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第1話~友殺し~
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俺は鬱蒼と木が生い茂った森を2人で疾走している。後ろからは俺を追う男。奴はいわば俺と同族『能力者』だ。俺たちはスキルと呼ばれる特殊な能力を付与され生み出された生物。
見た目はほとんど人間と変わらない。だが俺が今背を向けて遠ざかっている大きな建物、いわば研究所で特殊な処置を施されて生み出された人間が能力者だと聞かされた。
俺も当然スキルを持っている。スキル名は『略取』。敵から物を奪う能力……とは言っても敵に直接近づいて物に触れなければ奪えない。正直能力が高い者ならスキル無しでもできる。触れれば奪える分楽ではあるものの残念ながら俺は敵に接近して戦えるほどの力はない。それ故に無能者の烙印を捺され、研究所外の森に『廃棄』されたのだ。
そして俺が手を引いて一緒に逃げている男も俺と同じく無能者の烙印を捺された男だ。この森で知り合った。彼は俺より先にこの森に廃棄されたようで俺に様々な事を教えてくれた。
その内の1つに今追ってきている者の話だ。研究所の奴等は何故か俺たちを殺さずに生かして廃棄しているのは能力者に無能者を狩らせて戦闘経験を稼ぐためとのことだ。追う男は何の疑問も持っていないかのように俺たちを狩ろうとする能力者。
だが奴はあまり足が速くないようで、俺でも何とか逃げ切れた。俺は周囲を伺って能力者が居ないことを確認し腰を下ろした。
「何とか逃げ切れましたね。」
「私のことは大丈夫だと言ったのに。私の為に君が危険な目に遭う必要は無い。」
彼は半分とろけてしまった顔をこちらに向けてそう言う。彼の服はボロボロで体中に傷が残っているし胴体が抉れているような箇所もある。そのような痛々しい姿だった。
「アムロス君。」
「はい?何でしょう?」
不意に彼が俺の名前を呼ぶ。元々丁寧な話し方をする彼だが妙に畏まっている。一体何だろうかと思った。彼の様子は少し落ち着かずソワソワとしている。何かを話したいようだが中々決心がつかなさそうだ。俺は彼が何を言いたいのか分からず首を傾げながら彼を見るのみ。だが遂に意を決して彼は口を開いた。
「アムロス君……私を、殺してくれ。」
「な、何を言い出すんです!」
「私の身体は最早限界。『不死』のスキルでも修復が利かなくなっている。」
彼が言うように彼のスキルは不死だ。厳密に言えば完全な不死ではない。心臓を破壊されれば不死のスキルを持った者の生命活動は止まるがそれ以外の事なら何があろうと死なない。
だが何度もスキルの効果で身体を修復すると次第に限界が来てしまう。彼の欠損や傷がその証拠。不死の能力者はほとんど壁役のように酷使され、使えなくなった辺りでこの森に廃棄される。
「私はアルキュラとして死にたい。あの亡者のように自らの事を忘れ彷徨う姿にはなりたくないのだ。」
「治す方法は必ずあるはずです。だからこの森を抜けて生きましょう!」
「フフフ……君はやはり優しい男だ。だが私は手遅れなのだ。生きているだけで蝕まれ、時折自分が誰か分からなくなる。だから頼む。私を!」
不死の能力を持った能力者はそれなりに多く生まれる。酷使されて狩られてと身体を傷つけられ続けた不死能力者は精神が能力に耐え切れず廃人となって辺りを彷徨う。手足が再生しきらないものは虫けらのように這って進む。
そうなってしまえば身体は治せたとしても心は治るのかは分からない。アルキュラは礼儀正しくそして誇りある男。あの姿になることが耐え切れないのだろう。
「でも――」
「――君に負担をかけてしまうことは心苦しい。だが暗示で自死はできない。だからアムロス君を見込んで……頼む!」
無能者狩りの為、研究所の魔術師が強力な暗示をかけて俺たちに自殺という手段を取らせないようにしていて、自分で首を絞めても手が弛むし身体を突き刺そうとしても精々マッサージ程度にしか突けない。
だが無能者狩りの為、一応同族ではあるので人間や能力者への攻撃は行える。こちらが攻撃の手を緩めては戦闘訓練にならないという理屈だろう。だから今彼を殺すことができるのは俺しかいない。
「さあ、私を……!」
「できない……。」
「ふ……ふふ。私などの為に涙を流してくれるとは。最期に良き友に出会えた……。アムロス、必ず生きてくれ。」
「ああああああああああッ!」
俺は刺した。元々魔王を殺すために創られた俺の手による刺突は無抵抗の人間の身体程度は容易に貫ける。アルキュラは血を吐いた。だがまだ生きている。完全に潰さねば彼の身体はまた修復を始めるのだ。
俺は彼の身体から心臓を引きずり出して潰した。俺は友を殺した。そして俺は悲しみと寂しさとそしてこのような事をさせる原因となった者たちへの怒りとで友の亡骸の前でへたり込んでしまった。だがその時
「見つけたぜぇ。無能がぁ。」
無能者を狩りに来た能力者の声が響いた。
見た目はほとんど人間と変わらない。だが俺が今背を向けて遠ざかっている大きな建物、いわば研究所で特殊な処置を施されて生み出された人間が能力者だと聞かされた。
俺も当然スキルを持っている。スキル名は『略取』。敵から物を奪う能力……とは言っても敵に直接近づいて物に触れなければ奪えない。正直能力が高い者ならスキル無しでもできる。触れれば奪える分楽ではあるものの残念ながら俺は敵に接近して戦えるほどの力はない。それ故に無能者の烙印を捺され、研究所外の森に『廃棄』されたのだ。
そして俺が手を引いて一緒に逃げている男も俺と同じく無能者の烙印を捺された男だ。この森で知り合った。彼は俺より先にこの森に廃棄されたようで俺に様々な事を教えてくれた。
その内の1つに今追ってきている者の話だ。研究所の奴等は何故か俺たちを殺さずに生かして廃棄しているのは能力者に無能者を狩らせて戦闘経験を稼ぐためとのことだ。追う男は何の疑問も持っていないかのように俺たちを狩ろうとする能力者。
だが奴はあまり足が速くないようで、俺でも何とか逃げ切れた。俺は周囲を伺って能力者が居ないことを確認し腰を下ろした。
「何とか逃げ切れましたね。」
「私のことは大丈夫だと言ったのに。私の為に君が危険な目に遭う必要は無い。」
彼は半分とろけてしまった顔をこちらに向けてそう言う。彼の服はボロボロで体中に傷が残っているし胴体が抉れているような箇所もある。そのような痛々しい姿だった。
「アムロス君。」
「はい?何でしょう?」
不意に彼が俺の名前を呼ぶ。元々丁寧な話し方をする彼だが妙に畏まっている。一体何だろうかと思った。彼の様子は少し落ち着かずソワソワとしている。何かを話したいようだが中々決心がつかなさそうだ。俺は彼が何を言いたいのか分からず首を傾げながら彼を見るのみ。だが遂に意を決して彼は口を開いた。
「アムロス君……私を、殺してくれ。」
「な、何を言い出すんです!」
「私の身体は最早限界。『不死』のスキルでも修復が利かなくなっている。」
彼が言うように彼のスキルは不死だ。厳密に言えば完全な不死ではない。心臓を破壊されれば不死のスキルを持った者の生命活動は止まるがそれ以外の事なら何があろうと死なない。
だが何度もスキルの効果で身体を修復すると次第に限界が来てしまう。彼の欠損や傷がその証拠。不死の能力者はほとんど壁役のように酷使され、使えなくなった辺りでこの森に廃棄される。
「私はアルキュラとして死にたい。あの亡者のように自らの事を忘れ彷徨う姿にはなりたくないのだ。」
「治す方法は必ずあるはずです。だからこの森を抜けて生きましょう!」
「フフフ……君はやはり優しい男だ。だが私は手遅れなのだ。生きているだけで蝕まれ、時折自分が誰か分からなくなる。だから頼む。私を!」
不死の能力を持った能力者はそれなりに多く生まれる。酷使されて狩られてと身体を傷つけられ続けた不死能力者は精神が能力に耐え切れず廃人となって辺りを彷徨う。手足が再生しきらないものは虫けらのように這って進む。
そうなってしまえば身体は治せたとしても心は治るのかは分からない。アルキュラは礼儀正しくそして誇りある男。あの姿になることが耐え切れないのだろう。
「でも――」
「――君に負担をかけてしまうことは心苦しい。だが暗示で自死はできない。だからアムロス君を見込んで……頼む!」
無能者狩りの為、研究所の魔術師が強力な暗示をかけて俺たちに自殺という手段を取らせないようにしていて、自分で首を絞めても手が弛むし身体を突き刺そうとしても精々マッサージ程度にしか突けない。
だが無能者狩りの為、一応同族ではあるので人間や能力者への攻撃は行える。こちらが攻撃の手を緩めては戦闘訓練にならないという理屈だろう。だから今彼を殺すことができるのは俺しかいない。
「さあ、私を……!」
「できない……。」
「ふ……ふふ。私などの為に涙を流してくれるとは。最期に良き友に出会えた……。アムロス、必ず生きてくれ。」
「ああああああああああッ!」
俺は刺した。元々魔王を殺すために創られた俺の手による刺突は無抵抗の人間の身体程度は容易に貫ける。アルキュラは血を吐いた。だがまだ生きている。完全に潰さねば彼の身体はまた修復を始めるのだ。
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