりっていうのは無理だと言うのは私も分かってる。けど、土台を作り直す間の代替え品にはなるわ。すぐには回復しない漁業。壊滅的な観光業。最初から無理ゲー臭しかしない農業。本気で立て直すことを考えるなら、これはチャンスなのよ⁈」
国の連中がそれに気づくか、その気があるか。
問題はその辺りにもあるとは思うが、少なくとも領単位ぐらいまでならば、まだ動かしようもある。
取り敢えずはギルドに組織的な形で動いて貰って、旨味があるとハッキリ目の前に事実として提示されれば領主や国も動くだろう。
「言いたいことも目指してることも一応は分かった。理もない訳じゃねぇしな。だが、お姫さん。アンタが最優先でやらなきゃいけねぇことはそれじゃねぇ。そこんとこだけは忘れないでくれよ?」
「分かってるわよ。でも他国とはいえ民の生活が少しでもよくなるなら良いことじゃない。確かに窮するのと同じくらい富過ぎるのにも害は存在するけど、多少の余裕は必要だわ」
そんなこんなでダンジョンの成長や構成に必要なコアを探し出し、フィリアが改変を加えた。
まず周辺に居る魔物の誘引不要処置。
これは、ダンジョンを目指して魔物が移動してきてしまうということなので、町の近くに入口が開くだろうこのダンジョンには不要な機能だと判断したからだ。
中の魔物は核と障気オンリー制作で。
2つ目に地上部分から3階層まで、出現する魔物は子供でも倒せるようなレベルの低いスライムとスタンピングラビット、ハービートボア、クラッタリングバードの4種のみ。
但し、攻撃されない限り自分からは攻撃しない個体として設定する。
役割は自然界と同じで掃除屋兼素材確保用だ。
もし、狩られてしまっても1月後にはリポップされる設定になっている。
この階層は耕作エリアとして構築する予定で、リポップ期間を各階3週間とすることで1月5週あるこの世界では、計画的に全部屋回れば問題ない程度の食料が各種手に入る仕組みにした。
そこから下はドロップ品の指定だけして何の魔物を出すかはダンジョンコアにお任せだ。
最後に障力を取り込む為の定期設定と設定の発動開始時期を指定。
ダンジョンマスター不要の設定をして、コアのある部屋を物理的に閉鎖する為、続き部屋からの入口をなくして壁の厚みを10倍にした。
そこから2日程経過した現在、元聖脈穴から障気を取り込む為のラインと海側から障力を取り除く為のラインだけが、その部屋へと繋がっている状態となった。
「完璧ね!」
「……………」
自信満々で腕組みしながら言い切るフィリアにチラリとだけ目を向けて、手がけていた作業を終わらせたブルーはチェックフローを走らせてから自席へ深く背を預け、目を閉じて大きく1つ息をついた。
「こういう作業的なことは、いつも聖銃士様がやっていらっしゃるのね」
「この艦の艦長は俺だ。スガルがこういうことを出来ないってんじゃねぇが、権限持ってるヤツがやる方が認証の手間が減るだろ」
「そもそも作業スピードが全然違うよー。僕が手伝ったところで、却って邪魔になるだけだもん。はい、2人とも。お茶入れてきたから休憩とろ?」
フィリアとブルーのやり取りにそう言って参加してきたスガルが、持っていたトレーの上から白い器をそれぞれに渡していく。
「まぁ。有り難う存じます」
「悪ぃな」
フィリアには赤みの強い紅茶であるプラリエーヌリーフティー、ブルーには珈琲に近い飲み物であるネーグルカグフェに氷を浮かべて。
自分用には微炭酸のリンゴジュースみたいな果実飲料であるパッフシャルネージュ。
「今、どんな感じ?」
「順調ですわ!」
フィリアから報告にも何もなってない主観の主張のみ告げられた処で、チェックフローがエラーなし終了を知らせるアラートを鳴らした。
「丁度終わったみてぇだし、見てみるか」
ブルーが飲み物の入ったタンブラー形状の器を左手に持ったまま、右手でコンソールのキーを叩く。
モニターに表示されたのは、3本の横に伸びた棒グラフじみた代物だった。
「1番上がアルトゥレの王都アルザから、ここ、サンサラーディまでの聖脈を通ってる聖光力の進行度だ。聖光力と障力の割合と言い換えてもいいな。見ての通り、2日で半分ってトコだからここへの到達はプラス2日が見込まれる」
「そうだね。思ったよりは早いみたいだけど、やっぱり発生源が1つしかないんじゃ、こんなもんだろうね」
スガルにとっても予測の範囲内だったらしい分析結果に、そう評価を紡ぐ。
「真ん中のが海に澱んでる障力の濃度と海中から引っ張り込んでる障力の割合だ。こっちは、ほぼ予定通りに進んでる。明日の昼頃にゃ片付くだろうから海のラインは夕方には閉じられる」
「良かった。これで懸念事項が1つ減るね」
「ああ」
スガルもブルーもどこかホッとした様子でグラフの棒内描かれている複雑なグラデーションを眺めて僅かな笑みを浮かべていた。
「聖脈穴を正常化した後には鍾乳洞の奥から伸ばした侵入経路を塞いじまいてぇのが本音のトコだからな。こっちが片付いてくれりゃ、準備もしやすいぜ」
「そうだね。で、最後のは……ああ、そっか。ダンジョンのコアから最上部までとそこから地表までの距離だね?」
「正解」
説明する前にそれが何であるかを理解したスガルにブルーも短い応でそれを肯定した。
「コアから地表までを100%到達とした図、という解釈でよろしいのかしら?」
「ああ」
「上2つのグラフ同様、もやもやっとした色の具合になっているのは、階層がじわじわ増えているからですの?」
「あー…まぁ、そういうこったな。いきなり1階層分丸ごと増えるってもんでもないからな」
「勉強になりますわ。ダンジョンに関してはあまり知識がないもので。この世界では“ある日、突然入口が現れる”という認識が大半のものでしたし、前世でも…“コアにマスターと認められて不思議パワーで作っちゃうぞ”みたいなものしか読んだことがなくて。基本、入口が外にまず出来て、浅い階層に魔物を呼び込んで人間を出入りさせて集めた力で下の階層を作ります! とか、いきなり上から下までズドンと作ってハイ終わり。的なものが多かったもので」
その辺りは星のエネルギー状態やその世界や文明におけるダンジョンの役割にもよるのだろうけれど、聞く限り一所の話ではなさそうで、彼女が前世で暮らしていた世界は、一体幾つの異界から親和性戦略を受けていたのだろう、と2人の勇者は訝しげに顔を見合わせてしまった。
「この分析資料もライツフェルトのギルド長へ送りますの?」
「うん。丁度明日、各国の冒険者ギルドのギルド長が集まる会議があって、そこで協力を呼びかけて全冒険者ギルドの総意として動きたいと思ってるって返事が来てたからね」
「まぁ。中々に話の分かる御仁のようで何よりですわ。少しでもギルド長の皆様方の決断を後押し出来ると良いですわね」
「うん。そうだね」
(そうなってくんねぇと、ある意味シャレんなんねぇからなぁ…)
にこやか和やかに話を進めるスガルとフィリアの側で、内心そう独り言ちたブルーは、とっとと自分の手からもこの案件の判断を手放してしまおう…と再び小ウインドウを起動させ、イグナレッツへ送る書簡の準備をし始めたのだった。
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