正義を履き違えた悪魔

ジナの奏蘭観察日記3

「で、本題。京……」と言いかけたジナの隣を店員が横切れば、「チョコレートパフェ1つ」「かしこまりました～～」蘭が注文を済ませていて、店員が立ち去った。「ほらメニュー」サッ、と蘭が差し出せば、ジナはメニューを見ながら、「黙秘貫いて有耶無耶にする気だな」と呟いた。「よくわかったな」否定しない蘭に、ジナはイラッとする。ジナに「そういう事するんだ～」と言われては、蘭は「敵を有効活用するのは合理的だろ」と真顔で応えた。蘭のパフェが届けば、蘭はジナに「食べないのか」と問う。だが、「食べるけど…俺御前に甘味奢りに来た訳じゃないんだよね」やはりジナは不満気だ。「柄に無く俺に菓子折り送り付けた割には反省も糞もないんだな」とジナが続けては、蘭は「餌付けだって必要だろう」と計画、作戦、心境。それらを簡単に探らせたりはしなかった。「御前はもっと周りにオープンに接すれば助かる場面もあると思うんだが」とアドバイスするジナに、「他人に心開いてどうするんだ。漬け込まれる」とパフェのイチゴをモグモグと頬張りながら応えた。「Nは？」微笑みながらジナが問いかけては、「奴は特別だ、そばに居てくれるだけで事が優位に運ぶ」と続けた。自分の感情にあまり整理がついてないのだろうか？それとも、自信が無いのだろうか。何転か話が転がる蘭にジナは「まあ。俺が聞きたいのは何故大岡一族に接触して一億を叩いたかなんだけど。」と本題に再び返った。蘭は、はぁ…。と溜息をついた後。「そりゃ、武器を買う為だろうな。武器商人のところに行く用なんて」と当たり前の様な回答をし、それ以上は相変わらず伏せた。「資産家の金で？」ジナが頼んだオシャレなスムージーが届けば、蘭は「武器に関しては自腹だ」と応える。「ますます分からないな」そう言ってスムージーを啜った後、「そんなに金があっても不足するような事を企んでるのか」とジナは問いかけた。蘭は少し言葉を考えた後、目を逸らしながら「語弊は無い」と応える。「…」「…」一瞬二人の間に沈黙が流れた後、「その身を滅ぼす前にその身を引け」とジナが呟いた。「なんかの台詞か」と蘭が探るような目をジナに向けては、「いーや、いまの御前に似合う言葉だなって思っただけ、」とカップに入ったスムージーを片手に、立ち上がる。「？」と首を傾げつつ、視線を戻せば食べ終わったパフェのスプーンをグラスに戻す蘭に、「忠告はした」とジナは丁寧に立ち上がった。「国取り合戦、見物だな」と言うジナに、「な…んで…」と蘭は一言も言ってないのに、とジナの後に続いて席を離れながら驚いた。ジナは支払いを済ませてから、出口で別れ際、蘭に「もう御前の考える事は大概読める」と伝え、片手で髪を靡かせる。蘭はジナに視線を向けた後、「……パフェ、ありがとう。」と一瞬だけ小声で礼を言い、走り去っていった。ジナは、ﾌｯと笑った後、「ずっとああしてれば平和なんだけどな」と呟いた。