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辿ってきた過去、違ってきた未来。1
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嗚呼、これはきっと、夢だ。昔の夢──────────
東京都。府中市。警視庁警察学校。蘭は、「はぁ、はぁ、」と息を荒くさせ、汗まみれになりながら、ランニングをしていた。「隊の脚引っ張んな美海野ーーーーー!!!」メガホンで名指しで蘭は蒼月教官に叫ばれる。最後尾。体力には、自信があった。というか、今までがっつり走ってきたことが無かったから枠の中ではできる方だと思っていた。だが、前の一人とは、随分と差が開いてしまった。ビリだ。悔しさで胸がいっぱいになりながら、蘭はぶっ倒れる。教官が医務室まで来ては、「この程度も走れないなら辞めちまえ」と蔑むような視線を蘭に向けた。「美海野は座学は良いが、だけ。運動、技術、どれに目を向けても遅れている。勉強が少し出来ただけか」少し言い過ぎな事を教官は吐いたが、蘭は黙って視線を逸らすだけだった。「美海野三郎の名が泣くな」と言われては、今まで何を言われても黙っていたくせに、立ち上がり、拳を握りしめる。「それだけは言わないで貰えますか」殺意マシマシに握られた拳。それを見た教官は笑った後、「殺人犯のほうが向いてるんじゃねーか」と伝え立ち去っていった。このまま行けば、警察学校は主席で卒業できるはずだ。とは他の教官たちに言われるものの。医務室のベッドに座り直せば、膝の上で悔しそうにギュッ、と拳を握る。「酷いこと言うね蒼月教官も」と医務室の担当医、菅原が丸くなる蘭を見ながら優しく言った。「いいんです、言われるのも仕方ない」そう自分の非を認めるような事を言いつつも、憎悪が顔に溢れ出しているのをみた菅原は、蘭の頭を撫でた。「ひゃぁぁ、!?」蘭はびっくりして肩をピクリと動かした後、「きゅ、急に触らないでください、!!!!!!」と叫びながら菅原に言った。菅原は、「ごめんごめん、君があまりにも落ち込んでたものだから、つい」と言う菅原に、蘭は「もういいですから、構わないでください」と言い医務室の布団を被った。「焦らなくていいんだよ、まだ数ヶ月あるんだから」と菅原は蘭に優しく伝えた後、「何課に入りたいの?」と問いかける。「……一課」と菅原に背を向けたまま言う蘭に、菅原は、「なれるよ、諦めなければね」と笑みを向けた。次の科目。拳銃の使い方。「これが正しい銃の構え方だ。的を狙って一斉に撃て!」教官の声の後、蘭は銃を構え、的を狙って撃つ。「ッ、ッ……!」全員が的に近い場所に当たる中、蘭の弾は、当たってもせいぜい端にかするぐらいだった。「それでいいのかー!美海野ー!」と遠くから同士が笑う声が聞こえては、蘭はメンタルをやられてしまったのか、「………もっと撃てるように………ならないと……」と泣き出してしまう。パパみたいに銃を扱える様になりたい。パパみたいな立派な警察官になりたい。蘭は二ヶ月間で、必死に訓練し、気づけば仲間に追いつける程度には、銃が撃てる様になっていた。「美海野上達したか?」蒼月とは違う教官が蘭に話しかける。蘭は「…まあ」とだけ応えた。遠くには、成長する蘭が気に入らないのか、汚いものを見るような目を向ける同期達がいた。休憩時間。蘭は同期の一人に呼び出される。「なにちゃっかり上手くなってんだよ!!!!!!」のっぽの山田が、蘭の胸ぐらを掴み、持ち上げた。「ってめぇ……」必殺、睨みつけるを繰り出す蘭。だが、防御が下がるはずもなく。「おー怖い怖い。」と笑いながら、突き飛ばされた。「ッでッ、!」蘭は山田を見上げる。「御前みたいな使えないやつが警察に来られると困るんだ、俺達は真剣にやってる、中途半端な奴は卒業前に辞めろ!」見下しながら蘭に言い放った山田。蘭は立ち上がり、「…俺だって本気で」と反抗するが、山田は「そんなようには見えないね!」と言い切り、「またな!せいぜい座学で満足してろ」と立ち去っていった。美海野蘭。二十二歳。東大卒は同期でただ一人。そんな頭は良い蘭が警察を目指しているのが気に入らないのか、関わる人間のほとんどが、嫌そうな顔を向けていた時期。蘭は、ほぼ全員から嫌われる寮生活にも飽き飽きしていた。コンビニで握り飯を買った帰り。金髪の女が後ろから声をかけた。「ボーイ、」蘭はその声に振り返る。
東京都。府中市。警視庁警察学校。蘭は、「はぁ、はぁ、」と息を荒くさせ、汗まみれになりながら、ランニングをしていた。「隊の脚引っ張んな美海野ーーーーー!!!」メガホンで名指しで蘭は蒼月教官に叫ばれる。最後尾。体力には、自信があった。というか、今までがっつり走ってきたことが無かったから枠の中ではできる方だと思っていた。だが、前の一人とは、随分と差が開いてしまった。ビリだ。悔しさで胸がいっぱいになりながら、蘭はぶっ倒れる。教官が医務室まで来ては、「この程度も走れないなら辞めちまえ」と蔑むような視線を蘭に向けた。「美海野は座学は良いが、だけ。運動、技術、どれに目を向けても遅れている。勉強が少し出来ただけか」少し言い過ぎな事を教官は吐いたが、蘭は黙って視線を逸らすだけだった。「美海野三郎の名が泣くな」と言われては、今まで何を言われても黙っていたくせに、立ち上がり、拳を握りしめる。「それだけは言わないで貰えますか」殺意マシマシに握られた拳。それを見た教官は笑った後、「殺人犯のほうが向いてるんじゃねーか」と伝え立ち去っていった。このまま行けば、警察学校は主席で卒業できるはずだ。とは他の教官たちに言われるものの。医務室のベッドに座り直せば、膝の上で悔しそうにギュッ、と拳を握る。「酷いこと言うね蒼月教官も」と医務室の担当医、菅原が丸くなる蘭を見ながら優しく言った。「いいんです、言われるのも仕方ない」そう自分の非を認めるような事を言いつつも、憎悪が顔に溢れ出しているのをみた菅原は、蘭の頭を撫でた。「ひゃぁぁ、!?」蘭はびっくりして肩をピクリと動かした後、「きゅ、急に触らないでください、!!!!!!」と叫びながら菅原に言った。菅原は、「ごめんごめん、君があまりにも落ち込んでたものだから、つい」と言う菅原に、蘭は「もういいですから、構わないでください」と言い医務室の布団を被った。「焦らなくていいんだよ、まだ数ヶ月あるんだから」と菅原は蘭に優しく伝えた後、「何課に入りたいの?」と問いかける。「……一課」と菅原に背を向けたまま言う蘭に、菅原は、「なれるよ、諦めなければね」と笑みを向けた。次の科目。拳銃の使い方。「これが正しい銃の構え方だ。的を狙って一斉に撃て!」教官の声の後、蘭は銃を構え、的を狙って撃つ。「ッ、ッ……!」全員が的に近い場所に当たる中、蘭の弾は、当たってもせいぜい端にかするぐらいだった。「それでいいのかー!美海野ー!」と遠くから同士が笑う声が聞こえては、蘭はメンタルをやられてしまったのか、「………もっと撃てるように………ならないと……」と泣き出してしまう。パパみたいに銃を扱える様になりたい。パパみたいな立派な警察官になりたい。蘭は二ヶ月間で、必死に訓練し、気づけば仲間に追いつける程度には、銃が撃てる様になっていた。「美海野上達したか?」蒼月とは違う教官が蘭に話しかける。蘭は「…まあ」とだけ応えた。遠くには、成長する蘭が気に入らないのか、汚いものを見るような目を向ける同期達がいた。休憩時間。蘭は同期の一人に呼び出される。「なにちゃっかり上手くなってんだよ!!!!!!」のっぽの山田が、蘭の胸ぐらを掴み、持ち上げた。「ってめぇ……」必殺、睨みつけるを繰り出す蘭。だが、防御が下がるはずもなく。「おー怖い怖い。」と笑いながら、突き飛ばされた。「ッでッ、!」蘭は山田を見上げる。「御前みたいな使えないやつが警察に来られると困るんだ、俺達は真剣にやってる、中途半端な奴は卒業前に辞めろ!」見下しながら蘭に言い放った山田。蘭は立ち上がり、「…俺だって本気で」と反抗するが、山田は「そんなようには見えないね!」と言い切り、「またな!せいぜい座学で満足してろ」と立ち去っていった。美海野蘭。二十二歳。東大卒は同期でただ一人。そんな頭は良い蘭が警察を目指しているのが気に入らないのか、関わる人間のほとんどが、嫌そうな顔を向けていた時期。蘭は、ほぼ全員から嫌われる寮生活にも飽き飽きしていた。コンビニで握り飯を買った帰り。金髪の女が後ろから声をかけた。「ボーイ、」蘭はその声に振り返る。
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