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番外編・小話
ある日の手紙
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在沢パパ視点です。
葎編で、葎が在沢室長に渡した、室長宛ての手紙の内容です。
*******
出社早々、羽多野が封筒を持って俺のところに寄ってきた。何だ? と思っていると、その封筒を渡された。
「おはようございます。室長、あの……母から手紙を預かっているんですが」
「おはよう。ん? なんだ?」
羽多野から渡された手紙を開けると、中にはもう一通の封筒と、俺宛ての手紙が入っていた。それを広げて読む。
『在沢様
今更このようなお手紙をお渡しすることをお許し
ください。
圭にも在沢様にも、申し訳ないことをしたと、
今更ながら反省しております。
できれば娘に……圭に会って謝りたいのです。
あの子にしたことを考えれば当然許されるとは
思っておりませんが、せめて、一目あの子に
会ってきちんと話をしたいのです。
今すぐ、とは申しません。
在沢様のお考えの元、時期が来たらで構い
ませんので、同封した手紙をあの子に渡して
いただけないでしょうか?
自分勝手なことではありますが、何卒、よろしく
お願い申し上げます。
かしこ』
(ホント、今更、だな)
その内容に内心溜息をつく。ただ、羽多野からはある程度の話を聞いていたので予想は付いてはいたが。
「羽多野、わかった、とだけ伝えてくれないか?」
「わかりました」
そう言った羽多野は自分の席に戻ると、仕事の準備やコーヒーの準備を始めた。動きを見ていると、まるで圭が動いているようだった。……まだ動きだけだが。
入社したばかりのころに比べたら、確かに彼は変わった。甘さが抜け、俺や圭の仕事ぶり、先輩たちの仕事ぶりを見て、圭と和解して話したことで彼は彼なりに頑張っている。独学で始めたスペイン語やドイツ語もたまに綴りを間違うものの、わからなければどんどん聞いてくるし、圭にも教わっているのか喋りも滑らかになって来た。同じように英語力も伸びている。どこまで伸びるか楽しみな逸材だ。
そんな彼を見ながら、この手紙をいつ圭に渡すかな……と手紙をもてあましながらも一人ごちる。
――結局この手紙を圭に渡したのは、彼女が娘を産んだあととなる。
葎編で、葎が在沢室長に渡した、室長宛ての手紙の内容です。
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出社早々、羽多野が封筒を持って俺のところに寄ってきた。何だ? と思っていると、その封筒を渡された。
「おはようございます。室長、あの……母から手紙を預かっているんですが」
「おはよう。ん? なんだ?」
羽多野から渡された手紙を開けると、中にはもう一通の封筒と、俺宛ての手紙が入っていた。それを広げて読む。
『在沢様
今更このようなお手紙をお渡しすることをお許し
ください。
圭にも在沢様にも、申し訳ないことをしたと、
今更ながら反省しております。
できれば娘に……圭に会って謝りたいのです。
あの子にしたことを考えれば当然許されるとは
思っておりませんが、せめて、一目あの子に
会ってきちんと話をしたいのです。
今すぐ、とは申しません。
在沢様のお考えの元、時期が来たらで構い
ませんので、同封した手紙をあの子に渡して
いただけないでしょうか?
自分勝手なことではありますが、何卒、よろしく
お願い申し上げます。
かしこ』
(ホント、今更、だな)
その内容に内心溜息をつく。ただ、羽多野からはある程度の話を聞いていたので予想は付いてはいたが。
「羽多野、わかった、とだけ伝えてくれないか?」
「わかりました」
そう言った羽多野は自分の席に戻ると、仕事の準備やコーヒーの準備を始めた。動きを見ていると、まるで圭が動いているようだった。……まだ動きだけだが。
入社したばかりのころに比べたら、確かに彼は変わった。甘さが抜け、俺や圭の仕事ぶり、先輩たちの仕事ぶりを見て、圭と和解して話したことで彼は彼なりに頑張っている。独学で始めたスペイン語やドイツ語もたまに綴りを間違うものの、わからなければどんどん聞いてくるし、圭にも教わっているのか喋りも滑らかになって来た。同じように英語力も伸びている。どこまで伸びるか楽しみな逸材だ。
そんな彼を見ながら、この手紙をいつ圭に渡すかな……と手紙をもてあましながらも一人ごちる。
――結局この手紙を圭に渡したのは、彼女が娘を産んだあととなる。
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