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14 私が事故物件、って…

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とにかく現状、私の評判は最悪らしいです(涙)

ウチにやってきたカイルからの情報です。

卒業記念の宴から早くも1ヶ月が過ぎようとしていましたが、あの夜の出来事が学園外でも広まっていて、私が暴力をふるう悪役令嬢、と呼ばれている事は聞いていました。


ルーカスが小柄なせいで、彼の襟元を掴んだだけなのに、そのまま持ち上げて揺さぶりながら
『チビ、チビ、チビ』と3度続けて言うのを、10回繰り返した、と。
私が着ていたドレスが黒一色だったこともあり、悪役令嬢感増し増しだった、そうな。


真相はチビと3度言ったのは本当だけど、間に言葉入れていたからね?
3×10=30回もチビだけを、連発してないからね?
『チビ、チビ、チビ、チビ、チビ……』?
有り得ない、有り得ない!

それより何より、あいつを持ち上げた、って?
どれだけ怪力なの!
言い出したやつ連れてこい!


「悪役令嬢の話は前に聞いたわよ。
 新しい情報はないの?」

「新しい情報か……」


あの断罪劇を致すことは、国王陛下も御存じでお許しをいただいていましたが、世間様はお許しくださらなかったようです。

断罪劇原因の私、ルーカスを見逃していたアレンの、マッケラン兄妹は自宅に引きこもっておりました。

親友の私を助ける為であろうと婚約者のテディを焚き付け、騒ぎを起こしたエリィは厳重注意。

また、国王陛下も断罪劇は許しても、側近の横領を見逃していたテディを許す筈も無く。

監督不行き届きのテディと横領の第一発見者ながら口をつぐんでいたライオネルも謹慎処分を受け、大人しくして。 
テディはエリィとの婚約は持続されましたが、来年の結婚式の規模は縮小されて、王籍離脱まで一切の公務から外されて、今年度の王子予算もほぼ0、執務室は閉鎖になりました。


唯一、蚊帳の外だったカイルのみが何のお咎めもなく、騎士団に入団して自由に王城と私達の間を行き来していたのです。


「最新ではエヴァ、君は『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』に格下げされた」

「事故物件て、格下げて、何なの?」

「多分、現状では他のご令嬢より相場が安くなった女?
 一見、優良物件なのに、何でかな、安いのに誰も手を出さないな、と感じても、周りは敢えてその理由を教えてくれない女?
 自力で調べたら、ヤバい話が出るわ出るわの女?」


……この男、カイル・グリフィン・バーンズは。
無遠慮なところを、男らしい。
無神経なところを、明るくて爽やか、と。
両足履き違えて大股で闊歩する男です。

そんなデマを信じる人は居ない!と、否定出来ないのが辛い。
こんな時、自分の交遊関係の狭さに改めて気付かされる、わ。

お茶席や夜会なんかで、私の良い噂をばーっと流して、男達のその誤解を解いてくれる女友達が居ない……


いや、唯一の友達、エリィほど心強い味方はいない。
エリィのおウチの影を使って、誰がそんなデマを流しているか、調べて貰う?
いや、そしたらまた私は自分の力では何も出来ない女なんだって事を証明するだけ?


乙女心は千々に乱れ、黙ってしまった私に、殊更カイルは明るい声を張り上げました。


「事故物件令嬢なんてな!
 言わしたいやつに言わせとけば、良いからなっ!」

こんな近い距離でふたりしかいないんだから、叫ばなくていいよ。
うるさいな。


「俺は事故物件どんと来い、って思ってるからなっ!」

「そりゃ、どうも」


事故物件、事故物件て、連発しないでよ。
どんと来い、って言ったよね。
貴方がいつかおウチを買う時、事故物件じゃなかったら。
『嘘つき』を 3×10回、本当に言ってやるからな?



それにしても、この噂をエリィは知っているのかな。
エリィのおウチ(公爵邸) は、王城とウチの邸の間にあるので、今日ここに来るまでにカイルが彼女のところに寄っていたら。


「もしかして、エリィに私が事故物件なんたらかんたら、話した?」

「先に寄ってきたからね、面白い話はない?って聞くからさ、話したよ?」


……悪気なんてひとつもないな、カイル。
それを聞いたエリィの心境を思って、私は少しブルーになってるのに。
貴方は気付いていないのね。


「い、今はまだ考えられないと思うけど、俺は……
 エヴァのことを……」
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