13 / 143
第二章
味見
しおりを挟む入った部屋は机といいカウンター付きの石の厨房といい…酒場にしか見えない。
宿舎の一階にあるので食堂なのだろうが、健全な印象を受けないのは散らかった床のせいだ。
奥の机にうつ伏せ、空の酒器を片手に眠っている兵士もいる。
「……」
酒臭い……
「休息、には不向きな部屋のようですね」
「悪いが個室は全て埋まっているのだ。家なしのお前には、ここで寝泊まりしてもらう」
「そういう事なら、地下の牢をひとつお貸し頂ければ有り難いのですケド」
「我儘を言える立場か?」
「…っ」
おどけた口調で軽く笑ったシアンの首を掴み、男が顔を寄せてきた。
至近距離でシアンの顔を物色する。
「本当に上玉だなぁ。女でもこう綺麗な顔は見たことない」
「…ク…ッ──!!」
「おっ…と」
無遠慮に掴んでいた手をシアンが払う。
首をかばって何度か咳き込み、ふらふらと後ろに下がった。そして背後の机に乗り上げて腰を下ろした。
「なんだ反抗的だな。まだこの部屋が気に食わないと言うつもりか?」
「…ッ…ゴホッ ゴホッ!…確…かに、盗られて困るような物も…持ち歩いていませんし。個室でなくとも構いませんよ」
「ははは、安心しろ。お前の荷物になんぞ誰も興味ない。あるのは…!」
「ッ…──!」
シアンの両肩を男が押さえ付け、体重をかけられたシアンは机の上に仰向けに倒れた。
「興味があるのはコッチだけだ。なあ良いだろ?案内の礼に味見させろよ」
「…っ…強引ですね」
「はぁぁ…良い匂いまでしやがる…何の匂いだこれは?」
いとも容易くシアンの衣服を剥ぎ取った男は首筋に顔を埋め、荒々しく息をする。
将官と戯れる姿をただ見物させられ、我慢も限界だったのか。体温もやたらと高い。
鼻息荒くシアンの上に被さってきた。
「…っ…うるっさいな」
しかしここで、机がガタンと音を立てた拍子に、奥で寝ていた別の兵士を眠りから覚ましてしまう。
「ふあ~あ、ん?おいおい!そこで何してる?」
「ちっ…邪魔がはいった」
欠伸をして立ち上がったそいつは持っていた空器を床に捨て、シアン達に近付いた。
馬乗りの男とは反対側に回り込み、机に仰向けのシアンを赤い顔で覗き見る。
「いい女だな!どこで見つけた?」
「女じゃない男だ!今日はいったばかりの新人だ」
「お、男?…はあ?」
まだ酔いが抜けていないのか焦点の定まらない目が、信じられないと言いたげにシアンを見下ろす。
「男ー?んー、男ねえー?」
「邪魔するならさっさと持ち場に戻れっ」
「お前も仕事ほったらかしで遊んでるじゃないか。…んまぁ男だろうと女だろうと構わないか」
やはり酔っている。しまりのない顔でニタニタと笑う男は、勝手に自分の下衣を弛め始めた。
「酒をひっかけたせいで少し溜まっていてな。便所まで歩く手間がはぶけた。おい、口開けろや」
「は?ふざけるな!貴様の小便の臭いなんぞ嗅がされた日には、一瞬で萎えちまうだろう」
「……はぁ、うるさい奴だな。わかったわかった、小便のほうは我慢しといてやる」
「当たり前だ」
当人を無視して身勝手に言い争う。新たに加わった男は渋々ではあるが折れたらしい。
「こいつを連れてきたのは俺だからな?貴様は俺が遊んだ後にしろ!」
「ちぃっ…ケチ臭い」
その間にも男の手が身体中を這い回る。
そして露わなふたつの乳首に喉を鳴らすと、片方の突起に吸い付いた。
「…ッ…んふっ」
すると……それまで静かだったシアンの口から即座に声が漏れる。
「…ハァ…ん?なんだこいつ……」
「…ん‥ッ…」
「舐めただけで…?……ハァっ…はは、反応しやがる……!」
「…ッ」
白い胸板で尖る小さなふたつの実を、厚ぼったい唇がついばんでくる。
力任せにそうされても嫌悪が勝る筈なのだが、残念ながらシアンの身体は選り好みができる状態じゃない。
そうだ。今まで彼が相手にしてきた客も、大半が金だけ積んでたいした技量を持たない勘違い共だった。
そんな連中ばかりを相手にしてきた彼の中にはとっくにルールが完成していた。
触れられれば、感じる。
「…ッ─ァ‥‥!……ん…」
「あー……すっご……エロ……」
男は一気に愉しくなったようで、もう片方の尖りを指ではさんで引っ張る。力を入れて潰すようにひねりを加えた。
艶めく声に合わせ、強張る身体。反らした背中が机から浮き上がる。
桃色の突起を無骨な指でグリグリと弄ばれれば、──それが強引であればあるほど、彼の背中は大きくしなった。
「ァ‥ッッ‥」
「…………………」
下衣を弛めたままの酒飲み男は、シアンと──それに絡みつく男を傍観しながら、シアンの色っぽい反応に興奮していた。
「…っ…こいつやっぱり女なんじゃ…?」
そしてボソリと呟いたかと思うと、シアンに被さる男の肩を突き飛ばした。
「ッ…貴様まだ邪魔するのか!」
「いいからっ、胸ばっか吸ってないでお前は下を確認しろよ!こいつ胸が平べったいだけの女かもしれないだろ」
「んあっ?…そ、そうか…!?」
馬鹿なのか
酒臭い息を吹きかけられて痛くなりそうな頭で、シアンは思ったに違いない。
だが興奮状態の男達はシアンの呆れ顔に気付かず、残った衣服を脱がしにかかった。獲物を取り合ったり、急に意気投合してみせたり…忙しない連中だ。
胸を舐めていた男はその狙いを下半身に移し、局所に巻いた下着を解きだす。
シュルっ……
「‥‥ッッ」
シアンが半身を起こそうとすると、抵抗されると思ったのか、もう一方の男が両手で頭を持って机に押さえ付けた。
「早く見せろよっ早く!」
「わかってる」
「‥‥ッッ」
木の机に磔にされたシアンはされるがまま、二人の前で全てを剥ぎ取られた。
「…………………ぉ」
無駄な肉を削ぎ落とした長い肢体。女のような丸みは無く、だが、男のような固さも感じない。しなやかだ。
下生えすら処理された躰は神秘的とさえ思えて……
その中心に垂れた紛れもない男のシンボルが、よけいに厭らしさを増していた。
「…付いていたな、男か」
「っ‥‥!!」
「ん~?…は、ははは、やっぱ男ならコレが弱点か?」
「ぁ、ん、‥…ん‥‥//」
駱駝の手綱でも扱うように、まだ柔らかい幹を鷲掴む。
シアンが咄嗟に身悶えたのを見た男は、そのままグニグニと指を動かして男根を刺激した。
「…ッ‥あ、あ…!」
「まだ柔らかいが……ほらどうだぁ?気持ちいいのか?どうなんだ?」
「…ッ‥‥//」
「さっさと言え!」
「…‥き、もち、い‥‥‥!!」
「ハァ、ハァ、エロい奴だなっ…」
「ふ、ぅ…ッ‥‥ァ‥!!」
粗野な愛撫にさらされて、開発済みの男根は徐々に硬さを帯びてくる。
表面は柔らかいまま芯が先に硬くなり、垂れていた幹が少しづつ持ち上がる。仕事の時間を思い出したかのように、従順に、男の掌に脈動を返した。
「あ…はぁっ‥ん‥‥っ」
そして男の片手に包まれた先端では、鈴口の割れ目がひくりと動き、透明な蜜が先走る。
「へへっ…おい、もう涎が垂れてるぞ…?おねだりか?」
「ハァっ…ハァっ…!」
「仕方がない可愛がってやるか」
「──‥ッッ…んああっ」
男はあいた掌を先端に軽く当て、鈴口全体にヌメリを塗り広げるように円を描いて動かした。
支柱は変わらずグニグニと強く握ったまま、敏感な場所は別の手で揉み込んでいく。
「ああっ‥」
天井に向かって腰が跳ねる。
「ハハ!こいつの…掴んでなきゃネズミみたいに逃げていっちまいそうだ!」
「先っぽ虐められるのか好きってか?」
「違いねぇ…!ヌルヌルされるのがお好みらしい」
「あはぁっ…‥‥そ、こ‥‥!!」
裏筋を指の腹でヌルりと擦られ、引き攣った喘声が零れる。
先端の柔らかな膨らみは水飴を練るように掌でこねられ、否応なしに快感を蓄積させられた。
強制的に発情させられる屹立を、二人の男達に笑いながら観察される──。それは屈辱的であり、惨めだ。
しかしこの惨めな状況こそが、シアンの身体を鞭打つがごとく頂きへと引き上げる。まったく救いのない躰だと、彼は自身を憐れまずにいられないだろうに。
「はぁ…もう我慢も限界だ!こっちを使わせろ」
「──ン‥ふ‥!!」
お預けをくらっていたひとりが机に乗り上げる。
そして両手で固定したシアンの顔めがけて、自らの腰を突き出してきた。
「口を開けろ!そうだっ…そのまま…!」
「んん‥‥ッッ」
「はぁっはぁっ…いい ぞぉ…」
瞬時に判断したシアンの口が汚いソレを受け入れる。すると男の剛直がシアンの口腔へ穿たれ、深くまで押し入ってきた。
歯を立てないよう咄嗟に口を窄めたのが気に入ったらしく、男は満足げに前後の律動を始める。
あまり深すぎて嘔吐してはならないので、舌で先端を押し返してやる。するとそれもヨカったのか男は「おお」と低く呻いていた。
どちらからも見られない位置で苦しく顔を歪ませたシアンは、ただ耐え忍ぶことを選んだ。
「はっ…はっ…いいな、こいつの、なかなかいい…!」
「おい…勝手に先に始めるな!」
「お前はそっちでっ…遊んでおけばいいだろ?手が止まってるぞ」
「チッ……貸しだからな」
「んッ‥んッ…んんんッ‥//……んんん‥‥!」
どちらが先だろうとシアンには関係ない。
どうせ二人の男を満足させるまで解放はない。
「…んふ─ッ‥ン、んんっんっ‥!!」
口を使われながら屹立を弄ばれ、苦しさと快感の暴力に今日もまた沈められようとしている。
こればかりは……慣れる術が無いことが恨めしかった。
──
「おい!急いで持ち場に戻れ!!」
「‥‥!」
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
愛して、許して、一緒に堕ちて・オメガバース【完結】
華周夏
BL
Ωの身体を持ち、αの力も持っている『奏』生まれた時から研究所が彼の世界。ある『特殊な』能力を持つ。
そんな彼は何より賢く、美しかった。
財閥の御曹司とは名ばかりで、その特異な身体のため『ドクター』の庇護のもと、実験体のように扱われていた。
ある『仕事』のために寮つきの高校に編入する奏を待ち受けるものは?
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
くっころ勇者は魔王の子供を産むことになりました
あさきりゆうた
BL
BLで「最終決戦に負けた勇者」「くっころ」、「俺、この闘いが終わったら彼女と結婚するんだ」をやってみたかった。
一話でやりたいことをやりつくした感がありますが、時間があれば続きも書きたいと考えています。
21.03.10
ついHな気分になったので、加筆修正と新作を書きました。大体R18です。
21.05.06
なぜか性欲が唐突にたぎり久々に書きました。ちなみに作者人生初の触手プレイを書きました。そして小説タイトルも変更。
21.05.19
最終話を書きました。産卵プレイ、出産表現等、初めて表現しました。色々とマニアックなR18プレイになって読者ついていけねえよな(^_^;)と思いました。
最終回になりますが、補足エピソードネタ思いつけば番外編でまた書くかもしれません。
最後に魔王と勇者の幸せを祈ってもらえたらと思います。
23.08.16
適当な表紙をつけました
主神の祝福
かすがみずほ@11/15コミカライズ開始
BL
褐色の肌と琥珀色の瞳を持つ有能な兵士ヴィクトルは、王都を警備する神殿騎士団の一員だった。
神々に感謝を捧げる春祭りの日、美しい白髪の青年に出会ってから、彼の運命は一変し――。
ドSな触手男(一応、主神)に取り憑かれた強気な美青年の、悲喜こもごもの物語。
美麗な表紙は沢内サチヨ様に描いていただきました!!
https://www.pixiv.net/users/131210
https://mobile.twitter.com/sachiyo_happy
誠に有難うございました♡♡
本作は拙作「聖騎士の盾」シリーズの派生作品ですが、単品でも読めなくはないかと思います。
(「神々の祭日」で当て馬攻だったヴィクトルが受になっています)
脇カプの話が余りに長くなってしまったので申し訳ないのもあり、本編から独立しました。
冒頭に本編カプのラブシーンあり。
獅子帝の宦官長
ごいち
BL
皇帝ラシッドは体格も精力も人並外れているせいで、夜伽に呼ばれた側女たちが怯えて奉仕にならない。
苛立った皇帝に、宦官長のイルハリムは後宮の管理を怠った罰として閨の相手を命じられてしまう。
強面巨根で情愛深い攻×一途で大人しそうだけど隠れ淫乱な受
R18:レイプ・モブレ・SM的表現・暴力表現多少あります。
2022/12/23 エクレア文庫様より電子版・紙版の単行本発売されました
電子版 https://www.cmoa.jp/title/1101371573/
紙版 https://comicomi-studio.com/goods/detail?goodsCd=G0100914003000140675
単行本発売記念として、12/23に番外編SS2本を投稿しております
良かったら獅子帝の世界をお楽しみください
ありがとうございました!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる