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第三章『秘密の花園』

推理と追求。明らかになる『御方』の素顔

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ロサ・フェティダさんに案内されて、花園のある建物の後ろに広がる林と森の中間くらいに整備された場所を歩いて行く。すると、先に進めば進むほど、芳しい花の香りが風に乗って運ばれてきた。どうしてこんな森の中からこんなに濃密な花の香りが?と訝しんでいると、前を行くロサ・フェティダさんが、此方を振り向かずに話し掛けてきた。


「いい香りでしょう?この先に、薔薇の花園の名前の由来になった場所があるんだ」

「花園の名前の由来に?」

「うん。すぐに分かるよ……ほら、ごらん」


俺達の前を行っていたロサ・フェティダさんがそう促すと、それとほぼ同じタイミングで、目の前の森が開けた。そして、森の中にぽっかりと浮かび上がる様に、美しい薔薇の庭園が突如として出現したのだった。一流の庭師の手によって手入れがなされているのが、素人の俺であっても一眼で分かるくらい、その薔薇達は寸分の狂いなく、その場所を彩っていた。秋風に乗ってこちらまで運ばれてくる濃密な薔薇の芳香は、この場所がまさに薔薇の花園の名前の由来になるに相応しい物である事を俺に伝える。こんな場所があっただなんて、と衝撃と共に立ち尽くしていると、ロサ・フェティダさんはそんな俺をくすくすと笑った。


「ふふ、凄いでしょう?ここにある薔薇達は、春と秋の二回、見頃を迎える。だからいまは丁度、満開を迎えたところだよ」

「素晴らしいですね。こんな庭園、他では見た事がありません」


庭園の入り口は、三方向に放射状に別れていた。その其々に薔薇のアーチが掛けられていて、中央に向けて煉瓦の道が敷かれている。そして庭園の中央には薔薇の蔓が絡み合っている厳かな雰囲気のガゼボが置かれており、庭園の中で唯一の日陰をそこに作り出していた。


そのガゼボの中に二人の人影があった。テーブルと椅子も置かれているのだが、そこに片方の人物だけが、ゆったりと腰を落ち着けている。テーブルの上にはケーキスタンドに乗せられた軽食や焼き菓子が準備されていた。庭園の景色を眺めながらアフタヌーンティーを楽しめる環境が整えられており、椅子に座っている人物が、明らかに誰かを待っている状況を作り上げていた。


その椅子に座っている人物は、親しげな笑みを俺達に向けている。見知っているその人物の笑みを受けて、俺はとうとう、御方の前に対峙するための最後の関門に辿り着いたんだという感慨に浸った。


「やぁ、リリー。帰国したと聞いてから、ずっと待っていたんだよ?一体何処で道草を食っていたんだい?」


その人物……九條さんは、ガゼボの手前まで足を進めた俺に向けて、笑顔を保ったまま、軽い棘を含んだ質問をしてきた。


「すみません。どうしても会わなければいけなかった人が居たものですから」

「そうか、それなら仕方がない……まぁ、立ち話もなんだから、座りたまえ」


そう告げると、九條さんは、俺の左右それぞれの斜め後ろに位置していた二人に目配せをした。すると、それを受けた二人は静かに頭を下げてから、音も無く庭園を去っていった。恐らく、いまの目配せには人払いの意味合いが込められていたんだろう。九條さんと俺と給仕を担当する人間以外、視線が及ぶ範囲に人の影が無くなった。


給仕を担当してくれた人が、丁寧な手際で二人分の紅茶を淹れていく。そして、それをテーブルの上にセッティングするのを見届けると、九條さんは俺に向けてゆっくりと口を開いた。


「長旅だったから、疲れただろう。君の為に、ちょっとした席を用意させて貰ったよ。気に入って貰えると嬉しいのだがね」

「御心遣いに感謝します。ですが、俺には、すぐにでも話さなければならない人がいるんです」

「そうか、私と一緒に、喉を潤すよりも急を要しているのなら、仕方がない。それで、その人物とは一体誰かね?」

「それは………」


最後の関門。そこに、まさかこの人が用意されているとは思わなかった。ロサ・フェティダさんが、すんなりとここまで俺を案内してきた理由が、ここにあるとは。しかし、尻込みしている訳にはいかない。俺は気を取り直し、そして自分を鼓舞してから、九條さんの斜め後ろに立ち、給仕を担当していた薔薇の先輩に視線を移した。


「カーディナル先輩、貴方です」


俺達の給仕を担当していたカーディナル先輩は、目をパチクリと瞬いて、驚きの表情をして見せた。そして、周囲を軽く見渡してから、『え、俺?』という心の声が聞こえてきそうな困惑をその顔に縁取った。薔薇としての仕事に従事ている以上、無闇に口を聞いてはいけないという暗黙のルールがあるので、心に浮かんだ声を言葉に表せないのだろう。だから、俺は九條さんに向けて、カーディナル先輩と話が出来る様に便宜を図った。


「カーディナルと話がしたい、と。しかし、その理由は、一体何かね?私を納得させられるだけの理由がなければ、その要求は飲めないな」


やはり、この人は最後の関門だったんだ。それについては当然分かってはいたけれど、目の前に立ち塞がられると、その壁の厚みに圧倒されてしまう。花園の総元締めとしての威厳と、御方より預かった花園を盛り立ててきたという自信が、九條さんの全身から迸っていた。


「それは、カーディナル先輩こそが御方その人であると、俺が考えているからです」

「そうか。して、その根拠は?それが明確にあらなければ、君は単なる薔薇の一輪を御方その人だと言い放った事で、教会内に置いて粛清の対象となる。それでも、その考えに自信を持つのかね?」


九條さんがこういう手に打って出て来ることは、予想していた。だから、俺はその明確な脅しに対して、大きく頷いて見せた。


「ならば、聞こうじゃないか。君が、カーディナルを御方その人だと思う、その根拠をね」


鷹揚に言い放った九條さんに、俺は怯まなかった。それだけの自信と根拠を、自分の中に用意していたからだ。こうして、俺による『御方とは一体誰なのか?』という推理……ではなく、種明かしが始まった。


カーディナル先輩は、ロサ・フェティダさんと殆ど同じタイミングで花園入りを果たした。しかし、ロサ・フェティダさんが花園に足を踏み入れたのは、花園が御方の手によって改変がなされた後。その為、ロサ・フェティダさんは、暗黒の時代とされる花園の状況について、詳しい事は知らないと言っていた。


にも関わらず、カーディナル先輩はロサ・フェティダさんとは違い、花園の暗黒時代に随分と詳しい様子を見せていた。そして、カーディナル先輩は、管理者の立場にある人間の仕事の愚痴を聞けるほどの立場にあり、何より、薔薇を派遣する行為を、いま花園で使われている『植え替え』と言う隠語を使わずに、『出荷』という暗黒時代の管理者側が使っていただろう隠語を使っていた。これだけの情報が揃えば、カーディナル先輩が。


①花園の暗黒時代からいた管理側の人間であった。


②それよりも更に高次元に立つ存在であった。


という事が伺える。しかし、カーディナル先輩がロサ・フェティダさんと同期の人間である以上、暗黒時代からの管理側の人間でない事は明白。つまり、カーディナル先輩は、②に該当する存在という事になるのだ。




『『出荷先』の奥さんともこっそり関係持って、丸く収まったんだと。けど結局バレちゃってね、だけどそのおかげで夢の3Pが出来て、旦那も奥さんもハッピー、みたいな?なんか、そこのご夫婦ずっとレスだったらしくて、その問題も同時に解決したから、いい子紹介してくれたって、うちの花園の名前も鰻登りになってさ。問い合わせがごっそりきて、余計に会員の審査が大変になったって当時の管理者が言ってたなぁ』

『……はぁ』




それだけでなく、カーディナル先輩は、薔薇になる以前の薔薇の蕾達に声を掛けては、将来どんな『庭』に移りたいのか、聞き込みをしていた。自らを管理者側の人間だと明言した同期であるロサ・フェティダさんですら、そんな話をして回っていた事がないのに、である。


御方と九條さんが厳選を重ねて会員と認めた人間達を見て、どれが良いかだなんて話をするのは、間違いなく不敬に当たる。つまり、カーディナル先輩は、ロサ・フェティダさんよりも更に上の立場にある存在。それでいて尚且つ、人事を裁量する側に立つ人間でもあるという事になるのだ。そして、そんな権限を持つ人間は、花園の中では九條さんかそれ以上の権能を持つ人物……御方以外に有り得ないのである。




『なぁ、リリーは、自分が『庭』に移されるなら、どんな人の所がいい?』

『どんな人の所がいいかは、まだ考えた事ないですね……そもそも、俺達に相手を選ぶ権利があるんですか?』

『あるさ!確かに、九條さんから紹介されて何度かデートしてってのは決まった流れだけどさ。最終的に相手の合否を出すのは、薔薇の方からなんだぜ?』

『え?そうなんですか?』

『そうだよ。この『薔薇の花園』は、そんじょそこらの会員制クラブとは訳が違うんだ。誠心誠意を掛けて奉仕したいと思う相手を本気で薔薇が選んでからじゃないと、薔薇は『庭』に移されない。だから、会員費は馬鹿高いけど、庭に移される時に掛かる費用は庭からも薔薇からも取らないんだ。金銭じゃなく信用問題でやり取りされる所に意義があるって九條さんは考えているみたい。そこは、この『薔薇の花園』が九條さんの主導で再始動した時から徹底されてるよ』

『へぇ……』




「つまり、カーディナル先輩は、最終的に薔薇が『庭』を選ぶ立場にあるのを分かっていながら、薔薇の蕾が将来行きたい『庭』はどんな場所が良いのかを尋ねていた事になる。これは、その薔薇の蕾が将来花開いた時、自分の選んだ『庭』に不満を持たない様に、御方としての立場から、予めリサーチをしていたんじゃないでしょうか?」

「それは君の希望的観測に過ぎないだろう。それに、君の話は先程から、御方が花園関係者だという前提で話を進めている。まず、御方が花園関係者であるとする、その根拠を示さない限り、君のその話は全て机上の空論にしかならないよ?」

「それは、御方の表面を担当している蓮さんから、御方は花園にいるとの情報を得たからです」

「それが、フェイクだという事は?」


御方の表面を担当する蓮さんが嘘をついているかも知れないという指摘をしてくるという事は、つまり。九條さんも、当たり前の様に、御方に集う幹部の中でも、トップクラスの地位を誇る人間だという事になる。御方秘蔵の薔薇の花園の総元締めである九條さんは、教会内にあっても、その発言力は随一なのだろう。新庄さんには敬語で、しかも下から機嫌を伺う様な態度を取っていたけれど、あんなもの茶番でしかなかったのだ。


御方と直接話が出来て、尚且つ、愚痴まで溢せる関係性。九條さんは、恐らく御方にとって、蓮さんと同程度か、それ以上にその立場を保証されている懐刀なのだろう。


「有り得ません。何故なら、御方にのみ忠誠を誓うロサ・フェティダさん自らが、御方は自分と同じ『雌花』であると認めたからです。花園にいる人間が、花園以外の人間に、『雌花』や『雄花』という表現は使いません。使ったとしたら、その場で即、厳しい訂正が入ります」



『貴方の痴態を見て、『雌花である御方』がもし反応してくれたら、それって、貴方にとって、何よりも得難い経験なんじゃないですか?』

『リリー……君、は……何を考えて』



「ロサ・フェティダさんと殆ど同じタイミングで花園に足を踏み入れながら暗黒時代の花園を知り、花園に置いて九條さんと同等の裁量権を持ちながら、暗黒時代の花園の関係者であった真智さんにも、慎也さんにもその存在を口にされない、影の薄い人物……そんなもの、単なる薔薇の一輪である筈がない」


自分の眼差しに渾身の力を込めて、カーディナル先輩を睨み付ける。そして、声色を低く、ただ低くして、はっきりと宣言した。


「けれど、貴方が『御方』なら、全ての辻褄が合うんですよ……カーディナル先輩」


俺が、いま持てるだけの武器を駆使して、全力でその正体を暴いていくと、カーディナル先輩は困った様に口元に浮かべていた笑みを辞めていった。そして、俺が最後に宣言をした瞬間に、顔に浮かべていた表情を全て消し去り、全くの無表情になった。


これでもまだ尻尾を出さないつもりか?と、俺が内心焦っていると、カーディナル先輩はガゼボの天井を、否、その先の更に向こうにある天空を望む様な遠い目をしてから。


「………『ロサ・ガリカ』、そこを代われ」


その自らの立場に相応しい権能を、ゆるりと発揮した。


「はっ、」


『ロサ・ガリカ』という名前で呼ばれた九條さんは、先程まであった、カーディナル先輩に対して不遜かつ鷹揚に接していた態度を直ぐに取りやめて、速やかにその席を立つと、カーディナル先輩に向けて一礼をしてから、『失礼致します』とカーディナル先輩に告げ、その隣に並んだ。そして、九條さんと入れ替わる様にして、九條さんが座っていた席にカーディナル先輩が着席すると、九條さんは、以前蓮さんの所にいた際に新庄さんや慎也さんがそうしていた様に、直立不動の体勢を取った。まるで、訓練が行き届いた軍用犬の様なその雰囲気に、思わず俺が面食らっていると、『無駄にする気か?』と目の前に座ったカーディナル先輩が、突然俺に声を掛けてきた。


「………え?」

「折角、俺が淹れてやった紅茶を、無駄にする気か?」


最初、俺はカーディナル先輩に何を言われたのか分からず、きょとんと目を丸くした。しかし、言われている事の意味が頭の中に浸透していくと、みるみるうちに、俺の心には焦りが生まれていった。


この、偽らざる、圧倒的なまでのプレッシャー。支配者が支配者たるに相応しい、王者の風格。その全てが、この人が紛れもない『御方』その人である事を、俺に教えていた。


「あ、の………すみませ……いや、申し訳ありませんでした」

「御託はいい。飲むのか飲まないのか、どうするのかだけを話せ」

「の、飲みます……」


ヤクザの親分より、おっかない。ヤクザの親分には会った事はないけれど。多分、この人の方が、何倍も、何十倍も、恐ろしい。俺は、文字通り震え上がり、びくびくしながら、カーディナル先輩……否、『御方』自らがその手で淹れた紅茶を、速やかに飲み干した。物凄い緊張感から、味は全くしなかった。だけど、人から何かをして貰ったら感謝したり感想は口に出すものだと知っているから、ギクシャクしながら『美味しかったです。ありがとうございます』と、感想を告げた。きっと、間違いなく棒読みだった。


「さて、喉も潤ったところで、行くぞ」

「え、……何処に……ですか?」

「着いてくれば分かる。ロサ・ガリカ、この場は任したぞ」

「はっ、」


俺が紅茶を飲み終えたのを確認すると、御方はそれだけ言って、さっさとガゼボから出て、俺達が来た方とは反対にある深い森に向かって歩き始めた。全く話についていけない俺は、言われた通りに御方の後を追ってガゼボを出るしかなくて、ガゼボを出てから後ろをチラッと振り返ると、九條さんが此方に向かって……御方に向けて頭を下げ続けているのが見えた。


その姿は、自らの存在を俺に明かすために帰還した自分の主人に向けて、最大限の敬意を表している姿に見えて。俺は、九條さんがあんな風になってしまう様な人間を相手に、これから話をしなくてはならないのかと、それでいて尚、ロサ・フェティダさんの自由を掛けて説得を試みなければいけないのかと、すっかりと自信を無くしてしまった。


けれど、弱ってばかりはいられない。こうして御方自らが自分の正体を明かした以上、俺は御方と対話するチャンスを得た。これまで積み重ねて来た経験や、成長してきた自分を御方に見せつける時が来たんだ。震える足を叱咤して、御方の後に続いた。
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