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『編み物男子部』?ができるまで。
62 決戦は金曜日? 5
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嬉しそうに横でくっついて腕を絡めて歩いてる智さんに提案してみた。
「あの、俺、歩きにくいんですけど……離れてくれませんか?恥ずかしいですし」
「僕は恥ずかしくないし、歩き辛くても一緒にこうして歩きたいんだよ」
智さんは嬉しそうに余計に擦りついてくる。
あ、これは何を言っても聞きませんという態度だ。
それなら……これでどうかな?
「俺は……手、繋ぎたいんですけど。ダメですか?」
上目使いで懇願する。ちょっと困ったような物欲しそうな顔をして見せる。
「ね?智くん先輩!」
そう言われたいって言っていた言葉を難なく言いながら、智さんの好きそうな仕草をして見せる。
「翔琉がそういうんなら……手を繋ぐ!」
目を見張りながら喜んで俺の腕から離れてくれる。そうして手の指をいっぱいに広げて催促してくる。まだかな?まだかな?みたいな感じだ。
あの映像の一件以来、酷いことはされていない。
脅迫されているみたいなのに、屈しないけど智さんの傍にいると決めてから心が軽くなったのは自分でも以外だった。
だからこうして智さんをくすぐるような動作も出来る。
智さんはそれに甘えてくる。なんか不思議でちょっと可愛くも思えてきた。
なんだろう?
この状況は……。
智さんの手に促されるように俺はその手を同じようにそっと合わせてみた。
それを智さんが指と指を絡めて繋ぐ。
「翔琉知ってる?これって『恋人繋ぎ』なんだよ」
「俺が知ってると思います?」
し、知らなかった。でも俺はそんなことは気にならない。
好きでもない相手に何をしたって俺にとっては意味のないことだから。
これをじょうちゃんとすることになったら……
きっと恥ずかしそうに地面に視線をさ迷わせながら指を絡めて手を繋ぐんだろうね。
うん、智さんではそうはならないな……。
「でもしてくれるんでしょ?翔琉は」
「俺に拒否権あるんですか?」
「ないと言えばないし……あると言えばあるよ」
「嫌なことはしないって、部室で言いましたよね?これぐらいなら全然問題ないですよ。嫌なことは嫌だとはっきり言いますから。約束は守ってくださいね!」
俺が見せられる最大の笑顔で智さんに微笑んだ。
智さんと一緒にいることを決めたんだから、誠実に対応するのが相手への思いやりだと思うから。
嘘は言わない。笑顔だって、嘘ではない。
一緒にいるからにはギクシャクはしたくない。
心も身体もあげないけど、誠意は示す。心から……。
「うん、そうだね!キミって……会えば会うほど変わっていくね。魔法にかかった気分だよ」
魔法?変わったことを思う人だなぁ。
「そんなことないですよ。智さんを好きになることはないですけど、一緒にいてもいいな……って思っただけです」
「それって、矛盾してない?」
「俺からしたら矛盾でもなんでもないです。嫌々一緒にいたって楽しくないでしょ?お互いに。智さんと楽しくしたいと思っている訳ではないんですけど、歩み寄りたいんです。智さんに」
そうです。好きにはなりませんよ。
「僕は好きになって欲しいんだけどなぁ……。僕、完全に本気なんだけど」
俺の顔を覗き込み、キスするほどの近距離まで近づいてきた。
蕩けるような危険な眼差し。
睫毛も長い。
女たちを虜にしてきた顔だ……。
「俺は…智さんには落ちませんよ」
言い切る。目を見てしっかりと目線を絡めて。
本当にキスされてもおかしくない距離だ。
俺は智さんを信じてる。
同意がないことは決してしないことを……。
「キミには負けるよ。でも、今日は抱き締めることぐらいはしてもいい?」
悲しそうな……寂しそうな顔をしながら俺を見つめる。
絆された訳ではない。
抱き締めるぐらいなら……俺は許せる。
神崎川……じょうちゃん以外でも俺は抱き締めることに対しては平気な方だから……。
いや、違う。じょうちゃんだったら恥ずかしくって抱きしめることなんか出来ない。
じょうちゃん以外だからきっと出来るんだ……。
抱き締めたくなる衝動にかられることは時々ある。
朔田君だって抱き締めた。
今日の坂口君だって……抱き締めたかった。
相沢君でさえもそうしてあげたかった。
ただ……しなかっただけのことだ。
「いいですよ……。智さんが望むのなら……」
これは……本心だ。
「あの、俺、歩きにくいんですけど……離れてくれませんか?恥ずかしいですし」
「僕は恥ずかしくないし、歩き辛くても一緒にこうして歩きたいんだよ」
智さんは嬉しそうに余計に擦りついてくる。
あ、これは何を言っても聞きませんという態度だ。
それなら……これでどうかな?
「俺は……手、繋ぎたいんですけど。ダメですか?」
上目使いで懇願する。ちょっと困ったような物欲しそうな顔をして見せる。
「ね?智くん先輩!」
そう言われたいって言っていた言葉を難なく言いながら、智さんの好きそうな仕草をして見せる。
「翔琉がそういうんなら……手を繋ぐ!」
目を見張りながら喜んで俺の腕から離れてくれる。そうして手の指をいっぱいに広げて催促してくる。まだかな?まだかな?みたいな感じだ。
あの映像の一件以来、酷いことはされていない。
脅迫されているみたいなのに、屈しないけど智さんの傍にいると決めてから心が軽くなったのは自分でも以外だった。
だからこうして智さんをくすぐるような動作も出来る。
智さんはそれに甘えてくる。なんか不思議でちょっと可愛くも思えてきた。
なんだろう?
この状況は……。
智さんの手に促されるように俺はその手を同じようにそっと合わせてみた。
それを智さんが指と指を絡めて繋ぐ。
「翔琉知ってる?これって『恋人繋ぎ』なんだよ」
「俺が知ってると思います?」
し、知らなかった。でも俺はそんなことは気にならない。
好きでもない相手に何をしたって俺にとっては意味のないことだから。
これをじょうちゃんとすることになったら……
きっと恥ずかしそうに地面に視線をさ迷わせながら指を絡めて手を繋ぐんだろうね。
うん、智さんではそうはならないな……。
「でもしてくれるんでしょ?翔琉は」
「俺に拒否権あるんですか?」
「ないと言えばないし……あると言えばあるよ」
「嫌なことはしないって、部室で言いましたよね?これぐらいなら全然問題ないですよ。嫌なことは嫌だとはっきり言いますから。約束は守ってくださいね!」
俺が見せられる最大の笑顔で智さんに微笑んだ。
智さんと一緒にいることを決めたんだから、誠実に対応するのが相手への思いやりだと思うから。
嘘は言わない。笑顔だって、嘘ではない。
一緒にいるからにはギクシャクはしたくない。
心も身体もあげないけど、誠意は示す。心から……。
「うん、そうだね!キミって……会えば会うほど変わっていくね。魔法にかかった気分だよ」
魔法?変わったことを思う人だなぁ。
「そんなことないですよ。智さんを好きになることはないですけど、一緒にいてもいいな……って思っただけです」
「それって、矛盾してない?」
「俺からしたら矛盾でもなんでもないです。嫌々一緒にいたって楽しくないでしょ?お互いに。智さんと楽しくしたいと思っている訳ではないんですけど、歩み寄りたいんです。智さんに」
そうです。好きにはなりませんよ。
「僕は好きになって欲しいんだけどなぁ……。僕、完全に本気なんだけど」
俺の顔を覗き込み、キスするほどの近距離まで近づいてきた。
蕩けるような危険な眼差し。
睫毛も長い。
女たちを虜にしてきた顔だ……。
「俺は…智さんには落ちませんよ」
言い切る。目を見てしっかりと目線を絡めて。
本当にキスされてもおかしくない距離だ。
俺は智さんを信じてる。
同意がないことは決してしないことを……。
「キミには負けるよ。でも、今日は抱き締めることぐらいはしてもいい?」
悲しそうな……寂しそうな顔をしながら俺を見つめる。
絆された訳ではない。
抱き締めるぐらいなら……俺は許せる。
神崎川……じょうちゃん以外でも俺は抱き締めることに対しては平気な方だから……。
いや、違う。じょうちゃんだったら恥ずかしくって抱きしめることなんか出来ない。
じょうちゃん以外だからきっと出来るんだ……。
抱き締めたくなる衝動にかられることは時々ある。
朔田君だって抱き締めた。
今日の坂口君だって……抱き締めたかった。
相沢君でさえもそうしてあげたかった。
ただ……しなかっただけのことだ。
「いいですよ……。智さんが望むのなら……」
これは……本心だ。
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