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枯れたオヤジに捧げる愛

真由の場合 二話目

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 そうして始まった私とガイ小父様たちとの交流は、思ってた以上に楽しかった。
 三人で話をすることもあれば、ガイ小父様とウィル小父様だけの時もあったし、誰か一人の時もあったし、ガイ小父様がいない時もあった。ガイ小父様がいない時は、ウィル小父様やレオン小父様と一緒に、知らない小父様も時々混じってお茶を飲んだり話をしたりした。
 逆に私がその小父様に紅茶を入れることもあった。
 ガイ小父様たちだけでなく、だんだん仲良くなって可愛がってくれるようになったメイドさんたち用のお茶菓子にクッキーやパウンドケーキを持って行けば、メイドさんたちも喜んでくれた。

 ガイ小父様や名前の知らない小父様は、自分が行った国の話をたくさんしてくれたから旅行に行った気分になったし、ウィル小父様に紅茶の入れ方を教えれば、私の苦手なテーブルマナーを丁寧に教えてくれた。レオン小父様は簡単な護身術を教えてくれたし、名前の知らない小父様は私の好きなものとか、悩みや下らない話や学校や施設での些細な話も聞いてくれたし、時にはアドバイスもくれた。

 散歩や食事に行けば、ガイ小父様は物語のお姫様や貴族の女性みたいにエスコートしてくれた。周りから注目されたりして恥ずかしかったしドキドキしたけど、微笑みを浮かべているガイ小父様に見惚れているお姉さんたちがいたのを見て、私も一緒になって見惚れたりもした。
 ……そのあと決まってガイ小父様にクスクスと笑われてしまったけど。

 学校は卒業式までの間の登校日以外は自由登校だったから、午後は小父様たちとずっと会っていた。それがすごく楽しくてあっという間に日にちは過ぎ、小父様たちと出会って卒業式まであと一週間という日の食後の紅茶を飲んでいる時だった。

「明日から一週間ほど、国に帰らなければならなくなりました」

 ガイ小父様と二人で話をしていたら、突然そんなことを言った。もちろんウィル小父様もレオン小父様もいる。

「どうしてか聞いてもいいですか?」
「いえ、些細なことなんですが、厄介な仕事が入ってしまいまして。と言いますか、私が仕事を溜め込んでしまったのですよ。そのことで、さ……部下に怒られてしまいました」

 溜息を吐きながら残念そうにそう言ったガイ小父様。それを聞いていたウィル小父様とレオン小父様が苦笑している。

「お仕事なら、仕方ないです」
「本当に申し訳ありません。……確か、あと一週間で卒業式でしたね? お祝いと一週間会えないお詫びに、マユに服を贈りたいのですが……」
「いえ! お祝いの言葉だけで充分ですし!」
「そんなわけには行きません。私としては、私が贈った服を着たマユと一緒に食事をしたいんです」

 駄目ですか? と聞いて来たガイ小父様に申し訳なくて、でもガイ小父様がくれた服を着て食事までできることが嬉しくて頷くと、ガイ小父様はなぜかホッとしたような顔をしてからメイドさんたちを呼んだ。

「では、マユのサイズを計らせてくださいね」

 にっこり笑ってそう言ったガイ小父様に、メイドさんたちは嬉々としながら私を別室へと連れて行くと、隅々まで寸法を測った。
 本当にこんなところまで測るの?! というところ――主に乳首とか、その周りとか――まで、本当に隅々まで測られてぐったりしていると、メイドさんたちはまた嬉々としながら数字の書かれた紙を持ってどこかに行ってしまった。
 ぐったりしているうちにガイ小父様に車に乗せられて、施設まで送ってもらって。外でガイ小父様と二人で話をしていたら、いきなり抱き寄せられてそっと頬を撫でられた。
 そのことにドキドキしてしまう。

「マユ……どんな服だったとしても、必ず私の用意した服を着てくださることを、約束してくださいますか……?」

 不安そうな顔をしながら聞いて来たガイ小父様に頷くと、ガイ小父様は目によくわからない感情を乗せて、私を上向かせる。

「約束ですよ」

 そう言って私の唇にキスを落とすと、どうしてと思う間もなくキスがどんどん深くなって行く。

「ん……ぁ……ん……、ふ……」
「マユ……抵抗せずとても良い子ですね……そのままでいなさい。今は声もあげてはいけませんよ? それに……ああ、若いせいか、こちらも育て甲斐がありますね……」

 深くなったキスに夢中になっていると、ガイ小父様の大きな手が私の服の上から胸を掴んでやわやわと揉み始める。エッチなことをされているのに……レオン小父様には『不埒な奴には護身術で撃退しろ』と言われているのに、私にキスをして胸を揉んでいるのがガイ小父様だからか、なぜか抵抗する気になれなくて……。
 あがりそうになる声をなんとか我慢しながらガイ小父様の服を掴むと、胸を揉んでいる手が更に激しくなった。

「ぁっ、……っ、はぁ……っ」
「……本当に良い子ですね、マユは……。ふふ……ちゃんとできたご褒美ですよ」

 私の胸を揉んだまま唇にまたキスを落として舌を絡めるキスをする。大人のキスだ……と思った時にはお腹の辺りからゾクゾクしたものが這い上がって来て思わず身体を震わせると、ガイ小父様はキスと胸を揉むのを止めてしまった。

「もっとマユを感じたいのですが、時間がありません。では、マユ……一週間後に会いましょう。お会いできるのを楽しみにしています」

 名残惜しいと謂わんばかりに頬を撫でてからキスをすると、車に乗って帰って行った。

 明日から一週間、卒業式が終わるまで会えないと思うと凄く寂しくて、胸の奥がギュッと痛くなる。だから、それで気付いた……気付いてしまった。

(あ……私……)

 ガイ小父様が好きなんだ、と。

 どうして胸を揉んだのかはわからなかったけど、でも、ガイ小父様にとってキスが挨拶代わりなのはわかってる。でも、私にとってはどっちもすごく嬉しくて、気持ちよくて、ちょっとした悪戯だったのだとしても本当はもっとしてほしかった。
 あの人にとって私は単なる暇潰しなのはわかってるし、孫とも言えるような年齢の私に告白されて困るのがわかっているから、この思いを告げるつもりはない。

 それでも、ガイ小父様が会うことを許してくれる限り、この恋心を隠して会うつもりだった。
 会っていたかった。

 でも。

「真由ちゃんが出かけている時、真由ちゃんを見初めたからお嫁さんにしたい、って言って来た人がいたんだ。それも、たくさん寄付をしてくれたんだよ!」

 ガイ小父様にキスされて、ドキドキしていた気分を隠してただいまを言いに院長先生のところに行けば、お帰りもそこそこにそんなことを言われてドキドキがどこかに吹っ飛び、目の前が真っ暗になる。

「しかも、結婚式は卒業式のあとで、「真由ちゃんは何も用意する必要はないし迎えに行くから身体一つで来なさい」って言っていたよ」

 興奮しながらも嬉しそうにしている院長先生に、内心嫌悪しながらも何とか笑顔を張り付けて「そうですか」と言って部屋から出ると、自分の部屋に飛び込んでベッドに寝転がり、枕に顔を埋める。

 私は院長先生に売られたのか、と。
 もう二度とガイ小父様に会えない、と。

 個人経営であるこの施設の財政が苦しいのは知っているし、寄付があったのは本当に嬉しい。でも、私に相談することもなければ、私の返事も聞かずに「私と引き換えた」みたいな言い方に、悔しくて悲しくて、ただ泣くことしかできなかった。

 そんなことがあった翌日から昼間は明るく振る舞って、夜は呆然としながらもガイ小父様の手つきを思い出して身悶えながら過ごした。それを一週間繰り返し、ガイ小父様相談したかったけど連絡先を知らないから連絡を取ることもできず、施設から逃げ出す勇気もなく……。
 いろいろと悶々としながら、憂鬱な卒業式の朝を迎えた。

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