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第25話
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「アグネス、貴女おばあ様と夏休みにトルラキアへ行くの?」
私が殿下にそれを話した翌々日の月曜日。
学園から帰宅した姉に早速尋ねられました。
……やっぱり、直ぐに伝わるのね。
「はい、昨日、お手紙を届けて。
いいわよ、とお返事をいただいています」
昨日の朝、家族には見つからないように気をつけて、実家へ帰るメイドのロレッタをつかまえて祖母の家まで手紙を届けて欲しい、とお願いをしました。
殿下から姉に伝わって、姉が母に話す前に祖母から了承を貰っておきたくて。
私には毎月渡されるお小遣いの他にも、祖母に貰ったお小遣いがまだ手元に残っていて。
その中から銀貨を3枚、ロレッタに渡しました。
『子供のアグネスお嬢様からお金なんて』と遠慮する彼女の手に、無理矢理押し付けました。
「貴族街に往復する馬車代ともう1枚は貴女へのお礼なの。
おウチに帰る前に寄って貰うのに、これぐらいしか渡せなくてごめんなさい」
母からは仕事を多く抱えている使用人に、それとは別に自分の用事をさせるのなら、きちんとお礼は言いなさい、と教えられていました。
アシュフォード殿下へのプレゼントには使えなかったけれど、こんなところで役に立ってくれて、お金って、なんて便利で、なんて凄い物なんだろうと実感しました。
そして夜に戻ってきたロレッタから、祖母の返信を受け取ったのでした。
「トルラキアなら、私も行きたいんだけど……」
いつもハキハキの話される姉なのに、少しだけ口ごもっていて。
「ねぇ、どうしてトルラキアなんて言い出したの?」
「ご存知ですか? あの国では姓が先に来るそうですね。
それに長子の男児にはイシュトバーンと名付ける事が多くて、一軒のおウチに3人のイシュトバーンが居たりするそうですの。
そんなの面白いですよね?」
「え、それ……」
先生はこの話を、クラリスにも話したのかな。
どうしてかわからなかったのですが、姉の様子が可笑しくて。
7つも歳上の姉が、私の前で少し動揺しているのを見るのは初めてで。
可笑しくて。
「イシュトバーン・ストロノーバが、ストロノーバ・イシュトバーン・ミハンになるなんて面白いですよね」
まるまる休みになる初等部と違って、高等部には途中で登校して、講演会や特別授業もあったりするので、私達と一緒に国外へ行く事は難しいから。
姉は殿下と、王家の別荘で楽しめばいい。
私はおばあ様と、お化けの国へ行くの。
「……ストロノーヴァ先生と会ったの?」
「もう来年でトルラキアへ戻られると聞きました。
伝承民俗学のお話を聞きたかったら、いつでもいらっしゃいと言っていただいたのです。
お昼休みに図書室に居るから、って」
姉は発音が難しい先生の名前を、ちゃんと口にしました。
「旅行へ行く前に、いっぱいトルラキアの事を教えて貰おうと思ってるんです」
もうこれで、この話はおしまい。
そう伝えたくて、私は部屋を出ました。
それで後に残されたクラリスがどんな顔をしていたのか、確認は出来ませんでしたが。
何だか姉に対して、ざまあ見ろ、と言ったような。
胸の辺りが、スーッとしていく事に気付いたのでした。
◇◇◇
初等部3年生が終了して、9月に新学年が始まる前の長い夏休みに入りました。
案の定、母からは反対され、父からは黙認され、兄からは『吸血鬼に襲われたら、これを掛けろ』と、正体のわからない液体の入った小瓶を渡され脅されて。
そして何故だか元気になった姉からは
『出来るだけトルラキアの情報を集めて、教えてね』なんて言われて。
私は祖母とトルラキアを旅していました。
母国バロウズから長い長い馬車の旅でした。
祖母と私とお世話役と、護衛で1台。
もう1台の馬車には2人の下男とメイドが乗って、バロウズからの総勢7名、馬車2台の旅はトルラキア国内入ってガイドの若い男性を加えて、早くも2週目に突入していました。
トルラキアの西側には高くそびえるクロフツ山脈が連なり、有名な黒い森が何処までも続きます。
領土を侵略しようとする外敵との戦いがずっと続いていたと、ストロノーヴァ先生から教えていただきました。
クロフツ山脈は秋が深まると積雪するので、他国が攻め込むのは、雪解けが始まる春の始めから秋にかけてで、昔なら今の時期は戦闘中なのでしょう。
「アグネスお嬢様の御髪はとても綺麗な金色ですね。
この国に来られるのが3年後だったなら、ヴァンパイアに拐われて花嫁にされていたかと知れません」
微妙に間違ったバロウズ語で、冗談を言ったガイドのシュトウブさんに注意したのは、祖母のお世話役のベイシス夫人です。
「お嬢様はまだ9歳ですよ、つまらない軽口はお止めなさい」
「そ、そうですか!
ごめんなさい、もう言いません」
慌てて謝るガイドさんに祖母は笑いました。
「いいわよ、謝らなくて。
確かにこの国では、アグネスの金髪は目立つわね?」
祖母が仰った様に、トルラキアに来てからは金髪の方は少ないな、と私も思っていました。
こちらでよく見かけるのは、黒髪や濃茶の髪色。
目の色は先生のような赤は少ないのか、今のところは全然居なくて、大抵の人は黒か茶色の瞳でした。
肌の色は青みのある白さで、身長は高め。
私達はこの国では、周囲より健康的に見えました。
祖母から許されて、シュトウブさんはほっとしたように気弱な笑顔になりました。
「そうですか、そうですか。
ヴァンパイアの花嫁には、後5年必要です」
「だから、貴方は!」
ベイシス夫人に叱られて、頭をかかれたシュトウブさんに皆が笑って。
私も一緒に笑いながら。
『ヴァンパイアでさえ、今の私なら選んでくれないのだ』と思っていました。
トルラキアの王都グラニドゥに入ると、あちらこちらで厳しいお顔の男性の肖像画を見かけるようになりました。
こちらに来てから手にしたトルラキアの紙幣にも印刷されているその男性が、ヴァンパイア王のグラニドゥ・イシュトヴァーン・ヴラゴ英雄王なのだと、もう私は知っていました。
あれから図書室にストロノーヴァ先生を訪ねて、夏休みに祖母とトルラキアへ旅行に行くと告げると、先生はトルラキアについて書かれた本をどこかから持って来られて、この肖像画を見せてくれたのです。
「王都へ行くと、この王の肖像画があらゆる所に飾られているからね。
恐ろしい顔だろ? 今から慣れておいてね」
「兄からはヴァンパイアに襲われたら使えと、変な水を貰いました」
「あー、聖水かな?
プレストン・スローンだったよね?
凄く面白いレポートを書くからと、中等部の先生に見せて貰ったことがあるんだ。
彼、わざわざ教会で祝福を受けに行ってくれてたの?」
「そんな事してないと思います。
調理場で貰ってきた、料理長が祝福したお水だと思います」
「……本当に君もだけど、君の姉上も兄上もおかしな子供だよねぇ」
先生からしたら、あの姉も私と同じ子供なんだ。
それを凄く嬉しく思う私でした。
昼食をここで是非、とシュトウブさんに勧められて、私達一同はレストランを併設した小さなホテルを訪れました。
「ここはバロウズ出身の女将なので、料理もお馴染みの味でしょし、男主人も言葉が通じます」
ホテルに入ると、フロントの所にもやはりヴァンパイア王の肖像画が掛けられていて。
この肖像画には美しく彩色がされていました。
「王様の目が赤い……」
私の小さな呟きを聞いた女将さんが
『彩色された肖像画を見られたのは初めてですか?』と、聞いてきました。
多分旅の途中で何枚か見たのでしょうけれど、真正面からじっくり見たのは初めてで。
「王家の赤ですよ、王の血筋のみが赤い瞳なのです」
「……」
ここで私は、先生の『ストロノーヴァ』がヴァンパイア王の弟公爵の勇猛公の姓である事を知りました。
私が殿下にそれを話した翌々日の月曜日。
学園から帰宅した姉に早速尋ねられました。
……やっぱり、直ぐに伝わるのね。
「はい、昨日、お手紙を届けて。
いいわよ、とお返事をいただいています」
昨日の朝、家族には見つからないように気をつけて、実家へ帰るメイドのロレッタをつかまえて祖母の家まで手紙を届けて欲しい、とお願いをしました。
殿下から姉に伝わって、姉が母に話す前に祖母から了承を貰っておきたくて。
私には毎月渡されるお小遣いの他にも、祖母に貰ったお小遣いがまだ手元に残っていて。
その中から銀貨を3枚、ロレッタに渡しました。
『子供のアグネスお嬢様からお金なんて』と遠慮する彼女の手に、無理矢理押し付けました。
「貴族街に往復する馬車代ともう1枚は貴女へのお礼なの。
おウチに帰る前に寄って貰うのに、これぐらいしか渡せなくてごめんなさい」
母からは仕事を多く抱えている使用人に、それとは別に自分の用事をさせるのなら、きちんとお礼は言いなさい、と教えられていました。
アシュフォード殿下へのプレゼントには使えなかったけれど、こんなところで役に立ってくれて、お金って、なんて便利で、なんて凄い物なんだろうと実感しました。
そして夜に戻ってきたロレッタから、祖母の返信を受け取ったのでした。
「トルラキアなら、私も行きたいんだけど……」
いつもハキハキの話される姉なのに、少しだけ口ごもっていて。
「ねぇ、どうしてトルラキアなんて言い出したの?」
「ご存知ですか? あの国では姓が先に来るそうですね。
それに長子の男児にはイシュトバーンと名付ける事が多くて、一軒のおウチに3人のイシュトバーンが居たりするそうですの。
そんなの面白いですよね?」
「え、それ……」
先生はこの話を、クラリスにも話したのかな。
どうしてかわからなかったのですが、姉の様子が可笑しくて。
7つも歳上の姉が、私の前で少し動揺しているのを見るのは初めてで。
可笑しくて。
「イシュトバーン・ストロノーバが、ストロノーバ・イシュトバーン・ミハンになるなんて面白いですよね」
まるまる休みになる初等部と違って、高等部には途中で登校して、講演会や特別授業もあったりするので、私達と一緒に国外へ行く事は難しいから。
姉は殿下と、王家の別荘で楽しめばいい。
私はおばあ様と、お化けの国へ行くの。
「……ストロノーヴァ先生と会ったの?」
「もう来年でトルラキアへ戻られると聞きました。
伝承民俗学のお話を聞きたかったら、いつでもいらっしゃいと言っていただいたのです。
お昼休みに図書室に居るから、って」
姉は発音が難しい先生の名前を、ちゃんと口にしました。
「旅行へ行く前に、いっぱいトルラキアの事を教えて貰おうと思ってるんです」
もうこれで、この話はおしまい。
そう伝えたくて、私は部屋を出ました。
それで後に残されたクラリスがどんな顔をしていたのか、確認は出来ませんでしたが。
何だか姉に対して、ざまあ見ろ、と言ったような。
胸の辺りが、スーッとしていく事に気付いたのでした。
◇◇◇
初等部3年生が終了して、9月に新学年が始まる前の長い夏休みに入りました。
案の定、母からは反対され、父からは黙認され、兄からは『吸血鬼に襲われたら、これを掛けろ』と、正体のわからない液体の入った小瓶を渡され脅されて。
そして何故だか元気になった姉からは
『出来るだけトルラキアの情報を集めて、教えてね』なんて言われて。
私は祖母とトルラキアを旅していました。
母国バロウズから長い長い馬車の旅でした。
祖母と私とお世話役と、護衛で1台。
もう1台の馬車には2人の下男とメイドが乗って、バロウズからの総勢7名、馬車2台の旅はトルラキア国内入ってガイドの若い男性を加えて、早くも2週目に突入していました。
トルラキアの西側には高くそびえるクロフツ山脈が連なり、有名な黒い森が何処までも続きます。
領土を侵略しようとする外敵との戦いがずっと続いていたと、ストロノーヴァ先生から教えていただきました。
クロフツ山脈は秋が深まると積雪するので、他国が攻め込むのは、雪解けが始まる春の始めから秋にかけてで、昔なら今の時期は戦闘中なのでしょう。
「アグネスお嬢様の御髪はとても綺麗な金色ですね。
この国に来られるのが3年後だったなら、ヴァンパイアに拐われて花嫁にされていたかと知れません」
微妙に間違ったバロウズ語で、冗談を言ったガイドのシュトウブさんに注意したのは、祖母のお世話役のベイシス夫人です。
「お嬢様はまだ9歳ですよ、つまらない軽口はお止めなさい」
「そ、そうですか!
ごめんなさい、もう言いません」
慌てて謝るガイドさんに祖母は笑いました。
「いいわよ、謝らなくて。
確かにこの国では、アグネスの金髪は目立つわね?」
祖母が仰った様に、トルラキアに来てからは金髪の方は少ないな、と私も思っていました。
こちらでよく見かけるのは、黒髪や濃茶の髪色。
目の色は先生のような赤は少ないのか、今のところは全然居なくて、大抵の人は黒か茶色の瞳でした。
肌の色は青みのある白さで、身長は高め。
私達はこの国では、周囲より健康的に見えました。
祖母から許されて、シュトウブさんはほっとしたように気弱な笑顔になりました。
「そうですか、そうですか。
ヴァンパイアの花嫁には、後5年必要です」
「だから、貴方は!」
ベイシス夫人に叱られて、頭をかかれたシュトウブさんに皆が笑って。
私も一緒に笑いながら。
『ヴァンパイアでさえ、今の私なら選んでくれないのだ』と思っていました。
トルラキアの王都グラニドゥに入ると、あちらこちらで厳しいお顔の男性の肖像画を見かけるようになりました。
こちらに来てから手にしたトルラキアの紙幣にも印刷されているその男性が、ヴァンパイア王のグラニドゥ・イシュトヴァーン・ヴラゴ英雄王なのだと、もう私は知っていました。
あれから図書室にストロノーヴァ先生を訪ねて、夏休みに祖母とトルラキアへ旅行に行くと告げると、先生はトルラキアについて書かれた本をどこかから持って来られて、この肖像画を見せてくれたのです。
「王都へ行くと、この王の肖像画があらゆる所に飾られているからね。
恐ろしい顔だろ? 今から慣れておいてね」
「兄からはヴァンパイアに襲われたら使えと、変な水を貰いました」
「あー、聖水かな?
プレストン・スローンだったよね?
凄く面白いレポートを書くからと、中等部の先生に見せて貰ったことがあるんだ。
彼、わざわざ教会で祝福を受けに行ってくれてたの?」
「そんな事してないと思います。
調理場で貰ってきた、料理長が祝福したお水だと思います」
「……本当に君もだけど、君の姉上も兄上もおかしな子供だよねぇ」
先生からしたら、あの姉も私と同じ子供なんだ。
それを凄く嬉しく思う私でした。
昼食をここで是非、とシュトウブさんに勧められて、私達一同はレストランを併設した小さなホテルを訪れました。
「ここはバロウズ出身の女将なので、料理もお馴染みの味でしょし、男主人も言葉が通じます」
ホテルに入ると、フロントの所にもやはりヴァンパイア王の肖像画が掛けられていて。
この肖像画には美しく彩色がされていました。
「王様の目が赤い……」
私の小さな呟きを聞いた女将さんが
『彩色された肖像画を見られたのは初めてですか?』と、聞いてきました。
多分旅の途中で何枚か見たのでしょうけれど、真正面からじっくり見たのは初めてで。
「王家の赤ですよ、王の血筋のみが赤い瞳なのです」
「……」
ここで私は、先生の『ストロノーヴァ』がヴァンパイア王の弟公爵の勇猛公の姓である事を知りました。
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