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『編み物男子部』?ができるまで。
4 榊一輝
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榊一輝。さかきいっき、と読む。
部活以外で榊と話をしたことはない。いつもじょうちゃんの隣に居るからだけではなく、榊は俺の事に部活以外では無関心を決めてかかっていたから。
榊は俺と一緒でバレー部だった。
顔を会わせた瞬間、絶対気が合わないタイプだと思った。
先輩とか関係なしに自分勝手で我が儘放題で、榊の事でどれ程俺が苦労したことか。
先輩は俺に榊のお守りを押し付けたんだ。セッターという名で。
でも、彼は凄かったんだ。
強烈なバックアタックを武器に最終的に県大会三位まで勝ち進んだのは彼の武器の賜物だった。
彼はかなり癖があって、トスのタイミングを合わせるのに三ヶ月もかかるほどだった。
波があって気分屋で、乗せたら手がつけられなくなるほどクイックもバックアタックも決めてくるのに、ちょっとでも乗らないとバレーどころではなくなる。
気分でタイミングが変わる厄介な相手をコントロールするのが俺の役目だった。
思い出しただけでうんざりする。
高校二、三年の頃には県大会ではいつも三位から五位以内だったけど見てくれるバレー関係者もいたみたいで、あの威力に惚れ込んだ有名なバレー部の強豪高校から榊はスカウトされた。そして榊はその高校へ行ったんだよね。
俺は榊に誘われたけど、断った。
俺が県立の学区内で一番優秀な高校を受験をすると聞いた時、信じられないものを見るかのような驚きを露にした。
県の市立中学なのにテストの上位百位まで張り出されていた。
文武ともに私立並みに力を注いでいる学校だった。
俺の成績ははっきり言ってそこに載ったことは一度もない。
じょうちゃんが一位を譲らなかったということは、誰が見ても明らかだったのはそのためだ。
成績が上位でもない俺が一番の高校を受験しようというのだ。
榊が驚くのも無理はなかった。
「何故そんなとこ受けるんだよ?俺と一緒の高校行ってバレーしようや」
部活は確かに楽しかった。
背が高くもなく低くもない中途半端な俺は先輩たちから『セッター』というポジションを与えられた。
頭脳と技とコミュニケーション、個々の能力と性格や癖等を全部把握しなければ出来ない。
榊をコントロールするのはかなり手こずった。
部員たちを把握するのは二ヶ月程でなんとかなった。
だが、破天荒な榊を理解するのには半年もの月日を費やした。
トスのタイミングは三ヶ月だったけど、それだけでは自由自在に扱えなかったから。
榊……高校で活躍してるかな?
俺を高校に誘ったのは、ずっと一緒にバレーをしたかったってことだったんだよね。
……っていうか、俺じゃなくてもやっていけてるのだろうか?
「なんであんなとこ行きたがるんだ?鳴海って成績そんなによくなかっただろ?」
「手が届かなくても……追いかけたいんだ。この三年間、僕は『憧れ』という言葉を言い訳にしてなにもしなかった、出来なかったから……」
「鳴海、お前。好きな奴が居たんだ。知らなかったよ、だってお前、全然そういうの興味無さそうだったし」目を見張って吃驚する榊の顔が俺には可笑しかった。
「居たよ。中学……そうだな、こういう話。榊だけじゃないか、誰ともしたことがなかったから。中一の夏の終わりかな?好きだという感情がわかったのは」
「ほうー」
「わかった時には、もう手遅れだったけどな」声が遠くを駆ける。
「男が居る女を好きになったのかよ。マジか……」
「詳しくは……聞かないでくれ。後生だから」言えないから。絶対……。
「で?失恋してるのに追いかけるのかよ……だせぇ事すんなよ」
「振られなきゃ……前に進めそうもないって。漸くわかったんだ。三年もかかったけどな」
「そいつはその高校に行くって?」
「わからない」ホントの事だ。
「はぁああ?」何処からそんな声出してんだ?榊。
「私立じゃなかったら、行くのはきっとそこだと思ったから」確信。
「滅茶苦茶な賭けだな。頭脳明晰なセッターのお前がすることじゃねえな」
「勉強は『頭脳明晰』じゃなかったけどな」言うなよ、傷つく。
俺は、自分の想いを……秘めてた想いを伝えたのはこの時がはじめてだ。
どうして俺は……榊に言ってしまったんだろう?
じょうちゃんの友達の榊に。
一番言ってはいけない危険人物だってわかってた筈なのに……。
部活以外で榊と話をしたことはない。いつもじょうちゃんの隣に居るからだけではなく、榊は俺の事に部活以外では無関心を決めてかかっていたから。
榊は俺と一緒でバレー部だった。
顔を会わせた瞬間、絶対気が合わないタイプだと思った。
先輩とか関係なしに自分勝手で我が儘放題で、榊の事でどれ程俺が苦労したことか。
先輩は俺に榊のお守りを押し付けたんだ。セッターという名で。
でも、彼は凄かったんだ。
強烈なバックアタックを武器に最終的に県大会三位まで勝ち進んだのは彼の武器の賜物だった。
彼はかなり癖があって、トスのタイミングを合わせるのに三ヶ月もかかるほどだった。
波があって気分屋で、乗せたら手がつけられなくなるほどクイックもバックアタックも決めてくるのに、ちょっとでも乗らないとバレーどころではなくなる。
気分でタイミングが変わる厄介な相手をコントロールするのが俺の役目だった。
思い出しただけでうんざりする。
高校二、三年の頃には県大会ではいつも三位から五位以内だったけど見てくれるバレー関係者もいたみたいで、あの威力に惚れ込んだ有名なバレー部の強豪高校から榊はスカウトされた。そして榊はその高校へ行ったんだよね。
俺は榊に誘われたけど、断った。
俺が県立の学区内で一番優秀な高校を受験をすると聞いた時、信じられないものを見るかのような驚きを露にした。
県の市立中学なのにテストの上位百位まで張り出されていた。
文武ともに私立並みに力を注いでいる学校だった。
俺の成績ははっきり言ってそこに載ったことは一度もない。
じょうちゃんが一位を譲らなかったということは、誰が見ても明らかだったのはそのためだ。
成績が上位でもない俺が一番の高校を受験しようというのだ。
榊が驚くのも無理はなかった。
「何故そんなとこ受けるんだよ?俺と一緒の高校行ってバレーしようや」
部活は確かに楽しかった。
背が高くもなく低くもない中途半端な俺は先輩たちから『セッター』というポジションを与えられた。
頭脳と技とコミュニケーション、個々の能力と性格や癖等を全部把握しなければ出来ない。
榊をコントロールするのはかなり手こずった。
部員たちを把握するのは二ヶ月程でなんとかなった。
だが、破天荒な榊を理解するのには半年もの月日を費やした。
トスのタイミングは三ヶ月だったけど、それだけでは自由自在に扱えなかったから。
榊……高校で活躍してるかな?
俺を高校に誘ったのは、ずっと一緒にバレーをしたかったってことだったんだよね。
……っていうか、俺じゃなくてもやっていけてるのだろうか?
「なんであんなとこ行きたがるんだ?鳴海って成績そんなによくなかっただろ?」
「手が届かなくても……追いかけたいんだ。この三年間、僕は『憧れ』という言葉を言い訳にしてなにもしなかった、出来なかったから……」
「鳴海、お前。好きな奴が居たんだ。知らなかったよ、だってお前、全然そういうの興味無さそうだったし」目を見張って吃驚する榊の顔が俺には可笑しかった。
「居たよ。中学……そうだな、こういう話。榊だけじゃないか、誰ともしたことがなかったから。中一の夏の終わりかな?好きだという感情がわかったのは」
「ほうー」
「わかった時には、もう手遅れだったけどな」声が遠くを駆ける。
「男が居る女を好きになったのかよ。マジか……」
「詳しくは……聞かないでくれ。後生だから」言えないから。絶対……。
「で?失恋してるのに追いかけるのかよ……だせぇ事すんなよ」
「振られなきゃ……前に進めそうもないって。漸くわかったんだ。三年もかかったけどな」
「そいつはその高校に行くって?」
「わからない」ホントの事だ。
「はぁああ?」何処からそんな声出してんだ?榊。
「私立じゃなかったら、行くのはきっとそこだと思ったから」確信。
「滅茶苦茶な賭けだな。頭脳明晰なセッターのお前がすることじゃねえな」
「勉強は『頭脳明晰』じゃなかったけどな」言うなよ、傷つく。
俺は、自分の想いを……秘めてた想いを伝えたのはこの時がはじめてだ。
どうして俺は……榊に言ってしまったんだろう?
じょうちゃんの友達の榊に。
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