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発足。日本政府直属自衛軍。

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自衛隊の半数以上の人員が暴徒化し、暴徒処理が追いつかなくなってきた頃。日本政府が打ち出した打開策は、能力差別など社会的弱者であることが理由で解雇された様者を中心に、『日本政府直属自衛軍』を発足することだった。日本政府直属自衛軍は、暴徒から人間を守る事に特化した組織で、松田防衛大臣を軍将に、井上喜美子司令長と、日野現場隊長が仕切る。ワクチン接種者がいる家庭を中心に、自衛軍に参加するか否かの書類が送付され、希望の者は書類を送り返すだけで、隊員になれるらしい。黒濤は、市役所で見つけたビラと、「…」と睨めっこをしていた。自分が何でも生み出せる「作成」能力者だったこともあとから調べて知った黒濤は、この力をなにかに生かしたい、と丁度思っていたし、亜嵐に接触する理由にも、軍というのは都合がいいものだと考えていた。「俺がいっていい場所なのだろうか………」黒濤は課長に言われた言葉がトラウマになっているのか、ビラを持ちながら呟いては、バイクで横切った女に話しかけられた。「自衛軍に入りたいの?」紫髪を長く靡かせたその女はよく顔の知っていた人物で。「御前はM一味の!??」と黒濤は叫ぶが、女は「あら?随分印象が違うのね。まあいいから見るだけでも見に来なさいな」と言った後、「私は井上。乗って、」と黒濤をバイクの後ろに乗せた。「どういう風の吹き回しでM一味の貴女が自衛軍にいるんですか!」バイクで風を切りながら、黒濤が問いかけては、井上は「流れでそうなっちゃったの。Mに裏切られたから松田くんについていったらなんか暴徒騒動とか起きちゃうからね~」とあっさり説明した。「というか、ネットで当たり前のように書いてあったけどなんで元テロリストが防衛大臣になってるんですか!?」とさらに問いをぶつけては、「なんかなれちゃったのよ、人手不足で」と井上は黒濤に説明を補足した。「ぇえ…?」黒濤は呆れてしまい間抜けな声を上げる。「でも、元テロリストの情報網。有事には大活躍でしょ?」という井上に、黒濤は「信用なりませんよ」と至極真っ当な反応をした。東府中駅。「入って」と言われるがままエレベーターを上がった先は、長い真っ直ぐなエスカレーター。「このエスカレーターは東府中のオフィスと府中の寮つないでいるの。でも私たちはオフィスに向かうから逆方向」と言っては、オフィスに向かう為のエスカレーターに乗り。「まあ今日は見学だけだけどね、興味があったら入隊しちゃってもいいわよ」と井上が説明しては、黒濤は「俺に務まりますか?」と問いかける。「名刑事が何言ってるの~」と井上が言っては、エスカレーターも丁度よく辿り着き、ウィーン。と扉が開いた。
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