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ドルト村の冬編

第162話 本当に好きだな、おい

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 結局三日かけて保存食を作ったはいいが、さすがに十センチ四方の瓶だと乾燥した果物やシロップ漬けは入らないものが多かった。なので二十センチ四方のものを作りあげ、その中に入れたのだ。
 もちろん、重量軽減をかけたとも。そうじゃないと、中身を入れた時に持ち上げられない可能性があるからだ。ついでに落としても壊れないよう、状態維持までかけてしまったが。
 特に子どもがいる家庭で使うのであれば、瓶を割ったあとが危ないしね。魔法で片付けられるとはいえ、それでも危険なことには変わりがない。
 野菜に関しては、大きいものは瓶ではなく蓋付きのかめや壺にしてみた。
 村の貯蔵庫に保存しておくものはかなり大きな蓋付きの甕を作り、その中に乾燥野菜やキノコを入れて、なくなったらそこから補充できるようにしたし、ジャムやシロップ漬けなどにした果物も同じようにしてみた。
 時間が止まっている貯蔵庫だからこそできる芸当だね。
 もちろん、ベーコンやソーセージ、魚の干物や塩漬け肉に加えて、チーズやバター、ヨーグルトも作ってみた。乳製品に関しては錬金術で作り、状態維持をかけた容器に入れてあるから、腐ることはないと思う。
 まあ、それでも早めに使いきってしまったほうが安全ではあるので、そこはしっかりと言い含めたとも。
 そういった作業が終われば、あっという間に宴会をしようとなるのは当然で、加工しなかった食材を使ってあれこれと料理を始める村の住人たち。
 ほんっとうに! 宴会が好きだな、おい!
 とはいえ、この世界には娯楽と呼べるものは少ない。簡単なゲームですら、チェスのようなものしかない。
 祖父母ならば囲碁や将棋、リバーシくらいならば伝えているかと思いきやそういったものは伝えておらず、専ら料理と治水などの灌漑事業、上下水道の普及に努めていたらしい。
 帝都ですら多少は匂うんだから、祖父母は相当頑張ったんじゃなかろうか。話に聞く限り、どこも匂わなかったって言っていたしね。
 日本にいた時ですら人脈が半端なかったんだから、上下水道――特に下水の浄化装置の仕組みくらいは知っていそうだ。
 下水の浄化装置をレシピ化しているそうなんだけど、ヘラルド曰く未だにその報酬が入金されているっていうんだから凄い。それだけ画期的で、この世界で受け入れられた技術だったんだろう。
 私の浄化装置なんて、魔石ありきの適当な錬金技術だから、レシピ化はできないんだよね。できたとしても、するつもりはないが。
 話は逸れたが、そういうゲームがないからこそ、数字パズルやけん玉、ジグソーパズルやお手玉が娯楽として普及してしまうのだよ。
 つか、お手玉くらいは普及しておいてほしかった……!
 そんなことを言ったところで、今さらなわけで。とりあえず、今の時期に遊べる雪を固めて作った滑り台もあるし、ソリもある。大ブーム真っ盛りなかまくらもある。
 さすがにスキーやスノボのようなものは木々があって危ないから作らなかったけれど、ソリでも充分遊べるからなのか、子どもたちは雪まみれになりながら、元気に遊んでいる。
 近くでは従魔たちが、遠くから大人たちが監視しつつ、大人たちは宴会の用意。といっても鍋やうどんなど、寒いからねぎやしょうがを使って体を温める料理であ~る。
 しょうがとねぎをたっぷり使った昆布とカツオの混合出汁をベースに、数種類のキノコと野菜、オーク肉をトッピングするうどん。
 海老天と甘じょっぱく煮たシイタケとほうれん草、ねぎと半熟味玉を入れた鍋焼きうどん。
 うどんの上にシイタケとコッコのもも肉、むきエビと三つ葉の代わりにクレソンを散らした小田巻蒸し。
 味噌とバターをたっぷりと使った石狩鍋にきりたんぽ鍋、魚貝を使った寄せ鍋とトマト鍋に牡丹鍋、ちゃんこ鍋と牡蠣の土手鍋も作ってみた。
 しょうがも甘酢漬けにしてガリにしてみたり、ホワイトカウとごぼう、しょうがを使ったしぐれ煮やオークの挽肉としょうがが入った炊き込みご飯。オークのしょうが煮と定番になりつつあるオークの生姜焼きも用意。
 レシピや作り方は私が教えたものの、材料の準備などは村人全員が用意して、下拵えしながら和気藹々とみんな笑顔で料理していた。鍋など火が通るまでに飲み物の準備をする。
 去年作ったばかりのワインや錬成して作った日本酒もどきと芋焼酎、梅酒とサングリア。お酒が飲めない人や妊婦さんと子どもたちのために果実水の他に、オレンジジュースと葡萄ジュース、リンゴジュースと桃ジュース、マンゴージュースも用意している。
 そろそろ宴会を始めるからと子どもたちと従魔たち、監視していた大人二人を呼び寄せ、手洗いうがいをさせてから、それぞれ食器をテーブルに並べたりとお手伝いしてもらう。
 料理は大人たちがテーブルに運び、自分が飲みたいものを木のコップに入れたあと、ヘラルドの挨拶のあとはご自由にってやつで、宴会が勃発。
 話の内容としては、私たちがいなかった間の村の様子や温室内で育てている野菜と米、薬草類のこと。ランツの娘夫婦のところに妊娠が発覚したこと。
 ヴィンのところももうじき生まれるらしいから、しばらくは妊娠・出産ラッシュがくるだろうと、ヘラルドが嬉しそうにしていた。
 私たちの話はダンジョン内でのことや甜菜とビーツのことを話した。

「それで砂糖が作れる、のですか?」
「ええ。ただ、私とヤミンがいるから育てることはできても、私たちの手がなくても育てられるかどうかの実験もしないといけないでしょ? あと、砂糖の生成の仕方の確立とか」
「そうですね。もしそれが成功すれば、皇帝陛下に話をしないといけませんね」
「そうね。ただ、本当にできるかどうかを見定めてからでないと、王や宰相であろうと話を聞いてくれるとは思えない」
「ええ。そこは数年をかけて、しっかり確立しないとダメでしょうね」

 酒の席で話す内容ではないが、帝国内で生産が可能かどうかの実験をしないといけない。普通に栽培が可能なのであれば、国の施設でも栽培が可能だろうと思う。
 もしかしたらこの村ではなく、すぐにでも国に報告してそっちに丸投げ、ということもできる。眉間に皺を寄せているヘラルドとゲレオンがどう考えるかわからないけれど、少なくとも村にも砂糖は欲しいと考えているだろうし、それとは別に村を有名にしたくないとも考えている可能性もある。

 さて、ヘラルドとゲレオンはどんな答えを出すんだろうね。私はいち村人なので、難しいことは放置でーす!

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