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11 私はちょっとだけ、悔やんでいる
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何度も言うけれど、私とルーカスは恋人同士じゃなかった。
本当に昔からの知り合いって感じで。
だから、夏の休みが始まっても、週に1回、多くて2回しか会わないのも普通で。
その会わない日々にルーカスとミシェーラが会い続けていた、なんて想像もしていなくて。
気がついたら、3年生の新学年が始まるとルーカス&ミシェーラ、略して『ルーミシェ』は、ぴったりとくっついてるカップルで。
ルーカスとは登下校を御一緒することはなくなってしまった。
ウチじゃなくて、ミシェーラのお家に寄ることにしたみたいで。
最終学年で私とテディとエリィは3人組になっていたの。
これって、私があのふたりをセッティングした、って感じじゃない?
「してやられたんじゃないの?」
寄り添いくっつきながら廊下を歩くルーミシェを眺めながら、呆れたような感じでエリィが私に言いましたね。
私もね、呆れてる。
あんなにくっついて移動して、2人の足は絡まないのか?
秋はまだまだ先で、残暑厳しい毎日が続いているのに。
お互いの汗や匂いは気にならないの?
「あいつら、一度絞めとく?」
私がうんと言えば、エリィは影を使うのかしら。
それとも、自ら校舎の裏に呼び出すのかしら。
どちらにしろ、将来の王子妃殿下にはしていただきたくない所業です。
いや、来年テディは公爵家後継のエリィと結婚して臣籍に下るので、公爵夫人ですけれど。
「あっちのお家はこのこと、知ってる?」
「どうでしょ、多分話せてないでしょ」
「貴女のところはどうなのよ?」
「お父様は『ほっとけ』って」
ルーカスは自分の家族に、ミシェーラのことはまだ言えてない、と思いました。
ウチの父の反応は想定済み。
「いずれ別れなくてはいけないのだから、今は夢を見させてあげて?」
これは父が私に言った言葉。
私が言えば、テディも頷きました。
だけど、エリィは納得しなくて。
「風邪を引いたみたいなものだよ、エリィ。
あいつは絶対に戻ってくるから」
「風邪は引き始めが肝心、なのよ!」
もうちょっとエリィの言葉を真剣に聞いておけば良かったのね。
今更だけど、本当に貴女が正しかったね?
小柄で可愛いミシェーラ。
きっと彼女のような恋人をルーカスは夢見ていたのでしょう。
それに比べて私は。
自分と変わらない身長の、黒髪に灰青色の瞳の。
可愛げのない婚約者。
幼い頃から子犬のようにじゃれついて遊んだ男の子達。
そんな私を、女性として見られないのはわかっているから。
校庭のベンチの上で。
中庭の芝生の上で。
ミシェーラを背中から抱きしめて、ルーカスが何事か囁いているのが常でした。
嬉しそうだね、そんな風に恋人と過ごしたかったんだね。
デカい私じゃ無理だもんね。
いいよ、貴方の気が済むまで。
理想の恋を楽しんでこい。
そして、大人になるからあきらめて、決められた人生を歩んでいくことを受け入れろ。
貴方の様に恋するなんて私には出来ない事だけど、戻ってきたら、以前のままで笑ってあげるから。
貴方は大事な幼馴染みだから、たまには失った初恋の話を聞いてあげるよ。
最初は辛いだろうけれど、『あの時は……』なんて、いつかは笑って話せるようになるよ。
そして、私達は一緒に歳をとっていくんだよ。
……ねぇルーカス、貴方も甘かったけど。
私達も甘かったな。
どんなにバカな事やってても。
いつかは私達のところに戻ってくると信じていたなんて、ね?
本当に昔からの知り合いって感じで。
だから、夏の休みが始まっても、週に1回、多くて2回しか会わないのも普通で。
その会わない日々にルーカスとミシェーラが会い続けていた、なんて想像もしていなくて。
気がついたら、3年生の新学年が始まるとルーカス&ミシェーラ、略して『ルーミシェ』は、ぴったりとくっついてるカップルで。
ルーカスとは登下校を御一緒することはなくなってしまった。
ウチじゃなくて、ミシェーラのお家に寄ることにしたみたいで。
最終学年で私とテディとエリィは3人組になっていたの。
これって、私があのふたりをセッティングした、って感じじゃない?
「してやられたんじゃないの?」
寄り添いくっつきながら廊下を歩くルーミシェを眺めながら、呆れたような感じでエリィが私に言いましたね。
私もね、呆れてる。
あんなにくっついて移動して、2人の足は絡まないのか?
秋はまだまだ先で、残暑厳しい毎日が続いているのに。
お互いの汗や匂いは気にならないの?
「あいつら、一度絞めとく?」
私がうんと言えば、エリィは影を使うのかしら。
それとも、自ら校舎の裏に呼び出すのかしら。
どちらにしろ、将来の王子妃殿下にはしていただきたくない所業です。
いや、来年テディは公爵家後継のエリィと結婚して臣籍に下るので、公爵夫人ですけれど。
「あっちのお家はこのこと、知ってる?」
「どうでしょ、多分話せてないでしょ」
「貴女のところはどうなのよ?」
「お父様は『ほっとけ』って」
ルーカスは自分の家族に、ミシェーラのことはまだ言えてない、と思いました。
ウチの父の反応は想定済み。
「いずれ別れなくてはいけないのだから、今は夢を見させてあげて?」
これは父が私に言った言葉。
私が言えば、テディも頷きました。
だけど、エリィは納得しなくて。
「風邪を引いたみたいなものだよ、エリィ。
あいつは絶対に戻ってくるから」
「風邪は引き始めが肝心、なのよ!」
もうちょっとエリィの言葉を真剣に聞いておけば良かったのね。
今更だけど、本当に貴女が正しかったね?
小柄で可愛いミシェーラ。
きっと彼女のような恋人をルーカスは夢見ていたのでしょう。
それに比べて私は。
自分と変わらない身長の、黒髪に灰青色の瞳の。
可愛げのない婚約者。
幼い頃から子犬のようにじゃれついて遊んだ男の子達。
そんな私を、女性として見られないのはわかっているから。
校庭のベンチの上で。
中庭の芝生の上で。
ミシェーラを背中から抱きしめて、ルーカスが何事か囁いているのが常でした。
嬉しそうだね、そんな風に恋人と過ごしたかったんだね。
デカい私じゃ無理だもんね。
いいよ、貴方の気が済むまで。
理想の恋を楽しんでこい。
そして、大人になるからあきらめて、決められた人生を歩んでいくことを受け入れろ。
貴方の様に恋するなんて私には出来ない事だけど、戻ってきたら、以前のままで笑ってあげるから。
貴方は大事な幼馴染みだから、たまには失った初恋の話を聞いてあげるよ。
最初は辛いだろうけれど、『あの時は……』なんて、いつかは笑って話せるようになるよ。
そして、私達は一緒に歳をとっていくんだよ。
……ねぇルーカス、貴方も甘かったけど。
私達も甘かったな。
どんなにバカな事やってても。
いつかは私達のところに戻ってくると信じていたなんて、ね?
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