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ドルト村の冬編

第130話 買い物とランツの依頼

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 なんだかんだと森で結局二泊し、夕方村に帰って来た。そのままギルドに行って素材や肉を買い取ってもらい、その計算を待っているところなのだが。

「え? ディエゴは今朝帰ったの?」
「ええ。今回はいつもと違って売るものも買うものも少なかったみたいですし」
「あっても、ハビエルさんが作った鍋と装飾品だけでしたしね」
「ああ、なるほどね」

 ギルドカウンターにいた双子の話に納得する。
 今までは月に一度ディエゴが来て、鍋や野菜、素材を売ってお金にしたり物々交換したり、帝都のギルドから頼まれていたものをディエゴに預けて持っていってもらっていた。
 けれど馬車を作ってイデアを手に入れたことでディエゴが来る必要がなくなったし、二週間に一度は帝都に行けるようになったこと、そろそろ冬になるからと今年最後だとヘラルドが伝えたんだとか。
 それもあり、いつもなら昼過ぎに出発するのに朝一番で出発したらしい。

「それでね、ミショの実が確実に売れることになったから、一度帝都に来てほしいそうよ」
「きちんとした契約書を作って、口座にお金を入れたいんですって」
「ああ~、そういうことか。面倒だけど、ディエゴと約束してたからなあ……」
「でね、その時にギルマスも一緒に行って、馬車の足回りのレシピ登録もしてくるって言っていたわよ」
「……ランツもかよ。すっかり忘れてたよ」

 馬車の足回りのレシピを登録するって言われてたのを、すっかり忘れてたよ。近日中にランツから護衛依頼が出されるだろうから、村から出ないでと言われたので頷く。
 もちろんパーティーメンバーであるヤミンとヤナに伝えたら、初めての護衛依頼だとはしゃいでいた。
 とりあえず計算が終わったからとお金をもらい、三等分する。といっても戦闘はほとんどヤミンとヤナがやっていたから、二人に多めに渡した。
 数字で表すなら、私が二割、二人は四割ずつだ。

「貯金するなら、そのままギルドに預けたほうがいいわ」
「「わかった! そうする!」」

 この村には食堂や屋台がないからね~、買い食いができない。だから料理は自分でしないといけないんだけれど、それが功を奏しているのか、二人の料理レベルが上がっているらしく、喜んでいる。
 私だけじゃなくてレベッカたち女性たちや、牧場の兄さんたちからも教わっているようで、今日は何を作ろうかと二人で話し合っていた。

「明日は休養日にするわね。きちんと休むのよ?」
「わかった」
「アリサ、カレーを教えてくれよ」
「いいけど、午前中は勘弁してね。明日は朝一で漁港に行くつもりだから」
「「漁港!? 行ってみたい!」」

 おおう、漁港と聞いて目が輝いてるよ、二人とも。内心で溜息をつきつつ、まあいいかと二人を連れて行くことにした。
 集合時間と私の家に来てほしいと伝え、解散した。

 翌日の早朝。眠そうな二人に苦笑しつつ、転移で漁港に行く。

「まさかの転移魔法……」
「てっきり空を飛んでいくんだと……」
「ピオかエバに乗ったとしても、一日以上かかるわよ。それだったらカンストしてる転移のほうが早いもの」
「「……」」

 あんぐりと口を開けたヤミンとヤナを促し、漁港へと行く。いつも行く商店街への道すがら、ヤミンとヤナにどんなものがあるとかこの国や漁港でしか買えないものを説明すると、二人は物珍しそうにしながらも自分たちが食べる分の野菜やスパイス、調味料を買っていく。
 そして漁港に着くと、その活気に目を白黒させていたのには笑ってしまった。

「おはよう~」
「おう、アリサ! 今日はどれを買っていく?」
「そうね……」

 タラバガニのような足の長いカニが出回り始め、他にはカツオやマグロが一匹の姿のまま売られている。この世界のカツオとマグロは一年中獲れるらしく、年中店に並んでいる。
 さすがに一匹分のマグロはいらないので、半身を柵にしてもらった。他にもサンマとウナギ、さけとしらす、ホッケやホタテをワントレー分を買った。
 ヤミンとヤナも散々迷いながらも二人で相談しつつ、いろんな魚や貝を買っていたなあ。
 漁港から出ると商店街へと行き、屋台で朝食を食べ歩きしながら朝市を堪能。その中で気になったものを買うヤミンとヤナにほっこり。

「アリサ、また来たい!」
「ああ! いろんな魚貝があるし!」
「いいわ。一ヶ月に一度は来てるから、その時にまた来ようか」
「「やった!」」

 獣人だったら確実に尻尾がブンブンと振り切れるくらいに振っているだろう姿に、素直だなあと思う。中の人がいくつか知らないが、もしかしたら年齢に引っ張られている可能性もある。
 もしくは、若いうちに亡くなったとかね。
 まあ、最初はつらい目にあったみたいだけれど、今は異世界を楽しんでいるみたいだから、よしとしよう。
 屋台と朝市を一通り楽しんだあと、まっすぐ村へ帰って来た。そのまま解散しようとしたら、そのタイミングでランツが来たので、三人で話を聞くことに。

「明後日から帝都までの護衛を三人に依頼したいのです」
「構わないけど、行く場所は?」
「もちろん商業ギルド本部です。馬車の足回りのレシピを登録しに行きますよ、アリサ」
「うへぇ……」
「あと、ジグソーパズルと積み木、お手玉とヨーヨーの目途が立ちました。こちらも一緒に登録してしまいましょう」
「それはいいけど、馬車の足回りは契約書を作った時に登録しなかったの?」

 そう、そこが不思議だった。確かに、ジグソーパズルなどの教材や玩具に関しては契約書を作ってないから納得できる。
 けれど、馬車の足回りに関しては先に契約書を作ってあったから、職人たちが部品を作れるようになったらすぐにレシピの登録をするものだと思っていた。そう伝えたら、ランツが溜息をつく。

「本来はここで登録でも問題ないのです。もちろん、職人たちも部品を作れるようになりましたので、すぐにレシピの公開もできるのです。けれど、帝都のギルド本部側でアリサに会いたいと言っている人がいてですね……」
「……本部のギルマス、とか?」
「ええ。できれば、数字パズルとけん玉のレシピを復活させてほしいそうです」
「……面倒」
「そう言わずに」

 今さら数字パズルとけん玉を登録しろだなんて、何を考えているんだか。引き上げる時に簡単にできたのは、神が世界中に広がったと認識したからだ。
 そうじゃなければ、いくら登録者の私が引き上げると言ったところで、実行されることはない。そういう世界だからね、ここは。
 単なる建前なんだろうなあ……私に会うための。本音だとしても、神が認めている以上却下するが。
 そういったものは綺麗に隠し、とりあえず会うことは約束した。どのみちギルドでギルマスの会議があると言っていたし、ディエゴのところにも行かないといけないからね。

「まあ、会うのは吝かじゃないけど、数字パズルとけん玉は期待しないで」
「わかっていますよ。あと、同じ時期に冒険者ギルドでもギルマス会議があるそうです。ヴィンも一緒に行くことになりますから、お願いしますね」
「はあ……。わかった。ヤミン、ヤナ。そういうわけだから、旅の準備をしておいてね」
「うん、わかった」
「何日分必要だ?」
「そうね……帰りはランツとヴィン次第だから、とりあえず行きの分を予備を含め、五日分でいいかしら」
「「わかった」」

 パーティーを組んで初の護衛依頼とあって、神妙に頷くヤミンとヤナ。牧場にいる兄さんたちにもきちんと話しておくように伝えると、二人は頷いたあとでランツに挨拶し、牧場のほうへと歩き出した。
 その後、ランツに集合場所と出発時間を聞いて解散。お昼は約束通りヤミンとヤナの家に行くと二人にカレーの作り方を教え、ランツから聞いた集合場所と時間を伝えると、自分の家に戻る。
 明日はポーチとアイテムボックスの整理をしつつ旅の準備をしようと考え、家の中へ入った。

「あ~、面倒~。リュミエール、またしばらく帝都に行ってくるからね。お供えできなくてごめん」

 リュミエール像に謝罪しつつ、お風呂の用意。疲れを取るために従魔たちも含めてさっさと入って疲れを取ると、ご飯を作った。
 今日は簡単にしようとロック鳥を使った似非親子丼と、大根の味噌汁に浅漬けと簡単なものにしたよ。
 夜は久しぶりにジルが枕になりたいというので快諾する。
 最近は護衛依頼が多いなあ……と内心で文句を言いつつも、依頼があるだけマシかと思うことにし、全員でジルのもふもふに埋もれながら眠りについた。

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