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結婚編
結婚式直前のようです
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二日後、いつものようにジークハルト様の執務室のお手伝いをした。その時に牛乳かんもどきとプリン、エプレンジュゼリーを持って行ったのだけれど、ジークハルト様はどちらかといえばプリンを気に入ったようだった。
また食べたいと言っていたので、作ろうと思う。
そして慌しくも時間が過ぎて行く。
ジークハルト様の執務室が終わると、今度は騎士団のほうの書類整理を頼まれた。こちらもすごいことになっていて、副団長や各師団の団長さんたちに恐縮されてしまった。
脳筋とは言わないけれど、書類整理が苦手な方が多いらしく、ついサボりがちなんだとか。
「ジークハルト様、各師団ごとに分ければいいですか?」
「ああ、それで頼む。それ以外は各師団にやらせるから」
「わかりました」
ジークハルト様の言葉に、各師団の団長と副団長が悲鳴をあげていたけれど、ジークハルト様が「きちんと整理しておかないのが悪い!」と一喝し、私が仕分けたものをまずは交代で書類整理をし、私がそれに表紙や背表紙をつけるということで話が纏まった。
師団は全部で六つ。
東西南北と魔森林を警戒したり魔物を討伐したるする師団が五つと、近衛に分かれているそうだ。
近衛に関してはジークハルト様が、それ以外の各師団、という大雑把な分け方をしつつ、一応年代別にも分けたら、ジークハルト様を含めた各師団長から感謝された。
結婚式まであと二週間というところまで書類整理を手伝い、残りは結婚後の蜜月を過ぎてから手伝うといことになった。それまでに全部終わっていればいいけれど、多分無理だし書類が増えるだろうとは、ジークハルト様の弁だ。
この二週間の間に、ドレスの仕上がりや式辞を完璧にしたりしなければならない。まあ、それほど難しいことはなく、ジークハルト様と一緒に司祭がいる場所に行き、祝福の言葉をもらい、婚姻書にサインをして終わりだそうだ。
その後王宮に移動し、王都に住んでいる人々にお披露目をするそうだ。といっても、バルコニーから手を振るだけらしい。
その後、王族家族と一緒に食事をして、貴族たちのお披露目は後日になるらしい。
これは結婚相手が王族だから王宮でやるのであって、貴族同士の場合は嫁いだ家でお披露目のパーティーをするのだそうで、そこでは立食式になる。モーントシュタイン領でやる場合も同じで、領地の家でパーティーをするらしい。
パーティーは苦手なのだけれど、自分のことだしそんなことを言っている場合ではないので、我慢する。
そしてこの間に、結婚前に一度会いたいからとラファエラ様にご招待され、仲良くなった他の方たちと一緒に王宮の庭でお茶会を開いたのだけれど……。
「まあ、ミカ様! そのおぐしはどうなさったのですか?!」
「銀髪も素敵でしたけれど、黒髪のほうがとてもお似合いですわ!」
「それに、その髪飾りも初めてですわよね?」
ラファエラ様、公爵家のエーファ様、侯爵家のマヌエラ様それぞれに驚いた顔をされ、髪のことで問い詰められてしまった。
この件に関してはジークハルト様に話す許可をいただいているので、三人に髪飾りが髪の色を変えてしまったこと、髪飾りの由来などを話すと、ラファエラ様は髪飾りのことをご存知だったらしく、「そうでしたの……」と嘆息なさっていた。
「どうして元に戻ったのか、本当のところはわからないのです。けれど、ジークハルト様は、『髪飾りが溜め込んだ魔力を使い、ミカをドラゴンに変えたのだろう』と仰っておいででしたので。私もそう思っています」
「そうね……ミカ様は別の世界からいらした方ですものね」
「驚きましたわ、異なる世界があるということに」
「わたくしも。このお菓子も、その世界のものなのでしょう?
「ええ、そうです。他にもあるのですよ? いろいろ持ってきたので、食べて感想を聞かせてくださいませ」
この三人の親も旦那さんも重鎮の地位にいるからなのか、父や兄がどこからやってきたのか、本当のことを知っていた。それを父に聞いた時、もしかしたら私のことも受け入れてもらえるのではないかと思い、嫌われる覚悟で今までのことの全てを話した。
話し終えた時にはとても驚いていたけれど嫌われることはなく、短時間でマナーを身につけたことを、出会った時と同じように褒めてくださった。そして私のことは、一切話さないとも約束してくださったのだ。
やはりスライムゼリーの使い道に困っていたので、そのお礼というわけではないけれど各地の果物や特産物を聞き、スライムゼリーを使った冷たいデザートや料理の話を教えてあげた。
今食べているのは牛乳かんとオランジュのゼリーだ。
「まあ……。あのスライムゼリーがこのようなお菓子になるなんて」
「とても美味しいですわ、ミカ様」
「これでしたら、暑い日でも食べられますわね」
「でしょう? 他にもテリーヌという、お肉や野菜を閉じ込めたものもあるのです。そちらのレシピも必要ですか?」
「「「ぜひ!」」」
三人揃って声をあげたのでそれに頷き、後日レシピを手紙で送ると約束をした。
他にも生クリームやカスタードクリームを使ったケーキやパイなどを食べてもらい、四人でいろんなことを話しながらそれらを食べた。
もちろん、それぞれにお土産を持たせてあるし、自領が扱っている果物を使ったデザートの作り方を教える約束もしている。
果物自体は乾燥させたりそのまま出してデザートとして食べるし、お菓子も焼菓子があるけれど、どれも甘すぎて、ひとつ食べたあとは食べたいとは思わなかったらしい。けれど私が持って来たお菓子を見て、やはり女性だからなのか、食いつきが半端じゃなかった。だからこそ、レシピを教えると言ったのだ。
お茶会が済んでしまえば、あとは結婚式に向けて準備をするだけだ。と言っても準備はほとんど終わっていて、空いている時間にレシピを書いて送ったり、結婚後のお茶会の約束をしたりして過ごした。
そういえば、ドラゴンになったことで良くなったことがある。
まずは足で、今も歩く練習をしていて、以前よりも早く歩けるようになった。
そして驚いたのが視力だ。以前よりも良くなっていて、ドラゴン補正とでもいうのだろうか……遠くのものまで見えるようになった。眼鏡なしで行動できることがとても嬉しい。
そんな日々を過ごしていると、あっという間に結婚式当日になった。
また食べたいと言っていたので、作ろうと思う。
そして慌しくも時間が過ぎて行く。
ジークハルト様の執務室が終わると、今度は騎士団のほうの書類整理を頼まれた。こちらもすごいことになっていて、副団長や各師団の団長さんたちに恐縮されてしまった。
脳筋とは言わないけれど、書類整理が苦手な方が多いらしく、ついサボりがちなんだとか。
「ジークハルト様、各師団ごとに分ければいいですか?」
「ああ、それで頼む。それ以外は各師団にやらせるから」
「わかりました」
ジークハルト様の言葉に、各師団の団長と副団長が悲鳴をあげていたけれど、ジークハルト様が「きちんと整理しておかないのが悪い!」と一喝し、私が仕分けたものをまずは交代で書類整理をし、私がそれに表紙や背表紙をつけるということで話が纏まった。
師団は全部で六つ。
東西南北と魔森林を警戒したり魔物を討伐したるする師団が五つと、近衛に分かれているそうだ。
近衛に関してはジークハルト様が、それ以外の各師団、という大雑把な分け方をしつつ、一応年代別にも分けたら、ジークハルト様を含めた各師団長から感謝された。
結婚式まであと二週間というところまで書類整理を手伝い、残りは結婚後の蜜月を過ぎてから手伝うといことになった。それまでに全部終わっていればいいけれど、多分無理だし書類が増えるだろうとは、ジークハルト様の弁だ。
この二週間の間に、ドレスの仕上がりや式辞を完璧にしたりしなければならない。まあ、それほど難しいことはなく、ジークハルト様と一緒に司祭がいる場所に行き、祝福の言葉をもらい、婚姻書にサインをして終わりだそうだ。
その後王宮に移動し、王都に住んでいる人々にお披露目をするそうだ。といっても、バルコニーから手を振るだけらしい。
その後、王族家族と一緒に食事をして、貴族たちのお披露目は後日になるらしい。
これは結婚相手が王族だから王宮でやるのであって、貴族同士の場合は嫁いだ家でお披露目のパーティーをするのだそうで、そこでは立食式になる。モーントシュタイン領でやる場合も同じで、領地の家でパーティーをするらしい。
パーティーは苦手なのだけれど、自分のことだしそんなことを言っている場合ではないので、我慢する。
そしてこの間に、結婚前に一度会いたいからとラファエラ様にご招待され、仲良くなった他の方たちと一緒に王宮の庭でお茶会を開いたのだけれど……。
「まあ、ミカ様! そのおぐしはどうなさったのですか?!」
「銀髪も素敵でしたけれど、黒髪のほうがとてもお似合いですわ!」
「それに、その髪飾りも初めてですわよね?」
ラファエラ様、公爵家のエーファ様、侯爵家のマヌエラ様それぞれに驚いた顔をされ、髪のことで問い詰められてしまった。
この件に関してはジークハルト様に話す許可をいただいているので、三人に髪飾りが髪の色を変えてしまったこと、髪飾りの由来などを話すと、ラファエラ様は髪飾りのことをご存知だったらしく、「そうでしたの……」と嘆息なさっていた。
「どうして元に戻ったのか、本当のところはわからないのです。けれど、ジークハルト様は、『髪飾りが溜め込んだ魔力を使い、ミカをドラゴンに変えたのだろう』と仰っておいででしたので。私もそう思っています」
「そうね……ミカ様は別の世界からいらした方ですものね」
「驚きましたわ、異なる世界があるということに」
「わたくしも。このお菓子も、その世界のものなのでしょう?
「ええ、そうです。他にもあるのですよ? いろいろ持ってきたので、食べて感想を聞かせてくださいませ」
この三人の親も旦那さんも重鎮の地位にいるからなのか、父や兄がどこからやってきたのか、本当のことを知っていた。それを父に聞いた時、もしかしたら私のことも受け入れてもらえるのではないかと思い、嫌われる覚悟で今までのことの全てを話した。
話し終えた時にはとても驚いていたけれど嫌われることはなく、短時間でマナーを身につけたことを、出会った時と同じように褒めてくださった。そして私のことは、一切話さないとも約束してくださったのだ。
やはりスライムゼリーの使い道に困っていたので、そのお礼というわけではないけれど各地の果物や特産物を聞き、スライムゼリーを使った冷たいデザートや料理の話を教えてあげた。
今食べているのは牛乳かんとオランジュのゼリーだ。
「まあ……。あのスライムゼリーがこのようなお菓子になるなんて」
「とても美味しいですわ、ミカ様」
「これでしたら、暑い日でも食べられますわね」
「でしょう? 他にもテリーヌという、お肉や野菜を閉じ込めたものもあるのです。そちらのレシピも必要ですか?」
「「「ぜひ!」」」
三人揃って声をあげたのでそれに頷き、後日レシピを手紙で送ると約束をした。
他にも生クリームやカスタードクリームを使ったケーキやパイなどを食べてもらい、四人でいろんなことを話しながらそれらを食べた。
もちろん、それぞれにお土産を持たせてあるし、自領が扱っている果物を使ったデザートの作り方を教える約束もしている。
果物自体は乾燥させたりそのまま出してデザートとして食べるし、お菓子も焼菓子があるけれど、どれも甘すぎて、ひとつ食べたあとは食べたいとは思わなかったらしい。けれど私が持って来たお菓子を見て、やはり女性だからなのか、食いつきが半端じゃなかった。だからこそ、レシピを教えると言ったのだ。
お茶会が済んでしまえば、あとは結婚式に向けて準備をするだけだ。と言っても準備はほとんど終わっていて、空いている時間にレシピを書いて送ったり、結婚後のお茶会の約束をしたりして過ごした。
そういえば、ドラゴンになったことで良くなったことがある。
まずは足で、今も歩く練習をしていて、以前よりも早く歩けるようになった。
そして驚いたのが視力だ。以前よりも良くなっていて、ドラゴン補正とでもいうのだろうか……遠くのものまで見えるようになった。眼鏡なしで行動できることがとても嬉しい。
そんな日々を過ごしていると、あっという間に結婚式当日になった。
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