上 下
25 / 30

サイハテカナタ

しおりを挟む
 病室に一羽だけのあおい折り鶴が、最後に目で見たもの。

 手足の軸が、埋まる。

 芯から凍る、不可思議な現象。

 この冷たい空気が意外と好きなんです。

 手足が末端から閉じていく。

 凍っていく。

 嫌いじゃない。もっとも身近に死を感じられるから。

 秋からこの冬、そして春、僕のむくろは、存在しないアクアリウムカーペンターの花に押し上げられることを待たずに、起き上がるだろう。

 止まってほしいと。

 次はいっそ夏で始まり夏で終わってと望む願望。
 この絶望も焦燥も、全てが無意味なのだから。


 いつぞやの冬虫夏草とうちゅうかそうが僕に尽くす。

 ああ、彼女はベースを弾いたんだった。

 どうして、同じようなことを、いくつも忘れているんだろう?

 たしかに夢を持ち、しかし、無関係な多くの遊びを、すべて中途半端に浴び続けていた。

 まるで夏休みの宿題に背を向け続けつつ頭から消えない焦燥のよう。

 同じく、時計の針が心を切り刻み続ける、終わらない夏休みの宿題みたいな、やることなすこと空回りする世界で。

 僕も知らない世界を、新しい夏を、いつか見たいと願うよ。

 孤独?二人?その選択は花をみ取るがごと惨劇さんげきか?

 折り鶴は病室から窓辺に、放物線を描いて舞うのか?



  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

深夜のドライブで、車椅子の・・・

月白ヤトヒコ
ホラー
夜中にドライブをして、病院の近くを通ったときのこと。後に、俺は後悔した・・・ 結末が二種類あります。 怪談な結末とリアル風な結末。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

カゲムシ

倉澤 環(タマッキン)
ホラー
幼いころ、陰口を言う母の口から不気味な蟲が這い出てくるのを見た男。 それから男はその蟲におびえながら生きていく。 そんな中、偶然出会った女性は、男が唯一心を許せる「蟲を吐かない女性」だった。 徐々に親しくなり、心を奪われていく男。 しかし、清らかな女性にも蟲は襲いかかる。

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

意味が分かると怖い話(自作)

雅内
ホラー
2ch大好きの根暗なわたくしが、下手の横好きで書き連ねていくだけの”意味が分かると怖い話”でございます。 コピペではなくオリジナルとなりますので、あまり難しくなく且つ、不快な内容になるかもしれませんが、何卒ご了承くださいませ。 追記:感想ありがとうございます。 追加で順次解説を記述していきたいと思います。解釈の一つとしてお読みいただけますと幸いです。

受け継がれるローファー

ハヤサカツカサ
ホラー
「校舎にある片方だけのローファーの噂のこと知ってる?」 高校説明会後の自由時間。図書室で一冊の本を開いた少女の頭の中に、その言葉を皮切りに一人の女子高校生の記憶が流れ込んでくる。それはその高校のとある場所に新しいままであり続けるローファーに関するものだった。ローファーはなぜ新しくなり続けるのか? その理由を知って、本を閉じた時何かが起こる! *心臓が弱い方はあらかじめご遠慮ください

処理中です...