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序章 旅の始まり、終わり

閑話 思考の海へ

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 ― リオネル ―

 僕の名前はリオネル・マーティン

 小さな村出身の冒険者だ。

 僕は治癒魔法が凄いリーナさ、いやリーナのことをパーティーに誘い、パーティーを組んだ。
 仮だけども。

「あのですねぇ、がついてるからと言って、前触れもなく冒険者ギルドに突進しないでください!」
「なんで僕も一緒に怒られてるんですか、?」
「はいぃぃぃい……」

 僕たちは、というかリーナはいま、赤色の眼鏡、茶色の髪の三つ編み、穏やかな目を吊り上げている人に説教されている。

 客室で。

 客室の中でもとても豪華な部屋で、勇者一行の人はすごいんだなぁ、とぼーっと考える。

 まぁ、現実逃避である。


 眼鏡さん、第一印象穏やかで優しいだったんだけど、どうやら違うようだ。今だけかもしれないけれど。

「本当に分かっているのか疑問ですが、いいでしょう。で、用件はなんですか?」

 現実逃避している間に説教は終わったようで、そう聞かれる。
 僕が答えるより先に、リーナはるんるんで答えた。

「えっと、リオネルとのパーティ申請をしたいです」

 眼鏡さんは僕を見ると不快感が瞳に映った。

「黒髪に、黒色の瞳ですか……不吉な」

 やっぱり、そう思われるかぁ。

「……黒髪、黒色の瞳、やっぱり、不吉なんですか」

 僕は眼鏡さんの反応に悲しくなって、それを誤魔化すために目を閉じた。

 となりのリーナが動く気配がして目を開けるとリーナは身を乗り出して眼鏡さんに喧嘩をぶっかけていた。

「黒髪、黒色の瞳、不吉?どういうことですか?!髪色も、瞳の色も治せないものじゃないですか!不吉って言わないでくださいよ!!リオネルがかわいそうですよ!!」
「なんですか?いきなり?……はぁ、この話はいいです。本人に聞けばよろしいかと。」

 喧嘩を避けた眼鏡さんは、リーナのことを呆れた目で見ながらそう言うと、話を切り替えた。

「ではパーティ申請ですね。勇者一行パーティーからは抜けるでいいですよね」

 そう言うとパーティ申請の紙を取り出していく。

 僕は喧嘩が終わったのを見ると、思考の海に落ちていった。

 黒が不吉な理由。

 それは単純で魔王の色だから。
 だけども、このことを知っているのは、魔王を見たことがある人だけ。
 僕の場合は曽爺さんが魔王を見たことがあるから、教えてもらっているから知っている。

 それに、魔王は九十年前に勇者様に討伐されているし、残されている資料はほぼない。
 なのにこの眼鏡さんはどうして不吉だと呟いたんだろう。
 一瞬、眼鏡さんの耳がとがって見えた。でもすぐに丸い耳になっていたから、目の錯覚だろう。

 そう結論づけると僕は別のことを考え始めた。

「これでまったり、のんびり、旅と冒険ができるね!!やったね!リオネルはどう思う?」

 ふとそう聞こえてきて、本心の一部を答える。

「あ、うん、うれしいよ」

 そしてまた思考の海に飲み込まれていく
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