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セガルラ国編

第36話 テンプレトラブル再び

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 分岐を南に逸れ、走ること一日。初めての国境に着く。国境にも白水晶が置いてあり、それと同時にタグを見せることで国境を越えることが可能だ。

「セガルラ国へようこそ! よい旅を」
「ありがとう」

 門番に挨拶をされて国境を抜け、またリコに跨って走り出す。ここから五つの町を抜けると海に着くのだ。リコの速さでも、あと六日か七日かかる距離だから、のんびり行こう。
 なーんて思っていると、フラグが立ったりトラブルが向こうからやってきたりするわけでして……。

<アリサ、人間の群れがいるわ>
<五十人くらいだ>
<<たぶん盗賊>>
「はあ……まったく。あとちょっとで町なのにーーー‼」

 ぶつくさと文句を言いつつ、ピオとエバに先行してもらい、盗賊たちを痺れさせておいてもらう。もちろん、沈黙サイレンスをかけるように言っておくことも忘れない。
 私は念のため槍を出し、少しだけリコにスピードを落としてもらって走っていると、「ぎゃーーー!!」という野太い悲鳴が聞こえてきた。

「リコ、スピードを上げて、奴らのところに行って」
<わかった>

 まずは街道にいる奴らのところに行き、武器と防具を取り上げてから簀巻きにし、逃げられないようリコに浅い穴を掘ってもらった。
 それと同時にエバが盗賊に雷を落としてから、沈黙サイレンスをダブルでかける。
 今回は強めの雷を落としたらしく、全員が気絶していた。しかも、頭がアフロになっているから面白い。この場はノンとエバにお願いし、見張っていてもらう。
 ノンさんや……気絶しているからといって、棒を持ってつんつん突いたり、鼻の孔や口にくそ苦い痺れ草や痺れ花をつっこまないの! 薬草と薬花が可哀想でしょ!
 私たちに害はないし、ノンが楽しそうだからいいかとノンの好きなようにさせ、リコは私と一緒に行動だ。
 森の中にいる連中も同じように武装解除してから簀巻きにし、倒木と以前解体した際に出た板を使って空間拡張と重量軽減を施した馬車を錬成し、それに沈黙サイレンスと結界を施すと、その中に盗賊たちを突っ込んでいく。
 そのまま馬車をリコに繋ぎ、街道に出て穴の中にいる盗賊たちも馬車に突っ込むと、その場でマップの確認。囚われている人や残党がいても困るからね~。しっかり探しますとも。

「お? 洞窟があるね……」
<オレが行ってくる>
<あたしも行く>
<ノンもー>
「おいおい……。まあ、いいか。私とリコはのんびりとそっちに行くから、殲滅してきてもいいわ。ただし、殺さないでね?」
<<<はーい!>>>

 私の言葉を聞くとピオがノンを乗せ、エバと一緒にマップにあった洞窟のほうに飛んでいく。それをリコと一緒に見送ったあと、ゆっくりとその方向へと向かう。
 あと少しで洞窟に着くというところで、中から「ぎゃーーー!!」という声がして、洞窟内に反響していた。しばらく待っていると、ノンがいくつもの触手を出して担ぎ、洞窟から出てくるのが見えた。
 盗賊たちは痺れているのか、ピクピクと痙攣し、髪がアフロになっている。
 ……雷を落とすと、髪がアフロになる仕様なんだろうか、この世界の【雷魔法】って。できれば神様の悪戯だと思いたい……。

「簀巻きにするから、そのままでいてね」
<はーい>

 触手をそのままにしてもらっている間に武装解除してから簀巻きにし、馬車に突っ込む。まだいるというので連れてくるようにお願いした。

<アリサ、囚われている人はいなかったわ。ただ、武器や食料がたくさんあったの>
「そう……。なら、私も中に入るわ」
<ピオが中にいるから、あたしはリコと一緒にいるわね>
「お願いね。暴れそうになったら、」
<雷を落としておくわ>
「よろしく~」

 盗賊を全員捕らえたところでエバが戻ってきて、報告をしてくれる。マップを見た限り、確かに囚われていると思われる緑の点はなかった。
 武器や防具、食料があるなら回収しないとまずいし……と若干憂鬱になりつつ、洞窟の中に入っていく。自分たちで掘ったのか、枝分かれしている洞窟をくまなく探し、お宝や奪ったものを全部回収した。
 幸いなことに人骨やギルドタグなどの身分証はなく、貴族も襲ったりしていなかったのか、宝石や絵画といったものもなかったのが救いか。
 もしかしたら結成したばかりで、武器などを集めている途中だったんだろう。お宝と呼べるものは、全部武器や防具だけだったんだから。あとは食料や調味料だけだ。
 全部確認し、念のためマップを展開して隠し扉や秘密の部屋がないか確かめたけれど、そういうのもなかったので、さっさと洞窟を出る。

「よし、こいつらを連れて町まで行こうか」

 また買い取りの進捗状況を聞かないといけないのか……と遠い目をしつつ、町まで行く。お昼過ぎに町に着いたので門番に事情説明すると、すぐに動いてくれた。
 この町でも「馬車が欲しい!」と言われたけれど、「白金貨五百枚だけど」と言うと、やっぱり諦めたように項垂れる騎士たち。もちろん馬車は解体している。
 そのときに説明してくれたんだけれど、彼らは最近になって出てきた盗賊らしく街道で商人や冒険者を殺しているため、探していたらしい。まさかこんなに近いところにいるとは思っていなかったらしく、驚いていた。
 ああ、だから人骨などがなかったのか。街道にほったらかしにしていたから。

「私は旅の途中なんだけど」
「わかってはいるんだが……。できれば三日ほど滞在してほしい。それまでに、できるだけ遺族に声をかけるようにする」
「わかった」

 持って来たものをすべて騎士たちに渡し、従魔たちと一緒に泊まれる宿を紹介してもらい、そこに泊まる。のんびりとした雰囲気の町で、よく盗賊たちに狙われなかったなあ……と思う。
 教わった宿に着いたので紹介されたことを話すと、すぐに手続きをしてくれる。そこから一旦部屋に行き、休憩してからリコがいる馬房に行くと、ブラッシングをかけた。

 一泊したあと、ずっと宿に籠っているものなあ……ということで冒険者ギルドに行き、フォレストウルフの討伐を受けた。その数が五十だったからこの町が安全であったことと、もしかしたスタンピード直前だったから盗賊たちはなにもできなかったのでは? と思い至ったのだ。
 討伐証明部位を教えてもらいながら、どうしてこんなになるまで放っておいたのか聞いたら、討伐できるランクの冒険者が明後日まで護衛依頼でいないというので、そのままになってしまっているらしい。
 中間の冒険者が全員いないって……。大丈夫か? この町のギルドは。まあ、私は通りすがりだし、どうなろうとギルド側の責任だし。
 そんなことを考えつつ、引き受けた。

「もっといたら、討伐してもいいかしら」
「もちろんでございます。その場合、上乗せさせていただきます」
「わかった」

 それならいいかとギルドをあとにし、従魔たちを連れて森の中へ行く。時間を決めて自由行動にし、時間が来たら戻るように伝えると、従魔たちは喜んだ。
 それぞれ方々に散っていく従魔たちを見送ったあと、私も移動を開始。早々にフォレストウルフが二体現れたので、さっさと首を切って倒したあと、解体した。討伐証明は上顎にある左右の長い牙だ。
 そんなことを繰り返しているうちに時間となり、従魔たちが戻ってくる。

<たくさんいたのー>
<俺もたくさん倒した!>
<あたしも!>
<オレも!>

 開けているところに移動して休憩すると、すぐに従魔たちが報告してくれる。フォレストウルフの他にもフォレストモンキーやホーンディア、ブラウンベアやブラウンボアもかなりいたそうで、それらも狩ってきたという。
 結局、フォレストウルフは八十体、モンキーが二十体、ホーンディアが十五体、ブラウンベアとブラウンボアが十二体ずつと、とても大量になった。解体しようと思ったがギルドに報告しないといけないからと、そのまま持って行くことにする。
 当然のことながら、ウルフに関しては討伐証明だけ切り取っている。
 インベントリになっているマジックバッグはあるけれど、さすがに本当にインベントリになっていると知られたくない。まあ、大容量のバッグはあるそうなので、もし聞かれたらそれを持っていることにしよう。
 さっさとバッグにしまうと、お昼を食べる。帰りは、襲われない限りはこっちから手を出さないよう従魔たちに伝え、町に戻ることに。
 のんびりと歩きながら、ノンと一緒に採取をする。採取の依頼票も溜まっていたんだよね……魔物が多くて新人を外に出せないという理由で。
 期限が近いものだけを受けてきたし、今回だけでもかなりの数の目減らしをしたから、新人たちは明日以降に採取依頼を消化できるだろう。
 採取を終えて立ち上がり、念のためマップで魔物の分散を確かめる。町を出たときはかなりの数の赤点があったが、今は閑散としている。
 遠くのほうにも赤点はあるけれど、こっちに来る様子は見えないから放置。もし来るようなら討伐してもいいけれど、護衛依頼をしているという冒険者たちが帰ってくるまでの時間はありそうだから、大丈夫だと思う。
 その間に私が移動していた場合に襲われたとしても、討伐できる冒険者を何組か残しておかなかったギルド側の責任なので、町が滅ぼうが壊滅しようが、私の知ったこっちゃないが。
 明日はなにをしようかと従魔たちと話しながら町の門を抜け、ギルドに向かった。

「あら、おかえりなさい。随分早いようだけれど……」
「従魔たちが優秀だからね。依頼は大丈夫よ。ただ、ちょっと数が問題でね……」
「数……ですか?」
「ええ。八十匹と、他の魔物も大量だったわ」
「……っ。かしこまりました。倉庫にご案内いたします」

 八十と言っただけで息を呑み、驚く受付嬢。他の魔物のことも話すと、すぐに動いて倉庫に案内してくれた。

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