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第84話 アシュフォードside
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カイン・ブライズとして無事にリヨンに入国し、バロウズ大使館へ入った。
ここからは、クライン殿下と繋ぎを付ける算段を大使事務次官と話し合う。
想定していたより事は大きくなっていたのかもしれない。
本日リヨンの外務大臣は、内々に大使を名指しで呼び出していたのだ。
これはバロウズへの抗議を意味している。
こちらからは王弟として、何の用かと働きかけられないので、大使の帰りを待つしかない。
朝早くから呼び出された大使と首席事務官は、正午になる前に帰館した。
「私の入国がもう伝わったか?」
「……それはまだ把握しておられませんが、クリスチャン・シモーヌ様が早馬を飛ばしたことは知られておりました。
殿下のご入国も午後には知らされるかと」
「……」
「オーガスタ嬢の件も女王陛下は御存じです」
大使がクライン殿下の元恋人を名前で呼ぶのは、ラニャンでは平民には名字がないからだ。
事の詳細を首席事務官が説明する。
ラニャンの殿下の友人から便りが届いて、オーガスタが結婚すると知った殿下が我を失って、結婚前にもう一度会いたいと乱心しているらしい。
余計な便りを送ってきたのは、殿下が酔うと武勇伝の様に語り出す学生時代の馬鹿騒ぎを、共に経験した悪友の子爵令息だ。
殿下は『世情を知る為』と称して、低位貴族の子息達と付き合う事を好んでいた。
他国の王配として婿入りした殿下にその様な便りを送るのも無責任だし、それを受け取り心乱れる殿下にも呆れる。
俺に話した覚悟とは何だったんだ。
何の検閲も無しに自分の元に、母国からの手紙が渡ると思っていたのか。
封さえされていたら、誰も読んでいないと信じたのか。
立場に対する自覚もない、脇の甘さにも腹が立つ。
当然うちと同時にラニャンの大使も呼び出されていて、オーガスタと子爵令息の処理は任せると言われていたそうだ。
クライン殿下は自分の行いが元恋人と悪友にどんな影響をもたらすのか、それさえも考えていなかった。
ラニャンも愚かな第4王子に頭を抱えているだろう。
そうだ、ここまで女王陛下に筒抜けなら。
「私はこのまま帰っていいよな?」
「女王陛下からは、王配殿下のお気が済むのなら、是非お会いしていただきたい、と……」
どうしてだ、微かな希望は打ち砕かれる。
王宮のクライン殿下の私室で、泣き言を聞くのを見て見ぬ振りをしてやると、いうのだ。
何より腹が立つのは、これが入国前なら、という事だ。
だったら、アシュフォードとして入国したのに。
髪を染めて眼鏡をかけて、偽名で入国した。
もうこの旅券、この身分は2度と使えなくなった。
これからはブライズ商会の出入国には、リヨンから必要以上に厳しい目が付く。
国王陛下と商会会頭の怒り狂った顔が目に浮かぶ。
ふたりが影を送ってクライン殿下に何かしても、仕方がないくらいだ。
俺だって甘ちゃんだが、王配殿下はそれよりもっと酷くて、巻き込まれた自分を呪いたくなる。
バロウズでオーガスタと会う算段をしろ、それが成功したら、次はふたりの愛の巣を用意しろ、か?
クライン殿下の要求は、エスカレートするのが目に見えた。
王配の分際で、他国にそれを要求出来ると思ったか。
それとも、俺を友人だと思って個人的に力を貸してくれると?
本当に友人だと思うなら、こんな事に巻き込もうとするな。
俺こそ、友人になれたと……
やっぱり俺は甘ちゃんだった。
女王陛下からの頼みだから、一度は会う。
だが、二度はない。
髪を染めた俺を見て、無邪気な顔をして、クライン殿下は笑った。
肉眼では見えないリヨンの複数の目と耳に囲まれて。
予想通りの話を、殿下は話した。
どれ程、自分がオーガスタを愛していたか、彼女の結婚を知らせる手紙で改めて気付かされた、と言う。
彼女だって、自分を忘れていない筈だと続ける。
俺の協力さえ得られたら、バロウズで年明けに会おうと、例の子爵令息に連絡して……と、実現しない夢を語る。
あの悪友は無事に新年を迎えられるのだろうか。
どちらにしろ、もう二度と殿下とは連絡は取れなくなる。
この件にオーガスタがどこまで関わっていたのかはわからない。
今まで見逃されていたのに、愛するひとの運命を変えたのは殿下だ。
それは俺が伝えることではないので黙っている。
黙って、殿下の肩を抱いて、ラニャンの言葉で慰める。
頭の中は、バロウズまで帰る道程が天候に恵まれて支障なければいいのにと、それだけだった。
「オーガスタは本当に素晴らしい女性なんだ。
早くアシュにも会わせたいよ」
「私も楽しみにしています」
カイン・ブライズとして出国をした。
手続きは滞りなく行われた。
さようなら、カイン。
もうこの人物になる事はない。
アグネスにクライン殿下を紹介しなくて良かった。
リヨン王家は一度は見逃すと決めたが、次はない。
彼が居なくなれば、アグネスが悲しむ。
ラニャンは次の候補を考えているかも知れない。
俺には関係ない。
そう思うことにする。
◇◇◇
馬を飛ばしてガーランド、コーカス、と駆け抜ける。
走らせながら、リヨン出国前夜を思い出す。
「王弟殿下のお陰で、クライン殿下もしばらくは目標が出来て、落ち着いて公務に励んでくれると思いますわ」
そう言って女王陛下は笑っていらした。
王配殿下の私室を辞した後、俺に声をかけたのは。
フォンティーヌ女王陛下の専用侍女だった。
彼女に案内されて、陛下の私的謁見室に初めて行った。
帰国の途に付く前に、ご挨拶に伺ったのは秋になる前だった。
それなのに、年末にはこんな形で拝謁する事になろうとは。
「バロウズでも、同様だと思うのですが、年末年始は宮廷行事も何かと立て込んでいますの。
王配として隣に立っていただかなくては困る事も多くて。
年始行事が終わって、春になる前には。
クライン殿下に出会いを用意するつもりです」
「……出会い、ですか」
「リヨンの王家に忠実な、遠縁の家門のご令嬢です。
緑の瞳の美しいご令嬢です」
オーガスタは緑の瞳が美しいのだとクライン殿下は愛おしそうに話していた。
「彼女はきっと、殿下のお心をお慰めするでしょう」
貴女はそれでいいのですか?
貴女の瞳もとても綺麗な緑色なのに。
クライン殿下はそれに気付いていないのか。
俺は女王陛下に尋ねられなかった。
俺達一行がバロウズ城に到着したのは、新年夜会の3日前。
冬の日の入りは早くて、夜道を馬で駆けるのは危険なので、夜早めに休み、朝早く出発する。
日中は昼食を取る以外は馬上だ。
それを5日かけてリヨンから王都に戻ってきたのだ。
コーカスでは新しい馬に乗り換えた。
到着してから国王陛下に報告をする。
案の定、陛下の顔が無表情になる。
激怒すればする程、顔に出ないのが陛下だ。
それから俺は15時間以上眠り続け、空腹で目を覚まし、食事をして、また眠った。
腰も尻も足も痛くて、重い鉛の様だった。
アグネスがデビュタントに出席する為、既に帰国しているのは知っているのに、会いに行く元気も時間もなくて、新年の挨拶の代わりに花を送った。
身体も疲れていたが、精神的に疲れていた。
眠っている間に変な夢も見た。
デビュタント当日は朝から気合いを入れる。
本当はまだ眠りたかった。
身体の疲れは取れていたが気持ちはなかなか上向きにはならなくて、身体を丸くして眠り続けたかった。
侯爵家へアグネスを迎えに行く。
彼女の顔を見ると、気分が回復した。
会うのは4ヶ月ぶり、また大人になった。
サンプルで着たドレスとデザイン画しか見ていなかった。
デビュタントのドレスは1日だけしか着ないのが勿体ないくらい美しくて、彼女によく似合っている。
俺が注文をつけた紫は、胸元のレース部分に縫い付けられた小粒の真珠が、微かに薄い紫色に染められていた。
金はドレスの裾に金糸で細かな刺繍が入っていた。
「凄く、凄く綺麗だ……」
自分の語彙が貧しいことに今更ながら気付く。
ふわりと微笑む彼女にスミレのブーケを渡す。
「以前、殿下はスミレを刺繍したシューズをプレゼントしてくださいました。
あれから大好きな花になりました。
ここから少し抜いてもいいですか?」
何をするのかわからなかったが頷くと、ブーケから何輪かのスミレを抜いて、彼女は真珠の髪飾りの横に挿した。
「鏡で確認しなくても、大丈夫?」
俺が尋ねると何も答えず、アグネスは尚も微笑むだけだった。
ここからは、クライン殿下と繋ぎを付ける算段を大使事務次官と話し合う。
想定していたより事は大きくなっていたのかもしれない。
本日リヨンの外務大臣は、内々に大使を名指しで呼び出していたのだ。
これはバロウズへの抗議を意味している。
こちらからは王弟として、何の用かと働きかけられないので、大使の帰りを待つしかない。
朝早くから呼び出された大使と首席事務官は、正午になる前に帰館した。
「私の入国がもう伝わったか?」
「……それはまだ把握しておられませんが、クリスチャン・シモーヌ様が早馬を飛ばしたことは知られておりました。
殿下のご入国も午後には知らされるかと」
「……」
「オーガスタ嬢の件も女王陛下は御存じです」
大使がクライン殿下の元恋人を名前で呼ぶのは、ラニャンでは平民には名字がないからだ。
事の詳細を首席事務官が説明する。
ラニャンの殿下の友人から便りが届いて、オーガスタが結婚すると知った殿下が我を失って、結婚前にもう一度会いたいと乱心しているらしい。
余計な便りを送ってきたのは、殿下が酔うと武勇伝の様に語り出す学生時代の馬鹿騒ぎを、共に経験した悪友の子爵令息だ。
殿下は『世情を知る為』と称して、低位貴族の子息達と付き合う事を好んでいた。
他国の王配として婿入りした殿下にその様な便りを送るのも無責任だし、それを受け取り心乱れる殿下にも呆れる。
俺に話した覚悟とは何だったんだ。
何の検閲も無しに自分の元に、母国からの手紙が渡ると思っていたのか。
封さえされていたら、誰も読んでいないと信じたのか。
立場に対する自覚もない、脇の甘さにも腹が立つ。
当然うちと同時にラニャンの大使も呼び出されていて、オーガスタと子爵令息の処理は任せると言われていたそうだ。
クライン殿下は自分の行いが元恋人と悪友にどんな影響をもたらすのか、それさえも考えていなかった。
ラニャンも愚かな第4王子に頭を抱えているだろう。
そうだ、ここまで女王陛下に筒抜けなら。
「私はこのまま帰っていいよな?」
「女王陛下からは、王配殿下のお気が済むのなら、是非お会いしていただきたい、と……」
どうしてだ、微かな希望は打ち砕かれる。
王宮のクライン殿下の私室で、泣き言を聞くのを見て見ぬ振りをしてやると、いうのだ。
何より腹が立つのは、これが入国前なら、という事だ。
だったら、アシュフォードとして入国したのに。
髪を染めて眼鏡をかけて、偽名で入国した。
もうこの旅券、この身分は2度と使えなくなった。
これからはブライズ商会の出入国には、リヨンから必要以上に厳しい目が付く。
国王陛下と商会会頭の怒り狂った顔が目に浮かぶ。
ふたりが影を送ってクライン殿下に何かしても、仕方がないくらいだ。
俺だって甘ちゃんだが、王配殿下はそれよりもっと酷くて、巻き込まれた自分を呪いたくなる。
バロウズでオーガスタと会う算段をしろ、それが成功したら、次はふたりの愛の巣を用意しろ、か?
クライン殿下の要求は、エスカレートするのが目に見えた。
王配の分際で、他国にそれを要求出来ると思ったか。
それとも、俺を友人だと思って個人的に力を貸してくれると?
本当に友人だと思うなら、こんな事に巻き込もうとするな。
俺こそ、友人になれたと……
やっぱり俺は甘ちゃんだった。
女王陛下からの頼みだから、一度は会う。
だが、二度はない。
髪を染めた俺を見て、無邪気な顔をして、クライン殿下は笑った。
肉眼では見えないリヨンの複数の目と耳に囲まれて。
予想通りの話を、殿下は話した。
どれ程、自分がオーガスタを愛していたか、彼女の結婚を知らせる手紙で改めて気付かされた、と言う。
彼女だって、自分を忘れていない筈だと続ける。
俺の協力さえ得られたら、バロウズで年明けに会おうと、例の子爵令息に連絡して……と、実現しない夢を語る。
あの悪友は無事に新年を迎えられるのだろうか。
どちらにしろ、もう二度と殿下とは連絡は取れなくなる。
この件にオーガスタがどこまで関わっていたのかはわからない。
今まで見逃されていたのに、愛するひとの運命を変えたのは殿下だ。
それは俺が伝えることではないので黙っている。
黙って、殿下の肩を抱いて、ラニャンの言葉で慰める。
頭の中は、バロウズまで帰る道程が天候に恵まれて支障なければいいのにと、それだけだった。
「オーガスタは本当に素晴らしい女性なんだ。
早くアシュにも会わせたいよ」
「私も楽しみにしています」
カイン・ブライズとして出国をした。
手続きは滞りなく行われた。
さようなら、カイン。
もうこの人物になる事はない。
アグネスにクライン殿下を紹介しなくて良かった。
リヨン王家は一度は見逃すと決めたが、次はない。
彼が居なくなれば、アグネスが悲しむ。
ラニャンは次の候補を考えているかも知れない。
俺には関係ない。
そう思うことにする。
◇◇◇
馬を飛ばしてガーランド、コーカス、と駆け抜ける。
走らせながら、リヨン出国前夜を思い出す。
「王弟殿下のお陰で、クライン殿下もしばらくは目標が出来て、落ち着いて公務に励んでくれると思いますわ」
そう言って女王陛下は笑っていらした。
王配殿下の私室を辞した後、俺に声をかけたのは。
フォンティーヌ女王陛下の専用侍女だった。
彼女に案内されて、陛下の私的謁見室に初めて行った。
帰国の途に付く前に、ご挨拶に伺ったのは秋になる前だった。
それなのに、年末にはこんな形で拝謁する事になろうとは。
「バロウズでも、同様だと思うのですが、年末年始は宮廷行事も何かと立て込んでいますの。
王配として隣に立っていただかなくては困る事も多くて。
年始行事が終わって、春になる前には。
クライン殿下に出会いを用意するつもりです」
「……出会い、ですか」
「リヨンの王家に忠実な、遠縁の家門のご令嬢です。
緑の瞳の美しいご令嬢です」
オーガスタは緑の瞳が美しいのだとクライン殿下は愛おしそうに話していた。
「彼女はきっと、殿下のお心をお慰めするでしょう」
貴女はそれでいいのですか?
貴女の瞳もとても綺麗な緑色なのに。
クライン殿下はそれに気付いていないのか。
俺は女王陛下に尋ねられなかった。
俺達一行がバロウズ城に到着したのは、新年夜会の3日前。
冬の日の入りは早くて、夜道を馬で駆けるのは危険なので、夜早めに休み、朝早く出発する。
日中は昼食を取る以外は馬上だ。
それを5日かけてリヨンから王都に戻ってきたのだ。
コーカスでは新しい馬に乗り換えた。
到着してから国王陛下に報告をする。
案の定、陛下の顔が無表情になる。
激怒すればする程、顔に出ないのが陛下だ。
それから俺は15時間以上眠り続け、空腹で目を覚まし、食事をして、また眠った。
腰も尻も足も痛くて、重い鉛の様だった。
アグネスがデビュタントに出席する為、既に帰国しているのは知っているのに、会いに行く元気も時間もなくて、新年の挨拶の代わりに花を送った。
身体も疲れていたが、精神的に疲れていた。
眠っている間に変な夢も見た。
デビュタント当日は朝から気合いを入れる。
本当はまだ眠りたかった。
身体の疲れは取れていたが気持ちはなかなか上向きにはならなくて、身体を丸くして眠り続けたかった。
侯爵家へアグネスを迎えに行く。
彼女の顔を見ると、気分が回復した。
会うのは4ヶ月ぶり、また大人になった。
サンプルで着たドレスとデザイン画しか見ていなかった。
デビュタントのドレスは1日だけしか着ないのが勿体ないくらい美しくて、彼女によく似合っている。
俺が注文をつけた紫は、胸元のレース部分に縫い付けられた小粒の真珠が、微かに薄い紫色に染められていた。
金はドレスの裾に金糸で細かな刺繍が入っていた。
「凄く、凄く綺麗だ……」
自分の語彙が貧しいことに今更ながら気付く。
ふわりと微笑む彼女にスミレのブーケを渡す。
「以前、殿下はスミレを刺繍したシューズをプレゼントしてくださいました。
あれから大好きな花になりました。
ここから少し抜いてもいいですか?」
何をするのかわからなかったが頷くと、ブーケから何輪かのスミレを抜いて、彼女は真珠の髪飾りの横に挿した。
「鏡で確認しなくても、大丈夫?」
俺が尋ねると何も答えず、アグネスは尚も微笑むだけだった。
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