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序章 旅の始まり、終わり
第一話 追放された
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国のちょうど真ん中にある大きな街。いたるところが煉瓦でできている。ダンジョンを攻略したばかりで疲れがたまってだるいので、そんな街にある冒険者ギルドの中でわたしたち勇者一行は休息をとっていた。
「リーナ、お前はパーティーから抜けろ」
いつもの何気ない会話の中、突然言われたこの言葉に、わたしはその言葉を言った本人である勇者一行リーダー、自称勇者のレオンをじっと見つめた。
「聞いていなかったか?お前はパーティーから抜けろ」
二度聞いて、これは本当だと理解する。
「どうして?」
口元が震えるのを感じながらレオンに問いかける。するとレオンは冷たい目で言った。
「お前が使えないからだ。治癒魔法以外何一つできない奴がいてもいいパーティーじゃないんだよ、ここは」
その理由に苦笑する。
わたし、これでも頑張ってたんだけどなぁ。
ダンジョンのボスを倒した後なのに、みんな怪我一つもないし、後遺症もないのがその証拠だ。
「でも、回復はどうするの……?」
レオンは睨みつけながら言った。
「フン。今までのことに感謝して、教えてやろう。勇者一行には、お前なんかよりも使える聖女が入る」
わたしは、静かにレオンを見上げた。
衝撃、だった。
わたしたちの過ごしてきた時間は、絆は、使えるか、使えないかだけで、なくなってしまうという事実に。
衝撃を隠すためにわたしは口を開いた。
「みんなは、どうおもってるの……?」
レオンから視線を外し、勇者一行のメンバーの顔を見渡した。みんなの目は冷たかった。それで察した。
聞くのは怖かった。でも聞かなかったら後悔する気がしたから聞いたけれど、聞かなかったほうがよかったかもしれない。
そんなにいらない存在なんだ、わたしって。
寄せ集めで作ったパーティーだった。その寄せ集めのメンバーで何年も一緒に旅をしてきた。その思い出は、みんなにとってはすぐにでも追い出せるちっぽけなものだったのか。いつもの会話の中で切り出せるほど、仲間を追放するのは軽いことなのか。
冒険者になった当初、治癒魔法しか使えないわたしを拾ってくれたこのパーティにわたしは感謝していた。感謝していたからこそ、不満を一度も言ったことはない。
例えば、わたしが熱を出して討伐クエストに参加できなかった時、「リーナが来なくてずっと痛かったー」と文句を言われたこと。
例えば、わたしが一度失敗してしまった時、一か月ずっと毎日ぐちぐち言われたこと。
「うん、分かった。このパーティーから抜けるよ」
わたしは満面の笑みで返事をする。荷物を持って立ち上がると、わたし以外の勇者一行のみんなはわたしを戸惑いの目で見ていた。
「じゃあ、わたし、行くからね」
この場から去ろうとしたところで、レオンが腕を掴んで止めてきた。
「待て。魔法の杖と、冒険者ギルドカード以外は置いてけ」
え?
わたしは思わずレオンをまじまじと見つめてしまった。
「…どうして?どうしてわたしの荷物を持って行っちゃダメなの?」
「当たり前だろう?魔法の杖はいいとして、他の物は全て俺が買ったからだ」
レオンはわたしの腕を掴んだまま、呆れたように言った。俺たちが買った、と言うけれど、そのお金はパーティーメンバー全員で集めたお金だ。決してレオンのものではない。
面倒くさいし、いいか。
わたしはため息を吐いた。
「わかった。置いてけばいいんでしょ?」
わたしは魔法の杖と冒険者ギルドカード以外を地面に置いた。
「わたし、行くから!」
そして街の中を走り抜けていく。ここから離れるために。
「リーナ、お前はパーティーから抜けろ」
いつもの何気ない会話の中、突然言われたこの言葉に、わたしはその言葉を言った本人である勇者一行リーダー、自称勇者のレオンをじっと見つめた。
「聞いていなかったか?お前はパーティーから抜けろ」
二度聞いて、これは本当だと理解する。
「どうして?」
口元が震えるのを感じながらレオンに問いかける。するとレオンは冷たい目で言った。
「お前が使えないからだ。治癒魔法以外何一つできない奴がいてもいいパーティーじゃないんだよ、ここは」
その理由に苦笑する。
わたし、これでも頑張ってたんだけどなぁ。
ダンジョンのボスを倒した後なのに、みんな怪我一つもないし、後遺症もないのがその証拠だ。
「でも、回復はどうするの……?」
レオンは睨みつけながら言った。
「フン。今までのことに感謝して、教えてやろう。勇者一行には、お前なんかよりも使える聖女が入る」
わたしは、静かにレオンを見上げた。
衝撃、だった。
わたしたちの過ごしてきた時間は、絆は、使えるか、使えないかだけで、なくなってしまうという事実に。
衝撃を隠すためにわたしは口を開いた。
「みんなは、どうおもってるの……?」
レオンから視線を外し、勇者一行のメンバーの顔を見渡した。みんなの目は冷たかった。それで察した。
聞くのは怖かった。でも聞かなかったら後悔する気がしたから聞いたけれど、聞かなかったほうがよかったかもしれない。
そんなにいらない存在なんだ、わたしって。
寄せ集めで作ったパーティーだった。その寄せ集めのメンバーで何年も一緒に旅をしてきた。その思い出は、みんなにとってはすぐにでも追い出せるちっぽけなものだったのか。いつもの会話の中で切り出せるほど、仲間を追放するのは軽いことなのか。
冒険者になった当初、治癒魔法しか使えないわたしを拾ってくれたこのパーティにわたしは感謝していた。感謝していたからこそ、不満を一度も言ったことはない。
例えば、わたしが熱を出して討伐クエストに参加できなかった時、「リーナが来なくてずっと痛かったー」と文句を言われたこと。
例えば、わたしが一度失敗してしまった時、一か月ずっと毎日ぐちぐち言われたこと。
「うん、分かった。このパーティーから抜けるよ」
わたしは満面の笑みで返事をする。荷物を持って立ち上がると、わたし以外の勇者一行のみんなはわたしを戸惑いの目で見ていた。
「じゃあ、わたし、行くからね」
この場から去ろうとしたところで、レオンが腕を掴んで止めてきた。
「待て。魔法の杖と、冒険者ギルドカード以外は置いてけ」
え?
わたしは思わずレオンをまじまじと見つめてしまった。
「…どうして?どうしてわたしの荷物を持って行っちゃダメなの?」
「当たり前だろう?魔法の杖はいいとして、他の物は全て俺が買ったからだ」
レオンはわたしの腕を掴んだまま、呆れたように言った。俺たちが買った、と言うけれど、そのお金はパーティーメンバー全員で集めたお金だ。決してレオンのものではない。
面倒くさいし、いいか。
わたしはため息を吐いた。
「わかった。置いてけばいいんでしょ?」
わたしは魔法の杖と冒険者ギルドカード以外を地面に置いた。
「わたし、行くから!」
そして街の中を走り抜けていく。ここから離れるために。
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