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18 私にぐいぐい来られましても
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えーと、これは……?
あの日、私はフェルフラン公国のお祖母様の所に行くからと、幼馴染みの皆に送別会を開いて貰っていた、のに。
あれから1週間過ぎたけれど、私は出発していません。
私は相変わらず『事故物件』のはず、なのに。
この国の『最優良物件』のライオネル・グレイ・モンゴメリー小公爵様にエスコートされて、グレイ家のガーデンパーティーに出席しているのは……
『君に結婚を申し込むよ!
だから、行くな!』
送別会の日、遅刻してきたライオネルが……
結婚を申し込む? 私に? 何で?
申し込むと言われた私もだけど、その場に居た全員がそう思っていたよね……
「何を考えているの、エヴァ?」
「……」
「俺の事を考えてくれているなら、最高なんだけど?」
そうね、ライ、貴方の事を考えているの。
どうして私に結婚を申し込んだのか、なんて。
ずーっと、貴方の事を考えてる。
フェルフランのお祖母様に早馬を出したのは、お母様。
直ぐに返事が来て、そんな事になっているのなら、こちらに来る必要はない、らしいです。
宰相閣下の御嫡男が事故物件とまで呼ばれた娘に結婚を申し込んだのだ。
その有難いお話を蹴るバカは何処にも居ない。
今日もお迎えに来てくれたライオネルに、お母様が私を押し付けた。
……だけど、私は気付いてる。
結婚を申し込む、と。
だから行くな、と。
ライオネルは確かに言ってくれたけれど。
「好き」も。
「愛してる」も。
そんな甘い台詞は全然無かったもの。
これ、ってつまり……政略婚約パート2、ってヤツなんじゃない!
「ちょっと待ってて」
ずっと私の隣から離れないライオネルが友人に呼ばれて席を外せば、すかさず声をかけてくるご令嬢がいました。
「ご無沙汰しております。
……お元気かしら、と心配させていただいておりましたけれど。
無用な事でしたわね?
以前のご婚約者よりも素敵な殿方を捕まえられて」
……ライオネルが私に求婚した事は既に社交界では有名になっているらしくて、今日は皆様の視線が痛くて痛くて。
このようにチクリと嫌味を言われても気にしないでおこう、と覚悟はしていたけれど。
この方は嫉妬からお声をかけてこられていないのは明白です。
だって、この方は……
ルーカスのお兄様、ケイレヴ様のご婚約者だったマリナ・スタイナー嬢でした。
ルーカスの横領、お父様の財務大臣免職、王都からの撤収……
ケイレヴ様は王城でお仕事を続けられていらっしゃいますが、一連の出来事からケイレヴ様とマリナ様の婚約も、ハモンド侯爵家の有責で破棄となって。
挙式一ヶ月前の破棄でした。
何事もなければおふたりは、今頃ご夫婦になられていた。
あの断罪の影響はこの方の人生まで変えてしまった。
「私、貴女も被害者なのだから、と。
自分で納得させようとしていましたの。
ですが、新しいお相手があのモンゴメリー小公爵様だ、と聞いて」
静かな怒りを込めて、マリナ様に睨まれました。
いつも穏やかな微笑みしか向けられていなかったから、このような剥き出しの感情をぶつけられたのは初めてで。
「マリナ様、私……」
「もう名前で呼ばないでくださる?マッカラム様。
私とのご縁は切れましたのに」
マリナ様とはお互いにファルガー兄弟の婚約者として、幼い頃から親しくさせていただいていたのに。
義理の姉妹になる方だから、だけではなく本当に好ましい女性だったのに。
「ご婚約おめでとうございます……ねぇ、おふたりで企んだ事なのかしら?
さすが、悪役令嬢と呼ばれるだけ……お見事としか……」
「マリナ様?」
「そんな風になにも知らないなんて顔をしたって、もう騙されませんわ」
マリナ様が憎々しげに私に仰るその言葉の意味がわからない。
ライオネルとは、まだ婚約などしていない。
でも取りあえず、それは置いておいて。
ふたりで企んだ?
「ルーカス様が横領したきっかけは、モンゴメリー小公爵様からの借金でしょう?
下世話な言い方になりますけれど、おふたりが『邪魔なルーカス様を嵌めた』のですね!」
あの日、私はフェルフラン公国のお祖母様の所に行くからと、幼馴染みの皆に送別会を開いて貰っていた、のに。
あれから1週間過ぎたけれど、私は出発していません。
私は相変わらず『事故物件』のはず、なのに。
この国の『最優良物件』のライオネル・グレイ・モンゴメリー小公爵様にエスコートされて、グレイ家のガーデンパーティーに出席しているのは……
『君に結婚を申し込むよ!
だから、行くな!』
送別会の日、遅刻してきたライオネルが……
結婚を申し込む? 私に? 何で?
申し込むと言われた私もだけど、その場に居た全員がそう思っていたよね……
「何を考えているの、エヴァ?」
「……」
「俺の事を考えてくれているなら、最高なんだけど?」
そうね、ライ、貴方の事を考えているの。
どうして私に結婚を申し込んだのか、なんて。
ずーっと、貴方の事を考えてる。
フェルフランのお祖母様に早馬を出したのは、お母様。
直ぐに返事が来て、そんな事になっているのなら、こちらに来る必要はない、らしいです。
宰相閣下の御嫡男が事故物件とまで呼ばれた娘に結婚を申し込んだのだ。
その有難いお話を蹴るバカは何処にも居ない。
今日もお迎えに来てくれたライオネルに、お母様が私を押し付けた。
……だけど、私は気付いてる。
結婚を申し込む、と。
だから行くな、と。
ライオネルは確かに言ってくれたけれど。
「好き」も。
「愛してる」も。
そんな甘い台詞は全然無かったもの。
これ、ってつまり……政略婚約パート2、ってヤツなんじゃない!
「ちょっと待ってて」
ずっと私の隣から離れないライオネルが友人に呼ばれて席を外せば、すかさず声をかけてくるご令嬢がいました。
「ご無沙汰しております。
……お元気かしら、と心配させていただいておりましたけれど。
無用な事でしたわね?
以前のご婚約者よりも素敵な殿方を捕まえられて」
……ライオネルが私に求婚した事は既に社交界では有名になっているらしくて、今日は皆様の視線が痛くて痛くて。
このようにチクリと嫌味を言われても気にしないでおこう、と覚悟はしていたけれど。
この方は嫉妬からお声をかけてこられていないのは明白です。
だって、この方は……
ルーカスのお兄様、ケイレヴ様のご婚約者だったマリナ・スタイナー嬢でした。
ルーカスの横領、お父様の財務大臣免職、王都からの撤収……
ケイレヴ様は王城でお仕事を続けられていらっしゃいますが、一連の出来事からケイレヴ様とマリナ様の婚約も、ハモンド侯爵家の有責で破棄となって。
挙式一ヶ月前の破棄でした。
何事もなければおふたりは、今頃ご夫婦になられていた。
あの断罪の影響はこの方の人生まで変えてしまった。
「私、貴女も被害者なのだから、と。
自分で納得させようとしていましたの。
ですが、新しいお相手があのモンゴメリー小公爵様だ、と聞いて」
静かな怒りを込めて、マリナ様に睨まれました。
いつも穏やかな微笑みしか向けられていなかったから、このような剥き出しの感情をぶつけられたのは初めてで。
「マリナ様、私……」
「もう名前で呼ばないでくださる?マッカラム様。
私とのご縁は切れましたのに」
マリナ様とはお互いにファルガー兄弟の婚約者として、幼い頃から親しくさせていただいていたのに。
義理の姉妹になる方だから、だけではなく本当に好ましい女性だったのに。
「ご婚約おめでとうございます……ねぇ、おふたりで企んだ事なのかしら?
さすが、悪役令嬢と呼ばれるだけ……お見事としか……」
「マリナ様?」
「そんな風になにも知らないなんて顔をしたって、もう騙されませんわ」
マリナ様が憎々しげに私に仰るその言葉の意味がわからない。
ライオネルとは、まだ婚約などしていない。
でも取りあえず、それは置いておいて。
ふたりで企んだ?
「ルーカス様が横領したきっかけは、モンゴメリー小公爵様からの借金でしょう?
下世話な言い方になりますけれど、おふたりが『邪魔なルーカス様を嵌めた』のですね!」
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