上 下
15 / 45

圭一郎の変態的観測

しおりを挟む

 
 その日は四時間目が体育だった。

体育は2クラス合同で、男女に分かれて着替えをする。

男子は俺らのクラスに集まって着替える。



 着替えは大体は自分の席でする。

この前の席替えで直樹とは席が離れてしまった。俺は一番廊下側で直樹は一番窓際の席だ。



 あいつは本当に友達が多いから、隣のクラスの奴らの大半が直樹の所に集まる。

それを見てヤキモキしない訳ではないが、そこに居る奴らは全員が純粋に友達として慕っているのが分かるから安心はしている。



 安心できないのは・・・あいつだ。ほら、直樹たちの輪には入らず斜め後ろからいつも直樹を見つめている。着替える姿を凝視しては頬を赤く染めている。柔道部のデカい男。時々直樹から話しかけられて嬉しそうにしているあいつだ。



 直樹の性格上、誰とでも気軽に笑顔で話す。さほど仲の良くない相手にも可愛い笑顔で話しかけるんだよ。



 俺としては、そこが悩ましいが、あいつの良い所でもあるので見守っている。



 ワイワイ騒がしく着替えている教室



「ぬをーーーーー!」



 直樹たちの方から、何ともおかしな叫び声が聞こえ、その後シーンと静まり返る。



 その声に釣られてクラスにいる全員が、何事かとそっちを見た。



 皆の視線の先は直樹だ!しかし、俺の位置からは頭しか見えず状況が掴めない。



 見ている奴らの顔が、みるみるうちに赤くなったり青くなったりしている。青くなったのは柔道部のあいつだ。



 順一が俺を生温かい目で睨んでくるから、本当に何が起こっているのかと思い、隙間から様子を伺うと・・・



!!!!!!!

直樹!!!それはヤバい!!!!ヤバいぞ!!!!



 皆に背を向けて上半身をさらけ出しているその背中に・・・



無数のキスマークと三つの噛み痕・・・。

肌が白いから余計に目立つ。



 本人は全く気が付いていない。というより沢山の痕が付いている事を忘れているんだ!



「どーした?なに?なに?」



 なんて呑気にニコニコと振り返る。



あっ・・・ダメだ。前もダメだよ直樹!



 胸から腹に掛けて散りばめられたキスマーク。そして綺麗な鎖骨についた二つの歯形。



 全てが真新しい赤みを帯びた痕だ。だって昨日、俺がつけたから。



 早く!早く気付け!直樹!隠すんだ!!

俺が上着を持って急いで駆け寄ろうとした時



「な、な、なおき!!!その体・・・!」と誰かが指さした。



え?なんて呑気にゆっくりと自分の身体を見下ろしている。

絶望にも似た表情に変わる直樹は・・・



「わ、忘れてたーーーー!!!」と叫んで、瞬時にカーテンにくるまった。







 それから直樹は死んだ魚のような目で過ごし、俺は、順一・友也・健介に生温かい目で見られ続けた。今更誤魔化したところで、物的証拠を全員に見られてしまっている。



 そして「直樹にエロい彼女が出来た」という噂が、学校中を駆け巡った。



 体育が終わって制服に着替える時、直樹の身体を見ようと他のクラスの奴も集まってきたりして、ちょっとした騒動になった。しかも、他の学年の奴まで混ざっていたからビックリだ。どこで聞いてきたんだよ。



 でもそんな中、あの痕をつけたのは俺だ。直樹は俺のだという優越感で満たされていた俺は変態なのかもしれない。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

年上が敷かれるタイプの短編集

あかさたな!
BL
年下が責める系のお話が多めです。 予告なくr18な内容に入ってしまうので、取扱注意です! 全話独立したお話です! 【開放的なところでされるがままな先輩】【弟の寝込みを襲うが返り討ちにあう兄】【浮気を疑われ恋人にタジタジにされる先輩】【幼い主人に狩られるピュアな執事】【サービスが良すぎるエステティシャン】【部室で思い出づくり】【No.1の女王様を屈服させる】【吸血鬼を拾ったら】【人間とヴァンパイアの逆転主従関係】【幼馴染の力関係って決まっている】【拗ねている弟を甘やかす兄】【ドSな執着系執事】【やはり天才には勝てない秀才】 ------------------ 新しい短編集を出しました。 詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。

処理中です...