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第四章『狂愛』

何度も。何度も。身体の奥底に注ぎ込まれる、『狂愛』

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そうこうしているうちに、慎也はさっさと部屋を出ていってしまった。残されたのは、猿轡をして胡座をかき、ガチガチに拘束された問題の男と、真司、雅之の三人だけ。ブラック・バカラの構成員の姿も、いつの間にか消えていた。


部屋の前に仁がいると言う話は聞いているので全くの人員が配備されていない訳では無いのだろうが、真司はまるで話についていけない。すると雅之は、混乱する真司を置き去りにして唐突にシャワーを浴びにいってしまった。あまりの展開の早さに、真司としては、どうしたらいいか分からない。その間も重たい沈黙は流れていたけれど、男に話しかけた所で何だと言うのか。しかし、こういう時に限って空気が圧倒的に読めない真司は、重たい空気に黙っていられず、その項垂れている男に話しかけてしまった。


「御方の事が、本当に好きだったんですね」


当たり前だが、猿轡をされている男からは反応が返ってこない。最初から話す気などないのだが、物理的に無理だと言う体面があるので、男はそれに全力で乗っかっていた。しかし、どこまでも空気を読まない真司は、男に対して更に声を掛け続けた。


そして、その話は、真司の知らない教会の深淵に辿り着く、これまでの内、最も大きなチャンスを巡らせてきたのだった。


「御方の事を昔から崇拝していらしたみたいですけど、御方の……雅之様の側近の原種の薔薇さんだったんですか?雅之様が御方になられた時は、さぞお喜びになられたでしょうね」


真司の話には全く反応しないつもりでいたその男は、思わずその発言に気を取られて、訝しむような眼差しを真司に向けた。その目は『お前は一体何を言っているんだ?』と尋ねるものだったが、真司はその男の意図に気が付かず、話を続けた。


「俺は、幼い頃の経験から、この教会に良いイメージを持っていませんでした。だけど、雅之様のおかげで、この教会に対する意識が変わったんです。雅之様ならきっと、御方であった出雲さんの代わりを立派に果たしていけます。誰もが安心できる、クリーンなイメージの教会を、あの人はきっと構築していく筈です。だから、俺はそんな雅之様を……御方を、ずっと支え続けていきたい。その為には、あの方が、ロサ・キネンシスである俺を、もっと頼りに出来るくらいに、俺が立派にならないといけないんですけどね。御方が大事になさっている、あの街で、俺は、あの方を支える為に生きていきたいと思います。だから、後の事は、俺に任せて下さい」


初めのうちは、何を言われているのか分からなかったその男も、次第に話の全容が掴めていったようで、力の入らなかった双眼に、みるみると真司に対する嘲りの色を紛れ込ませていった。この男は元より聡明な男で、御方が自らの存在の隠蓑であり、信者達にとって憧れの地でもあるユートピア『秘密の花園』計画にも深く関わっていた。その為、御方自らがその街の計画に乗り出した際にも、その初手の段階から関わってきた古参の人物だったのだ。


薔薇の八大原種には及ばないものの、御方である雅之の人智の及ばない思想にも深い感銘を受けており、これまでずっと御方の手足となって働き続けていた。そんな有能さを持つ男にとって、真司という人間の持つ魅力は到底理解ができなかった。何故あんなにも御方からの寵愛を受けていながら伸び伸びとした生活を続けているのか。何故御身と共に寝食を共にする事が許されているのか。薔薇の八大原種達は何故黙って真司を受け入れているのか。理由がまるで分からなかったのだ。しかし、今の話を聞いただけで、男は御方と薔薇の八大原種達が、真司をどの様に扱っているのか、その片鱗を垣間見てしまった。


御方の忠実なる守護者『ケルベロス』


あの街『秘密の花園』は、御方の為に作られたのではない。この谷川 真司ただ一人の為だけに作り上げられた『ドッグラン』だということに、男は漸く気が付いたのだった。


自分は、御方の住まわれるに相応しい街を作ってみせると嬉々としてやる気に満ち溢れていたが、蓋を開けてみれば、殺してやりたいほど憎い男の為に秘密の花園を用意した様なものだったのだ。男は、自分が喜劇の舞台俳優の一人であった事を知った。しかし、それでも尚、雅之に寄せる信仰心には、全くの翳りすら生じていない。寧ろ、男はこれだけの規模の計画を、自らの忠犬の為に用意した『ドッグラン』だと周りに一切悟らせてこなかった雅之に、深い驚嘆を抱いていた。


だからこそ、それでこそ、『神』であると。


そんな、御方の寵愛を一身に受けているこの男に手を出した自分が、タダで済む訳がない。一体これから何をされるのかは分からないが、ただブラック・バカラによって粛清されてこの世の塵と化すよりは酷い扱いを受ける事は理解していた。


御方の逆鱗に触れた。その怒りを存分にこの身で味わい、果てる。御方が、最後にどの様な采配を自分に振るってくるのかは分からないが、その姿をしっかりとこの目に焼き付けておかねばと、男は自嘲した。


男が黙り込み、再び俯いてしまったのを見て首を傾げていた真司は、バスルームから聞こえてくるシャワーの音がいつの間にか途切れていたのに気が付いた。バスルームのある方を振り返ると、そこには、先程よりももっと薄い生地で作られた襦袢を見に纏った雅之が、髪をタオルで乾かしながら此方に向かって歩いてきていた。


透き通る様に薄い布で作られたその襦袢は、寧ろ着ている方が厭らしく艶めかしい。身体の流線的なシルエットは勿論、ピンクベージュの両乳首は透けて見え、ツン、と尖って布を押し上げているのが見て取れるし、一番大切な股間も、その隅々までがとっくりと確認できる。下着は先程男を驚愕させたあの股間部が丸ごと露わになるゴム性下着を付けたままだったので、先端部に掛けて桜桃色に濃い色に染まっていく花芯も、すっかりと丸見えの状態だった。


男達二人の、生唾をごくり、と飲み下す音が、同時に室内に響き渡る。あまりにも卑猥で扇情的なその姿に、男達は自らの股間を熱く滾らせた。


「ま、雅之さ……御方、ダメですよ、そんな格好……二人だけの時にしてくれないと」


真司が胸にある本心をそのまま告げると、雅之はくすりと笑ってから、全身がガチガチに拘束された男の元へと歩み寄った。そして、その場にゆっくりと腰を落とすと、男の口に付けられていた猿轡を外して、その男に話し掛けた。


「こんな物まで用意してたの?バスルームに置いてあるから、吃驚しちゃった。でも肌触りが気に入ったから着てみたよ……似合う?」

「はい……想像していたよりも、何倍も、何十倍も、お似合いです。なんとお美しい……あぁ、死ぬ前にそのお姿が見られて、私は、私は……もう、この世に何の未練も御座いません」

「君にはまだ生きていて貰わないと困るんだ。確かに君は悪い事をしたけれど、そのたった一回で君の今までの功績は覆らないよ。だから、いまから厳しいお仕置きを受けて改心したら、また俺の為に働いてくれないかな?」 


俄かには信じがたい話を聞いた男は、音もなく号泣し、そして、床に自分の身体を勢いよく転がして、雅之の足先に夢中でキスをした。雅之も、男が足にキスをしやすいように足を少しだけ浮かし、腕を組んで上から男を見下げながら、浮かせた足を男の顔面に寄せている。その足の先をべちゃべちゃと舐め啜り、歓喜の涙を流す下僕の下僕たる壮絶な姿に、真司は、男と雅之との間にある深い信頼関係と歪な愛情をそこに垣間見た。


自分も、いずれはああなるのだろうか、と真司は考える。ただ、こんな関係性に、特別な忌避感は感じないけれど、自分はもっと雅之と対等に近い関係性になりたいのだろうな、と結論付けた。


雅之に頼りにされたい。雅之を支えたい。雅之を癒したい。雅之を励ましたい。雅之に求められてセックスがしたい。雅之を自分だけに縛り付けたい。


これはこれで確立された世界観なので文句や口出しをする関係性ではないのだけど、きっと自分はいま雅之の足にむしゃぶりついている男よりも、ずっとずっと強欲なのだろうなと、真司は思った。


「ふやけちゃうから、これでお仕舞い。君の今後の行動を見守らせて貰うよ。だから、俺が会いたいな、と思える様になるまで、これからも頑張って」

「はい……っ、もう二度と御身と、御身の大切にされている物に手出しは致しません。そして、粉骨砕身の努力と信仰を、貴方様に捧げます」


雅之は、その男の返答ににっこりと微笑むと、真司には聞こえないボリュームに絞った声で、ひっそりとその男の耳元で囁いた。


『君、秘密の花園の秘密と真司の関係に気が付いたでしょう?もし黙っていてくれるなら……またいつか、この格好で会ってあげてもいいよ?』


男は、その囁きを耳にした瞬間、信じられない事に、そのまま絶頂した。バスローブを着ていたので辺りに飛び散りはしなかったが、雅之はそれに気が付いているようだった。全力疾走をした犬の様な形相でぎらぎらと目を血走らせているその男に、雅之は再び猿轡を噛ませると、真司の元に再び近付いて、『来て』と短く告げ、真司をベッドの上に誘った。


真司は、雅之が何事か男の耳元で囁いた瞬間に、男が突然全身を痙攣させ硬直してから、何度も何度も頷いているのを見て何事かと思っていたが、雅之がなんだか上機嫌で自分の元に帰ってきたので、すぐに記憶の端に追いやってしまった。あまりにも雅之の姿が艶めかしくて、頭から吹っ飛んでしまった、が近いか。しかし、真司にとってはどうでもいい違いでしかなかった。


ベッドに誘われ、ベッドサイドに向かうと、先にベッドに上っていた雅之が、襦袢をするすると肩から落として、肩甲骨を剥き出しにした。自らの愛しい雄を誘う甘美なその姿に、簡単に煽られた真司は、身体を拘束された男が同じ室内にいて此方を……雅之のその淫靡な姿を凝視しているのを分かっていながら、自分もベッドの上に、スーツのジャケットを脱いでから上がった。


雅之の意図は分からないが、明らかに誘われている。だから、雅之のしたい様にさせようと思い、真司は、胸に湧いたその質問を問い掛けた。


「雅之さん、俺、どうしたらいいですか?貴方のしたい事が、分かるようで分からなくて」

「ふふ、なら、そこの子がしてたみたいにシて。その方が面白いから」


面白いの意味が分からないけれど、雅之が望むならそうしてみるか、と取り敢えず納得して、雅之の身体をゆっくりとベッドに押し倒していった。そしてそのまま、襦袢で覆われた全身を撫で上げながら、雅之の唇を奪って口内に舌を入れ、舌の裏から歯茎に至るまでを、いつもより一層、ねっとりと執拗に舐め回した。真司は、男との間にした行為についても腹は立っていたが、慎也に唇を許していたのにも、まだ強い苛立ちを覚えていた。だから、いつもよりとっくりと時間を掛けてキスという名前の愛撫を繰り返した。


「あ、ふ……ふふ、慎也に嫉妬したの?いつもより、激しい」

「当たり前です。あんなに簡単に許すなんて……しかも、このお尻も撫で回されてましたよね?あなた方はもう別れたんですから、不健全な関係性を続けるのは、もう辞めて下さい」


腹に溜まった鬱憤を吐き出すと、雅之はくすくすと笑いながら真司の頭を撫でた。


「可愛いね。本当に……あんなもの、戯れ付かれただけだよ。ムキにならないで」

「ダメです、やだ、辞めて下さい。俺以外と絶対にしないで。キスなんて、好きな人とするものですよ。なのに、あんな、恋人同士でも碌にしないような激しいキスをして。凄く胸が苦しかった……」

「俺は、君以外じゃ感じないんだ。だから、あんなキスをしても、身体は熱くならない。心配しないで」

「感じる感じないの問題じゃ……」

「感じる感じないは、大切だよ。だって、俺はもう、君じゃないと感じない身体にされてしまったんだから」

「………え?」


信じ難い、けれど信じたい気持ちが、むくりと胸の中に沸いて。真司は、この場にあってそぐわないとは理解していながらも、心臓がどきどきと高鳴っていくのを止められなかった。


「さっきもそうだったでしょう?俺の身体は、君以外の人に触られても、反応しないんだ。そこに君という人間の意思が存在しない限り、どれだけ媚薬で感度を上げられても意味がない。ただ、君がひとたび相手になってしまったらどうなるのかは、ふふ……ねぇ、見て」


雅之に手を取られ、その手を雅之の股間にそっと当てられた真司は、雅之の可愛いらしい花芯が、自分とのキスだけで緩く勃ち上がってしまっているのを掌の感覚で直に広い、自分の怒張に血がぐんぐんと集まっていく感覚を覚えた。


「雅之さん、もう、こんなに?」

「そうなの、ずっと身体が熱くて……だから、助けて、真司。俺のこの熱を冷ませるのは、君しかいないんだ」


想い人の身体の熱を冷ませられるのは、自分のみなのだと知らされた真司は、再び夢中になって熱い口付けをしながら、薄い生地越しに雅之の身体全体を撫で下げていき、股間を覆い隠している襦袢ごと花芯を掴んで、先端部を布越しにカリカリと引っ掻いた。あ、やぁ、と、先程の男の時には発さなかった喘ぎ声が、ひっきりなしに雅之の口から量産される。そして、襦袢が先走りを吸い取りじんわりと濡れて、生地の色がそこだけ変わってから、襦袢を剥ぎ取って花芯を露わにした。ぷるっ、と震えながら完全に露出した花芯は陰嚢の方までしとどに先走りで濡れて、愛らしいまでに、ピクピクと微振動していた。


「こんな軽い刺激で、もうこんなにして。そんなに俺に、早くザーメン飲んで貰いたいんですか?」

「ちがっ……あ、だめ、お手て、やぁっ……」


花芯にぬっと手を伸ばして、根本から先端部にかけてぬるぬると手淫をしていくと、ものの数往復で雅之は自分の限界を訴えた。いつもより早いその申告に、思わず真司の口の端が吊り上がる。可愛らしい。薬で身体の感度を無理矢理上げさせられて、その上で愛する男に触れられて、それだけで堪らなくなってしまった雅之を、真司はどこまでも愛おしく見つめた。 


ゆったりとした手淫をやめ、雅之の興奮で彩られた顔を見つめながら、自分の顔を雅之の剥き出しの花芯まで静かに持っていく。そして、緩く勃ちあがった花芯の全体に纏わりついた先走りをピチャピチャと音を立てて舐め上げていくと、むくむくと迫り上がった雁首に舌を這わせて、そこに集まる熱を昂らせていった。


「……ひ、ぃん……やぁっ、も、出したいよぉ……くるし、のぉ、……しん、じぃ……」

「昼間もあんなに出したのに、もう我慢出来ないんですか?もっと楽しみましょうよ、雅之さん」

「おかしくなっちゃう……っ、あん、や、先っぽだめ、転がされたら……っくぅ……ッッ」

「美味しい、雅之さん。とろとろの蜜が後から後から溢れて。ずっとしゃぶっていたい……」


花芯を根本まで頬張り、亀頭から溢れる先走りを、水飴を舐めている様な気持ちで舐め啜りながら、次第に花芯に与える刺激を強くしていく。口を窄め、真空状態に近づけて、ずぞぞぞッッ……と下品な音を立てて花芯を責め立てると、雅之は、先程ソコにしゃぶりついていた男の時には見られない淫猥な反応をひたすらに繰り返していった。 


後方で雁字搦めにされている男は、敬愛し、服従し、心の底から愛していた雅之の、自分には絶対に見せなかった淫靡な姿を見て、声を無くして驚愕している。しかし、その男の怒張はガチガチに勃ち上がり、天井をしっかりと向いて、先走りでしとどに濡れそぼっていた。


「やぁんッ、えっちなお汁吸わないでぇ……ッッ出ちゃう、出ちゃうよぉっ……あ、ぁっ、」


腰をくねらせ、強い快感から逃れようとする雅之の愛らしい反応に、真司はぞくりと興奮が掻き立てられる。鼻息を荒くし、ぷりんと下着からはみ出ているぷりんとした陰嚢を指の腹でくりくりと弄びながら裏筋にべったりと舌を這わせて頭を上下していくと、雅之は頭の動きに合わせて、あぁん、あん、と艶っぽく喘いだ。真司の目線はしっかりと雅之のよがり狂う顔に向けられていて、己の感じている顔をじっくり観察されながら口淫をしてくる真司に、雅之は、とうとうと泣きべそを掻いてしまった。


「俺の感じてる顔、見ないでぇっ、やら、そんなぁ、出したやつ、絶対に全部飲んでやるって顔、されたらぁ……」


真司は、自分の怒張を滾らせ、ビクッビクッと激しく痙攣させながら、奮い立つほどの興奮を覚えていた。ただでさえ雅之の身体から排泄されるものなら、なんでも口にしたいと本気で思っているのに、それが、自分の与える刺激によって、可愛くて愛しくて堪らない南国の果実の様な花芯からピュクピュクと飛び出してくる物だったなら、真司にとってはまさに極上の甘露でしかないのだ。


祭壇に向けて射精された精液ですら全て舐め取って綺麗にしたいと本気で思ってしまうくらい、それは、真司を駆り立てる魅惑の液体だった。その為、こうして口淫をしている限りは絶対に全て、一滴残らず飲み尽くすつもりでいた。雅之のそこから生み出される愛液は、真司にとって、雅之という存在や、雅之から齎される愛情を直接体内に取り入れられる、最高のご馳走だった。


「全部飲みます。貴方の愛液が俺の中で溶けて自分の身体の一部になるなんて、最高です。尿道に残ってるのも、その先にある溜まってる分も、全部飲ませて」

「ひぃん……ッあ、だめ、そんなこと言われたら、おれ……もうイク……ッッ離して、でちゃう、でちゃ……ぁあッッあっ、………くぅんっ」


イッた瞬間の顔をしっかりと見つめ、真司はうっとりと恍惚の表情を浮かべながら、口の中で弾けた花芯の白濁した甘露を、ごく、ごく、と喉を鳴らして飲み干していった。生成されてから、まだ間も無いと見られるそれは、それでもこっくりとしたコクがあり、爽やかな栗の花の香りが鼻からすう、と抜けていく、極上の仕上がりをしていた。この世のどんな物よりも真司を魅了してやまないその飲み物がまだまだ飲み足りず、尿道に残っている残滓も亀頭に吸い付いてちゅるちゅると残さず吸い尽くしていく。そして、そのまま花芯がふにゃふにゃと柔らかくなるまで、真司はずっと口の中で雅之の花芯を転がし続けた。後方で、悔しさのあまり猿轡をガチガチと噛みながら低い唸り声を男が上げている。自分には見る事が叶わなかった御方の絶頂させられた姿を見て、悔しくて堪らないのだ。


真司の心の中に、むくむくと優越感が広がっていく。そして、自分にしか、雅之の身体の熱は冷ませないのだと。所詮お前は、今の俺達にとって、体の良いスパイスにしかなっていないのだという思いに、次第に頭を支配されていった。


イッばかりにも関わらず執拗に弄ばれてしまった花芯にお疲れ様を言う様に、ちゅっ、ちゅっ、と唇を落として、ピクピクと震える花芯を慰めてから、真司は雅之が装置していたゴム性の下着をずるんと下ろし、そのまま足から取り去った。すると真司の目の前に、そして、真司達の後方にいる男の視界に、黒く、太く、丸い物体が秘孔を限界一杯に広げたまま鎮座している様子が広がった。後ろにいる男の、驚愕した様な呻き声が室内に響く。それを耳にした真司は、いっそ分かり易いまでに悦に浸った表情を浮かべた。


そう、自分はこれだけの事をこの人にしても許される存在なのだ、と。


「こんなにぱつぱつになるまで秘孔を広げて……俺の精液が溢れないように、一生懸命に咥えてくれていたんですね。ご褒美に、ちゃんと動かして、膣からその先にある子宮口まで、全部捏ね回してみましょうね」

「だめ、そんなのされたら、イッちゃう…っまた、イッたばかりなのに、ピュッて出ちゃうよぉ……お願いだから、まだ、休ませてぇっ」

「イッたばかりでまたイクのを繰り返してると、貴方の中、ビクビク痙攣しっぱなしになって、俺のを入れた時、腰が蕩けそうなくらい気持ち良くなるんです。だから、俺の為でもあると思って、ね?」


そう言ってにっこりと毒のない笑みを浮かべると、真司はポケットから取り出したコントローラーで、まずは会食時にも使用した軟体動物の触手の様な動きを見せるモードを選んだ。振動を微振動に設定して、直腸の中を蠢かせていく。すると、外からは分からない刺激を受けた雅之の身体が、ビクッビクンッと打ち上げられた魚の様に跳ねて、身体をくねくねと身悶えさせ始めた。


「はぁ……ッッやぁん、らめ、これダメなのぉ、なかで、あばれっ、ひぃ…ィっ、ぃ、い」

「まだ振動の設定レベル1ですよ。最大振動レベルは、5なんですって。それじゃあ、まずは3からいきますね」

「ま、待って!!」


という静止を無視し、真司は五段階あるうちの真ん中のレベルを選んだ。一気に室内に電動の機械音が響き渡る。ウィンウィン、という機械音を立てながら、直腸内を蠢き、前立腺をごりごりと刺激しながらのたうち回るディルドは激しく振動し、雅之の敏感な部分を惜しみなく刺激していった。


「やぁ、ひい、……ッッあ、ァア、やめ、ぁあんッッ」


意思を持った生き物じみた動きで責めたてられた雅之の花芯の先端からは、ピュクッピュククッッと精液が迸り、雅之は射精や雌イキを繰り返す度に、はしたなく腰を浮かして身悶えた。真司は、身体を屈めて、雅之の身体に飛び散った精液を舌で丁寧に舐め取りながら、自分の主人であり最愛の雌のその痴態を、うっとりと目を細めて眺めた。


「ヒィ……ッッあ、ぁっ…ッッいやぁ……いく、ずっと、いっちゃ……とめてぇ、ああッッ」

「折角ですから、ちゃんと全部楽しみましょう。ほら、これがレベル5ですって。多分、刺激が強いから飛んでもすぐに帰ってこれます。だから、安心してヨガって」


カチカチ、とコントローラーを操作して、ディルドの振動レベルをMAXに指定する。すると、舌を長く天井に向けて突き出した雅之が、無声に近い嬌声を上げながら、ビクンッッビクンッッと身体をベッドの上でバウンドさせ、足の爪先をぴん、と伸ばして、ぶるぶると震えながらベッドのシーツを握り締めた。


「ッッ……ぃ……?!……ァッ………ッッァ、」

「腹筋?背筋かな?凄く深くイッたんですね。何もしてないのに、見てるだけで俺もイキそうです……この最大振動のまま、違うモードにしますね」

「や………ッッやら、ひぬ、ひんじゃう……お腹の中、虐めるの、やめてぇ……ッッおかひくなる、も……俺がイクところ、変になるところ、もう見ないでぇ……」


真司の背筋を、莫大な興奮が走り抜ける。真司は、薄らとした酷薄な笑みを浮かべると、手元のスイッチを切り替えて、最深部をずんずんと突き上げるモードに切り替えた。勿論、宣言通りに振動のレベルをMAXに保ったまま。


「ッッお゛っ、お、ぉ、ぃひぎ……ッッァ、くぅぅ……ッッぁ、あっ、ぁ、や、やぁ……おく、おぐ、……だめ、入らないで……やだ、いやぁ……ずんずん、しないで……こないでぇ……ッッ」


大きく背中を逸らして、ディルドの猛攻を受けながら、花芯からぴゅーぴゅーっと噴水の様に潮を飛ばす雅之に、真司の鼻息はどんどんと荒くなっていった。鼻筋に何かが伝ったので手の甲で拭うと、それは自分の鼻血だった。またか、と思いながらやれやれと溜息を吐き、鼻を啜る。そして、再びよがり狂う雅之に視線を移すと、まるで目には見えない男が後ろから覆い被さり、腰を激しく打ち付けているのを、四つん這いになって受け止めている様な格好に変化していた雅之がその場にいた。


「やら、もう、こないで、抜いて、ぬいてよぉ……あん、いくのぉ、またいっちゃう、しんじ、しんじぃ、もう君のがいいよぉ、知らない人に犯されてるみたいで、もう、もうやだよぉ……ッッ」


くいくいと腰を動かして、『こないで、もうこないで』と涙を流しながらディルドの機械的で無慈悲な動きに翻弄され、助けを求める様に自分の名前を呼び、自分を求めてくる雅之に激しく煽られて。真司は堪らず、自分のズボンのベルトをがちゃがちゃと忙しなく外し、チャックを下げてズボンを下ろし、ボクサーパンツまで脱ぎ払って、まるで見知らぬ男の猛攻を受けてよがり狂っている様な姿を見せる雅之の背後に回った。


後方にいた置き物状態の男は、雅之の状態を把握したのか、猛攻をしている幻の男に自分自身を重ね合わせて、はあ、はあ、とひっきりなしに荒い息を吐きながら、触れてもいない怒張から、ビュクッと勢いよく射精をしていた。周囲には既に夥しい量の男の精液が飛び散っている。悲しい事に自分の怒張を御方である想い人の為には使用できなかったが、男は絶倫体質で、いくら射精をしても問題ない体質をしていた。そんな可哀想な状態になっている男を放って置いて、真司は四つん這いになっている雅之の尻を押さえ、ディルドの外に出ている突起部分をむんずと掴むと、それを後方にいる男に見せびらかす様にして『ずちゅるるるッッ』と一気に秘孔から抜き取った。


「ッッ、あ゛ッッぁぁあ……ッッ?!」


勢いよく秘孔からディルドを抜き出したので、媚肉が少しだけ捲れ上がってヒクヒクと震えている。其処にはくっぽりと空洞が広がり、真っ赤な直腸の中が丸見えになっていて、うねうねと妖しく蠢いているのが真司の目に見えた。


「エッチな身体。こんなにいっぱい俺ザーメン飲み込んでたのに、まだ欲しい欲しいって蠢いて……」


真司は、抜き去ったディルドにべっとりと纏わりついた自分が撃ち込んだ精液を見てうっとりと満足気に笑うと、後ろにいる男を漸く振り返って、にやにやと下品な笑みを浮かべながら、何も知らない男に向けて事情を説明した。


「雅之さんは、俺がこの日の為に一週間貯めておいた精液を、身体の一番奥に撃ち込まれた後、こんなに太くて長いディルドを付けられたまま、半日過ごしてくれていたんですよ?俺の精液が、外に出てこない様に、いじらしく、お尻の穴をきゅんきゅん締め付けて、しかも、あんな恥ずかしい下着を付けたまま。それに、セックスをしたのは、あんたが管理してる、あのガラス張りの大聖堂の中です。考えただけで、堪らないでしょう?」


真司は、自らが放って置いた精液がこびり付いた馬のペニスの形をした長大なディルドを男に見せびらかし、男にとっては到底信じられない真実を告げた。真司の目はしかし、全く笑ってはいなかった。真司にとってその男は、最愛の雅之を罠に掛け、厭らしい姿をさせただけでなく、自分の目の前でその花芯にむしゃぶりついていた憎き相手だ。粛清の対象に選ばれそうになった時は流石に良心が痛んであんな話をしたけれど、基本的に真司は、この男に良い印象は持っていなかった。それでいて、気を利かせて話しかけてもうんともすんとも言わないとなれば、好感度は地に落ちた様なもの。だから、雅之を二度と同じ目に遭わせないよう、二度と手出ししようなどと思わないように、と牽制するのは当然だと思っていたのだ。


男の目に、殺意と嫉妬が入り混じる。信仰を捧げる雅之を自らが管理する神聖なる大聖堂を使って汚し、それだけに止まらず醜悪な物体をその御身に咥え込ませたまま、尊い職務に当たらせるなど言語道断。しかも、その使用目的が、自分の撃ち込んだ精液が外に漏れない様にする為など、どれだけの暴虐の限りをすれば気が済むのか。


男は、猿轡を噛まされながら、大声を張り上げて、がたがたと身体を震わせた。怒りが頂点に達し過ぎて、寒気すら感じ始めたのだ。血の涙を流さん勢いで号泣し、くぐもった声で御方の名前を叫び続ける。この様な男を側仕えにし、あまつさえ愛妾として寵愛するなど、男にとっては絶対に許されない事実だった。なんとかして、この下賤かつ卑劣な極悪人をくびり殺してくれようと、無駄だとわかりながらも縄を振り解く動作に移ったその男の目の前で、再び信じられない光景が繰り広げられ始めた。


雅之が、真司の剥き出しの怒張に、跪いて奉仕を始めたのだ。


真司はベッドにゆったりと腰を下ろして、一生懸命自分の怒張に奉仕する雅之の頭をゆっくりと愛おし気に撫でている。その姿は、まさに男と女のソレでしかなく、しかも、お互いの夜での立場が明確に見て取れる、そんな姿であった。


怒りが、絶望に。絶望が、悲しみに。悲しみが、怒りを再び呼び戻す。男は咆哮をあげて、号泣しながら頭を床にこすりつけた。辞めてくれ、もう見せないでくれ、あの方を元に戻してくれ……しかし、その請願は聞き届けられなかった。


「雅之さん、上手。本当に貴方のフェラチオは完璧です。こんなに一生懸命に喉の奥まで咥えて、腰が蕩けるくらいに気持ちいい……そろそろ出ますよ。だから、ちゃんと、いつもみたいにお強請りして?」

「ん……真司のおちんちんから出るザーメン、沢山飲ませて、お腹の中一杯にして下さい。その後は、下のお口にも、いっぱいザーメン飲ませて下さい」

「うん。ふふ……良くできました。変なオブジェはあるけど、このまま前倒しで朝までしましょうか?」

「もう……そんなことされたら、俺の身体、おかしくなっちゃうよぉ……」

「そうしたら、さっきのディルドを突っ込んで蓋しておきましょうよ。ずっと貴方のお尻の形を、俺の形にしておいて。いつでもどこでも、回復した貴方に合わせて、俺が貴方の中に入れる様に」

「真司、愛してる……もう、今日は俺を離さないで」

「絶対に離しません。だから、今日はずっと、朝まで子作りしましょうね。でも、中に注いだザーメンを一滴でも溢したら、また一からやり直しですよ。分かりましたか?」

「そんな、俺、今度こそ本当に、おかしくなっちゃう……真司、こわいよぅ」

「大丈夫、零さなければいいんですから、ね?それに、俺が満足するまでずっと繋がったままでいるから、飲み物と簡単な食べ物を枕元に置いて、この部屋から出ないでいましょう。明日からは、ホテルの部屋付き露天風呂でもしましょうね。貴方と合法的に青姦できるなんて、今から本当に楽しみです」

「真司の目凄い……俺、君に食べられちゃうんだね。その目、大好きだよ」

「俺も……初めて出会った時よりも、初めて貴方と繋がった時よりも、一分一秒前よりも、ずっとずっと……愛しています」


口淫の合間に、まともには聞いていられない恋人同士の甘い甘いやり取りをする二人に、男はひたすら号泣するしかなかった。愛する人の他の男との愛の営みを見せつけられるのが、自分の心をこうまで深く傷付けるとは。しかし、その男は知らなかった。真司にこんな風に素直に愛を囁く雅之は、本当はとても珍しいのだ。


完全に男の精神を崩壊させ、再起不能にするために雅之が仕掛けた『罰』の一つがこれだった。そうとも知らずに、真司は雅之の口から漏れる愛の囁きに、すっかりと溺れ、夢中になった。喉奥までずっぷりと真司の怒張を咥え込み、激しく頭を前後する雅之の後頭部に手を置いて、そのまま自分勝手に雅之の頭を動かしていく。信仰の対象として崇められている御方その人を、まるで極上のオナホールの様に扱う真司に、男の怨嗟は止まる事を知らなかった。


「きもち、……っ、あ、でる、でるよ。喉奥締めて、雅之さん……」


真司が、雅之の頭を掴み、自分の股間に向かってその頭を押し付ける。けれど、その怒張はあまりにも長大なので、根元まで完全には収まりきらず、口内から喉奥までを使っても半分にも満たない長さしか刺激出来ていない。その為、雅之は両手を使って余っている部分を扱きながら、自分の喉奥を膣の様に使用して一生懸命に真司に奉仕をした。その一生懸命さが真司の胸を打つ。愛しさが腹の底から込み上げてきて、その感情をそのまま伝える様に喉の一番奥に向けて、どぴゅッッどくくっっ……と叩き付ける様に射精した。


「先っぽ吸って……そう、上手ですね。いつもみたいに、口の中、見せてごらん」


雅之は喉奥を酷使した苦しさで涙を零しながら、口内に溜まった精液を真司に見せた。すると真司は、雅之の頭を優しく労わる様にして撫でながら、『いつもの指示』を口にした。


「口の中でしっかり唾液と絡めて……うん、そう。まだまだ、飲んじゃ駄目ですよ。その味を頭の中に叩き込む様にして味わって。貴方の為に出した、俺の愛の結晶なんですから」


雅之は真司に言われるがまま、口の中に溜まった精液を口内でくちゅくちゅと撹拌し、溢れてくる唾液と絡めて、真司の精液の味を頭に叩き込んでいった。そして、『いいよ、ごっくんして』という真司の許しを得てから、その精液をこく、こくん、と少しだけ喉につっかえながら飲み下した。


「口の中、見せて……あぁ、ちゃんと全部飲んだね。ふふ、美味しかったですか?」

「ぁ、……おいし、かった……あたま、ぽーってする」

「喉奥でも、ちゃんと感じたんですね。ほら、貴方のおちんちんも、すっかり元気になってる。可愛い……俺も、またしてあげましょうか?」

「やぁ……ッ、もう、やめて……恥ずかしいの。自分はいいけど、されるのは、ヤダ」

「じゃあ、明日させて?いまはしないから、ね?」

「………うん」


怒張から口を離し、汗をびっしりと額に掻いた雅之が、真司のお強請りに小さく頷く。それに気を良くした真司は、穏やかに微笑んでからその額に唇を落として、雅之を再びベッドの上に誘った。


全身を撫で回しながら、ベッドに雅之を転がして、再び四つん這いにさせていく。そして、憤怒と悲嘆に暮れて号泣しながらも、怒張をしっかり勃たせて、触ってもいないのに何度も絶頂を極めている情けないを絵に描いたような男から、二人が結合する様子が見えるように、身体の向きを横にした。


「ほら、おっさん。これが、どうあってもあんたが俺の代わりになれない理由だよ」


今までは、長大過ぎるが為にコンプレックスの象徴だった自分の怒張を、男に向けて見せびらかす。先程まで使用していたディルドとも一回り以上違う、雌の子宮まで深々と突き刺して快楽を与えられる器量のあるそれに、男は言葉を無くしていた。しかも、ついさっき達したばかりだというのに、既に天を貫かんとばかりに熱り立たっている。男であれば、誰もが憧れを持つ、その長大さと持続力。極上の種付け専用馬が持つペニスをそのまま人体に移殖した様なそのドス黒い怒張は、雁首もしっかりと笠があり、愛しい雌の身体を、その髄から髄に至るまで、存分に愛し尽くせるという自信を漲らせていた。


「あんたもそれなりなんでしょうけど、残念ながら、俺にとっては相手にもなりません。この人の顔見てみなよ……ね?凄く良い顔するでしょう?あんたには、この人にこんな顔させられないよ。だって、この人の身体は、俺が一から仕込んだんだから」


真司は、ツンツンと怒張の先端で秘孔の入り口を突きながら、うっとりと目を細め、雅之の突き出した尻を撫でまわした。そして、恍惚の表情で怒張の侵入を待つ雅之を、焦らしに焦らした。


「俺を受け入れる為だけに、この人はずっと努力してきた。あんたと俺とじゃ、男としてのランクが違い過ぎるんですよ。だから、そこで俺達の子作りセックス見ながら、一人寂しくおっ勃てていて下さいね」


その言葉を最後にして、真司は雅之の秘孔をこじ開けて、一気に最深部近くまで怒張を突き刺した。そして、本当に体内に子宮が存在したならば、ひしゃげる様に変形していただろう激しい猛追を、初手から繰り出していった。


「ヒィッ、おぐ、おっ、……か、はぁっ……あ゛ッッ」

「こら、逃げないで、雅之さん。腰が引けてちゃ、子宮の方まで上手く突けないでしょ」


相も変わらず、愛しい雌の身体の奥深く、直腸S状部の更にその先にあるS状結腸を、ありもしない子宮に見立てて口にする雄の眼差しは獣欲に塗れ、ギラギラと鈍い光を放っていた。


「やら、あ、くる、イク……ッッ奥までしないで、あっあっ……こわいの、きちゃうのぉっ」

「怖い?なら、手を繋いでてあげる。ずっとずっと、側にいるから。怖いのが来ても、そのまま俺に身を任せて」

「……ひっ、…………ッ、……ッッくぅ、……ァ、」
 
「はぁ……はは、凄い。ビクビクしながら、ぎゅうぎゅうに締め付けて。本当に、深くイッた後の貴方の身体、最高です。ちゃんと怖いの耐えられて偉いですね。だけどもう十回くらい、同じ事しましょうね」

「や……っ、むり、やら、……こわい、やだ……奥ばっかりされたら、おれ……本当に、おはなしも出来なくなっちゃうからぁ…ずんずんしないで……ッッ」

「お話してるでしょ?身体使って、大好きだよ、愛してるよって……俺の気持ち、まだ伝わってないですか?なら、ちゃんと身体の奥まで教え込んで上げる。どれだけ俺が、貴方を愛しているか」


真司が本気の子作りの為の腰使いに移行すると、雅之は足に力が入らなくなり、潰れた蛙のようにベッドにへばりついた。しかし、その態勢の方が雄である真司としても交尾がしやすく、願ったり叶ったりだったので、真司は明らかに上機嫌になっていった。いまだに憎悪の視線をこちらに投げ掛けてくる男には気付いていたが、その眼差しには男として、雄として真司に敗北を期した生々しい怨みつらみが込められていて、真司は口元をククッと引き上げて、その男を嘲笑った。


「相変わらず凄いですね。まだ俺は一回もイッて無いのに、これでもう、何度雌イキしましたか?貴方と俺の身体の相性は、きっと他の誰よりも最高なんでしょうね。それに、こんなに俺の為だけに頑張ってくれるなんて……俺って本当に貴方に愛されてますね」


男を煽る為に、必要以上の穿った言葉を選び、口にしていく真司の心は愉悦に満たされていた。ばちゅっばちゅっ、と激しく腰を打ち付けながら、強過ぎる快楽を繰り返し与えられて、とろとろに蕩け切った雅之の顔を男の方に向けながら、その唇にむしゃぶりつく。


「この蕩け切った顔、見てるだけでイキそうです。この顔させられるのは俺だけで、貴方も俺だけにそれを許してる。それが、嬉しくて堪りません。おっさんに見せるのは勿体ないけど、自分の立場を思い知る為には必要かなって……ごめんなさい、嫌でしたか?雅之さん」

「ふぁッ、やぁん、あ、真司が、したいなら……ッッおれ、どんなこと、されても……ァアんッッ」

「あぁ、雅之さん……雅之、ごめんね。俺、こんなに嫉妬深くて。貴方に触れていいのは、それが許されてるのは俺だけなんだって、貴方の事を好きな男全員に教えたいんだ、だから……」


愛する人に向けて、自分の心の狭さ、器の小ささを懺悔をしながら、しかし、激しい猛攻はやめる事はなく。真司は。雄として、目の前にいる雌を懐胎させたいという欲求を抑える事もしなかった。


「……いいのぉッ、しんじぃ、もっと、もっと、奥まできてぇ……ッッ欲しいの、真司の、赤ちゃん、欲しいのぉ……ッッだから、なかに、出してぇ……ッッ」


とうとう、自分の羞恥心を振り払った雅之が、愛しい雄である真司を激しく求め始めた。そして、自分の気持ちに正直になって、自分の腹の内の一番奥底に子種を撃ち込んで欲しいと強請り始めた。真司は、雅之とのセックス……交尾をしていく中で、雅之が完全に自分の手元に落ちてくる瞬間を迎えるのを見るのが、堪らなく好きだった。自分だけの為にその身体を明け渡し、自分だけの雌として生きていく決心を固める己の主人に、止めどない愛おしさが込み上げてくる。


この人の為に生きる。この人の幸せの為に生きる。この人の為なら何でもしてみせる……真司は、そう、強く心に誓った。


最深部を押し潰す様にして、垂直に腰を打ち下ろす。自重を使った腰使いに、もはや雅之は言葉も出ない。それでいて与えられる快楽は、機械的な動きしかしないディルドが与えるそれとは比べ物にならないので、雅之は、あっ、あぁっ、あっ、と断続的な微かな嬌声を上げながら、ピュクッピュクッ、と真っ白なシルク製のシーツに向けて、何段階にも分けて吐精を繰り返していた。


下腹部とシーツの間に手を差し込み、ドロっとした液体を指で救うと、真司はそれを雅之の口元に持っていった。雅之は舌を伸ばしてそれを舐め上げ、それが自分の放ったものでありながら、『美味しい』と口にして、とろとろに蕩け切った身体と頭で、真司にキスを強請った。


「ぁ、しんじ、きす、して……甘いの、たくさん」


雅之が囁く様に請い願うと、真司は腰の動きを一旦取りやめて、雅之の腕を自分の肩に回させてから、その唇を優しく吸い上げた。そして、甘い甘い口付けを交わしながら、まったりと腰を動かし、そのまま雅之の身体の奥深くまでずっぷりと亀頭を潜り込ませると、子宮として見立てているS状結腸を目掛けて、本日三度目の吐精を果たした。


「ッ、雅之さん、雅之……はぁ……きもち、い。ずっと、ずっとこうしていたい……」

「あ、ん……俺も、気持ちいい……凄い真司、まだこんなに……」

「うん。全然収まらない。しよう、もっと……俺と一つになろう」


激しくも荒々しかった交尾は、終わり方はこんなにも穏やかだった。その分、お互いが感じる幸福感は凄まじく。穏やかな交尾を終えると、その余韻を引きずりながら、真司は再びゆっくりと腰を動かして、怒張の硬質を高めていった。それでいてなお、愛しい雌の身体をほんのりと休ませてもいく。一応の、真司による雅之への気遣いのつもりであった。


しかし、暫く唇を合わせて舌を絡ませ合いながら、お互いの愛の深さを確認していくと、真司の身体には再び、ふつふつと熱が篭り始めていった。それに、雅之の身体は深い絶頂を迎えたばかりだったので、身体の最深部に掛けて激しい痙攣をしながら、真司の怒張をキュッキュッと締め付けてきていたのも、真司の我慢の糸を焼き切ってしまう原因となっていた。


「雅之さん、もう、俺……」

「ひ、ぁッだめ、まだ……あっ、ぁあ、真司、待って、ひん、腰……ァッとめて、ッッ」

「ごめんなさい。止められない。俺が貴方を前にして、止まるわけないんだ」


大きなストロークを駆使して、穏やかな絶頂の余韻に浸っていた雅之の頭に冷水をかける様な激しい腰使いに、突如として移行していく。


ぱん、ぱん、ぱん、と小気味良く弾かれる尻たぶの音が室内に響き渡り、出したところで全く衰え知らずの、寧ろどんどんとその凶暴性を発揮していく怒張をもって、真司は、獣じみたモーションで、主人であり愛しい雌である雅之の体内の奥深くを蹂躙していった。


「あんッッひぃ……っ、だめぇ、はげしっ…いく、やぁんッッ………っ、ぁ、……ぅ……ッッ」

「嗚呼、凄い、奥に行けば行くほど締まる………雅之さん、もうそんなに欲しいんですか?」

「く、……ぁ、……だ、め………も、イクの、つら……ぁ、ッ……ふ、や、ぁッッ」

「なか、凄いビクビクしてる……ずっとずっとイキっぱなしですね。本当に気持ちいい。腰から下、全部溶けそう」


視界いっぱいに自分の全霊を賭して愛している雌の痴態が広がり、真司の劣情は煽りに煽られて、興奮は止まる事を知らなかった。しかし、ふと、本当にふと、『殺してやる』という目で此方を睨め付け、号泣しながら猿轡をガチガチと音を立てて齧っている男が視界の端に入って。真司は、『これでもまだそんな顔をしていられるんだ、へぇ……』と面白い様な、揶揄い甲斐のありそうな物を見つけた心境になり、その時になって、ぴん、とある事を思い立った。


「……ねぇ、雅之さん。貴方は、俺のお願いなら、何でもしてくれますか?」


『止められる訳がない』と言って激しく打ち据えていた腰の動きをぴたりと止めて、真司は雅之に質問した。強過ぎる快楽で頭がぼぅ、としていた雅之は、とろとろに溶けきった声で『………え?』と聞き返した。


「あのおっさん、あんな事言ってましたけど、俺の目からしたらまだ油断出来ないんです。だから、あのおっさんの心を、もっと徹底的にバキバキに折ってやりたくなって。ですから、協力してくれませんか?」

「……ふふ、面白いね。一体何がしたいの?」


強制的に与えられ続けた強い快楽でぼんやりしていた頭がすっかりと冷え切り、普段の聡明さを感じさせる光が雅之の双眸に宿る。その目を間近で直接見た真司は、この人のこういう所が堪らないんだよな、と改めて、しみじみと思った。


落ちそうでいて、落ちない。男心をこれでもかと擽ってくる雅之に、堪らなく胸がドキドキする。どれだけ抱いても、組み敷いても、絶対に手に入らない様な姿を見せる雅之に、どこまでも魅了されて。真司は、もっと雅之に愛されている実感が欲しいという理由をも含めて、雅之にある提案をした。


「………それは」

「やっぱり駄目ですか?……貴方の身体に負担も掛かるし、難しいとは思いますが。でも、どうしてもしたいんです。あの男に、俺がどれだけ貴方に愛されているのか、見せつけたい。お前なんて、入り込む余地なんてないんだと」

「君は、本当に強欲だね。でも、俺は君のそういう所が気に入っているんだ。だから、何でもしてあげたくなる」 

「じゃあ………」


提案を飲んでくれる気配を感じ取り、真司は、ごくり、と唾を飲み込んだ。単純に、これまでもずっとしたいと思っては、いや、それは流石に雅之の負担になるからと、これまで提案してこなかった、ソレ。雅之が機嫌を損ねたら、それこそ一日がかりで機嫌を直してもらう為に駆けずり回る必要がある。別にそれは真司にとってご褒美というかプレイの一環でもあるので嬉々として受け入れはするのだが、雅之の気持ちが自分から少しでも逸れてしまう事だけは、何があっても避けたいというのが本心だった。


だから、ずっとしたかった事が、漸く念願叶いそうな予感を受けて、真司の瞳はきらきらと輝いていた。雅之は、そんな真司を見るのが堪らない。断ったとてどうなる訳でもないけれど、真司の持つ、何処までも深い執着と独占欲に全身を絡め取られる感覚は好ましく思っていた。


こんなに必死な様子の真司が見れただけでも、この男を泳がせておいて正解だったな、と内心でほくそ笑む。雅之は、男が真司の存在を知って、自分の寵愛を手に入れる為になりふり構わず行動に移すだろう事を知った上で、男の分かりやすい罠に掛かったフリをしたのだ。


コース料理に媚薬が仕込まれているのは、ブラック・バカラによって予め情報を入手していたので、今日行動を共にしていなかった別働隊に料理に紛れ込ませる前に排除してあった。そして、御方である自分への反逆の可能性ありとの判断から、ブラック・バカラをボディーガードに必要な人員以上に集めて、ある程度警戒を固めていた。慎也が付いてきてしまった事だけが雅之にとっては誤算ではあったのだが、それ以外の経緯は全て、雅之の想定の範囲内での出来事でしかなかった。


そう、つまり雅之は、媚薬など最初から口にしていなかったのだ。しかし、真司が相手になってしまえば、媚薬を盛られていなかったとしても、結局は同じ事だった。雅之は、そこに真司の意思さえ存在すれば、どんな場面であっても、例え相手が機械でも感じる事が出来る。男の前では微動だにしなかったというのに、真司を相手にすると、あっさりと自分の身体が反応してしまった事実に、雅之は少なからず自嘲してしまう自分を禁じ得なかった。


自分の想像を超えた人間など、今まで雅之の前には現れて来なかった。生まれつき類稀な人身掌握能力に長け、圧倒的なカリスマ性にも恵まれた自分の前では、どんな人間もたった数分話すだけで掌の内に手に入れる事が出来たからだ。しかし、たった一人だけ例外がいた。


それが、谷川 真司という少年だった。


あれだけの自分の寵愛を受け、友達にしてやり、『トクベツ』にしてやったにも関わらず、自分を裏切り、あの教会に取り残して、精神障害まで引き起こしておきながら、そんな自分を忘れた男。雅之は、これほどまで誰かにコケにされた経験は無かった。だから、真司を憎み、憎み、憎んで、そして。




愛した。




「いいよ。でも、無理だけはさせないでね?明日も沢山するつもりなんでしょう?なら、張り切りすぎて、明日俺が使い物にならないような事にはしない様に……分かった?」


『絶対にやって来ない未来』を信じて、首が千切れんばかりにぶんぶんと頷き、唇に噛み付かんばかりに吸い付いてくる真司の頭を、雅之は、優しくゆっくりと撫でる。すると、今にも襲い掛かってきそうな情欲に濡れた光をギラギラと放っていたその瞳は、うっとりと細められていった。


そして真司は、雅之の右手の感触に身を委ねて、『だいすき、すきです、あいしてます』と囁きながら、雅之の左手を取って、その薬指にちゅ、ちゅ、とキスをし始めた。


それを好きにさせてやりながら、雅之は、聖母の様な微笑みを浮かべて、真司の胸に更なる愛の矢を射る一方で、やはり、こうなった以上、次の段階に移る準備を整えていて正解だったなと考えていた。


雅之は、真司の愛の深さ、執着心、独占欲を、これまでずっと刺激して、膨らませてきた。時折自分の我欲を剥き出しにして自分に相対してくる慎也や祐樹をある程度自由にさせているのも、真司の中にある、自分に対する価値を高めさせる目的もあったのだ。


他の薔薇の八大原種達や幹部からもそうだが、雅之は、その信仰を一身に受ける存在であり、同時に深い愛情を示されてもきた。その捧げられる愛情を受け取る姿を真司に見せつけるのは、真司の中にある雅之への『雌の役割』の固定化を避ける目的もあったのだ。


下克上を日常的に許すようになれば、人間は簡単につけ上がる。お前は俺のオンナなんだから言う事を聞け、と平気で言ってくるのが、男の本性であり、これはなかなかに避けては通れない。雄が雄を抱くという事は、自然界でいう所の群れの序列を決めるためのマウント行為。それを黙って許し続けてしまえば、いくら雅之が教祖として崇められていても、真司は雅之にとってコントロール不可な人間になってしまう。


そんな横暴を許し続けてしまえば、いくら雅之の気持ちを尊重してくれている薔薇の八大原種とはいえ、黙ってはいなくなるだろう。雅之はこれでも、真司をとても大切にしている。だから、いついかなる時も側に置いて、真司が『真司に日頃から暴力を振るっていた父の様に不慮の事故に巻き込まれてしまう』のだけは避けてきた。しかし、こうして慎也に雅之の身体に仕込まれていた真司の玩具の存在がバレてしまった以上、余計に、何も動きを取らずにいれば、真司の命は危うくなる一方だ。


その為雅之は、真司の命をどうあっても守る為に、薔薇の八大原種達や、こうして自分を誘き出してまで自分の身体を謀略しようとしてきた幹部達に、少しずつ『慈悲』を与えていく事を決めたのだった。


真司の様に一気に慈悲や寵愛を与えてしまえば、人は簡単につけあがる。だから、少しずつ、少しずつ自分と共に過ごす時間を与えていき、簡単には手に入らない自分を演出していったのだ。けれど一歩間違えれば、自分は単なる尻軽になってしまう。人の口に戸は立てられないし、そうすれば人心や信仰心など簡単に離れていってしまうだろう。


だから、絶対に抱かせはしない。手すら簡単には握らせず、肌を見せるなどもっての外。キスをするのも、自分がこの相手であれば、という線引きを越えた相手のみに絞り込み、肌を見せるのは唯一真司ただ一人として、そこだけは徹底するつもりでいた。


雅之は、自分のハーレムを作り、そこに癒しを求めた自分の父親を毛嫌いしてきた。なにしろ、最初に雅之に性的虐待を働いたのは、自分の父親だったからだ。そんな男の愚行を真似する事だけは、絶対に避ける必要があった。しかし、これまでの自分は人身掌握に長けてはいたが、真司という規格外の寵愛を受ける存在が現れた為に、これまで上手く回ってきた組織の上層部そのもののコントロールが難しいものになってしまった。


これが、自分が普通の男で、周りの人間達が全員女であれば、多少の融通は効いたのだが、これが男ばかりとなってしまうと、大変難しい。骨肉の争いだけは何としても避けなければならないし、親友や仲間だと思ってきた人間達が仲間割れをしたり、無謀な手段に及ぶ様な心境にさせて追い詰めさせたりはしたくない。だから、これからが自分の腕の見せ所だな、と雅之は襟を正していた。


まずは、いま目の前にいる真司とこの男をどうにか丸め込み、次に、静かに怒り心頭に発っしている慎也の気持ちを納めて、更に、そんな大激怒している慎也の報告を聞いた薔薇のハ大原種達の気持ちを宥めなくてはならない。そんな芸当が出来るのは、この世に雅之ただ一人なのだから。


そんな風に様々な思案を巡らせていた雅之の左手に、突然衝撃が走った。驚いた事に、雅之の左手薬指を口に含んで舐め回していた真司が、その根本に歯を立てたのだ。深い傷にはならなかったが、かなりの痛みを伴ったので、雅之はそれとなく驚愕した。自分を傷付ける人間には、御方となって君臨する様になってからは出会った試しがない。久々に他人から与えられる痛みに、雅之は一瞬、呆気に取られてしまった。


「雅之さん、俺、もう待てません。この指に付けた傷が治るこの四日間で、俺にプロポーズの答えを下さい。もう、誰も、貴方に触れて欲しくないんです。だから……」


その話を聞いて、真司が何の話をしているのか理解した雅之は、谷川 真司という人間に対する見方の大きな変革をしなければならないという自覚を深めた。


何故、自分をそうまでして縛ろうとする。
何故、今の恵まれた環境で納得しようとしない。


真司から向けられる独占欲や執着はとても好ましく感じていたが、こうして自らの『夫』になりたがる姿を見せびらかすまでに増長しては、流石につけ上がらせ過ぎたな、としか雅之には考えられなかった。


確かにこれは、慎也の言う通りだった、と少しだけ振り返った雅之は、あとで慎也にも、みんなにも、ちゃんと謝らないとなと、小さく嘆息した。


何しろ、雅之の手元には、現状『八個の小さな箱』が揃っているのだ。にも関わらず、彼らは決して雅之に返事を求めたりはして来ない。それなのに、真司だけを特別扱いする環境ばかり整えていっては、彼らとしても我慢が効かないだろう。


生意気な駄犬め、と憎しみの矛先が真司に凶刃となって襲わない様に、雅之は薔薇の八大原種を筆頭とした幹部達の鬱憤が、真司に本格的に牙を剥く前に、自分が動く決意を静かに固めたのだった。


「真司、その話はいまは後にしよう。だから、はやく君がしたい事をしてみて?……俺、想像しただけで、おかしくなりそう」


は、と気を取り戻した真司は、恥じらいながらも期待を隠し切らない、という演技をする雅之を見て、再び雅之のその唇をゆっくりと塞いだ。熱く視線を絡ませながら自分はベッドの端に座って、拘束されて床に座り込んでいる男の正面に位置していく。そして雅之の手を取ると、自らのいる場所に招き寄せて、自分の膝の上に雅之を座らせた。


雅之の唇を深く吸いながら、自分の怒張を軽く扱いて、完全なる勃起状態にさせると、真司は雅之に目配せをした。雅之はそれを受けると小さく頷いて、拘束されている男の方を向いたまま真司の膝に座る様にして、その怒張に向けて自ら腰を落とし、真司の怒張を秘孔にゆっくりと飲み込ませていった。


「ぁ、……ッ、はぁ、んっ……」

「上手にお座り出来ましたね。じゃあ、俺の首に腕を回して下さい」


雅之は、真司に言われた通り、後ろ手で真司の首に腕を回した。


「両膝上げて……そう。じゃあ抱えますね」


促されるままに、雅之が両膝をゆっくりと上げると、真司は雅之の膝裏に自分の腕を通し、雅之の身体をがっちりと抱え……そして、怒張を雅之の秘孔にずっぷりと挿入したまま、ベッドから、すくり、と立ち上がった。


圧倒的な筋力が無ければ成し得ない。また、怒張自体の長大さに自信がなければこの体位……背面駅弁とでも言うのか。それは、成立しない。しかし、様々な要因がクリアされ、一度体位が完成してしまえば。


「アッ……やぁっッ、ひぃ、あっあっ、やらぁ、奥、きちゃ……あっ、揺らさないでぇ……ずんずん、あんっ、や、やぁ……ッッ……ぁあッッ」


雌に与える快楽は、甚大だった。


「雅之さん、奥、すっかり開きましたね。凄い……こんなに深く繋がれたの、初めてですね……気持ちいい?」


膝を抱えたまま、雅之の身体を上下に揺さぶり、怒張を根本まで秘孔に挿入して、はぁっ、はぁっ、と鼻息荒く雅之に感想を求める真司の目は、ギラギラとした欲情に濡れ、真っ赤に血走っていた。雅之は、頷くという行為すらままならず、真司の腕の中で翻弄されて、ひっきりなしに喘ぎながら、時折甲高い嬌声を上げて、自重によって得る深い快楽に激しく身悶えした。


真司は、雅之を背後から抱えて揺さぶりながら、目の前にいる男の前まで歩みを進めた。そして、身体をくねらせ、与えられる快楽に振り回されている正気を殆ど失ってしまった雅之の頭の横から顔を出して、呆然としながら雅之の痴態を眺めていた男に向けて、にたり、と優越感に満ちた笑みを浮かべた。


「あんたに、これ出来ます?こんな風に、この人を満足させられる?俺よりも上手く抱いてあげられる自信、まだある?……こんな感じに、さ」


雅之の膝を抱えている腕に力を込めて、雅之の身体全体を上下に揺さぶり、自らも腰を大きく打ち付ける。ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、と激しく鼠蹊部と陰嚢でジミンの尻たぶを打ち、深々と怒張を秘孔に突き刺して、亀頭が入り込める最深部……だとされていたS状結腸の入り口を易々と潜り、ぐぢゅんッッ、ぐぢゅんッッ、と卑猥な水音をひっきりなしに立てながら、雌として生まれた悦びに打ち震えて声すら出ない雅之を、背後から激しく犯していった。


「ほら、雅之さん。ずっと見られてますよ、俺達の子作りセックス。こんな目の前の、特等席で。一杯鳴いて、喜ばせなきゃ。だから、ねぇ、もっと鳴いて」

「やぁッッひぃ、ぁあん…ッッこし、とめてぇ、ッッいく、いくぅ、いっちゃうッッ……よぉ……ッッ」

「ぷらぷらしてる花芯から、先走りがいっぱい……ふふ、おっさん、良かったね。顔に雅之さんの蜂蜜掛かってるよ。舐めたかった?残念でした。後で俺が全部拭いてやるよ」 


がつ、がつ、と腰を打ち付け、雅之の身体をその動きに合わせて上下に揺さぶり、男の目の前で壮絶を絵に描いたような雄と雌の交尾を繰り広げていくと、男は目を見開いたまま、さめざめと号泣した。真司は、その『自分には絶対に不可能だ』という絶望に彩られた顔を見て、漸くこの男の心を折った、という実感を得たのだった。


「雅之さん、このままおっさんの顔にザーメンぶっ掛けて。それで、自分はこの人の物だから、もう近寄らないでって、ちゃんと伝えて」

「やらぁっ…ッッそんな、の、できないよぉ…ッッ」

「出来ないって、何がです?ザーメンぶっ掛ける事?それとも、貴方が俺の物だって言えない事?どっちですか」

「あ、ッッ、いっちゃ、かけちゃう、やだ、やだよぅ、はずかし……こし、とめてぇ……真司のだからぁッ、だから、もう、ゆるしてぇ……ッッ」 

「あぁ、ぶっ掛けるのが嫌だったんですね。もし貴方が俺の物なんだってまだ自覚してないようなら、このまま何回イッても許さない所でしたよ」

「あん、真司の、おれ、真司のだからぁ、だから、もうやめて…ッッ、この人の前でイかせないでッッ」


自重を利用された無慈悲な挿入を繰り返されていく雅之が、必死で真司に言い募る。すると、真司は雅之の頬にキスをしたまま、最深部のその先に亀頭をずぶりと潜り込ませ、そこを広げる様にして、グチュグチュと掻き回し始めた。


「駄目ですよ。ちゃんと分からせてやって。貴方のイキ顔見せて、こんな顔させられるのは俺だけなんだって。それを頭に叩き込んでからじゃないと、俺はこいつを許せない。だから、このおっさんの顔に、たっぷり顔射して下さい」


真司はそう言うと、男の顔の前に雅之の花芯の先端が来る様に移動して、再び腰を打ち据えた。その反動で雅之の花芯から先走りが放たれ、男の顔にピピッッとそれが飛び散った。雅之は、真司の猛攻を必死に堪えていたが、これまで経験した事のない身体の奥深くに与えられる快楽に抗えず、真司が止められないなら、男の方に期待するまでと、男に必死で頼み込んだ。


「やぁ、見ないでっ、俺がイクとこ、見ないで、でちゃうの、このままだと、おちんちんから白いのでちゃうっ…お願い、俺を、俺を見ないでッッ」

「はは、無駄ですよ、雅之さん。見て下さいよ、おっさんの顔と粗チン。完全に期待してますって……ねぇ、これだけ沢山の男を狂わせておきながら、貴方は、まだ分からないんですか?」


雅之は、真司に言われた意味が分からず、思わず『え?』と素に返って聞き返した。すると、真司は、これまで雅之が見た事の無い、とてもとても冷たい眼差しで、雅之を見下げた。



「男って、とっても怖いんですよ」



真司は、怒っていた。
自分以外の男にその身体を触れさせた事を。
自分以外の男にその唇を許した事を。


本当は、とても、とても、とても深く、怒っていたのだ。


雌犬(ビッチ)めが、と責めたてる気持ちには全くならない。真司にとって、雅之は何処までも光り輝く存在なのだから。だが、自分がいま、一体誰と恋人の契りを交わしているのか、その辺りの認識に対する理解だけは、しっかりしていて欲しいと願っていた。だからこそ、この四日間でプロポーズの返事を用意する様に、真司は進言したのだった。


『貴方は俺の物だ。だから絶対に逃がさない。誰の手も触れさせたりしない』と。


真司の中にある隠されていた残虐性を露わにした眼差しは、複数人の男達から受けた性的虐待の記憶を呼び覚ますだけの恐怖を、雅之に与えた。カタカタと全身を震わせて、花芯からは精液でも潮でもない、黄色みを帯びた液体がチョロチョロと溢れ出す。


すると、その場で、『おぉっっ!!』という男達の歓声が上がった。


自分が成人男性として恥ずべき行為である『おもらし』をした事が、男達の心の琴線……性癖に触れたのだ。雅之は、男達が……否、谷川 真司という男が、ひたすらに恐ろしかった。そして、こんなイキモノ達を手玉に取ろうとしていた自分が、どれだけ自惚れていたのかを悟った。


「貴方のおしっこ、ずっと見たかったんです。嗚呼、一旦出たら、全然止まりませんね。おっさん、いいもの見れましたね。生きてて良かったじゃないですか」


真司の、心からの感動に応える様に、男が泣きながら何度も深く頷いているのを見て、雅之はどれだけ男というイキモノが醜いのかを悟った。自らが愛玩動物だとして可愛がってきた真司が、自分の痴態を見て、男と共に子共の様にはしゃいでいる。そこには一種の連帯感があって、男達は、先程まであった禍根などまるでなかったかの様に狂喜乱舞していた。


「おっさんにダメージを与えて二度と俺達に反抗させない様にしようと思ったけど……逆に、これで昇天した様なものでしょう?もういつ死んでもいいんじゃないですか?」


真司が気軽に男に声を掛けると、男は、『もう思い残すことはない、感謝する、二度と貴方達に手出しはしない』と、くぐもった声で真司に伝えて、その場に深く頭を下げた。それをみて雅之は何とも言えない気持ちに、真司は、胸がすく思いをした。しかし。


真司は、雅之に対する猛攻を、再開したのだった。


「じゃあ、おっさんが改心したところで、続きをしましょうか。このまま、ザーメンも潮も、じゃんじゃん出しちゃいましょうね。おっさんにたっぷりぶっ掛けて、良い思い出作って貰って、後はもう、一生さよならって……ね?」


下から突き上げる様にして最深部を穿ち、雅之の身体をゆさゆさと上下に動かして、主人であり最愛の雌である雅之に、蹂躙に次ぐ蹂躙を果たしていく。雅之は激しく抵抗したが、真司の荒い息と共に耳元で囁かれる『愛してる、愛しています』という、どろどろに愛欲と肉欲に満ちた声と、その強烈な支配欲求に雁字搦めにされてしまい、目の前にいる男の、期待と欲望に満ちた目とも相まって、瞬く間に、それでいて強制的に、絶頂の階段を駆け上がっていった。


「あ゛ッッ、やぁっ、らめ、出るッッイク、イクのぉ、出ちゃう、ゆるして、しんじぃ、ごめんなざいぃッ……もうしないから、だから、イカせないでッッ」

「俺の前で他の男にキスしたり、身体を触らせた、お仕置きです。そろそろ、俺も出しますよ。子宮開いて、雅之さん。全部溢さずに、雌の意地で受け止めて」


荒々しくも猛々しくラストスパートを掛け、鋭い突き上げを繰り出すと、雅之の身体をしっかり固定してから、真司は、自分の怒張を深々とS状結腸のその先の空間に潜り込ませた。そして、下生えをぴったりと密着させながら腰をぐりぐり動かし、雅之に深い快感を与えていった。真司の怒張の竿の根元を、雅之の肛門括約筋が、怒張の中腹をヒューストン弁が、亀頭から雁首までを直腸S状部とS状結腸がキュンキュンと締め付けていく。雅之は絶頂を極め、全身を痙攣させながら、無意識のうちに真司の射精感を高めていった……そして。


「はぁ、……飲んで、子宮で、全部。そう、そのまま、俺のペニスにしっかり食い付いて離さないで。嗚呼、雅之さん、ザーメンだけじゃなくて、潮まで吹いたんですか?可愛い……なんて可愛いひと」


雅之は、舌を突き出し、ピクピクと痙攣しながら、その腹の奥で真司の子種を受け止めて、その衝撃で、精液と潮を周辺に撒き散らしていった。雅之の花芯が真司の腰の動きに合わせて、ぷらぷらと上下に動く。そこから放たれた液体をビシャビシャと浴びた二人の目の前にいた男は、何も触っていない怒張から、再び大量の射精を果たしていた。


『コレ』は、可愛らしい仔犬などではない。


主人の愛を欲し、主人に甘えてくる顔。
直向きで、純粋で、自分の性分に正直な顔。
そして、虎視眈々と己が主人を貪ろうと狙う顔。


『ケルベロス』という、三首の化け物。谷川 真司という男を表すに、これ以上相応しい字名はないだろう。


そして、雅之は知る。


「ねぇ、雅之さん。このまま此処に、慎也さんも呼んでしまいましょうか?貴方が一体誰の物なのか、あの人の頭に、しっかり頭に叩き込む為に」


谷川 真司という男の、『狂愛』を。
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