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第二章

味見

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 入った部屋は机といいカウンター付きの石の厨房といい…酒場にしか見えない。

 宿舎の一階にあるので食堂なのだろうが、健全な印象を受けないのは散らかった床のせいだ。

 奥の机にうつ伏せ、空の酒器しゅきを片手に眠っている兵士もいる。

「……」

 酒臭い……

「休息、には不向きな部屋のようですね」

「悪いが個室は全て埋まっているのだ。家なしのお前には、ここで寝泊まりしてもらう」

「そういう事なら、地下の牢をひとつお貸し頂ければ有り難いのですケド」

「我儘を言える立場か?」

「…っ」

 おどけた口調で軽く笑ったシアンの首を掴み、男が顔を寄せてきた。

 至近距離でシアンの顔を物色する。

「本当に上玉だなぁ。女でもこう綺麗な顔は見たことない」

「…ク…ッ──!!」

「おっ…と」

 無遠慮に掴んでいた手をシアンが払う。

 首をかばって何度か咳き込み、ふらふらと後ろに下がった。そして背後の机に乗り上げて腰を下ろした。

「なんだ反抗的だな。まだこの部屋が気に食わないと言うつもりか?」

「…ッ…ゴホッ ゴホッ!…確…かに、盗られて困るような物も…持ち歩いていませんし。個室でなくとも構いませんよ」

「ははは、安心しろ。お前の荷物になんぞ誰も興味ない。あるのは…!」

「ッ…──!」

 シアンの両肩を男が押さえ付け、体重をかけられたシアンは机の上に仰向けに倒れた。

「興味があるのはだけだ。なあ良いだろ?案内の礼に味見させろよ」

「…っ…強引ですね」

「はぁぁ…良い匂いまでしやがる…何の匂いだこれは?」

 いとも容易くシアンの衣服を剥ぎ取った男は首筋に顔を埋め、荒々しく息をする。

 将官と戯れる姿をただ見物させられ、我慢も限界だったのか。体温もやたらと高い。

 鼻息荒くシアンの上に被さってきた。


「…っ…うるっさいな」

 しかしここで、机がガタンと音を立てた拍子に、奥で寝ていた別の兵士を眠りから覚ましてしまう。

「ふあ~あ、ん?おいおい!そこで何してる?」

「ちっ…邪魔がはいった」

 欠伸アクビをして立ち上がったそいつは持っていた空器を床に捨て、シアン達に近付いた。

 馬乗りの男とは反対側に回り込み、机に仰向けのシアンを赤い顔で覗き見る。

「いい女だな!どこで見つけた?」

「女じゃない男だ!今日はいったばかりの新人だ」

「お、男?…はあ?」

 まだ酔いが抜けていないのか焦点の定まらない目が、信じられないと言いたげにシアンを見下ろす。

「男ー?んー、男ねえー?」

「邪魔するならさっさと持ち場に戻れっ」

「お前も仕事ほったらかしで遊んでるじゃないか。…んまぁ男だろうと女だろうと構わないか」

 やはり酔っている。しまりのない顔でニタニタと笑う男は、勝手に自分の下衣を弛め始めた。

「酒をひっかけたせいで少し溜まっていてな。便所まで歩く手間がはぶけた。おい、口開けろや」

「は?ふざけるな!貴様の小便の臭いなんぞ嗅がされた日には、一瞬で萎えちまうだろう」

「……はぁ、うるさい奴だな。わかったわかった、小便のほうは我慢しといてやる」

「当たり前だ」

 当人を無視して身勝手に言い争う。新たに加わった男は渋々ではあるが折れたらしい。

「こいつを連れてきたのは俺だからな?貴様は俺が遊んだ後にしろ!」

「ちぃっ…ケチ臭い」

 その間にも男の手が身体中を這い回る。

 そして露わなふたつの乳首に喉を鳴らすと、片方の突起に吸い付いた。


「…ッ…んふっ」


 すると……それまで静かだったシアンの口から即座に声が漏れる。


「…ハァ…ん?なんだこいつ……」

「…ん‥ッ…」

「舐めただけで…?……ハァっ…はは、反応しやがる……!」

「…ッ」

 白い胸板で尖る小さなふたつの実を、厚ぼったい唇がついばんでくる。

 力任せにそうされても嫌悪が勝る筈なのだが、残念ながらシアンの身体は選り好みができる状態じゃない。

 そうだ。今まで彼が相手にしてきたも、大半が金だけ積んでたいした技量を持たない勘違い共だった。

 そんな連中ばかりを相手にしてきた彼の中にはとっくにルールが完成していた。

 触れられれば、感じる。

「…ッ─ァ‥‥!……ん…」

「あー……すっご……エロ……」

 男は一気に愉しくなったようで、もう片方の尖りを指ではさんで引っ張る。力を入れて潰すようにひねりを加えた。

 艶めく声に合わせ、強張る身体。反らした背中が机から浮き上がる。

 桃色の突起を無骨な指でグリグリと弄ばれれば、──それが強引であればあるほど、彼の背中は大きくしなった。

「ァ‥ッッ‥」

「…………………」

 下衣を弛めたままの酒飲み男は、シアンと──それに絡みつく男を傍観しながら、シアンの色っぽい反応に興奮していた。

「…っ…こいつやっぱり女なんじゃ…?」

 そしてボソリと呟いたかと思うと、シアンに被さる男の肩を突き飛ばした。

「ッ…貴様まだ邪魔するのか!」

「いいからっ、胸ばっか吸ってないでお前は下を確認しろよ!こいつ胸が平べったいだけの女かもしれないだろ」

「んあっ?…そ、そうか…!?」

 馬鹿なのか

 酒臭い息を吹きかけられて痛くなりそうな頭で、シアンは思ったに違いない。

 だが興奮状態の男達はシアンの呆れ顔に気付かず、残った衣服を脱がしにかかった。獲物を取り合ったり、急に意気投合してみせたり…忙しない連中だ。

 胸を舐めていた男はその狙いを下半身に移し、局所に巻いた下着を解きだす。


シュルっ……


「‥‥ッッ」

 シアンが半身を起こそうとすると、抵抗されると思ったのか、もう一方の男が両手で頭を持って机に押さえ付けた。

「早く見せろよっ早く!」

「わかってる」

「‥‥ッッ」

 木の机に磔にされたシアンはされるがまま、二人の前で全てを剥ぎ取られた。


「…………………ぉ」


 無駄な肉を削ぎ落とした長い肢体。女のような丸みは無く、だが、男のような固さも感じない。しなやかだ。

 下生えすら処理された躰は神秘的とさえ思えて……

 その中心に垂れた紛れもない男のシンボルが、よけいに厭らしさを増していた。



「…付いていたな、男か」

「っ‥‥!!」

「ん~?…は、ははは、やっぱ男ならコレが弱点か?」

「ぁ、ん、‥…ん‥‥//」

 駱駝ラクダの手綱でも扱うように、まだ柔らかい幹を鷲掴む。

 シアンが咄嗟に身悶えたのを見た男は、そのままグニグニと指を動かして男根を刺激した。

「…ッ‥あ、あ…!」

「まだ柔らかいが……ほらどうだぁ?気持ちいいのか?どうなんだ?」

「…ッ‥‥//」

「さっさと言え!」

「…‥き、もち、い‥‥‥!!」

「ハァ、ハァ、エロい奴だなっ…」

「ふ、ぅ…ッ‥‥ァ‥!!」

 粗野な愛撫にさらされて、開発済みの男根は徐々に硬さを帯びてくる。

 表面は柔らかいまま芯が先に硬くなり、垂れていた幹が少しづつ持ち上がる。仕事の時間を思い出したかのように、従順に、男の掌に脈動を返した。

「あ…はぁっ‥ん‥‥っ」

 そして男の片手に包まれた先端では、鈴口の割れ目がひくりと動き、透明な蜜が先走る。

「へへっ…おい、もう涎が垂れてるぞ…?おねだりか?」

「ハァっ…ハァっ…!」

「仕方がない可愛がってやるか」

「──‥ッッ…んああっ」

 男はあいた掌を先端に軽く当て、鈴口全体にヌメリを塗り広げるように円を描いて動かした。

 支柱は変わらずグニグニと強く握ったまま、敏感な場所は別の手で揉み込んでいく。

「ああっ‥」

 天井に向かって腰が跳ねる。

「ハハ!こいつの…掴んでなきゃネズミみたいに逃げていっちまいそうだ!」

「先っぽ虐められるのか好きってか?」

「違いねぇ…!ヌルヌルされるのがお好みらしい」

「あはぁっ…‥‥そ、こ‥‥!!」

 裏筋を指の腹でヌルりと擦られ、引き攣った喘声が零れる。

 先端の柔らかな膨らみは水飴を練るように掌でこねられ、否応なしに快感を蓄積させられた。

 強制的に発情させられる屹立を、二人の男達に笑いながら観察される──。それは屈辱的であり、惨めだ。

 しかしこの惨めな状況こそが、シアンの身体を鞭打つがごとく頂きへと引き上げる。まったく救いのない躰だと、彼は自身を憐れまずにいられないだろうに。

「はぁ…もう我慢も限界だ!こっちを使わせろ」

「──ン‥ふ‥!!」

 お預けをくらっていたひとりが机に乗り上げる。

 そして両手で固定したシアンの顔めがけて、自らの腰を突き出してきた。

「口を開けろ!そうだっ…そのまま…!」

「んん‥‥ッッ」

「はぁっはぁっ…いい ぞぉ…」

 瞬時に判断したシアンの口が汚いソレを受け入れる。すると男の剛直がシアンの口腔へ穿たれ、深くまで押し入ってきた。

 歯を立てないよう咄嗟に口を窄めたのが気に入ったらしく、男は満足げに前後の律動を始める。

 あまり深すぎて嘔吐してはならないので、舌で先端を押し返してやる。するとそれもヨカったのか男は「おお」と低く呻いていた。

 どちらからも見られない位置で苦しく顔を歪ませたシアンは、ただ耐え忍ぶことを選んだ。

「はっ…はっ…いいな、こいつの、なかなかいい…!」

「おい…勝手に先に始めるな!」

「お前はそっちでっ…遊んでおけばいいだろ?手が止まってるぞ」

「チッ……貸しだからな」

「んッ‥んッ…んんんッ‥//……んんん‥‥!」

 どちらが先だろうとシアンには関係ない。

 どうせ二人の男を満足させるまで解放はない。

「…んふ─ッ‥ン、んんっんっ‥!!」

 口を使われながら屹立を弄ばれ、苦しさと快感の暴力に今日もまた沈められようとしている。

 こればかりは……慣れるすべが無いことが恨めしかった。





──


「おい!急いで持ち場に戻れ!!」

「‥‥!」





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