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三、団子と罠
研究材料
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――やられた。
意識が戻った時、セツは牢屋の中だった。
(ここはどこだ?)
窓のない薄暗い空間の中、ぽつぽつとロウソクの火が灯されている。
「気がつきましたか?」
声がする方に顔を向けるとレイが目を細めてセツを見ていた。
「今から貴方に面白いもの見せようと思ってね」
そう言うと、この空間の奥からズゥンズゥン、と大きいモノが動く音が聞こえてきた。そのモノが近くまで来ると、セツは目を疑った。
「鬼だ……」
ここに居るはずのないモノがここに居る。そして、その隣には痩せ細った男性が鬼に付き添うように立っていた。
「ふふっ。実はこの鬼、退治屋ですよ。そして、隣にいるのはそれを作った研究者です」
(わけがわからない!)
セツが目を見開いて鬼を見ていると、細身で顔色の悪い研究者は、眼鏡をクイッと上げると同時に口角を上げた。
「ヒヒっ。コレ、貴方が退治した鬼ではありませんか?」
「あっ」
(そうだ! この鬼、人に化けた鬼だ!)
「私たち退治屋は特異能力や特異性のある鬼を持ち帰り、研究材料にしているのです」
レイが説明をする。
(そういえば、ハクがそんなことを言っていたな)
「ヒヒっ。研究と実験を重ねて成功した結果がコレですよ。鬼の核や細胞、血液などから新しい陣を形成して術式を発動させたのです」
付け加えて研究者が気味悪く説明する。
(そういうことか。……でも)
「残念だったな。俺にはそんな能力や性質は無い」
「あるじゃないですか。笛で鬼を操る力が」
「なっ!?」
「何故、それを知っているのかって? 実際に見たんですよ。大勢の鬼を、笛の音で操る貴方を。正確には貴方の匂いを感じた……ですけどね」
(そうか、あの日か! きっとハクもあの時から気付いていたんだろうな……。それはそうと、色々と良い状況ではないな)
セツがひっそり考え込んでいると、
「そうそう。貴方の横笛はこちらで預かりました。変な行動をされては研究できませんからね」
そう言って、レイはセツに漆黒の横笛を見せた。
「ハハッ。手際が良いな。で、俺にどうして欲しいんだ?」
「そうですね。まずは鬼になってもらいましょうか」
「断る。と言ったら?」
「今、ハクが行っている任務。どんな任務でしょうね?」
ああ、そう言えば……と、レイは付け加える。
「ハクの目の前で子鬼を逃がしましたよね?」
「もしかして……」
「ハクは鬼の匂いがわかります。貴方が断れば……」
「……はあ。俺には師匠さんが悪に見えるよ」
――完敗だ。
両手を軽く上げ、溜息を一つ吐くと、セツは身体を徐々に変化させた。
意識が戻った時、セツは牢屋の中だった。
(ここはどこだ?)
窓のない薄暗い空間の中、ぽつぽつとロウソクの火が灯されている。
「気がつきましたか?」
声がする方に顔を向けるとレイが目を細めてセツを見ていた。
「今から貴方に面白いもの見せようと思ってね」
そう言うと、この空間の奥からズゥンズゥン、と大きいモノが動く音が聞こえてきた。そのモノが近くまで来ると、セツは目を疑った。
「鬼だ……」
ここに居るはずのないモノがここに居る。そして、その隣には痩せ細った男性が鬼に付き添うように立っていた。
「ふふっ。実はこの鬼、退治屋ですよ。そして、隣にいるのはそれを作った研究者です」
(わけがわからない!)
セツが目を見開いて鬼を見ていると、細身で顔色の悪い研究者は、眼鏡をクイッと上げると同時に口角を上げた。
「ヒヒっ。コレ、貴方が退治した鬼ではありませんか?」
「あっ」
(そうだ! この鬼、人に化けた鬼だ!)
「私たち退治屋は特異能力や特異性のある鬼を持ち帰り、研究材料にしているのです」
レイが説明をする。
(そういえば、ハクがそんなことを言っていたな)
「ヒヒっ。研究と実験を重ねて成功した結果がコレですよ。鬼の核や細胞、血液などから新しい陣を形成して術式を発動させたのです」
付け加えて研究者が気味悪く説明する。
(そういうことか。……でも)
「残念だったな。俺にはそんな能力や性質は無い」
「あるじゃないですか。笛で鬼を操る力が」
「なっ!?」
「何故、それを知っているのかって? 実際に見たんですよ。大勢の鬼を、笛の音で操る貴方を。正確には貴方の匂いを感じた……ですけどね」
(そうか、あの日か! きっとハクもあの時から気付いていたんだろうな……。それはそうと、色々と良い状況ではないな)
セツがひっそり考え込んでいると、
「そうそう。貴方の横笛はこちらで預かりました。変な行動をされては研究できませんからね」
そう言って、レイはセツに漆黒の横笛を見せた。
「ハハッ。手際が良いな。で、俺にどうして欲しいんだ?」
「そうですね。まずは鬼になってもらいましょうか」
「断る。と言ったら?」
「今、ハクが行っている任務。どんな任務でしょうね?」
ああ、そう言えば……と、レイは付け加える。
「ハクの目の前で子鬼を逃がしましたよね?」
「もしかして……」
「ハクは鬼の匂いがわかります。貴方が断れば……」
「……はあ。俺には師匠さんが悪に見えるよ」
――完敗だ。
両手を軽く上げ、溜息を一つ吐くと、セツは身体を徐々に変化させた。
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