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第66話 アシュフォードside
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長い長い、今ここに至るまでの6年間を話した。
己の未熟さが招いた侯爵家の悲劇。
悪縁とも呼べるのに、アグネスを諦められない自分に嗤う。
「全て、自分のせいだと殿下はお仰せになりましたが、その何分の1かは、私にも責任はあります」
「……先生のどこに?」
「いい加減にクラリス嬢に返事をした事です。
酷な様ですが、彼女が煩わしかった」
「……」
「遊びでバロウズまで行ったのではない。
私には目的があって、その為の仕事でしかなかった。
恋愛などに現を抜かす余裕もなく、ましてや女生徒と、など考えもしなかった。
だが、はっきり断って逆恨みをされるのを恐れた。
ごねられて話を作られて、変な噂になると国へ戻らなくてはいけない、そう考えたら迷惑としか思えなくて」
「そんなタイプでは……」
「どっちにしろ、恵まれた環境で育ってきたご令嬢がここまで追いかけてくるなどあり得ないから、言ったのです」
「追いかけてきたら考える、ですね……
でも、それが原因だとは」
「殿下の仰っていることも同じです。
クラリス嬢への贈り物がきっかけなのかも知れませんが、それから起こった事の全てが殿下のせいだとは、私には思えませんね。
遣り方を任せると言った王女は馬車で煽れとは命じていない。
グレイシーは外れの坂道まで追いかけろとは言わなかった。
御者は城下まで走らせたら充分だろうと、なだらかな下り坂に追い込んだが、雨の影響で、滑り落ちるとは思っていなかった」
「……」
「何人かで少しずつ犯した犯罪で、直接それに関わっていないひとりが全ての責任を感じているというのはおかしな話だ。
それに、自分が全て悪いとアグネス嬢に打ち明けて、何を求めているのです?」
「彼女に話して許して貰わないと、先に……」
「許すと言って貰って、ご自分が楽になりたいだけでしょう?」
「……」
頭を殴られた気がした。
黙っているのが辛くて、全て話したいと思ったのは、自分が楽になりたいからだと指摘された。
「本当にご自分に罪があると思うなら、殿下は楽になってはいけない。
死人が出ているのだから、これを糧に成長する等、口が裂けても言ってはいけない。
胸の中にその罪を抱えて、この先も生きていきなさい」
冷たい言葉なのに、先生の声は優しかった。
「殿下は私には罪はないと仰るが、私にも罪はあります。
クラリス・スローンという女性の真摯な想いを、面倒だと簡単に片付けた。
本当に申し訳ないことをしたと思います。
……この痛みを、私は死ぬまで持ち続けます」
◇◇◇
「それとは別にアグネス嬢の症状が気になります」
俺が落ち着いた頃を見計らって、ストロノーヴァ先生が2杯目のお茶を差し出してくれた。
「かつて抑制されているようだと話しましたよね?
久し振りにノイエに連れてこられた様子では、それ程感じなかったのですよ。
ですが、その話を殿下がなさろうとすると、発作的なものを起こしてしまう……
彼女もまた、その事について何かを抱えているのかも知れませんね」
「聞き出せたら、彼女は楽になれますか?」
「……殿下はアグネス嬢の分も引き受けられると?」
俺は頷いた。
もし、アグネスが何かを言いたいのに言えないのなら。
それがあの身体の不調を引き起こしているように思えて。
打ち明けてさえくれたなら、それがどんな事であろうと、俺が引き受ける。
それを聞いた先生はしばらく考え込んでいた。
「呼吸困難、震え、胸の痛み……後手足が痺れて?」
「特に呼吸が浅くて、短い間隔で吸うばかり、でした」
「……私の大学時代の友人に催眠術を専門にした人間がいまして」
「催眠術?」
いきなり何を言い出すのかと思った。
催眠術とは最近、内輪の集まりの出し物として流行りだした眉唾物の奇術のひとつと言われている代物だ。
「怪しいものではありませんよ?
私が見せて貰った症例では、術にかかって誘導されると、全てを吐き出していましたね」
症例、と来たか。
俺の知ってる催眠術とはまた違うやつかな。
伝承民俗学なんていう妖怪話を研究している先生の友人だ。
巷に溢れている催眠術とは違うのかも知れない。
「術者は女性です。
もちろん、殿下もご同席していただいて」
「先生の事は信頼していますから、ご友人の事も……
アグネスの心身が楽になるならお願いしたいのですが、彼女が嫌がる様子なら」
「えぇ、それはそう、催眠術だとはっきり伝えますよ。
ただ、これは私の研究に必要だとさせて貰って、殿下には一旦、反対していただきましょう」
……これは王太子得意の、一見反対しているように見せる仕込みと同じか。
反対されてアグネスは催眠術を受ける気になる?なるのか?
後日、指定された日にアグネスを連れてストロノーヴァ公爵邸へ向かった。
もちろん2度目の訪問だとは言っていないが、さりとて初めてだとも言わない。
馬車の中で珍しくアグネスから俺に話が振られた。
「ストロノーヴァ先生はお変わりになられました。
殿下も驚かれると思います」
「ちゃんとしたら凄く素敵で、君の姉上が一目惚れしたそうだよ」
「……」
何か不味いことを言ってしまったのか?
楽しそうだったアグネスが黙ってしまった。
「……姉は、クラリスは。
ストロノーヴァ先生を追いかけて、トルラキアへ行こうとしていたのは本当ですか?
そのお手伝いを殿下がしようとしていたのも?」
「そうだよ、姉上から聞いたの?」
「……どうして?」
「どうして、って、そう約束したから」
「それは、もしかして、や……」
彼女が言いかけた途中で、馬車が止まり。
並走していた護衛騎士から公爵邸到着を告げられた。
「帰りの馬車で、また話そうか」
少しずつ、あの頃の話が出来るかもと思い、俺はアグネスに言った。
先に降りて、彼女に手を差し出す。
その時の彼女がどんな表情をしていたのか、ちゃんと思い出せない。
その後の催眠術で語った彼女の言葉が衝撃的過ぎたから。
己の未熟さが招いた侯爵家の悲劇。
悪縁とも呼べるのに、アグネスを諦められない自分に嗤う。
「全て、自分のせいだと殿下はお仰せになりましたが、その何分の1かは、私にも責任はあります」
「……先生のどこに?」
「いい加減にクラリス嬢に返事をした事です。
酷な様ですが、彼女が煩わしかった」
「……」
「遊びでバロウズまで行ったのではない。
私には目的があって、その為の仕事でしかなかった。
恋愛などに現を抜かす余裕もなく、ましてや女生徒と、など考えもしなかった。
だが、はっきり断って逆恨みをされるのを恐れた。
ごねられて話を作られて、変な噂になると国へ戻らなくてはいけない、そう考えたら迷惑としか思えなくて」
「そんなタイプでは……」
「どっちにしろ、恵まれた環境で育ってきたご令嬢がここまで追いかけてくるなどあり得ないから、言ったのです」
「追いかけてきたら考える、ですね……
でも、それが原因だとは」
「殿下の仰っていることも同じです。
クラリス嬢への贈り物がきっかけなのかも知れませんが、それから起こった事の全てが殿下のせいだとは、私には思えませんね。
遣り方を任せると言った王女は馬車で煽れとは命じていない。
グレイシーは外れの坂道まで追いかけろとは言わなかった。
御者は城下まで走らせたら充分だろうと、なだらかな下り坂に追い込んだが、雨の影響で、滑り落ちるとは思っていなかった」
「……」
「何人かで少しずつ犯した犯罪で、直接それに関わっていないひとりが全ての責任を感じているというのはおかしな話だ。
それに、自分が全て悪いとアグネス嬢に打ち明けて、何を求めているのです?」
「彼女に話して許して貰わないと、先に……」
「許すと言って貰って、ご自分が楽になりたいだけでしょう?」
「……」
頭を殴られた気がした。
黙っているのが辛くて、全て話したいと思ったのは、自分が楽になりたいからだと指摘された。
「本当にご自分に罪があると思うなら、殿下は楽になってはいけない。
死人が出ているのだから、これを糧に成長する等、口が裂けても言ってはいけない。
胸の中にその罪を抱えて、この先も生きていきなさい」
冷たい言葉なのに、先生の声は優しかった。
「殿下は私には罪はないと仰るが、私にも罪はあります。
クラリス・スローンという女性の真摯な想いを、面倒だと簡単に片付けた。
本当に申し訳ないことをしたと思います。
……この痛みを、私は死ぬまで持ち続けます」
◇◇◇
「それとは別にアグネス嬢の症状が気になります」
俺が落ち着いた頃を見計らって、ストロノーヴァ先生が2杯目のお茶を差し出してくれた。
「かつて抑制されているようだと話しましたよね?
久し振りにノイエに連れてこられた様子では、それ程感じなかったのですよ。
ですが、その話を殿下がなさろうとすると、発作的なものを起こしてしまう……
彼女もまた、その事について何かを抱えているのかも知れませんね」
「聞き出せたら、彼女は楽になれますか?」
「……殿下はアグネス嬢の分も引き受けられると?」
俺は頷いた。
もし、アグネスが何かを言いたいのに言えないのなら。
それがあの身体の不調を引き起こしているように思えて。
打ち明けてさえくれたなら、それがどんな事であろうと、俺が引き受ける。
それを聞いた先生はしばらく考え込んでいた。
「呼吸困難、震え、胸の痛み……後手足が痺れて?」
「特に呼吸が浅くて、短い間隔で吸うばかり、でした」
「……私の大学時代の友人に催眠術を専門にした人間がいまして」
「催眠術?」
いきなり何を言い出すのかと思った。
催眠術とは最近、内輪の集まりの出し物として流行りだした眉唾物の奇術のひとつと言われている代物だ。
「怪しいものではありませんよ?
私が見せて貰った症例では、術にかかって誘導されると、全てを吐き出していましたね」
症例、と来たか。
俺の知ってる催眠術とはまた違うやつかな。
伝承民俗学なんていう妖怪話を研究している先生の友人だ。
巷に溢れている催眠術とは違うのかも知れない。
「術者は女性です。
もちろん、殿下もご同席していただいて」
「先生の事は信頼していますから、ご友人の事も……
アグネスの心身が楽になるならお願いしたいのですが、彼女が嫌がる様子なら」
「えぇ、それはそう、催眠術だとはっきり伝えますよ。
ただ、これは私の研究に必要だとさせて貰って、殿下には一旦、反対していただきましょう」
……これは王太子得意の、一見反対しているように見せる仕込みと同じか。
反対されてアグネスは催眠術を受ける気になる?なるのか?
後日、指定された日にアグネスを連れてストロノーヴァ公爵邸へ向かった。
もちろん2度目の訪問だとは言っていないが、さりとて初めてだとも言わない。
馬車の中で珍しくアグネスから俺に話が振られた。
「ストロノーヴァ先生はお変わりになられました。
殿下も驚かれると思います」
「ちゃんとしたら凄く素敵で、君の姉上が一目惚れしたそうだよ」
「……」
何か不味いことを言ってしまったのか?
楽しそうだったアグネスが黙ってしまった。
「……姉は、クラリスは。
ストロノーヴァ先生を追いかけて、トルラキアへ行こうとしていたのは本当ですか?
そのお手伝いを殿下がしようとしていたのも?」
「そうだよ、姉上から聞いたの?」
「……どうして?」
「どうして、って、そう約束したから」
「それは、もしかして、や……」
彼女が言いかけた途中で、馬車が止まり。
並走していた護衛騎士から公爵邸到着を告げられた。
「帰りの馬車で、また話そうか」
少しずつ、あの頃の話が出来るかもと思い、俺はアグネスに言った。
先に降りて、彼女に手を差し出す。
その時の彼女がどんな表情をしていたのか、ちゃんと思い出せない。
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