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5【転生ヒロイン】ブリジット
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学院長から私のお世話を頼まれたくせに、リシャールってば。
初対面では、蕩けそうに甘い顔で、私に向かってにっこりしたのよ?
「私が生徒会長のリシャール・ルブランです」
あたしの! 下半身直撃のその声は!
大好きな声優さんの美声だった。
これからこの声が、あたしのものになって、どんな甘い言葉を囁くのかと思ったら。
やだ、もぉイッちゃう。
……だったのに!
それに自己紹介はあくまで、生徒会長、だって。
この国の王太子だって、言わないの、たまんなかった。
同じ学院生だよ、って言ってくれたんだよね?
王族だからといっても、遠慮しないでね、だよね?
だったら、あたしは遠慮しない。
……だったのに!
「BB、と書いて、ベベ、って呼んでくださいねっ!」
そう、にっこり笑って言っただけなのよ?
ちょっと勝手に腕は触ったけどさ……
その瞬間だった。
リシャールの背後に居た護衛騎士のアンドレがあたしの手を叩いたの。
パシッ!って。
音ほど痛みはなかったけれど、ビックリして。
自然に涙が出たの。
へ、アンドレどうして? って。
あんた、あたしの事好きになるじゃん、どうしたのよ?
ゲームじゃ、あたしが何を言っても、何をしても、笑ってくれていたのに。
「殿下の御身に触れるな!」なんて……
それからはリシャールに会えなくなって。
彼の役目の筈だった、あたしのお世話役は彼の婚約者の悪役令嬢、クロエ・グランマルニエになったの。
どういう事?
これから、あたし達は色々な話をして、色々な所へ遊びに行ったりして、色々、色々……
そこから愛が深まっていく筈なのに!
もぉ、絶対に!絶対に!
悪役令嬢が何かしたのよ!
実家の力を使って?かな、よく知らんけど!
クロエともリシャールとも、他のアンドレとかドミニクとか。
同じ学年だから、校舎も同じだし、リシャールを見掛ける事はあった。
それで手を振って駆け寄ろうとしても、彼の隣には側近のドミニク、後には護衛のアンドレ、そして向こう隣にはクロエが居るの!
こんなのおかしすぎるよ!
クロエとは一緒に歩いたりしてなかったじゃん?
ゲームではリシャールが優しく、彼の方からあたしに声を掛けてくるのに、何でなの?
あたしが手を振っても見えていない感じだし、下手したらその顔を背けてしまう。
それでも、しつこく名前を呼んで追いかけたら、クロエとドミニクが立ち止まって、私の方にやって来る。
だけど、リシャールはアンドレとそのまま行ってしまうの。
「王太子殿下はビグロー嬢に、名前で呼ぶことをお許しになっておられません」
物凄く冷たい表情でドミニクが言う。
ドミニクもお気に入りだった……そんなにキツいこと言わないで?
「何か御用がお有りになるのでしょう?
私が殿下の代わりにお聞きしても、よろしいでしょうか?」
悪役令嬢がしゃしゃり出てくんな!
リシャールに愛されてもいないくせに!
そう言いたいのに言えない。
だって、あたしはヒロインだから。
ヒロインはそんなこと、言わないもんね?
「用なんて無いです。
久しぶりに会えたから、お話したかったんです……」
クロエにじゃなくて、ドミニクに訴える。
貴方は、弱い乙女にキツく出られない筈。
妹属性強めに出すね。
そしたら、貴方は妹を思い出して、あたしを……
「失礼ながら、お話したいからと言っても、簡単にはお話し出来ないのが王太子殿下ですよ」
「あたしはこの国の民よ!
彼はそんな風に民との会話を邪魔されたくない筈よ」
「民との会話、ですか?
仕方ないですね、何か民として伝えたいことがあるのなら。
殿下はご対応しませんが、王城で陳情の列に並ばれては?」
何なの!何でなの!
何でそんなに冷たいこと、言うの?
ドミニク、貴方はあたしの事が好き過ぎて、リシャールに決闘を申し込むんじゃなかった?
「学院内で何かございましたら、お世話役の私にお聞かせ下さるか……
殿下だけにお伝えしたいことでしたら、生徒会室前にも投書箱がございますから。
こちらはまず生徒会長のみが目を通すことになっておりますの」
ほら、クロエにまで偉そうに言われたよ!
もう、わけわかんないよ……
初対面では、蕩けそうに甘い顔で、私に向かってにっこりしたのよ?
「私が生徒会長のリシャール・ルブランです」
あたしの! 下半身直撃のその声は!
大好きな声優さんの美声だった。
これからこの声が、あたしのものになって、どんな甘い言葉を囁くのかと思ったら。
やだ、もぉイッちゃう。
……だったのに!
それに自己紹介はあくまで、生徒会長、だって。
この国の王太子だって、言わないの、たまんなかった。
同じ学院生だよ、って言ってくれたんだよね?
王族だからといっても、遠慮しないでね、だよね?
だったら、あたしは遠慮しない。
……だったのに!
「BB、と書いて、ベベ、って呼んでくださいねっ!」
そう、にっこり笑って言っただけなのよ?
ちょっと勝手に腕は触ったけどさ……
その瞬間だった。
リシャールの背後に居た護衛騎士のアンドレがあたしの手を叩いたの。
パシッ!って。
音ほど痛みはなかったけれど、ビックリして。
自然に涙が出たの。
へ、アンドレどうして? って。
あんた、あたしの事好きになるじゃん、どうしたのよ?
ゲームじゃ、あたしが何を言っても、何をしても、笑ってくれていたのに。
「殿下の御身に触れるな!」なんて……
それからはリシャールに会えなくなって。
彼の役目の筈だった、あたしのお世話役は彼の婚約者の悪役令嬢、クロエ・グランマルニエになったの。
どういう事?
これから、あたし達は色々な話をして、色々な所へ遊びに行ったりして、色々、色々……
そこから愛が深まっていく筈なのに!
もぉ、絶対に!絶対に!
悪役令嬢が何かしたのよ!
実家の力を使って?かな、よく知らんけど!
クロエともリシャールとも、他のアンドレとかドミニクとか。
同じ学年だから、校舎も同じだし、リシャールを見掛ける事はあった。
それで手を振って駆け寄ろうとしても、彼の隣には側近のドミニク、後には護衛のアンドレ、そして向こう隣にはクロエが居るの!
こんなのおかしすぎるよ!
クロエとは一緒に歩いたりしてなかったじゃん?
ゲームではリシャールが優しく、彼の方からあたしに声を掛けてくるのに、何でなの?
あたしが手を振っても見えていない感じだし、下手したらその顔を背けてしまう。
それでも、しつこく名前を呼んで追いかけたら、クロエとドミニクが立ち止まって、私の方にやって来る。
だけど、リシャールはアンドレとそのまま行ってしまうの。
「王太子殿下はビグロー嬢に、名前で呼ぶことをお許しになっておられません」
物凄く冷たい表情でドミニクが言う。
ドミニクもお気に入りだった……そんなにキツいこと言わないで?
「何か御用がお有りになるのでしょう?
私が殿下の代わりにお聞きしても、よろしいでしょうか?」
悪役令嬢がしゃしゃり出てくんな!
リシャールに愛されてもいないくせに!
そう言いたいのに言えない。
だって、あたしはヒロインだから。
ヒロインはそんなこと、言わないもんね?
「用なんて無いです。
久しぶりに会えたから、お話したかったんです……」
クロエにじゃなくて、ドミニクに訴える。
貴方は、弱い乙女にキツく出られない筈。
妹属性強めに出すね。
そしたら、貴方は妹を思い出して、あたしを……
「失礼ながら、お話したいからと言っても、簡単にはお話し出来ないのが王太子殿下ですよ」
「あたしはこの国の民よ!
彼はそんな風に民との会話を邪魔されたくない筈よ」
「民との会話、ですか?
仕方ないですね、何か民として伝えたいことがあるのなら。
殿下はご対応しませんが、王城で陳情の列に並ばれては?」
何なの!何でなの!
何でそんなに冷たいこと、言うの?
ドミニク、貴方はあたしの事が好き過ぎて、リシャールに決闘を申し込むんじゃなかった?
「学院内で何かございましたら、お世話役の私にお聞かせ下さるか……
殿下だけにお伝えしたいことでしたら、生徒会室前にも投書箱がございますから。
こちらはまず生徒会長のみが目を通すことになっておりますの」
ほら、クロエにまで偉そうに言われたよ!
もう、わけわかんないよ……
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