あみdan

わらいしなみだし

文字の大きさ
上 下
55 / 339
『編み物男子部』?ができるまで。

35 新しい部員 1

しおりを挟む
 編み物部を作ろうと動き始めてから一週間程経過した。

 そんなある日の始業時間前に、俺のところにクラスメイトの堀君が別のクラスの生徒と一緒にやって来た。

「おはよう。堀君」
「鳴海君おはよう。ちょっといい?」
「改まってどうしたの?」

 堀君とは勧誘した時に一度話をしただけだから、別に仲がいいって訳でもない。
「僕から話すよ。堀、一緒に来てくれてありがとな」 
 知らない生徒が堀君の肩を叩いて俺の方を向いた。
「わかった。がんばれ!」 後押しをする堀君。

「はじめまして。C組の名塚といいます。堀は中学からの親友です。あ、あの……堀から教えてもらったんだ。編み物部っていうのがあるって。僕、入部希望なんです!」

 ハキハキとした声で彼が俺に話しかけてきた。
 名塚くんかぁ……。なんか、嬉しい!もう誰も入ってくれないと思ってたから。

「名塚君、はじめまして!鳴海です。一緒に編み物が出来るだなんて嬉しいよ!こちらこそヨロシク!」
 名塚君の手を掴んで両手で握りしめた。嬉しくて縦にブンブン振ってしまう。
「あ、ごめん。名塚君、もしよかったら入部理由聞いていい?」

 相沢君みたいな冷やかし入部はちょっと引ける。
 純粋に編み物がしたいって思ってくれてるといいな……なんて思いつつ。

「全然いいよ。僕、セーターが編めるようになりたいんだ」

 頬を染めながらはっきり言う。
 さすがの俺も驚いてしまい間の抜けた顔をしてしまった。さすがにセーターは想像の範囲外。いくら想像してみてもセーターって難易度高過ぎ!純粋な入部希望だ。

「俺、初心者に近いんだけど……」
 さすがにちょっと申し訳なくなって遠回りに「教えられる技量はない」と伝えた。

「そうなの?でも、鳴海君は編み物するんだよね?だったら一緒に上達すればいいだけの話だから。問題ないんじゃないかな?」
 なんかこのはっきりものを言う名塚君に好感を持てた。
「そういってくれて嬉しいよ!本当に入部してくれてありがとう!」

 あ、突然思い出してしまった。新しい部の申請は四月末。十名を確保しなければならないってことを!

「あ、ごめんね。先走っちゃった。実はまだ『編み物部』はないんだ」
「どういうこと?」

 話始めようとした時に、始業のチャイムが鳴った。

「あとで詳しく話すよ。今日の午後空いてる?」
「うん」
「じゃあ、放課後理科室に来て。そこで話をするから!」
「わかった。じゃあ、放課後ね!」

 俺たちは約束をして別れた。

「堀君!ありがとう!」
「ん?いいよ。大したことしてないし。あいつ、人見知りしないくせにさすがに初対面で声を掛け辛いっていうからさ」
「うん。彼、いいね!」
「だろ?親友だけじゃなく、俺の妹とつきあってるんだ」

 そう言って堀君は自分の席に足早く去っていった。

 そっかぁ……もしかしたら、その子にセーターつくってあげたいのかな?
 想像が膨らんで編み物部の楽しみがますます増えた気がした。



 神崎川が傍に来ていないことに気がつかない程、俺は浮かれていた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。

子連れ冒険者の受難クエスト

田中 乃那加
BL
 ルイト・カントール、それがこの物語の主人公。  彼は冒険者で、数々のクエスト(依頼)をこなす実力派。  そんでもってイケメンで女にモテにモテる、チートな人生を歩んでいた。  しかしある日、そんな彼の前に現れたのは――。  ノンケで女好き冒険者が、ある日シングルファザーに!?  しかも押し付けられた子供は魔族!?  男手ひとつで娘を育てんと奮起した若きパパが、けんめいにクエスト (金稼ぎ)に走り回る。  そして何故か、男にプロポーズされまくったり。エロい依頼を押し付けられたり。  人外に襲われたり、見初められたり――とにかく受難の育児クエスト! 異世界×育児×BLの、作者が楽しんで書くファンタジー。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

Tally marks

あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。 カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。 「関心が無くなりました。別れます。さよなら」 ✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。 ✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。 ✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。 ✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。 ✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません) 🔺ATTENTION🔺 このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。 そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。 そこだけ本当、ご留意ください。 また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい) ➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。 ➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。 ➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。 個人サイトでの連載開始は2016年7月です。 これを加筆修正しながら更新していきます。 ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗
BL
 前世で読んでいた小説の世界。  男主人公とヒロインを阻む、悪徳一族に転生してしまった。  第三皇子として新たな生を受けた主人公は、残虐な兄弟や、悪政を敷く皇帝から生き残る為に、残虐な人物を演じる。  そんな中、主人公は皇城に訪れた男主人公に遭遇する。  ガッツリBLでは無く、愛情よりも友情に近いかもしれません。 *残虐な描写があります。

処理中です...