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『編み物男子部』?ができるまで。
41 狙われた翌日の出来事 1
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神崎川が学校を休んだ。
担任が言うには無断欠席らしい。
いったい何があったんだろう?
知りたくてもわからない。
小学生時代の連絡網で自宅の電話番号は知っているけど掛けたことはない。
俺は高校生にしては珍しい分類に入るのかもしれないが、ガラケーもスマホも持っていない。両親さえ持っていない。もちろん弟もだ。
ねだった事もなければ必要と感じた事もなかった。
部活での連絡事項に少し不自由したくらい。
そう、だから神崎川と普通に電話で連絡をしたことがない。
する機会がなかった。
学校では普通にいつものように毎日会っていたし……。
気になっても我慢するしかない。
嫌な予感がする。
どうしようもないほどの……。
それでもただ、耐えるしかなかった。
休憩時間、心配そうに朔田君が俺の横に来る。でも、何も言わない。
本当は何か聞きたいんだと思う。
俺の顔をじっと見ながら何かに耐えてるような表情をするから。
坂口君も時々顔を覗かせては教室を不審者のようにキョロキョロ見渡す。
神崎川が居ないとわかっても俺に何も聞こうとはしないで、神崎川がいつも居た場所にただただ黙って居てくれる。笑顔を向けながら。
なんか、「大丈夫だよ」って言ってくれてる気がするんだ。
なんかあからさまの気遣いだけど、それでも俺の事を考えてくれているようで二人がそっとしていてくれるのが嬉しかった。
隣のクラスの相沢君もいつものように教室を見回すが、こっちに来ることはなく仲のいいA組の友達たちの輪に入っていった。
そしてこっちを親指で指して何かを聞いているようだった。
怪訝そうにする相沢君を見ながら、今日無断欠席をした神崎川がいったい何をしているのかどんなに考えてもわかることはなかった。
まだ、高校生活始まって二週間も経過していないのに、入学式の新年生挨拶をした神崎川が無断欠席……。
そのせいもあってこの話はクラス中だけではなく学年中に広がりをみせた。
今日の部活は珍しく初めて五人揃うことになった。
相沢君は来たのはまだ二回だけだし、朔田君は火曜日は用事があるって言ってたのに。
俺はどうやらみんなに心配されているらしい。
神崎川とはただの友達?……だというのに。
もしかしたら、神崎川が無断欠席した理由を俺が知っているとでも思われている……とか?
俺が気を使ったらきっともっと気を使われるような気がしていつも以上に普通にするように心がけた。
空回りしないことをそっと願いつつ。
朔田君は不器用なりにも鎖編みが出来るようになったので、今は鎖編みが同じ大きさに揃うように練習中だ。時々かぎ針が外れて元の位置がわからず、ほどいて一からやり直してる。
坂口君は編み目を何度も確認しながら細編みの練習をしながら、毛糸を左指に固定させられない相沢君の面倒を見ている。
そんな微笑ましい光景を見ながら俺と名塚君は『基本の編み物』の棒編みのページを開いて編み物論議を始めた。そのつもりだったのに……!
「鳴海君はマフラー作ったことある?」 ふと振られた言葉。
「あるよ」 なんてことはないとでもいうように答えた。
「いくつ作ったの?」
「待って。数えるから…」
小学一年の時に母にひとつ。二年の時は母だけじゃなく父にも。三年以降は両親と弟の颯汰にも作ってた。その六年間だから……
「十五……かな?」 あってるよね?
それを聞いて一角の塊が突然立ち上がって叫び始めた。
朔田君、坂口君、相沢君の三人である。
「な、何?そんなに作ってたの?」
「どういうこと?誰にあげたの?」
「そんなこと知らねーぞ!俺も欲しい!」
あ、聞き耳立ててたのね……。君たちは。
「俺は五歳の時から編み物してるから……」
「へ?」
「そんな前から?」
「いくらなんでも早すぎじゃねーの?」
一斉にすべての目が俺を見ている。
もちろん名塚君もだけど。
まだかまだかと、話を催促しているような雰囲気がひしひしと伝わってくる。
そんなに聞きたいことなの?
そう思ったけど、不意に立場を入れ換えて想像してみる。
自分だったら……やっぱり聞きたい!
なんか、話が逸れてしまいそうな……。
これからどんなマフラーを編んでみたいのか二人でいろんな作品を想像しながら、作る予定のマフラーの話をする予定だったのに。
ま、いっか……。
俺は腹を括って編み物をするきっかけを話すことにした。
担任が言うには無断欠席らしい。
いったい何があったんだろう?
知りたくてもわからない。
小学生時代の連絡網で自宅の電話番号は知っているけど掛けたことはない。
俺は高校生にしては珍しい分類に入るのかもしれないが、ガラケーもスマホも持っていない。両親さえ持っていない。もちろん弟もだ。
ねだった事もなければ必要と感じた事もなかった。
部活での連絡事項に少し不自由したくらい。
そう、だから神崎川と普通に電話で連絡をしたことがない。
する機会がなかった。
学校では普通にいつものように毎日会っていたし……。
気になっても我慢するしかない。
嫌な予感がする。
どうしようもないほどの……。
それでもただ、耐えるしかなかった。
休憩時間、心配そうに朔田君が俺の横に来る。でも、何も言わない。
本当は何か聞きたいんだと思う。
俺の顔をじっと見ながら何かに耐えてるような表情をするから。
坂口君も時々顔を覗かせては教室を不審者のようにキョロキョロ見渡す。
神崎川が居ないとわかっても俺に何も聞こうとはしないで、神崎川がいつも居た場所にただただ黙って居てくれる。笑顔を向けながら。
なんか、「大丈夫だよ」って言ってくれてる気がするんだ。
なんかあからさまの気遣いだけど、それでも俺の事を考えてくれているようで二人がそっとしていてくれるのが嬉しかった。
隣のクラスの相沢君もいつものように教室を見回すが、こっちに来ることはなく仲のいいA組の友達たちの輪に入っていった。
そしてこっちを親指で指して何かを聞いているようだった。
怪訝そうにする相沢君を見ながら、今日無断欠席をした神崎川がいったい何をしているのかどんなに考えてもわかることはなかった。
まだ、高校生活始まって二週間も経過していないのに、入学式の新年生挨拶をした神崎川が無断欠席……。
そのせいもあってこの話はクラス中だけではなく学年中に広がりをみせた。
今日の部活は珍しく初めて五人揃うことになった。
相沢君は来たのはまだ二回だけだし、朔田君は火曜日は用事があるって言ってたのに。
俺はどうやらみんなに心配されているらしい。
神崎川とはただの友達?……だというのに。
もしかしたら、神崎川が無断欠席した理由を俺が知っているとでも思われている……とか?
俺が気を使ったらきっともっと気を使われるような気がしていつも以上に普通にするように心がけた。
空回りしないことをそっと願いつつ。
朔田君は不器用なりにも鎖編みが出来るようになったので、今は鎖編みが同じ大きさに揃うように練習中だ。時々かぎ針が外れて元の位置がわからず、ほどいて一からやり直してる。
坂口君は編み目を何度も確認しながら細編みの練習をしながら、毛糸を左指に固定させられない相沢君の面倒を見ている。
そんな微笑ましい光景を見ながら俺と名塚君は『基本の編み物』の棒編みのページを開いて編み物論議を始めた。そのつもりだったのに……!
「鳴海君はマフラー作ったことある?」 ふと振られた言葉。
「あるよ」 なんてことはないとでもいうように答えた。
「いくつ作ったの?」
「待って。数えるから…」
小学一年の時に母にひとつ。二年の時は母だけじゃなく父にも。三年以降は両親と弟の颯汰にも作ってた。その六年間だから……
「十五……かな?」 あってるよね?
それを聞いて一角の塊が突然立ち上がって叫び始めた。
朔田君、坂口君、相沢君の三人である。
「な、何?そんなに作ってたの?」
「どういうこと?誰にあげたの?」
「そんなこと知らねーぞ!俺も欲しい!」
あ、聞き耳立ててたのね……。君たちは。
「俺は五歳の時から編み物してるから……」
「へ?」
「そんな前から?」
「いくらなんでも早すぎじゃねーの?」
一斉にすべての目が俺を見ている。
もちろん名塚君もだけど。
まだかまだかと、話を催促しているような雰囲気がひしひしと伝わってくる。
そんなに聞きたいことなの?
そう思ったけど、不意に立場を入れ換えて想像してみる。
自分だったら……やっぱり聞きたい!
なんか、話が逸れてしまいそうな……。
これからどんなマフラーを編んでみたいのか二人でいろんな作品を想像しながら、作る予定のマフラーの話をする予定だったのに。
ま、いっか……。
俺は腹を括って編み物をするきっかけを話すことにした。
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