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ドルト村の冬編
第137話 パーティーと餅つき
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一週間が過ぎるのはとても早く、あっという間に過ぎ去っていく。外は雪が降ったり止んだりしているというのに、従魔たちはそれが楽しいみたいで、毎日外に出て遊んでいた。
初雪が降ってそろそろ三週間。雪も順調に積もってきていて、今は五十センチほどになっていた。
年が明けるともっと降って、一気に一メートルを超える積雪になるというんだから驚きだ。
もちろんそれに備えて雨戸も付けたし、家自体も、柱も梁も太く丈夫にしたからね~。今年は安心して家に閉じこもっていられるだろう。
屋根も慣れ親しんだものにしたしね。
そして今日はクリスマスパーティだ。もちろん、日にちは十二月二十五日。
今日の宴会が終わると二十八日に餅つきをして、新年の準備をするという。
魔族の新年の準備は何を用意するんだろう? まあ、祖父母がやらかしている以上、日本と遜色ないものになっていそうだが。
それはともかく。
今日持っていくお菓子は中にカスタードクリームやクリームチーズ、ホイップした生クリームを小さなタルトカップに入れ、その上に果物を飾った一口サイズのフルーツタルトとマカロン。小さいアップルパイとミートパイ、スイートポテトと同じ材料で作ったパイを用意。
他にもマドレーヌやフィナンシェ、レアチーズケーキとスフレ、シフォンケーキも紅茶とプレーンを用意したから、大丈夫だと思う。
人数が多いし、できるだけ一口か二口で食べられるようにしたから、さすがにホールケーキは作らなかったが、せめてもと生クリームを使ったブッシュドノエルだけは何本か作った。チョコを発見できていないので、そこはしょうがない。
つーか、当面の間はケーキ類は作りたくない……。
もちろん、リュミエールにもお供えしてきたぜ!
てなわけで集会所に集まり、女性たちが料理を作り、男性たちが飾り付けやテーブルと椅子のセッティングを担当。今日はある意味無礼講となるので、立食式にしたみたい。
冷めても美味しいものを先に作り上げ、温かいものは直前に出す方法にしたみたい。ホテルのようになくなりそうなら追加はせず、なくなったらそれで終わり。
料理自体はこの世界と魔族特有のもの、そして私やヤミンとヤナが教えた料理と、竜人族の料理が並んでいる。
竜人族は肉料理が中心のようで、地球で言うところのシュラスコがデーンと置かれている。しかもヴィン自らが肉を回転させて焼いているんだから凄い。
「何の肉なの?」
「ワイバーンだ」
「高級品じゃない! よくあったわね」
「ほら、会議の往復で襲われたやつだ」
「ああ、なるほど!」
なぜか知らないけれど、ヴィンとランツを連れてギルマス会議の護衛をすると、毎回往復でワイバーンに襲われるのよね。なので、肉や素材はギルドに売ることなく村で活用させてもらっている。
ワイバーンの被膜や皮は幌馬車を改善したり、ランツの息子たちや村人たちの外套にしたりしているのだ。外套といっても雨合羽やポンチョの役割が近く、自分の家から温室や貯蔵庫へ行く時に着ているみたい。
あとは長靴とかね。長靴を教えたのはヤミンとヤナだったりする。
ヴィンに私と従魔たちの分の肉を削ぎ落してもらい、そこに温野菜を載せる。
エビータたち獣人はやはり肉料理だがこっちは焼き鳥に近い串焼きやステーキで、レモン塩やタレ、ハーブ塩と味噌ダレがあり、どれも美味しそうで迷う。結局全種類食べることにした。
従魔たちも期待したように、キラキラとした目で見てたからね~。しっかりいただいたとも。
ハビエルたちドワーフ? 見事に酒しかないから割愛。
魔族たちはといえば、コッコを丸々使ったものと骨付きのもも肉を焼いたもの、手羽先元を煮たものを中心に、ポテトサラダやグリーンサラダ、ポテトフライやオニオンリングと唐揚げ。
エビとチーズを使ったカナッペと、パエリアやブイヤベース、ポトフやミルクスープなどの汁物もあり――とにかくいろんな料理が所狭しと、テーブルの上を飾っていた。飲み物はハビエルたちが作った酒の他に果実水やジュースもあり、自分の好きなものを手に取り、飲めるようになっている。
村人たちと話しながら飲み食いしているとあっという間に時間は過ぎていく。そして料理もどんどんなくなり、酔い潰れた人たちは部屋の隅で寝っ転がっていて、気の利く人が毛布や布団をかけている。
室内は温かいとはいえ、外は雪が降っているからね。今は熱気が凄いけれど、宴会が終われば室内の気温も下がるだろう。
それを見越して、ヘラルドは囲炉裏の炎を絶やしていないし、電気ストーブもどきもあちこち配置しているのだ。
そんな光景を見つつ、料理をしなかった分空いたお皿やコップを洗ったり、村人たちと話をしているうちに夜は更けていった。
そして二十八日。珍しく晴れた。今日は朝から外で作業。
村人総出でもち米を蒸し、餅つきの用意。鏡餅の他に豆餅や今日食べる分も作るらしく、全員が忙しなく動いている。魔族たちが用意したのは餡子と黄な粉。
「ねえ、アリサ。ずんだとか大根おろしも食べたいよね」
「俺も! お汁粉が食べたい! 材料はねえの?」
「あるわよ。ヘラルドたちに作っていいか聞いてみようか」
「「うん!」」
一緒に作業をしていたヤミンとヤナが、二種類だけだと飽きると感じたらしく、私に振ってきた。材料自体はあるからすぐに作れることを伝えると、ヤナがヘラルドのところにすっ飛んで行くと、すぐに戻ってきた。
「アリサ、作っていいって!」
「よし! じゃあ、私はお汁粉とずんだを作るから、豆を煮ている間に大根おろしを作ってくれる?」
「いいよ!」
「俺も頑張る!」
もち米が蒸しあがるまではもう少し時間がかかるので、先に大根おろしを作ってしまうことに。二人におろし器と大根を渡すと、大根の皮を剥き始めた二人。
「ヤミン、ヤナ。皮は取っておいてね」
「わかってるって。きんぴらや切り干し大根にするんでしょ?」
「シンクの掃除にも使えるもんな」
「よく知ってるね。その通りよ」
お願いねと告げると、二人はふんすと気合いを入れて皮を剥き始める。寸胴を用意してその中に入れてもらうことにし、私はその横で小豆と枝豆を煮ていく。
そうこうするうちに餅つきも始まり、あちこちでぺったんぺったんと音がし始めると、ヤミンとヤナがそわそわしだしたので笑ってしまった。前世で餅つきをしたことがないそうだ。
「交代で行ってきたら?」
「「そうする!」」
食べるのはまだ先だとはいえ、全家庭に配る鏡餅と豆餅、焼くための平べったくて長方形の餅もある。このあたりは慣れている魔族たちの独壇場だった。
お汁粉とずんだの様子を確かめながら作業を手伝ったりしていたけれど、途中で面倒になって錬成したら「アリサだしな……」と苦笑されてしまった。いいじゃん、鏡餅や豆餅のように丸や楕円形にするのはともかく、長方形にするのは大変なんだから。
そんなことを言ったら、それもそうだなとあっさり納得されてしまった。……解せぬ。
鏡餅を乗せる三方はハビエルが作り、飾りは女性たちが作る。紙はあるにはあるけれど半紙のような綺麗なものではないため、白い布を下に敷いて餅を乗せていた。
あとは橙の代わりにみかんを乗せただけの、シンプルな鏡餅なのだ。日本にあったようなプラスチック容器に入っているわけじゃないし、魔族たちのしきたりなんだから、これでいいんだろう。
それぞれができることをして、餅も全員に配り終えると、お疲れ様! ということで集会所で餅を頬張る。つきたてのお餅はとても美味しくて、つい食べ過ぎてしまいそうになる。
「食べすぎるとあとで困るわよ?」
<<<<<わかった!>>>>>
ご機嫌な様子で食べていた従魔たちに注意を促し、私もしっかり堪能する。
お正月の時は磯辺も食べたいし、雑煮も作りたい。おせちも手元にある材料で作ればいいかとあれこれ考えていると、ヤミンとヤナが寄ってきた。
「アリサ、おせちって作れる?」
「全ての材料があるわけじゃないから、全種類は無理よ?」
「わかってる。それでも、俺たちはおせちが食いたい」
「よし。じゃあ、一緒に作ろうか」
「「いいの?」」
「もちろん」
こそこそと三人で話し、おせちを作る約束をする。足りない材料は買いに行こうと話をして、日にちと時間を告げると、二人は嬉しそうに笑うと頷いた。
そしてお汁粉とずんだ、大根おろしは村人たちも気に入ったようで、次々に作り方と材料を聞かれたのでしっかり教えておく。
この世界に来て半年ちょっと。かなり濃く、そして充実した半年だったなあ……となんだか感慨深かった。
初雪が降ってそろそろ三週間。雪も順調に積もってきていて、今は五十センチほどになっていた。
年が明けるともっと降って、一気に一メートルを超える積雪になるというんだから驚きだ。
もちろんそれに備えて雨戸も付けたし、家自体も、柱も梁も太く丈夫にしたからね~。今年は安心して家に閉じこもっていられるだろう。
屋根も慣れ親しんだものにしたしね。
そして今日はクリスマスパーティだ。もちろん、日にちは十二月二十五日。
今日の宴会が終わると二十八日に餅つきをして、新年の準備をするという。
魔族の新年の準備は何を用意するんだろう? まあ、祖父母がやらかしている以上、日本と遜色ないものになっていそうだが。
それはともかく。
今日持っていくお菓子は中にカスタードクリームやクリームチーズ、ホイップした生クリームを小さなタルトカップに入れ、その上に果物を飾った一口サイズのフルーツタルトとマカロン。小さいアップルパイとミートパイ、スイートポテトと同じ材料で作ったパイを用意。
他にもマドレーヌやフィナンシェ、レアチーズケーキとスフレ、シフォンケーキも紅茶とプレーンを用意したから、大丈夫だと思う。
人数が多いし、できるだけ一口か二口で食べられるようにしたから、さすがにホールケーキは作らなかったが、せめてもと生クリームを使ったブッシュドノエルだけは何本か作った。チョコを発見できていないので、そこはしょうがない。
つーか、当面の間はケーキ類は作りたくない……。
もちろん、リュミエールにもお供えしてきたぜ!
てなわけで集会所に集まり、女性たちが料理を作り、男性たちが飾り付けやテーブルと椅子のセッティングを担当。今日はある意味無礼講となるので、立食式にしたみたい。
冷めても美味しいものを先に作り上げ、温かいものは直前に出す方法にしたみたい。ホテルのようになくなりそうなら追加はせず、なくなったらそれで終わり。
料理自体はこの世界と魔族特有のもの、そして私やヤミンとヤナが教えた料理と、竜人族の料理が並んでいる。
竜人族は肉料理が中心のようで、地球で言うところのシュラスコがデーンと置かれている。しかもヴィン自らが肉を回転させて焼いているんだから凄い。
「何の肉なの?」
「ワイバーンだ」
「高級品じゃない! よくあったわね」
「ほら、会議の往復で襲われたやつだ」
「ああ、なるほど!」
なぜか知らないけれど、ヴィンとランツを連れてギルマス会議の護衛をすると、毎回往復でワイバーンに襲われるのよね。なので、肉や素材はギルドに売ることなく村で活用させてもらっている。
ワイバーンの被膜や皮は幌馬車を改善したり、ランツの息子たちや村人たちの外套にしたりしているのだ。外套といっても雨合羽やポンチョの役割が近く、自分の家から温室や貯蔵庫へ行く時に着ているみたい。
あとは長靴とかね。長靴を教えたのはヤミンとヤナだったりする。
ヴィンに私と従魔たちの分の肉を削ぎ落してもらい、そこに温野菜を載せる。
エビータたち獣人はやはり肉料理だがこっちは焼き鳥に近い串焼きやステーキで、レモン塩やタレ、ハーブ塩と味噌ダレがあり、どれも美味しそうで迷う。結局全種類食べることにした。
従魔たちも期待したように、キラキラとした目で見てたからね~。しっかりいただいたとも。
ハビエルたちドワーフ? 見事に酒しかないから割愛。
魔族たちはといえば、コッコを丸々使ったものと骨付きのもも肉を焼いたもの、手羽先元を煮たものを中心に、ポテトサラダやグリーンサラダ、ポテトフライやオニオンリングと唐揚げ。
エビとチーズを使ったカナッペと、パエリアやブイヤベース、ポトフやミルクスープなどの汁物もあり――とにかくいろんな料理が所狭しと、テーブルの上を飾っていた。飲み物はハビエルたちが作った酒の他に果実水やジュースもあり、自分の好きなものを手に取り、飲めるようになっている。
村人たちと話しながら飲み食いしているとあっという間に時間は過ぎていく。そして料理もどんどんなくなり、酔い潰れた人たちは部屋の隅で寝っ転がっていて、気の利く人が毛布や布団をかけている。
室内は温かいとはいえ、外は雪が降っているからね。今は熱気が凄いけれど、宴会が終われば室内の気温も下がるだろう。
それを見越して、ヘラルドは囲炉裏の炎を絶やしていないし、電気ストーブもどきもあちこち配置しているのだ。
そんな光景を見つつ、料理をしなかった分空いたお皿やコップを洗ったり、村人たちと話をしているうちに夜は更けていった。
そして二十八日。珍しく晴れた。今日は朝から外で作業。
村人総出でもち米を蒸し、餅つきの用意。鏡餅の他に豆餅や今日食べる分も作るらしく、全員が忙しなく動いている。魔族たちが用意したのは餡子と黄な粉。
「ねえ、アリサ。ずんだとか大根おろしも食べたいよね」
「俺も! お汁粉が食べたい! 材料はねえの?」
「あるわよ。ヘラルドたちに作っていいか聞いてみようか」
「「うん!」」
一緒に作業をしていたヤミンとヤナが、二種類だけだと飽きると感じたらしく、私に振ってきた。材料自体はあるからすぐに作れることを伝えると、ヤナがヘラルドのところにすっ飛んで行くと、すぐに戻ってきた。
「アリサ、作っていいって!」
「よし! じゃあ、私はお汁粉とずんだを作るから、豆を煮ている間に大根おろしを作ってくれる?」
「いいよ!」
「俺も頑張る!」
もち米が蒸しあがるまではもう少し時間がかかるので、先に大根おろしを作ってしまうことに。二人におろし器と大根を渡すと、大根の皮を剥き始めた二人。
「ヤミン、ヤナ。皮は取っておいてね」
「わかってるって。きんぴらや切り干し大根にするんでしょ?」
「シンクの掃除にも使えるもんな」
「よく知ってるね。その通りよ」
お願いねと告げると、二人はふんすと気合いを入れて皮を剥き始める。寸胴を用意してその中に入れてもらうことにし、私はその横で小豆と枝豆を煮ていく。
そうこうするうちに餅つきも始まり、あちこちでぺったんぺったんと音がし始めると、ヤミンとヤナがそわそわしだしたので笑ってしまった。前世で餅つきをしたことがないそうだ。
「交代で行ってきたら?」
「「そうする!」」
食べるのはまだ先だとはいえ、全家庭に配る鏡餅と豆餅、焼くための平べったくて長方形の餅もある。このあたりは慣れている魔族たちの独壇場だった。
お汁粉とずんだの様子を確かめながら作業を手伝ったりしていたけれど、途中で面倒になって錬成したら「アリサだしな……」と苦笑されてしまった。いいじゃん、鏡餅や豆餅のように丸や楕円形にするのはともかく、長方形にするのは大変なんだから。
そんなことを言ったら、それもそうだなとあっさり納得されてしまった。……解せぬ。
鏡餅を乗せる三方はハビエルが作り、飾りは女性たちが作る。紙はあるにはあるけれど半紙のような綺麗なものではないため、白い布を下に敷いて餅を乗せていた。
あとは橙の代わりにみかんを乗せただけの、シンプルな鏡餅なのだ。日本にあったようなプラスチック容器に入っているわけじゃないし、魔族たちのしきたりなんだから、これでいいんだろう。
それぞれができることをして、餅も全員に配り終えると、お疲れ様! ということで集会所で餅を頬張る。つきたてのお餅はとても美味しくて、つい食べ過ぎてしまいそうになる。
「食べすぎるとあとで困るわよ?」
<<<<<わかった!>>>>>
ご機嫌な様子で食べていた従魔たちに注意を促し、私もしっかり堪能する。
お正月の時は磯辺も食べたいし、雑煮も作りたい。おせちも手元にある材料で作ればいいかとあれこれ考えていると、ヤミンとヤナが寄ってきた。
「アリサ、おせちって作れる?」
「全ての材料があるわけじゃないから、全種類は無理よ?」
「わかってる。それでも、俺たちはおせちが食いたい」
「よし。じゃあ、一緒に作ろうか」
「「いいの?」」
「もちろん」
こそこそと三人で話し、おせちを作る約束をする。足りない材料は買いに行こうと話をして、日にちと時間を告げると、二人は嬉しそうに笑うと頷いた。
そしてお汁粉とずんだ、大根おろしは村人たちも気に入ったようで、次々に作り方と材料を聞かれたのでしっかり教えておく。
この世界に来て半年ちょっと。かなり濃く、そして充実した半年だったなあ……となんだか感慨深かった。
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