上 下
10 / 18

10【転生ヒロイン】ブリジット

しおりを挟む
どうしてなんだろ?
このゲームで一番の推しだった王太子のリシャールには近付けない。
彼の側近のドミニクと護衛のアンドレにも。

あたしのお世話役をしてくれたからリシャールとは懇意になるのに、そのお役目からも彼は逃げた。
それも自分の代わりをクロエなんかに、頼んじゃって!


「リシャール殿下があたしの面倒を見てくれないから、指導してください!」

もぉ、腹が立つから学院長室へ殴り込みみたいに突撃したら、『王族と平民の交流』とか言ってた学院長は掌を返した。


「そ、それなんだが、殿下からご提案があって……」

リシャールからは、女生徒の世話役は同性にさせるべきで『平民との交流』を謳うならば、将来の王妃であるモンテール侯爵令嬢ほど、それに適した人物は居ない、とか丸め込まれちゃっててさ……

王族だって、ここじゃー生徒なのにさ、言うこと聞くってさー。
ホントにこのオヤジ頼りねーな!



そう言われても、当然あたしは悪役令嬢とはよろしくするつもりなんかないから、クロエから逃げまくってたんだけど、ある日考えを改めた。
『交流する』から、『苛めが発生する』んだよね。

リシャールは生徒会長だから、それを知らん顔出来ないはずだよ。
ゲームのキャラ設定の正義感の強い王子、なら。


そう思って、クロエが話しかけてきても逃げるのはやめて、相手をしてやることにしたのだった。
案の定、うるさく細かいことを指摘してくる。
婚約者がいる異性とは、必要以上に親しくしないように、とかさ。

だからさぁ男女間の友情ってあるでしょ、なんて流そうとしても、それならお相手が居ない男性とどうぞ、とか言うんだよ。
この学院でそーゆーお相手が居ないのは、貧乏な底辺貴族の息子とか、余程のブサメンで縁談がうまくいかないヤツだけなの!

こっちはさぁ高等部2年からの編入なんだから、これぞ!の男は皆、お手付きだよー(泣)

あたしをそんな底辺の男とくっつけさせるつもりか、この悪役令嬢め!
あたしはこのゲームのヒロインなんだからね!
あたしを転生させた神様(女神様?)は、そんなの絶許(死語?)だよ!




と、言うわけで。
あたしはリシャール周辺を取りあえず置いといて、新しい攻略対象に近づきつつ、クロエの苛めを自演して、悪役令嬢の噂を流すことにしたの。
テンプレ乙ゲーだからね、苛め工作も定番のヤツだけど、いいよねー。


放課後、誰も居ない教室で決して安くはなかった教科書を破いた時は
『また買わせるけど、お父さんごめんなさい』だったし。

昼休み、ガラガラの水呑場で頭から水を被った時は、なかなか人が集まらないからそのまま教室に戻って教室で『噴水に突き落とされた!』って騒いで、夜から発熱して看病させちゃって
『徹夜になったね、お母さんごめんなさい』。

クロエと階段の踊り場ですれ違った瞬間にわざと足を踏み外して落ちちゃった時には、登ってきた人を巻き込んじゃって、あたしの下敷きになった人がいて、その人が怪我をして、これも
『知らないひとごめんなさい』だった。


そんな風に色々迷惑かけたけど、これで悪役令嬢を駆逐して、晴れてあたしがリシャールをゲットした暁には、何倍ものお返しをするからね、なんて。

 

それと平行して進めたのが、他の攻略対象者との交流ね。
これはやはり楽しみだった。


①魔法科教師のノワール先生
 黒髪、金色の瞳。
 実は魔王で、聖なる力を持つあたしを狙って学院に潜伏してる。
 本当はあたしを殺すつもりだったのに、愛してしまう。


②悪役令嬢の義弟のジュール
 銀髪、碧眼。
 侯爵家の後継者として引き取られた幼い頃から義姉のクロエに虐待されていて、彼女を憎んでいる。
 虐待体験から素直に感情を出せないが、あたしと知り合って、心の傷を癒して貰う。


③商売敵の大商会の跡取りエイドリアン
 金髪、緑の瞳。
 あたしと同時期に編入試験を受けて同級生になる。
 何かと構いたがりのイケメンで、軽いノリなのに、たまに真剣に口説きにくる。
 平民だが、実は現国王の異母弟、つまり王弟殿下。



あたしの大本命は変わらずリシャールだけど、他の5人の好感度もガンガン上げてくよ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜

星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」 「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」  公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。 * エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

【完結】死がふたりを分かつとも

杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」  私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。  ああ、やった。  とうとうやり遂げた。  これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。  私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。 自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。 彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。 それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。 やれるかどうか何とも言えない。 だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。 だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺! ◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。 詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。 ◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。 1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。 ◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます! ◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ

春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。 エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!? この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて… しかも婚約を破棄されて毒殺? わたくし、そんな未来はご免ですわ! 取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。 __________ ※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。 読んでくださった皆様のお陰です! 本当にありがとうございました。 ※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。 とても励みになっています! ※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

処理中です...