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11 屯所までの道のり 5

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 山南にそう諭されても文句を言いたくなる沖田だ。
 内心わかっていても言わずにはいられない。

「二人は特別ですよ。わかってるくせに…ずるいですよ。敬さん」

 先生や歳さんは、俺の身内みたいな存在。
いや、それ以上の絆がある…でも敬さんは…俺にとって…初めて心許せる人。

 あまりにも近すぎて言えない事が増えていった。
 ただ、山南だけはそれとは違った。

 近藤や土方とは全然違う、他から来たという別のにおいのせいかもしれなかった。

「俺になにひとつしがらみがなかったら…敬さんについて行きたいですよ」

 静かにポツリと本音が零れる。
 顔を見て言えない自分があまりにもちいさき者だと弱い者だと思えてやるせなかった。 

 これが本心なんだ…叶わないけど…。敬さんの傍はいつも優しい空間に包まれる…俺を癒してくれる人…。

 そう思っても沖田は進める歩を緩めることはない。
 任務に対しては非情になれる。

 それが「沖田総司」という男なのだ。

 たとえそこに本心がなくてもやり遂げてしまう。
 だからこそ、相反する気持ちを推し量って土方は沖田に山南の追跡と捕縛を任命したのだ。

 下を向きながら歩く沖田に優しく言葉をかけた。

「…総司、お前には二人を置いていけない。そうだろ?」

 嬉しい事言うなぁ。
 山南にとってそれだけでもう十分だったのだ。

「…わかってますよ」
 
 拗ねるような口調で答える沖田。

 沖田は自ら試衛館へ住み込みで此処において欲しいと頼み込んだのを思い出していた。

 その当時主を失った沖田家は貧しく上の姉が婿を取って沖田家を辛うじて存続は叶ったものの、幼い沖田にはもうそこに居場所がなかった。

 俺には先生方に恩義がある。あの時、この俺を受け入れてくれなかったら…きっと俺はここにはいない…そう、わかってるさ。

 沖田は決して近藤を近藤と共に新撰組を担う土方二人を裏切れないのだ。

 沖田からすると一番長く刻を共にした家族のような身近な存在……それが近藤と土方なのだ。

    
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