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ひとときを運ぶ熊3

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「白雲さん、俺の上司や。」ケーキの皿を並んで洗いながら、奏は説明した。「白雲さん…なんだか威厳がありそうな名前だな」奏から渡された皿をキュッキュ、と拭きながら呟く蘭。「洗剤、切れてしもたわ…蘭くん、無い??」洗剤が切れたことを知ればキッチン下のタンスから「追加しておく、」と大きめの洗剤を取り出し、小さいケースに補充する。補充した洗剤を相手に渡せば、奏の隣で再び皿を拭き始めた。キッチン横の電話台には、シティーハンターの漫画が何巻か揃えられている。「白雲さんは全然そんな人ちゃうで、蘭くんとちょっと相性が合うか心配なぐらいや…。」白雲さんについて、蘭に説明する中、皿を洗い終わり、蛇口を捻る。ちらっと漫画に目をやれば、「??なんやこの漫画」奏が問いかけては、蘭は「父さんの部屋に会ったやつだ。埃被ってるけど、読みたかったら好きに読んでいいぞ」と言ったあと、立ち去り際、振り返り「少し自分の部屋で仕事するから」と奏に続けた。奏は漫画の一巻を手に取り、準備を終えたばかりの部屋へ向かう。ペラペラ、と漫画の内容を知れば、「…法で捌けない悪、か…」と奏は呟く。本当にこれでいいんだろうか。なんて奏は過ぎってしまうが、「俺は覚悟を決めたんや、蘭くんの傍に居続ける覚悟を、」と首を横に振った。施設の子供から貰った封筒に目を通す。〖大人、大変だけど奏のにいちゃんも頑張ってね〗折り紙の四葉が入っているのを見ては、奏はフフッ、と微笑みながら喜んだ。奏は少し眠くなり、漫画の上に封筒を置き、うたた寝をする。「……好きやぁ、蘭くん」印刷物を取りに1階へ向かう途中、呟きが扉越しから聞こえた蘭。「聞こえなかったことにしとくか」なんて言っては、奏の頭を撫で、自らの上着をかけてやり、印刷物を取った後、自室へと戻った。

~ひとときを運ぶ熊~ end
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