あみdan

わらいしなみだし

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『編み物男子部』?ができるまで。

196 一人の部活を終えて…… 3

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 じょうちゃんは着替えるために部室へと向かった後ろ姿を微笑で眺め、智さんがいる方向へ歩いていった。
 ファンと楽しく話をしていた智さんが俺に気付いて彼女たちの元から離れて俺の方へ走ってくる。
 先ほどの彼女たちに見せる笑顔とは違って完全に無防備な笑顔だ。こんな笑顔を見せられたら普通なら絆されるんだろうな……なんて思いつつ、俺も笑顔で智さんを迎えた。

「智さん、お疲れさまです」

 そのように告げてから渡すのはいつものはちみつ漬けレモン。違いがあるとすれば、タッパーのままではなく袋に入っている。その袋はもちろん神崎川に使っていたおさがりになるんだけど。

「翔琉ー!」

 嬉しそうに叫んで袋を無視して俺に抱きついてくる智さん。そして左の頬に軽いキスをしてきた。

「ちょ、ちょっと智さん!」

 俺が智さんの腕の中から離れようとした。
 こんなところでそれも頬にキスなんかされて、黙ってるほど俺はお人好しじゃない。完全に智さんにホールドされているから逃れることなんか出来ないんだけど。
 智さんの体温を感じながら俺は苦情を言う。
 その体温、嫌いじゃないけど……困るのだ。

「なんでキスなんかするんですか?変なことはしない約束、ですよね?」

「だって……いつもの場所にしたら翔琉、エロくなるし……。ほっぺの方が感じなくていいでしょ?それに……ひさっびさ過ぎてやっと翔琉に会えて嬉しかったもん!ダメなの?ほっぺ……じゃあー」

 智さんが笑みを浮かべて顔を首元に動こうとしたのを慌てて制止し懇願した。

「わ、わかったですから!頬でいいです!頬にしてください!首は……困りますから……ね?」

「翔琉ならそう言ってくれると思ってた!」

 喜びが溢れた笑顔で俺にウインクしてまたまたキスをする智さん。

 は、計られたかも……!

 そう思いはしたが、智さんの方が上手で俺の事になるとすぐ甘えてくる。上級生だとは思えない距離感だ。まぁ、友達……春海さんや和希さんに智さんが『彼女』って言われてしまうぐらいなんだから。
 でも、身長はもちろん智さんの方が上で見た目からしても俺の方が『彼女側』なんだろう。

 ま、付き合ってないけど。

 俺に頭でスリスリするのをやめたのは俺の手元にある袋に気がついてからだった。
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