15 / 102
第15話 アシュフォードside
しおりを挟む
隣国の女クジラはフォンティーヌ第2王女殿下と言う。
貴く大変美しい名前だ。
俺より3歳上の19歳。
贅沢と美味しいもの、美しいものに目がない。
飽食が過ぎて、縦よりも横の幅にまず目がいってしまう。
少女の頃から運動が嫌いで極力動かないので、年齢と共に巨大化していき、俺が会った2年前には『ぞうさん』だったのに、去年クジラに格上げになった。
地上では彼女に例えられるものはなくなり、海へ住みかを移したのだ。
……この命名は、一体誰がしているんだろうな?
学園の昼休みの食堂で。
俺の語る王女の話にクラリスが下を向いて、お上品に笑っていた。
学園ではクラリス・スローンは美しい優等生で通っていて、第3王子殿下の女友達に相応しい令嬢だ。
本人はすました顔をして
『私も乙女なのです』などと、言っていたが。
俺のとても仲の良い女友達を装っているこの人物の内面は、ほぼ男だと知っているのは俺とレイだけだ。
俺は明後日の夜会で、このドレスを着た男とファーストダンスを踊ることになっていた。
当日の警備体勢をスローン侯爵はやはり気にしていて、グレゴリーとの打ち合わせを求めた。
マーシャル伯爵本人が王城の大臣執務室やスローン侯爵家に出入りするのは目立つので、代わりに息子のレイが侯爵家に通っていた。
クラリスが言うには、侯爵はグレゴリーよりも(俺よりも)
レイを認めているらしい。
「打てば響く、と誉めておりました」
クラリスの言葉がレイのプライドをくすぐって、満更でもないヤツは、もっと侯爵に認められたくて張り切りまくっている。
会うたび、話すたびにクラリスへの想いは募っているようで、中身がほぼ男でも気にしていない。
キツい彼女の手応えを堪能している。
他人のプライベートは勝手に話せないので、クラリスに好きな男がいるとレイには言えていない。
周りの耳を意識して、今日もグダグダと食事をして、3人で中庭に移動することにした。
そこで夜会の段取りを確認しようと言うのだ。
食堂を出る俺達と入れ違いに、一人の男がやってきて、トレイを持って列に並んだ。
身長は高いが少し猫背で、モサッとした髪型。
ぱっとしない男で、ここの生徒達でこの男のフルネームを正しく憶えている人間は半分にも満たないと思う。
人気のない伝承民俗学を教えている契約教師。
来年、契約が切れて母国に戻る男。
金にならない妖精や吸血鬼の研究を続ける為に。
その資金を稼ぐ為に、仕方なく教鞭を取った男。
それがクラリス・スローンが恋した男、イシュトヴァーン・ストロノーヴァだ。
一瞬すれ違っただけなのに、嬉しそうに輝いたクラリスの顔に、確かに乙女の部分を見つけた。
◇◇◇
「王女から勧められたモノを口にしてはいけないんだよな?」
「王女の他にも、誰が何をするか全部は把握出来ませんからね。
こちらの手の者に、夜会の前に会っていただいて、その者からのみ受け取られてください」
スローン侯爵が用意した人間を夜会の給仕やメイドに紛れ込ませる手筈を、グレゴリーが整えていたが結構な人数だし。
情けない話だが事前に顔合わせをしても、王城のお仕着せを着た彼等をあの場で見分ける自信がない。
「んー、とにかく俺は君とレイから渡されたものしか口にしない。
それでいいよな?」
「……」
頼むよ、クラリス。
ダメな子を見る目で、俺を見ないで欲しい。
俺は今日は登校しているが、クジラは昼過ぎに我が国へ到着予定だった。
そろそろ、王城に御一行様は着いている頃か。
往路は陸、復路は船を使うと聞いている。
明後日の夜会での参加人数は、事前にこちらに知らせてきていたが、最終的な確定人数は王城に到着後に提出されることになっていた。
「ここから大きな変更はないと思うんだ。
王女のお供として、夜会に出席予定は大体10人前後、こんなに沢山引き連れて参加か。
えー、侍女3、護衛騎士4、専属給餌士3……おい、この専属給餌、って何だ?」
母のアライアから預かった事前に提出されたクジラ側の参加者内訳を読み、レイが声を上げた。
「給餌は普通、動物にエサを与える行為で……」
クラリスはそれ以上、口にしなかったが。
彼女と俺とレイが思い浮かべた事は、大体同じだったと思う。
「メインと飲み物とスイーツ。
各自1名だな」
「専属給餌士とはねぇ……食事さえ自分では動かない、ってことか?
かの国の事務官がそれの肩書きをどうするか、苦慮したのが忍ばれるな」
俺に続いて、呆れたようにレイが言う。
コイツは今回初めてフォンティーヌ王女の実物を目にするのだ。
侍女3人は両腕を持つ2人に、後ろに付く1人。
その時のコイツの顔は見物だな。
俺も届けを記入した事務方の、その的確な命名センスに脱帽だ。
意外とここから例の王女の呼び名が広まっているのかも知れない。
「この護衛以外に国から何人か潜ませている可能性は?」
「正式な使節団、って言える位の人数でいらっしゃってるけど、それ専門の仕事をする人間を国があの王女に貸し出すとは思えないんだよな」
母国でも王女はもて余されている。
父の国王は病床に伏し、実質国政を動かしているのは王太子だ。
クジラはその王太子から疎んじられている、という噂だ。
こんな風に俺が夜会の警備や諸々について関わるのを、最初アライアは止めた。
『その様な事で殿下のお手を煩わせるわけには参りません』、だったか。
グレゴリーも会場警備の配置を知ろうとする俺を押し止めようとした。
『何もご心配なさらず、万全を期しております』、そう言って。
『護られる俺が、護る人間が何処にいるのかわからなくて邪魔をしない為だ』と言うと、ふたりは変な顔をした。
……そう言う事だ。
俺から言わない限り。
黙って護られていればいい、か、?
これからはそうはいかないぞ、と改めて思う。
貴く大変美しい名前だ。
俺より3歳上の19歳。
贅沢と美味しいもの、美しいものに目がない。
飽食が過ぎて、縦よりも横の幅にまず目がいってしまう。
少女の頃から運動が嫌いで極力動かないので、年齢と共に巨大化していき、俺が会った2年前には『ぞうさん』だったのに、去年クジラに格上げになった。
地上では彼女に例えられるものはなくなり、海へ住みかを移したのだ。
……この命名は、一体誰がしているんだろうな?
学園の昼休みの食堂で。
俺の語る王女の話にクラリスが下を向いて、お上品に笑っていた。
学園ではクラリス・スローンは美しい優等生で通っていて、第3王子殿下の女友達に相応しい令嬢だ。
本人はすました顔をして
『私も乙女なのです』などと、言っていたが。
俺のとても仲の良い女友達を装っているこの人物の内面は、ほぼ男だと知っているのは俺とレイだけだ。
俺は明後日の夜会で、このドレスを着た男とファーストダンスを踊ることになっていた。
当日の警備体勢をスローン侯爵はやはり気にしていて、グレゴリーとの打ち合わせを求めた。
マーシャル伯爵本人が王城の大臣執務室やスローン侯爵家に出入りするのは目立つので、代わりに息子のレイが侯爵家に通っていた。
クラリスが言うには、侯爵はグレゴリーよりも(俺よりも)
レイを認めているらしい。
「打てば響く、と誉めておりました」
クラリスの言葉がレイのプライドをくすぐって、満更でもないヤツは、もっと侯爵に認められたくて張り切りまくっている。
会うたび、話すたびにクラリスへの想いは募っているようで、中身がほぼ男でも気にしていない。
キツい彼女の手応えを堪能している。
他人のプライベートは勝手に話せないので、クラリスに好きな男がいるとレイには言えていない。
周りの耳を意識して、今日もグダグダと食事をして、3人で中庭に移動することにした。
そこで夜会の段取りを確認しようと言うのだ。
食堂を出る俺達と入れ違いに、一人の男がやってきて、トレイを持って列に並んだ。
身長は高いが少し猫背で、モサッとした髪型。
ぱっとしない男で、ここの生徒達でこの男のフルネームを正しく憶えている人間は半分にも満たないと思う。
人気のない伝承民俗学を教えている契約教師。
来年、契約が切れて母国に戻る男。
金にならない妖精や吸血鬼の研究を続ける為に。
その資金を稼ぐ為に、仕方なく教鞭を取った男。
それがクラリス・スローンが恋した男、イシュトヴァーン・ストロノーヴァだ。
一瞬すれ違っただけなのに、嬉しそうに輝いたクラリスの顔に、確かに乙女の部分を見つけた。
◇◇◇
「王女から勧められたモノを口にしてはいけないんだよな?」
「王女の他にも、誰が何をするか全部は把握出来ませんからね。
こちらの手の者に、夜会の前に会っていただいて、その者からのみ受け取られてください」
スローン侯爵が用意した人間を夜会の給仕やメイドに紛れ込ませる手筈を、グレゴリーが整えていたが結構な人数だし。
情けない話だが事前に顔合わせをしても、王城のお仕着せを着た彼等をあの場で見分ける自信がない。
「んー、とにかく俺は君とレイから渡されたものしか口にしない。
それでいいよな?」
「……」
頼むよ、クラリス。
ダメな子を見る目で、俺を見ないで欲しい。
俺は今日は登校しているが、クジラは昼過ぎに我が国へ到着予定だった。
そろそろ、王城に御一行様は着いている頃か。
往路は陸、復路は船を使うと聞いている。
明後日の夜会での参加人数は、事前にこちらに知らせてきていたが、最終的な確定人数は王城に到着後に提出されることになっていた。
「ここから大きな変更はないと思うんだ。
王女のお供として、夜会に出席予定は大体10人前後、こんなに沢山引き連れて参加か。
えー、侍女3、護衛騎士4、専属給餌士3……おい、この専属給餌、って何だ?」
母のアライアから預かった事前に提出されたクジラ側の参加者内訳を読み、レイが声を上げた。
「給餌は普通、動物にエサを与える行為で……」
クラリスはそれ以上、口にしなかったが。
彼女と俺とレイが思い浮かべた事は、大体同じだったと思う。
「メインと飲み物とスイーツ。
各自1名だな」
「専属給餌士とはねぇ……食事さえ自分では動かない、ってことか?
かの国の事務官がそれの肩書きをどうするか、苦慮したのが忍ばれるな」
俺に続いて、呆れたようにレイが言う。
コイツは今回初めてフォンティーヌ王女の実物を目にするのだ。
侍女3人は両腕を持つ2人に、後ろに付く1人。
その時のコイツの顔は見物だな。
俺も届けを記入した事務方の、その的確な命名センスに脱帽だ。
意外とここから例の王女の呼び名が広まっているのかも知れない。
「この護衛以外に国から何人か潜ませている可能性は?」
「正式な使節団、って言える位の人数でいらっしゃってるけど、それ専門の仕事をする人間を国があの王女に貸し出すとは思えないんだよな」
母国でも王女はもて余されている。
父の国王は病床に伏し、実質国政を動かしているのは王太子だ。
クジラはその王太子から疎んじられている、という噂だ。
こんな風に俺が夜会の警備や諸々について関わるのを、最初アライアは止めた。
『その様な事で殿下のお手を煩わせるわけには参りません』、だったか。
グレゴリーも会場警備の配置を知ろうとする俺を押し止めようとした。
『何もご心配なさらず、万全を期しております』、そう言って。
『護られる俺が、護る人間が何処にいるのかわからなくて邪魔をしない為だ』と言うと、ふたりは変な顔をした。
……そう言う事だ。
俺から言わない限り。
黙って護られていればいい、か、?
これからはそうはいかないぞ、と改めて思う。
89
お気に入りに追加
2,078
あなたにおすすめの小説
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

「奇遇ですね。私の婚約者と同じ名前だ」
ねむたん
恋愛
侯爵家の令嬢リリエット・クラウゼヴィッツは、伯爵家の嫡男クラウディオ・ヴェステンベルクと婚約する。しかし、クラウディオは婚約に反発し、彼女に冷淡な態度を取り続ける。
学園に入学しても、彼は周囲とはそつなく交流しながら、リリエットにだけは冷たいままだった。そんな折、クラウディオの妹セシルの誘いで茶会に参加し、そこで新たな交流を楽しむ。そして、ある子爵子息が立ち上げた商会の服をまとい、いつもとは違う姿で社交界に出席することになる。
その夜会でクラウディオは彼女を別人と勘違いし、初めて優しく接する。
最愛から2番目の恋
Mimi
恋愛
カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。
彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。
以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。
そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。
王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……
彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。
その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……
※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります
ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません
ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります
想定よりも字数が超えそうなので、短編から長編に変更致します
申し訳ございません

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。
望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】
男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。
少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。
けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。
少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。
それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。
その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。
そこには残酷な現実が待っていた――
*他サイトでも投稿中

本の虫令嬢は幼馴染に夢中な婚約者に愛想を尽かす
初瀬 叶
恋愛
『本の虫令嬢』
こんな通り名がつく様になったのは、いつの頃からだろうか?……もう随分前の事で忘れた。
私、マーガレット・ロビーには婚約者が居る。幼い頃に決められた婚約者、彼の名前はフェリックス・ハウエル侯爵令息。彼は私より二つ歳上の十九歳。いや、もうすぐ二十歳か。まだ新人だが、近衛騎士として王宮で働いている。
私は彼との初めての顔合せの時を思い出していた。あれはもう十年前だ。
『お前がマーガレットか。僕の名はフェリックスだ。僕は侯爵の息子、お前は伯爵の娘だから『フェリックス様』と呼ぶように」
十歳のフェリックス様から高圧的にそう言われた。まだ七つの私はなんだか威張った男の子だな……と思ったが『わかりました。フェリックス様』と素直に返事をした。
そして続けて、
『僕は将来立派な近衛騎士になって、ステファニーを守る。これは約束なんだ。だからお前よりステファニーを優先する事があっても文句を言うな』
挨拶もそこそこに彼の口から飛び出したのはこんな言葉だった。
※中世ヨーロッパ風のお話ですが私の頭の中の異世界のお話です
※史実には則っておりませんのでご了承下さい
※相変わらずのゆるふわ設定です
※第26話でステファニーの事をスカーレットと書き間違えておりました。訂正しましたが、混乱させてしまって申し訳ありません

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる