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ドルト村の冬編

第142話 ダンジョン攻略 3

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 二十一階層は洞窟のようでいて、何かの建物のような内装だった。どういえばいいかな……有名なダンジョン探索タイプの、壁がレンガとか岩とか、人工的に作られたものといえばいいかな?
 そんな感じの壁だ。要は迷路になっている、一般的というか王道なイメージのダンジョンともいえる。
 ここに出るのはコウモリとストーンゴーレム、ネズミとムカデ。ムカデは1メートル近い長さがあるんだよ? 初めて見た時は気持ち悪くて鳥肌が立った。
 ネズミも50センチ近くあり、目が赤く光っているのでこれもかなり不気味。ゴーレム以外は魔法でさくっと倒し、ゴーレムはハンマーか風魔法で倒すという。
 素材で有用なものはほとんどなく、魔石とコウモリの被膜、ゴーレムが落とすブロック状になった石だけ。この石は家や城壁の修理に使われるんだとさ。

「そういえば、アリサはゴーレムをどうやって倒しているんだ?」
「え? 解体」
「は?」
「だから、解体」
「…………」

 まさかそんな答えが返ってくるとは思わなかったんだろう。ヴィンだけじゃなく、従魔以外の全員に唖然とした顔をされた。

「んなわけあるか!」
「そうは言うけど、実際にそうやって倒してるしね、私」

 みほんを見せようかと提案すると頷いたので、ちょうどよく鴨がネギを背負ってきたので実践。

「〝解体〟。はい、終わり」

 触った瞬間に解体と叫べばそれで終わりだ。全員にぽかーんとした顔をされたのは何故だ!

「ま、まさか解体で倒せるとは思いませんでした……!」
「私だって最初はそう思わなかったけど、鉱山で依頼を請けた時、実験的にやったら成功してさあ。まあ、鉱山のはここと違って、どれも有用なものばっかだったけど」
「「アリサ……」」
「「さすがアリサだよね」」
「「やってみるか」」
「いいんじゃない?」

 引率者である大人二人は呆れたように私の名前を呼び、ヤミンとヤナは目をキラキラと輝かせ、ランツの息子たちは真似してみようかと考えている。できるかどうかはともかく、実験は大事だしね。
 てなわけで次のカモが来たところで、息子二人が解体で実験。一応できたものの、スキルレベルがまだそれほど高いわけではないようで、私のように一瞬で、というわけではなかった。
 それでも解体したあとすぐにドロップが出たんだから、たいしたものだろう。
 こっちが接触されなければどうということはないってことですな。
 できるとわかったところで、他の人もやりたいと喜々としてやり、全員できたところで下への階段に着く。そこで休憩したあとで下り、どんどん進んでいった。
 二十五階までは洞窟タイプのダンジョンで、そこで遅めの昼休憩。その後、二十八階までゴブリンの上位種を中心に訓練をしながら攻略したところで一泊。

 翌日、二人の訓練のためにオークで訓練。下を目指しながら歩き、階段のところで昼休憩。
 二十九階でも同じように過ごしたあと、彼らも充分訓練ができたと申告してくれたので、一泊してからボスを倒して帰った。
 ちなみに、ボスはオークジェネラル一体とオークが四体。大量の肉と腸が出て、ホクホク顔でダンジョンを攻略し終えた。
 外に出てから休憩がてらドロップ品を分配し、そのまま帝都へ。冒険者ギルドでいらない素材を全て売り、二日間は休養日にした。
 次に行くダンジョンは、食材ダンジョンと呼ばれる、食材が豊富に採れるダンジョンだそうだ。なので、食材は必要最低限のものを買い込む。
 帝都なだけあって、その敷地面積はかなり広いと聞いている。日本で例えるのであれば、少し大きい町がすっぽり入るくらいだというんだから、どれだけ広いのかがわかるだろう。
 下手すると、小さな市くらいはあるかもしれない。
 真ん中に王城、その周囲に貴族街。壁を隔てて商業地区と一般市民という並びになっているんだとか。水は井戸と、村の近くにある湖から流れる川を利用し、水源を確保しているという。
 それだけ大きいってことは水源も必要だし食料も必要。かといって自国と輸入だけで王都だけじゃなく国全体の食料を確保できるかといえば、よほど政策がうまくいってないと無理だろう。
 技術が進んでいる地球ですら、自国だけで食料を賄えることはできておらず、少なからず何かしらを輸出入している。そんな状態で異世界はどうなのかといえば、小国で農業が盛んなところならいざ知らず、大国ともなれば無理。
 手広くあれこれとやっているならともかく、確実にこの帝国ですら一部を輸入に頼っているだろう。だって、パイナップルなどの南国系の果物を見たことがないし。
 魚介にしたって輸入ではなくダンジョン産が大半だと聞いた。なので。食材が採れるダンジョンが帝都の近くにあるということは、とてもいいことなんだろう。
 知らんけど。あれこれ推測しておきながらアレだが。
 ダンジョンさえあれば飢えることはないだろうとの憶測のもと、ある程度の買い物を終える。あとは従魔たちをもふったりブラッシングしたりしてまったり過ごした。

「じゃあ行くか」

 ダンジョンへ行く当日。ヴィンの号令で北門を目指す。そこまで歩いていくには広すぎて半日かかってしまうことから、バスと同じ扱いになる辻馬車乗り場へと行き、北門のところで降りる。
 そこから門を出て歩くこと一時間、通称〝食材ダンジョン〟に来た。

「ここは五十階層まで攻略されているダンジョンでな。今のところ、どれだけ深く潜ろうが一階から九階までの景色が、その下の階層でも同じになっている」
「つまり、一階が草原だったら十一階も二十一階も同じってこと?」
「ああ。ちなみに、五階層ごとにボスがいる」
「へ~!」

 初心者は十階ごとだったけれど、ここは五階ごとなのか。ダンジョンって面白いなあ。……従魔たちが行きたいと言わない限り、積極的に行きたいとは思わないが。
 全員が装備を確認したあと、入口へと向かう。下に向かっていくダンジョンの関係上、階段があった。
 そこを下りきると草が生えているホールのような場所に出て、右側には転移陣があるのか、そこが光ると冒険者が出てきた。装備がボロボロで冒険者自身もかなり疲れた様子を見せていることから、惨敗したんだろう。
 私たちの隊列は新人二人が先頭でその次がヴィン、次にランツの両脇にヤミンとヤナで、殿が私。空を飛べるピオとエバはヤミンとヤナの肩にいる。
 これはヴィンの指示なので、私の指示ではない。
 見渡せば辺り一面が草原。高低も濃淡も違うけれど、そこは見紛うことなき草原だった。
 ダンジョンの中だというのに風が吹き、草を靡かせているのが面白い。

「よし。移動するぞ。ここは弱いし、スライムと一角兎しか出ないから、さっさと先に進むぞ」
『<おー!>』

 ヴィンの言うことはもっともである。レベル差がありすぎて、一階の魔物たちは寄って来ないという現象まで起きているんだから、草が生える。
 食料もまだたくさんあるし、せめて二十階に行くまでは私たちでは物足りないだろうとヴィンの判断の元、最短距離で五階まで下り、休憩もせずボスを倒した。ボスはスライム五匹だった。
 六階で昼休憩を挟み、六階以降も最短距離で下へと下り、十階のボスである一角兎五羽をさくっと倒して十一階に下りる。今日はこの階層のセーフティーエリアで一泊の予定だったが、なんといっぱいで入れないというアクシデントが。

「外でいいか」
「問題ないでしょ」
「アレをやればいいもんね」
「アレだと見張りも必要ないし」
『アリサ、よろしく!』
「はいはい」

 期待したような目で見んな! まあ、期待された通りやるけど。
 セーフティーエリアに隣接する形でまずは円形にテントを張る。全員のテントがすっぽりと入るように結界石を置いて結界を張ったあと、その外周に私と従魔たちで二重に結界を張る。
 その後、ピオとエバが雷を這わせれば、冒険者と魔物が来ても大丈夫ってわけ。
 ただ、感電した魔物がドロップしたものを他の冒険者に持って行かれるのは癪なので、そこは気配に敏いジルと、魔法を構築すれば引き寄せることができると言ったヤナに任せた。
 真ん中に竈と焚火を設置し、パパっと晩ご飯を作る。テントの中が寒ければ電気ストーブもどきを渡すと言うと、全員大丈夫だと言ったのでそのままにした。
 薪をくべるのはノンがやってくれるというのでお願いし、それぞれのテントで寝てしまった。
 ……本当に見張りをつけなかったよ……。

 翌朝。竈近くにドロップ品が小山になっていて、それだけ魔物が突撃してきたというのがわかる。さすがにヴィンがいて、尚且つ強力な結界を張って寝た私たちに不埒なことをしようとは思わなかったようで、アフロになっている冒険者はいなかった。
 残念。

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