自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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セガルラ国編

第43話 村をビフォーアフター 4

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 住人二人にアクセを作ってもらっている間に、今度はお姉様たちと料理だ。ジャガイモとさつまいもがかなりあるからね~。
 時間が遅いから今日はやらないけれど。それをしっかりお姉様たちに伝え、鍋の作り方を伝授しようと思います。
 まずは、畑の隅っこに行って山盛りになっている、いらない土を使って土鍋を作る。もちろん、状態維持付き。
 大きさは四、五人前くらいがいいかな? それを各家庭分作り、お姉様方に話して一人ひとつ持ってもらうと、竈があるところへと行く。
 使う材料は、溜めに溜め込んだ魚介類だ。あれですよ、寄せ鍋的なものを作るつもり。
 土鍋の中に昆布を入れ、昆布だしを作っておく間に、タラやブラックタイガー、あさりやホタテなどを用意し、それを処理しておく。煮立つ前に昆布を出して調味料を入れ、一旦放置。
 野菜は、季節外れだけど種欲しさに作った白菜、えのきとしいたけに似たキノコを入れた。ニンジンも輪切りにしたり、ネギは斜め切りにしたりと用意したあと、出汁が入った土鍋に材料を入れていく。
 豆腐やしらたきがあればいいけれど、ない物ねだりしても仕方がない。なので、この村で確実に採れるものだけに留めた。
 味付けは魚醤だ。

「こうすれば、野菜も一緒に食べられるでしょ?」
「なるほど……」
「これだけだと足りないと感じるなら、途中で野菜や魚貝を足してかさ増ししたり、別のおかずを用意すればいいの。例えば刺身とか、サラダとかね」
「アリサ、さしみってなんだい?」
「魚を生で食べること、かな」

 生で食べるということに驚いていたけれど、あの漁港でも食べ方を教えたと話すと、とりあえず納得した。あの町でもそうだったけれど、好みがあるからね~。それを考慮に入れてと話し、ボタンエビとホタテ、マグロとカツオ、イカとタコを使った刺身を用意。
 もちろん、食べる直前に除虫の魔法をかけてある。

「魚醤につけて食べるの。酒の肴にもなるし、余るようなら鍋に入れちゃえばいいしね」
「なるほどねぇ」

 味見と称してお姉様方に配ると、やはり好みが分かれた。それならばと、煮た魚や、副菜としてにんじんしりしりやピーマンしりしり、きんぴらごぼうも教えた。
 他にも、赤身の魚を使ったツナの作り方を教える。これは漁港には教えていないから、この村の特産物になってくれるといいな……なんて考えながら、お姉様方と一緒に作る。
 油が高いから、今回は水煮だ。ツナを作るときに使うハーブ類も、森に生えていたからね。
 もし足りないようなら、森から種や苗を持ってきて栽培すればいいと教えた。ハーブなら、畑じゃなくて自分の家の庭でも作れるからと。
 水やりや肥料の注意をして、しっかり教える。そういったことが苦手なら森で採取するか、大々的に村で作ってしまえばいいし。ハーブの中にはポーションや薬の材料になるものもあるんだから、そこは村にいる医者に聞けばわかるだろう。
 彼らもきっと、そういうものが欲しいと思うだろうし。
 そんな話をしているうちに、材料を入れた土鍋がぐつぐつと煮えてくる。そうすると、辺りには魚醤と野菜、魚貝のいい匂いが漂うわけで……。

 ぐうぅぅ……。

 あちこちからお腹が鳴る音がして、笑ってしまった。そのまま家に持って帰ってご飯にするのかと思いきや、今日も今日とて宴会の様相になり、私は苦笑するしかない。

「アリサ、この鍋って、他の材料でもできるかしら」
「できるわ。牡蠣だけというものできるし、魚や貝を一角兎やロック鳥に変えればいいの。野菜はなんでもいいけど、できれは葉物がいいわ。あとは白菜とオークのバラ肉を使って――」

 言葉で伝えたところで実際に見てみないとわからなだろうと、また土鍋をいくつか作ってそれぞれに入れてみる。牡蠣鍋はできれば味噌がいいけれど、ないからね。そこは諦めて魚醤で作る。
 オークのバラ肉を使ったミルフィーユ鍋に、一角兎やロック鳥を使った水炊き。豆腐の代わりにキノコを入れてみた。お酢をまだ発見していないからポン酢を作れない。なので、味付けをして食べるか、魚醤に出汁を入れたタレをかけるかつけるかして食べてもらうしかない。
 材料さえわかれば、主婦をしているお姉様方のことだ。しっかりとメモを取って次に活かそうとしているのは、さすがだと思った。
 なんだかんだと鍋は全員が食べきり、また明日。
 明日は芋を使った料理を教えるから、ボウルや鍋、包丁とまな板を用意してきてと話し、夜のご挨拶をして解散する。今日も私は広場に陣取って、テントを張る。
 村長むらおさに「我が家に泊まってくれ」と言われたんだけれど、従魔たちが泊まるスペースがないんだよね。だから断ったのだ。特にリコは馬房に入れないといけないんだけれど、馬房がいっぱいなのと、馬が怯えても困るからという理由もある。
 この村にいるのは普通の馬だからね。強いバトルホースだと、馬たちが怯える可能性があるのだ。
 そんな説明をすると、村長は申し訳なさそうな顔をして家の中に入った。
 明日は何を作ろうかな……。そんなことを考えているうちに、いつの間にか寝ていた。

 翌日。身支度を整えてから簡単な朝食を作っていると、あちこちの家庭からパンを焼く匂いがしてくる。いいよね~、焼き立てのパンの匂いって。
 従魔たちともそんな話をしながら朝食を食べると、さっそくお姉様方とアクセサリー作り担当の二人がやってくる。アクセ職人には昨日に引き続いて真珠の選別をしてもらい、お姉様方にはジャガイモとサツマイモの料理だ。
 蒸し器がないから、それを考慮したものにしないといけない。

「まず、こっちのジャガイモからね。皮を剥いて一口大に切ったあと、塩を入れて茹でるの」

 茹でてから使う料理は、これが基本だと教える。茹でる時間は、一口大の場合、だいたい十分。この時、卵も一緒に茹でることも伝えた。
 茹で上がったら三等分に分け、ひとつは鍋に戻して塩コショウしたあと、そのまま鍋を動かして粉ふき芋に。残りは別々に潰してもらう。
 潰したもののひとつには、切ったゆで卵、小さく切ったニンジン、とうもろこし、グリーンピースとマヨネーズを入れて混ぜてもらう。つまり、ポテトサラダだ。
 塩茹でしているから、追加の塩は入れない。他にも玉ねぎを薄くスライスして水にさらしたものか、塩もみをしたものを入れるといいと教えた。
 もうひとつは鍋に入れてもらってさらに潰し、牛乳を少しだけ入れて伸ばす。こっちはビシソワーズもどきのスープにしてみた。生クリームは高いそうなので、牛乳で代用だ。
 あとは皮つきのまま櫛形に切ったり細長く切ったり、薄くスライスしてもらって油で揚げる。そうするとフライドポテトとポテトチップスの完成だ。
 他に茹でたジャガイモと玉ねぎをみじん切りにし、塩コショウと小麦粉を少しだけ混ぜてから長方形にして固めたものを多めの油で焼くと、ハッシュドポテトの完成だ。
 ハッシュドポテト以外はそれぞれ塩を振って味見をしてもらうと、さすがは主婦。酒の肴になりそうだと嬉しそうにしていた。
 そしてサツマイモは、アルミホイルの代わりに紙にくるみ、竈の外側に石を置いてその中心に放置した石焼き芋と、輪切りや乱切りにして揚げたもの、同じく薄くスライスして揚げたりオーブンで焼けば、チップスの完成。乱切りのほうはハチミツをまぶし、大学芋もどきにしてみた。
 他にも、一度茹でてからパンに練りこんで焼く方法も教えた。甘いパンならおやつの代わりになるしね。

「パンは、木の実やチーズを入れてもいいの」
「ああ、確かにねぇ。作れる料理が増えて嬉しいよ、アリサ。ありがとうね」
「どういたしまして」

 まだまだ栄養状態が危ういけれど、来た日よりは元気になってきている村のみなさん。野菜をたくさん栽培して配ったことと、魚介類をそのまま食べたりしていることも大きいんだろう。
 小麦粉さえあれば、わざわざ酵母を作ったり買って来たりしなくてもパンを作れるし、手間でなければ朝からパンケーキにしたっていいのだ。その分、おかずをサラダや目玉焼き、スープを用意すればいいんだからさ。
 各家庭には地下に冷蔵庫のようなもの――氷室があって、野菜はそこに保存できると言っている。いざとなったら天日干しにして乾燥野菜にしてしまえば保存食にもなるんだから、あっても困ることはないだろうし。
 お姉様方との料理談義が終わるころ、真珠の選別がだいたい終わったというので、見せてもらった。

「おお、凄いね! だいたい粒が揃っているじゃない」
「だろう? これなら「誰々のやつは粒が大きい!」なんて喧嘩しなくていいし」
「だよね。大きいのはほとんどなかったけど、小さい粒は僕たちだと難しいと思う」
「ああ。だから、これはアリサに渡すよ」
「私は助かるけど……いいの?」
「「ああ」」
「なら、遠慮なくいただくわね」

 お金を払おうとしたんだけれど、教えてもらったからとタダにしてくれた。やったね!
 揃っている粒は親指の爪ほどあるから、大きい部類に入る。小さい粒は赤子の爪ほどしかないんだから、確かに彼らだと扱いが難しいかもしれない。
 これは庶民向けのものして、間にビーズを通せばいいかなあ……と、いろいろとデザインが膨らんでくる。何を作るにしろ、いいものができればいいなと思った。

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