無色の男と、半端モノ

越子

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三、団子と罠

ハク語り

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「私は師匠に二度、命を救われた」

 一度目はハクの両親が殺され、彼が独りでいる所を見つけて拾ってくれた。

「当時のことを良くは覚えていないが、私の両親は退治屋で鬼に殺されたらしい」

 レイはハクの父親の後輩でとても慕っていた。レイも若い頃、ハクの父親に命を救われていたのだ。

 二度目はハクが十二歳になり、階級が二級に上がった時だ。

 初任務だった。

 一級の先輩と鬼退治に出向いたが、ハクが若過ぎたこともあり、その先輩は快く思っていなかった。

「先輩は私に対して、何かしらにおいて軽蔑的な態度を取っていたので、私も不快な気持ちで任務に臨んでいた。最初こそ耐えていたが『お前みたいな青二才に何が出来るのか、レイさんに気に入られただけで二級になったお前に何が出来るのか』と罵られ、私は悔しくて一人で行動してしまった」

 セツは目を丸くした。この彼が感情的に行動したのがとても意外だった。というか、彼にも感情があったのか、と驚いた。

「私は一人で鬼と闘い、刀を折られて鬼に殺られそうになった時、突然師匠が現れ、身を挺して師匠は私を庇った」

 鬼に遭遇し、鬼を追い詰め、あと一歩のところでハクの心に油断が生じた。そして隙が生じた。彼は鬼に刀を折られ、その鬼の目を通して“死”が見えた時、「諦めないで!」と声が聞こえた。気付いたら彼はレイに守られていた。

 その後、鬼はレイによって退治されたが、レイの背中には一生消えない大きな傷跡が残ってしまった。謝罪を繰り返すハクに、レイは苦笑いで「実はね……」と逆に謝罪した。

「師匠が術で私と繋いでいたらしい。私が退治屋になった頃からずっと、こっそり監視していたらしい」

「師匠さんとやらは過保護だったんだな」

 ハハッ。とセツが笑うと、肯定するかのようにハクの口元が少し緩んだ。

「それから、私は鍛錬に鍛錬を積んだ。私は一刻も早く一人前になりたかった」

 銀白色の長い髪が風に揺れる。

「強くなって、師匠のようになりたかった」
 
「アンタ、凄いな。凄く、頑張ったんだな」

 セツがハクを見上げると、ハクもセツを見下ろしていた。

「こんなにも自分の話をしたのは初めてだ」

 高く昇っていた太陽がやや傾き始め、暖かい空気が流れる。

「私の師匠に、会って欲しい」
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