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好き、大好き

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 乙幡さんが……和樹さんが、私を翻弄する。

「あっ、ああんっ、あああああっ!」

 イくという感覚を教えられ、何度も何度もイかされた。和樹さんのモノが入って来た時はすごく痛かったけど、熱くて硬いその塊が動くたびに、背中やお腹からぞくぞくしたものが這い上がってきて、和樹さんにしがみついたまま声をあげることしかできなかった。
 大きな手が胸を掴んで揉み、先端を擦られてあられもない声があがってしまう。だけど和樹さんはそれが嬉しいようで、何度も声をあげさせて、私を翻弄していった。

「紫音……気持ちいい?」
「ぅぁ、はうっ、ああんっ!」
「は……っ、くっ、気持ちいいみたいだね……よかった」

 奥の場所を擦られて、それで甘い痺れが走って声をあげる。気持ちいいという感覚が襲うけれど、それを声にすることができなかった。ただただしがみついて、声をあげて……好きだと伝えるとキスをしてくれる和樹さん。
 愛されるとはこういうことなのかと、心と身体が満たされていった。

 三回はされたんだろうか……私はもうぐったりとしていたけど、和樹さんは逆に元気になったみたい。本当はもっと一緒にいたい。だけど私は帰らなきゃならないし、お腹が空いたからとお風呂を借りてシャワーを浴びた。

「駅まで送って行くよ」
「ありがとうございます」

 自然と差し出される手に、自分の手を重ねる。大きくて温かい手が私の身体に触れたと思うと恥ずかしくなってくる。

「……さっきのこと、思い出してるの?」
「ひゃああぁぁぁぁっ!」

 耳元で、しかも艶っぽい声で囁かれて、つい変な声をあげてしまう。まだ外に出てなくてよかったよ……。

「くくっ! やっぱ紫音は可愛いよ。もっと抱きたいけど……」

 また今度抱かせてよ、と言った和樹さんに頷くと、キスをされた。うう……。

 手を繋いで一緒に駅まで歩く。離れることは寂しいけど、仕方がない。お正月はお互いに家族と過ごすことになっているので、今度会うのは年が明けた二日だ。その時に隣の市にある拝島大師に行って、初詣をしようと約束をしていた。車でも電車でも行けるそうだし、ドライブもしたいからと車で行くことになっていた。

「じゃあ、二日にな」
「はい。あ、待ち合わせはここでいいですか?」
「ああ。九時でいいか?」
「はい」

 名残惜しかったけど、手を振って別れた。遊歩道の階段を下りて、自宅までゆっくり歩く。……まあ、あちこち痛いからなんだけどね。
 父へのお土産にとパンも買ったし、私も食べたいからいろいろと買ってみたのだ。

「ただいまー」
「お帰り。デートは楽しかったかい?」
「うん! って、へっ?! な、なんで知ってるの?!」
「いつになくそわそわしてたしね。相手は乙幡一尉かい?」
「お、お父さん?!」

 ひゃあぁぁぁっ! 父になにもかもバレてるぅぅぅっ!
 わ、私ってそんなにわかりやすいんだろうか……。

 父にからかわれつつもお土産を渡し、お風呂に入ってから着替える。まだアソコに何か入ってるみたいで違和感はあるけど、和樹さんに抱かれて、好きだって言われて、すごく嬉しかった。ちゃんと避妊してくれたことも嬉しかった。
 確実じゃないことは知識として知っているけど、それでもちゃんとしてくれたことが嬉しい。子どもはほしいけど、それは和樹さんと話し合って、結婚してからでもいいと思ってる。だから今は、恋人同士の時間を楽しみたい……そう思った。

「和樹さんもそう思ってくれてるといいな……」

 そんなことを呟いて、疲れもあってかすぐに眠ってしまった。

 そして翌日の朝は買って来たパンを食べて父とやりのこした大掃除をした、大晦日の夜。

「紫音! やっと会えたわ!」

 三時ごろ二人の兄夫婦と子どもたちが来て遊んでいたら、六時ごろ姉夫婦が来た。

「お姉ちゃん……っ! 結婚式に行けなくてごめんね!」
「いいのよ、そんなこと気にしなくて。わたしこそ、家が近かったのに会えなくてごめんなさいね」
「ううん、それこそ気にしてないよ!」

 リビングで抱き合ったまま、姉と話す。姉は都内に住んでいたけれど、やはり仕事の都合ですれ違ってしまい、会えないことのほうが多かったのだ。それでも父や兄たちに比べたら話す機会は多く、何かしら相談に乗ってもらったりしていた。

「ほら、話はあとでもできるだろう?」

 父の言葉に抱擁を解くと、義兄と子どもを紹介してくれた。
 姉はおせちを作って来てくれたらしく、それを冷蔵庫に入れている。
 明日に備えてお雑煮の作り方を教わりながら姉と一緒に作り、夕飯に年越し蕎麦を食べて、みんなでまったりした。
 テレビをつけっぱなしにしてトランプをしたり、ボードゲームをしたり。伯父さんのところでもやった記憶はあるけど、ここまで大人数でやったのも、楽しかったのも初めてだった。

 家族っていいな。やっぱり父たちと一緒にいたかった……と思ったけど、何も言わなかった。みんなが後悔をしていることを知っているから。

 わいわいと話しながら遊んでいるうちに、姉のところと昂兄のところの子どもたちが寝てしまったので、遊びはお開きだ。道具を片付けて、布団を敷く。皆が泊まる部屋は空いていた部屋とリビングらしい。……リビングで?
 ま、まあ、空いている部屋はそれほど広いわけじゃないし、毎年そうしてるんだって。
 布団を敷くのを手伝い、お餅の用意をして寝た。いつもより少し遅い時間に起きたんだけど、父や姉がもう起きていて、慌てる。

「あら、紫音。もっと寝てていいのよ?」
「ううん、起きるよ。目が覚めちゃったし」
「そう? なら、おせちをテーブルに並べてくれる?」
「うん」

 姉がお雑煮用の汁を温めている間に父がテーブルを拭いてくれたので、その上に冷蔵庫に入っていたおせちを乗せる。そのころになるとみんな起きて来て、揃って新年の挨拶をした。
 おせちを食べて、子どもたちにお年玉をあげて。みんなで電車に乗って初詣に行ったあと、そこで解散となった。まあ、昂兄とは立川駅まで一緒だったんだけどね。
 夕飯は残りのおせちとお雑煮を食べ、みんなからと年甲斐もなく父からお年玉をもらってしまった。そんな歳じゃないんだどなあ……と思ったけど、家族からお年玉をもらったのは本当に久しぶりだったから、有り難く頂戴した。
 お風呂に入り、父に明日は和樹さんと出かけることを話す。「楽しんでおいで」と言ってくれたことが嬉しかった。

「何を着て行こうかな……」

 天気予報では晴れると言っていたし、ドライブすると言っていたから、コートはダウンにして、中は温度調節ができる格好にしようと決め、眠った。
 そして翌朝、決めた服に着替えて、待ち合わせ場所まで行く。和樹さんと新年の挨拶を交わして差し出された手に自分の手を重ねると、手を繋いだまま一緒に歩き始めた。

「先に初詣に行って、それからドライブに行くんですよね? どこに行くんですか?」
「これといって決めてないんだよな。どこか行きたいとこはあるか?」
「うーん……。あ、川越はどうですか? そんなに遠くないですよね?」
「川越ね……何かほしいものがあるの?」
「ロングふ菓子が食べたいです!」
「なるほどね。いいよ、じゃあ、そこに行こうか」

 歩きながら話しているうちに和樹さんが住んでいるマンションに着いた。その隣にある駐車場に行くと、車に乗り込む。車種はわかんないけど、黒い車だった。
 エンジンをかけ、暖気してくれる和樹さん。車にはナビが付いていて、拝島大師までのルートを調べていた。

「じゃあ、出るよ」
「はい」

 シートベルトを確認されたあと、和樹さんは目的地に向かって車を滑らせた。

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