あみdan

わらいしなみだし

文字の大きさ
上 下
60 / 339
『編み物男子部』?ができるまで。

40 募る不安

しおりを挟む
 あれ以来、神崎川は変だ。
 
 まず、俺の肩を抱き寄せるのをやめた。

 勧誘で神崎川が俺の肩を抱くのをやめたとばかり思っていたんだ。
 でも、違うと……最近気付き始めた。
 
 どうして?

 いつも肩にある神崎川の腕がなくなってしまったのが、少しばかり……いや、
 これは痩せ我慢な言い訳だよね?
 ホントはとっても肩にない神崎川の腕の温もりが恋しくて……寂しかったりする。
 もちろん、本人には言えないけど。

 そして……神崎川は部活を休んだ。
 俺に何も言わずに……。

 そのせいで俺は神崎川に言えないことが出来てしまった……。
 思い出すのはやめよう。
 気にしなければ、いいことだよね?

 日に日に俺の回りの環境が変わってきた。
 神崎川が俺の肩を抱き寄せなくなって。
 俺の反対側が殆ど朔田君で何故か坂口君と取り合いをしているし。
 B組の相沢君が時々此処にやって来るし。
 同じ『編み物部』だから邪険にする訳にもいかないんだよね。
 この三人を……。
 神崎川と二人でいた心地いい時間が無くなってしまった……。
 その事がとっても哀しかった。

 神崎川はどう思っているんだろう?
 俺と同じようなこと……思ってる訳ないよね?

 マネージャー業は毎日欠かさずしているけど、俺にベタベタくっつくことはなくなってしまった。
 それでも毎日一緒にいるし、俺の隣には必ず神崎川が陣取ってる。

 時々傍にいない時もある。
 最近、気がついたことだ。
 どうして俺は気づかなかった?

 ただ……肩が孤独になっただけ。変わったのはそこだけだと思いたい。
 いつもと同じように会話するけど……なんか、時々辛そうな顔をするんだよね。
 俺に見せないようにこっそりと。でも、完全にバレてるんだけどね。

 坂口君と俺が話してるのを見てからだよね?
 どうしてそんなにも変わっちゃったの?
 冗談で『浮気』という言葉を肯定したから?
 きっと……それだけじゃないよね?
 ね?何があったの?
 じょうちゃん……俺に教えてよ……。

 言えない言葉を飲み込んで、俺は神崎川の隣にいる。
 あの日、神崎川は俺に一言辛そうに言った言葉。

 『何があっても、一生ダチでいてくれよな……』

 その言葉が……イタカッタ。

 『何があっても……』って何?
 『一生ダチで……』って何なの?

 この言葉たちが俺を苦しめるのは……何故?
 こ、恐い。意味を知るのが……恐いんだ。

 俺の心に杭のように突き刺さったまま。

 どんな想いで神崎川はその言葉を俺に言ったんだろう?
 どうして辛そうだったんだろう?
 いつものように『女避け』っていいながら屈託のない笑顔を俺に見せてたあいつが。
 何があってそんな風に変わってしまったんだろう?
 傷ついたような視線で俺を心を釘付けて……
 振り切るように去っていった神崎川……。

 わからない。
 わからない、わからないよ……。
 
 何が何だか……理由の片隅でも見つけられないか、どれだけ探してもわからなかった。

 何もかもなかったかのようにサッカーに打ち込む神崎川。
 あの調子なら……きっと直ぐにでもレギュラーになりそう。

 既視感……何かを感じてしまう。
 これは不安だ。どうしようもないほどの。

 それは自分が何もかも忘れるかのようにバレーに逃げた自分と神崎川が重なることを俺は気づいていなかった。
 どれ程の月日が流れても、気付くことはなかったんだ……。

 なんか、少しずつ神崎川が遠くへ行ってしまうような。
 不吉な予感に苛ませれそうになる。

 俺は唇を噛み締めながら、隣に神崎川を感じながら孤独に耐えるしかなかった。
 俺の回りに誰がいたとしても、拭えない気持ちだった。
 神崎川が……じょうちゃんが、俺から離れていくような……。

 そんな気がして苦しかった。



 そして、最近……神崎川に話しかけてくる女子が少しずつ増えてきた……。

 それだけじゃ……なかった。
 その事を俺が知るのは、かなり後の事になる……。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義兄に寝取られました

天災
BL
 義兄に寝取られるとは…

推しに監禁され、襲われました

天災
BL
 押しをストーカーしただけなのに…

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

処理中です...